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最強女勇者と魔王城に攻め込んだらロリ魔王とロリアラクネが可愛くてそのまま魔王城でスローライフ  作者: 焼肉一番


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食糧問題と太陽問題

 翌日、やはり天気はどんよりしていて気持ちの良い朝は迎えられなかったが、早々に浴場と貯水槽作りに着手した。


 吹き出した温泉は勢いも収まり、良い感じで湧き出しているのでここから二つの設備に繋げて行くイメージだ。まずはそれぞれの受け皿として穴を掘る。それにはやはり昨日同様、パイが掘り、テオとティモシーが片付けるのが良さそうである。ルビィはパイの通訳……いや、本人曰くテオの盾なのでやはり付いて回っている。

 シュリはもう研究室に籠り、リーンと一緒に何やらやってる様だ。 

 そしてざっくりと二つの穴が出来て周りの土も片付いた頃、リーンが設計図だと言って一枚の紙を持って来た。

 なるほど、用意出来る素材は使い、その他は魔法やシュリの実験で生み出し、なかなかに立派な浴場と貯水槽を作る想定がされている。


「材木なんかはあたしが取って来るわ。粘土や煉瓦はシュリが作り出すから掘り起こした土は研究室にじゃんじゃん運ぶのよ。最低限の設備なんだからあんまり時間掛けないでよね? それから設計図通りにちゃーんと男湯と女湯を別ける事! 良いわね?」


 かなりやりがいのありそうな仕事だったが、リーンはもう一つ、テオに仕事を寄越した。


「あとテオ、あんたはこれよ」


「え?」


 差し出された物を何なのかも分からずに受け取ったが、それは袋に入った何かの種であった。


「とりあえずトマト」


「トマト……」


「食糧庫に種イモもいっぱいあるみたい。重いから自分で運んでよ。あとはあたしが材木とか持ってくる途中で何か見つけたら持ってくるわ」


「え、つまり……」


「仕事欲しがってたでしょ? 辺境の地の農家の生まれで知識もあるあんたにピッタリの仕事だと思わない? ここで自給自足して行くなら野菜の栽培は必須だからね」


「おお、出来る! 出来ます! それなら俺にも……いや、ここに居る誰よりも上手くやれますよ!」


 テオは張り切ってトマトの種をギュッと大事そうに抱えた。


「期待してるからね」


「リーンに期待されるとか初めてじゃない?! 頑張ります!」


「浴場と貯水槽作りも同じくらい大事だから並行してやってね。やる事いっぱいよ? テオ。くだらない事で悩んでる暇はないからね!」


 どこか魔王城で暮らしていくと言う決断に乗り気じゃなかったテオに、リーンは気付いていた様だ。


「……はい!」



 それからの日々は本当に充実していた。

 リーンの言った様にくだらない事を考えている暇などない。

 まずは貯水槽と浴場の設置。浴場はリーンの要望通りに石や木を使って男女で分け、それぞれに簡単な脱衣所も作った。 

 並行して作った畑にはもう様々な野菜が実っている。シュリに肥料だと言って渡された粉をふり掛けたら想定よりだいぶ成長が早かったのが気になるが……早々に食卓が豊かになったので助かった。


 パイの洋服リメイクは順調に数を増やし、今や娯楽の為のぬいぐるみなんかも作っている。

 ティモシーはパイの為に石を削り出して可愛らしい置物を作ったりしていたが、全然貰われないのでリーンの考案したボードゲームのコマになった。

 魔王城を快適にしていく毎日は刺激的で、日々もっとこの暮らしを豊かに出来ないかと考えるのも楽しい。

 そして魔王城での暮らしも一ヶ月になろうかと言う頃、とうとうリーンはシュリと共に魔瘴気内に小さな太陽を作り出したのだった。


「凄いですリーン! 最近ずっとシュリと一緒に地下に籠っていると思ったらこれを作っていたんですね!」


 魔王城の真上に子供の頭程度の大きさの球が浮かんでいる。それは明るく輝いて辺りを照らし、温めた。


「あたしの光魔法を持続出来る水晶をシュリに作ってもらったの。それを魔王城の屋根に取り付けた、同じ様に風魔法を持続出来る水晶で浮かせてるってわけ。魔法の効力は十二時間。朝あたしが補充すれば勝手に夜には消える。これで野菜ももっと大きく育つわよ」


「勇者さまがじめじめしたのが嫌いだから太陽を作るとか言い出した時はどうしようかと思ったけど……僕の天才的な頭脳と魔王城の設備でどうにかなりました」


 ルビィとパイはこれの何が有難いのかあまり分かっていない様子だったがきっとすぐに好きになるだろうとテオは思った。パイに関する事以外は無表情のティモシーでさえ少し嬉しそうな顔をしていたのだから。

 そんなある日、テオが庭先で畑を広げていると何か光る物を見付けた。

 人工太陽の光が当たってキラキラと反射していたのだ。今までだったら気付かなかっただろう。


「ブレイズオーブ……!」


 それはティモシーがパイにプレゼントしたと言うブレイズオーブだった。

 今となっては何の意味もない……それこそ宝飾品としての価値しかないアイテムだが、パイにとってはその価値もなかったらしい。

 すっぽりと手に収まるサイズのそれには首から下げられるような装飾がしてある。これはリーンの手元にあった方が良いと思ったテオは丁寧に洗って渡しに行く事にした。

 この時間ならリーンは魔王城の屋根に設置された水晶に風の魔力を補充している筈だ。光魔法の効力は十二時間であえて切らせているが、それを支える風の水晶の方は常に動かしておく為に魔力を切らせてはいけない。

 テオがリーンを探しに見張り塔を上って行くと、案の定リーンはその見張り塔から風の水晶に向かって魔力を飛ばしていた。辺りに零れた風がリーンの髪を巻き上げ不思議に舞っている。


 やっぱり綺麗だ。


 その横顔に見惚れたテオは声も掛けずにその様子を眺めていた。


「珍しく一人なの?」


 こちらを見ないままリーンにそう言われてテオはハッと息を飲む。


「あは、気付いてました? ルビィはシュリに新しい肥料を貰いに行ってくれたんだけどそのまま帰ってこないんです。シュリに研究に協力してくれって言われてたから何かしてるのかも」


「そう、そりゃシュリも色々研究したいでしょうね。あんたの言葉を使うなら特別な子、だから」


「ですね!」


 リーンが含ませた何かに気付きもせず、テオは大きく頷く。


「はぁ、で? 何か用なんじゃないの?」


 ようやくリーンがこちらを向いてくれた。促されてテオはいそいそとブレイズオーブを差し出す。


「これ……」


「あら、なくなったと思ってた」


 リーンが受け取ると、それはポッと淡い光を宿した。まるで持ち主の元へ帰れて喜んだ様に見える。

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