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最強女勇者と魔王城に攻め込んだらロリ魔王とロリアラクネが可愛くてそのまま魔王城でスローライフ  作者: 焼肉一番


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告白

 それからどれくら走っただろうか? 

 さすがにそろそろ休みたいと弱音が出そうになった頃、前方から水音が聞こえて来た。湖だ。


「見えたわよ!」


 そうだ、今日の目的は釣りだった筈。だがリーンに釣り装備を一蹴され釣り竿もない状態である。一体どう釣るのだろうと疑問を持ったのも束の間、リーンは勢いのままその湖に飛び込んだ。


「ちょっ……! 勇者様ーっ?!?!」


 リーンの事だ。慣れている様子だったし溺れる事はあるまいが、湖の中に未知の魔物が潜んでいたっておかしくない。慌てて底を覗き込むが水面が激しく揺れていて中の様子がちっとも分らなかった。


「大変だ……!」


 テオは素早く鎧を脱ぎ捨て、リーンの救出に向かおうとしたのだがやはりリーンはすぐに帰って来た。飛び込んだ時と同じ勢いで水面から飛び出してきたのである。


「ほぉーら! 捕まえた!!」


 そう言いながら飛び出してきたリーンは満面の笑みで右手を高く掲げ、その手にはガッチリと何か輝くものを掴んでいる。赤毛を濡らして水飛沫を飛び散らせるその姿を、テオはまるでスローモーションの様に眺めた。

 タンッと地面に着地すると、右手に持っていた輝く何かをテオに突き付けるリーン。


「見なさい! 金色人面魚よ!」


「……て……手掴み……」


 まさかの手掴みに慄きながらリーンの右手を確認すると……、それは紛うことなき魔物であった。確かに金色で人面だがしっかり魔力も感じる。これはさすがに色々と言いたい事があるとテオは思った。


「釣りって言ったじゃないですか~!」


「まぁ似たようなもんでしょ? 女の子が手掴みで魚獲るなんて言ったら引かれるかと思ってちょっと盛っただけよ」


「盛り方間違ってますよ! だいたい何でそこだけ急に人の評価とか気にするんです?! いやその前に絶対魚じゃないんですよそれ!」


「あはは、さすがにばれた? 女の子が魔物と戯れてるなんて言ったら引かれるかと思ってこっちもちょっと盛っちゃったのよ」


「だから盛り方間違ってますよ! もうそれ俺に気に入られたかったで良いですか?!」


「はぁ?! バッカじゃないの?!」


「だって引かれたくないってそう言う気持ちじゃないですかぁー?! 俺はっ……! 俺は勇者様にコイツ弱っ! って引かれたくなくてめちゃくちゃ頑張りましたしー!」


「引かれたくないのと気に入られたいは同意じゃないわよ! そんな事よりどうなのよこの金色人面魚は!」


 リーンにずいと押し付けられた小さな魔物は、確かにテオの知っている黄金人面カジカより光っていたし人面だった。それはそうだ、相手は魔物なのだから。


「そんな事って……」


 確かに目的は金色人面魚を見つける事だった。そしてその目的は今果たされたのだ。リーン的には今が最高に持ち上がる瞬間なのかもしれないがテオには夢の時間の終わりを告げられているのと同じだ。


「どうしたのよ?」


 急に元気をなくしたテオに不思議そうに声を掛けるとリーンは不用意にテオの顔を覗き込んだ。


「わっ……!」


 憧れの勇者様が目の前に居るこの非日常は、もうすぐ終わってしまう。

 そうだ、もう、今しかない。

 テオは一度キュっと口を引き結んでから、可愛らしく小首を傾げるリーンに思いを告げた。


「俺! 勇者様が好きです!」


「えっ?!」


 思いがけない展開にリーンも驚いて後ろへ下がる。


「なっ……何言ってんのよあんた! 今まで喋ったこともないのに!」


「あの時、勇者様の事が好みって言ったのは本当だし! 今日で、俺ますます好きになっちゃったし!」


「どこでますます好きになったのよ?! 魔物を手掴みする女よ?!」


「むしろワイルドで可愛いなって思ったし、何だかんだ俺が怪我しない様に気遣ってくれてるのも分かってました。最初はすごく可愛いなーって思ってただけだけど、公の場に出る時の自然体な感じとか、子供や動物を見る時の優しい目とか、そんでそんで、勇者様は絶対忘れちゃったと思うけど俺、勇者城兵士の筆記試験の時にお城の中で迷子になっちゃって、勇者様に助けて頂いたんです」


「あたしが……?」


 テオの予想通り、リーンはすっかり忘れていたが、テオは迷子になったところをリーンに道案内されてギリギリ試験に間に合ったと言う過去がある。リーンからしてみれば勉強の時間をサボろうと思った先で半べその男の子が居たから仕方なしに案内してやったに過ぎないがテオにとっては救いの女神だったのだ。


「その時はまさかあの女の子が勇者様だなんて思わなくて、勇者城に居たんだから試験に合格したらまた会えるかな? 会えたらちゃんとお礼を言おうなんて考えてたんだけど、就任式の時に勇者様が紹介された時はなんかもう鳥肌立っちゃって……絶対俺この人の役に立とうって思ったし、あわよくば付き合えないかなって思ってました!」


「……同僚にも言われていたけど、あんた物好きね。それにそんなに簡単に人に好きとか言っちゃう人信じられない。あとなんか告白にセンスがない。あわよくばとか最低」


 信じられないとか最低とか、鋭い言葉がテオを突き刺したがテオはめげてなどいられなかった。


「センスがないのはごめんなさい! でも誰にでも言ってるわけじゃないし、こんな時間を過ごせるのは最初で最後だから! だからどうしても素直な気持ちを伝えたかったんです!」


「最初で最後……」


 リーンは意識していなかったが確かにもうこんな機会はないと考えるのが自然だ。


「それに俺……今日仕事さぼって来ちゃったし」


「え?」


 隠していても仕方がないとテオはそう言った。


「何よそれ……すぐに来るって返事してたし、問題ないのかと思ってた」


「えへへ、問題大有りです」


「何やってんのよ! 勇者城の兵士ならそれなりに難関をくぐり抜けて就任した筈でしょ?」


 自分の血は紛れもない勇者だから何をしても勇者でなくなる事はない。だが一兵士は違う。それくらいはリーンにも分かった。


「こう見えて世間的にはエリートです。一応最年少記録なんてのも持ってるんですよ~」


「なんで来たのよ! うまい事ごまかさないとクビになるかもしれないわよ!」


「なんでって……。せっかくのお誘いだったし。今日を逃がしたら勇者様と二人きりでお話しする機会なんてないじゃないですか。だって三年も城付きやってて目が合ったの六回だけですよ?」


 六回と言う極めて具体的な数字にリーンの背筋がうすら寒くなる。


「……けっこーキモいわねあんた。ちょっと引いてる」


「うわぁぁ! 引かれない様に頑張ってたのに! 今のなし! 忘れて下さい!」


「それにこんな事で人生を棒に振るなんてさ……」


「今日のお誘いを断ったらそれこそ棒に振ってますよ! 城付き兵士じゃなくたって生きてはいけます。でも勇者様とのデートは最初で最後です。あの日勇者様に出会ってから、俺の夢は城付き兵士から別の物に変わったんだ。だからごまかすつもりもありません。勇者様とデートしたって自慢して辞めます」


 テオはそう言って清々しく笑って見せた。

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