強くなりたい!
「貴様……ヴィーラを返せと言っている!!」
この蛇はヴィーラだったのかとテオはすぐにそれを地面に放した。
「かかか返します返します!」
偉いもので、ヴィーラもシードが分かるのか、弱弱しくも地面を這ってシードの方へ近付いて行く。シードは「おおよしよし」と愛しそうにヴィーラを拾い上げて大事そうに服の中へ忍ばせた。
「蛇は返しまたし……もうこれ以上ここに用事ないですよね。帰って報告して下さい。ここに魔王は居ないって」
ボロボロの状態で魔法部隊も全員敗走した。大事なヴィーラも見つかったが……、シードはそれで引き下がってはくれなかった。
「どうやら一人の様だな……勇者や魔王はもう死んだのか? なら貴様もすぐに送ってやる!」
「いや違……! うあっ!」
「私の大事なヴィーラに触れた罰を受けよ!!!」
かなり頭に血が上っている様だ。まだ魔法を放つ元気もあるらしい。
「あつっ! いたっ!」
テオはどうにかシードの魔法攻撃をかわす。畑がますますめちゃくちゃになる。
「止めて下さ……! わっ! やめろって!」
パンッと土の中のジャガイモがはじき出されてテオはカッなったが反撃の手立てはない。このまま防戦一方ではすぐに追い詰められてしまう。
情けないが城内に逃げ込んで助けを求めるか? いやあり得ない。リーンもルビィも、パイだってきっと限界まで戦ったに違いないし、シュリとダレルはティモシーの手術だ。
「くそっ……!」
――やっぱり俺は強くなりたい! ――
強く思った時に足元に火球を受けた。咄嗟に受け身を取って転がった先に農作業用の鎌がある。こんなもので応戦出来るとは思わないがないよりはマシと手に取ったが……。
「あれ?」
妙にしっくり来る。と言うか、しっかりと握れている感覚がある。
農作業をする時、鎌以外に鍬やスコップ等もシュリに作って貰ったのだが、やはり強くは握れないので土の硬い部分はティモシーにお願いしていた。しかし今なら……何でも持てそうな気がする。
「死ねぇ!」
シードが地面に膝を付いたままのテオに追撃の炎魔法を仕掛けるが、テオは持っている鎌の小さな鋼部分でそれを弾き返した。
「……!」
「生意気な!」
シードは憤ったが驚いたのはテオである。今までならこんなに腕を振り回したら持っているものはすぐにすっぽ抜けて飛んで行っただろう。それがまだ、鎌はしっかりとテオの手に握られている。
「これならどうだ!」
シードが次に放ったのは、威力は低いが広範囲を巻き込む炎だった。柄の部分が木製の鎌では防ぎきれない。だがテオは逃げなかった。逃げずにシードへ飛び込み、鎌の柄の部分で思い切りみぞおちを抉る。
「がはっ……!」
まだ鎌はテオの手に吸い付いていて、久々の感覚にテオの口角は上がってしまう。
前かがみになったシードの頸椎をドンと追撃すると、シードはもう立っていられなくなった。
「く……くそ……」
意識を飛ばす直前、シードはテオを見ると一瞬ギョッと目を見開き捨て台詞を吐いて倒れた。
「悪魔め」
……と。
握力が戻った事で思わずニヤ付きながら殴ってしまったのは確かに悪魔的だったかもとテオは反省したが原因はそうじゃない。
背中がスース―すると思ったらシードの炎魔法で背中からお尻の部分まで服が燃えているではないか。
「ああ~、戦闘用じゃない、ここにあった服をパイが作り直してくれたものだから仕方がないけど……こりゃ酷いや……ん?? んんんーっ?!?!」
大声を出しながら、テオは自分の身体の変化に大いに困惑したのだった。




