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最強女勇者と魔王城に攻め込んだらロリ魔王とロリアラクネが可愛くてそのまま魔王城でスローライフ  作者: 焼肉一番


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魔王を舐めないで

「嘘でしょ? テオのわけ……」


 みるみるその姿がテオとかけ離れていく。口元からだらしなく唾液が零れているかと思えば、口を閉じれないくらいの立派な犬歯が生え出ていて、顔色が悪いなと思えば、頬を鱗の様なものが覆い始める。


「が……あ……あ……」


 天使を作る薬だとシュリは言った。だが現れたのは悪魔だ。空も飛べるし握力も戻ったどころではないが、これでは話しが違う。


「がああああーっ!!!」


 テオは聞いていなかったが、人格や記憶が消えてしまう可能性があると言うのは本当の様だ。テオは知性の感じられない大声を上げると手当たり次第に暴れだした。


「ぴい?!」


 魔法部隊もパイもティモシーも一緒だ。その羽で自由に飛び回り、目に付いた者を攻撃する。体内魔力も増加しているであろう事が予測されるが、魔法を使うと言う知性がなさそうだ。攻撃は打撃である。当たればあっけなく死ぬだろう。


「なんて力なの……とっとと逃げなさい!」


 テオの拳が魔法部隊の一人に当たる直前にリーンは風のバリアを作って守ってやる。守られた男は驚いてリーンを見上げたが、リーンは次々テオの標的を守ってやっていた。


「……ったく!」


「どうして……?」


 文句を言いながらフォローするリーンにルビィが短くそう聞いた。リーンの方も「何が?」とは言わない。自分たちを攻撃し、あまつさえ殺そうとしていた連中を守るのは何故だと自分でも思うだけど……。


「勇者だからね」


 だが魔法部隊を逃がすのにリーンの手間はそう掛からなかった。

 シードがあっけなく倒され、目に付いた者を殺さん勢いで追い回すテオに魔法部隊はすっかり戦意を喪失したのだ。もともとシードありきの部隊であり、早々に情けなく全員が敗走する事になった。

 魔王城の邪魔者を一瞬で追い返してそれで済むのならこんなに良い薬はないだろう。だがそこに居るのはテオではない。テオは逃げなかったパイを見付けると一気に距離を詰め、小さな顔を両手でガシリと掴んで軽々持ち上げた。


「パイコ!!!」


 シードとの泥仕合が急に終わり、満身創痍だったティモシーが悲鳴を上げる。


「テオだけど……テオじゃない……いや、だ……」


 ひと際小さな身体に誰よりもキノコの毒が効いてしまっているのか、窓枠にしがみ付き状況を見守るだけだったルビィもその身を乗り出した。


「うがぁぁっ……!」


 だがテオが見ているのは目の前のパイだけであり、パイを敵と認識している。涎を飛び散らせながら喚き、パイを魔王城の壁面に叩き付ける様にして投げ飛ばした。


「くっ……ゲホッ……!」


 リーンがフォローに行こうと体内魔力を練った瞬間、思いがけずリーンは吐血した。リーン自身何が起きたのか分からなかったが、魔法の発動、つまり体内魔力を動かす事によって身体の毒が急激に体内を巡ったのだろう。

 パイを守る魔法は発動されず、壁面に激しく叩き付けられたパイは力なくそこから垂直に落ちた。しかし、思ったよりダメージはない。不思議に思って叩き付けられた壁を見ると、ぶつかったポイントから蜘蛛の巣の様に亀裂が入っていて、その中心にはティモシーが張り付いていた。まるで蜘蛛の巣にかかった獲物の様に。


「ぺる……?」


 貼り付け状態のティモシーに一歩近付き、パイがティモシーを覗き込む。

 パイが叩き付けられる瞬間、守りの魔法を纏ったティモシーが回り込んでパイのクッションになったのだ。リーンもルビィも間に合わなかった。ティモシーだって間に合う道理はなかった。今の状況は理屈では説明出来ない。


 ドサッ……。


 そのままティモシーは地面に吸い寄せられるように落ち、それきり動かなくなった。

 壁とパイに挟まれた衝撃のせいか、シードとの戦闘のダメージがあったのか、急に魔力を練った事で毒が巡ったのか、心当たりがあり過ぎる。


「ぺる? ぺる? ぺる~……」


 パイは決して自分からティモシーに近寄る事はなかったが、心配そうに呟きながらティモシーの頬を前足で突いている。だがティモシーは目を開けてはくれなかった。


「がはははは……!」


 まとめて仕留めたと思ったのか、かつてテオだった悪魔は感情を剥き出した。どうも殺す事が快感になるタイプらしい。


「……らしくないんじゃじゃないの? テオ」


 吐き出した血を掌で受け止め、それを見て自分の状態を理解しながらリーンは言った。どうにも立ち上がる事が出来ない。情けなく尻もちを付いたまま肩で息をする事が精一杯だ。


「私が、テオを守る」


 ルビィが震える足で立ち上がり、まさに窓から飛び降りんとしているのを見てリーンがその足首を掴む。 


「動けば動くほど毒が回る。無理するんじゃないわよ、ルビィ」


「魔王を舐めないで」


「!」


 簡単に足首を捕まえられ、それを振りほどく力もなさそうなルビィだったが、放った言葉はあまりにも強かった。


「自覚、あったんだ?」


 言いながら足首を離してやると、そこにはリーンの手形が血で描かれてしまった。


「最近、自分の置かれていた状況が分かる様になって来たの……」


「やっぱり成長が早いわね魔族は」


「でも老いは遅い」


「だったら……」


 リーンは震える手で懐から何か取り出し、それをルビィに渡しながら言った。


「活躍してちょうだいよ……」 

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