第二十四話 いつの間に婚約したことになってるの?
近衛兵に連れられて王城に入った優之介、斬波、レミリアの三人はそのまま謁見の間に通された。
謁見の間には既にソフィーリア、タマキ、クラウディアの異世界に来てから仲良くなった人達や、ついさっきまで行動を共にした葵達に王城で留守番をしていた市之丞と直子を加えた日本人陣営、転移直後のわずかな時間しか顔を見ていないから印象が薄いが、宰相のロウランと王国近衛騎士団長のディムルの姿もあった。
「斬波さん、俺達の席は……?」
「国王が俺らに用があってこの謁見を開いてんだから、この絨毯のど真ん中だろ」
「…………」(私場違いなような……)
少し時間が経ち、ロウランが「陛下の御成りである、静粛にせよ」と言うと、謁見の間にいる異世界出身者達は一斉に膝間付き、国王の登場を待った。レミリアも膝間付いてる。
「諸君、面を上げよ」
タイミングを見計らったように奥から国王のウェドモンドと銀髪が特徴的な初老の男性が現れた。ウェドモンドは静かに玉座に座り、膝間付いてる人達に立つよう指示をした。
全員が立って正面を向いている事を確認したウェドモンドは静かに話し始めた。
「さて、何から話したら良いものか。久しいな、召喚の儀でこの地に舞い降りたばかり以来か?」
「え、えぇっと……」「まぁ、そうなるな」
「あれ以来、そなたらの顔を見ていないと思いきや、自由にこの世界を満喫しておるようだな。まぁいい、そなたらを呼んだのは他でもない、ソフィーリアが余に対して提案した”規格”についてだ」
ウェドモンドが優之介と斬波を呼び出したのは、やはり規格についてもっと詳しく知りたかったからそうだ。ソフィーリアから説明を聞いたが発案した本人の意見も聞きたいとの事なので、今回野郎二人を謁見の間に呼び出したらしい。
斬波が代表して規格についてもう少し踏み込んだ説明をすると、ウェドモンドは「ふむ……ふむ…………」と目を閉じながら相槌をうっていた。
考えが纏まったウェドモンドはゆっくりと目を開けて言った。
「確かに一考の余地はあるな、悪くない。ベアリング、ステアリング・タイロッド、サスペンション、だったか、それらの部品が組み込まれた馬車に乗ってみたが、乗り心地は素晴らしかったぞ。王城が所有する全ての馬車にも取り付けてもらいたい程だ」
「あ、ありがとうございます」「気に入ってもらえたようだな」
今回異世界に持ち込んだアイテムは国王様に気に入ってもらえたようだ。特にベアリングに関しては追加注文がその場で発生する程だった。とりあえず量産の目処が立ち次第、出来上がった品物は優先的に王城に卸す契約をソヘル商会を代表してレミリアが結んだ。
「古い時代に重いものを運ぶ際は下に丸太を仕込んでいたらしいが、ベアリングはそれの進化版と思って良いだろう、あるのとないのでは大違いだ。是非とも王城に卸して欲しい」
ウェドモンドがそう言うと、ロウランが「おぉ~っ」と声を上げて期待の表情に満ち溢れている。国王がここまで絶賛するのだから余計なのだろう。
しかし、ウェドモンドの次の一言で謁見の間の空気はピシャリと静まり返ってしまう。
「さて、規格については前向きに考えるとして次の話に移ろう。シバ・カナイよ、そなたは我が国の近衛騎士団副団長、クラウディア・フォン・ローゼンと婚約を結んだと聞いておるが、誠か?」
「まぁ、そうなるな」
「クラウディア副団長だけではない、勇者アオイとも婚約を結んだとか?」
ウェドモンドがそう言うと斬波はチラッと葵がいる方向を見た。葵は顔を真っ赤にして俯いている様子なので、別行動している間に何らかの出来事があって、話が飛躍してしまったと察する事が出来た。
恋人関係になってからまだ間もないのに婚約とは参ったが、ここで覚悟を決めなければ男ではないと思った斬波はゆっくりと、そしてはっきりと答えた。
「……あぁ、そうだ。クラウと葵は俺の婚約者だ、恋人関係になってから日は浅いが覚悟は出来ている」
「なんと……!?」「噂程度には聞いていたが……」
斬波がそう宣言すると、ロウランとディムルがざわついた。葵とクラウディアは目頭を熱くさせている、斬波の言葉がよほど嬉しかったのだろう。
ウェドモンドは目を細めてある程度の沈黙を待ってから、再び話し始めた。
「そなたも隅に置けぬなシバよ、婚姻に関する法律において身分は問わぬし、一夫多妻も認められている。そなたとクラウディア、アオイの婚姻は法律上は問題ない」
「法律上はな」
「そう、”法律上”はな……」
ウェドモンドが「婚姻は法律上は問題ない」と口では言っているものの、本音はそうではなかった。これは斬波も理解している。なぜなら、クラウディアの両親に挨拶どころか顔合わせすらしていないからだ。日本のごくごく一般な家庭でも両家の顔合わせはするのに対し、今回は異世界とは言え貴族、しかも最上階級の公爵家が相手なのでそう言った筋は通すべきだろう。
「そのへんは理解してる。ただ、今言う事か? こういうもんは普通もっとこじんまりと話をまとめてから発表するもんじゃねぇのか? 第一、クラウの両親に挨拶すらしていねぇ」
「此度の一件は特別だ。なにせ『私の夫として相応しくない』と国中の全貴族男子を蹴散らしたクラウディアが、突然『相手を見つけた』と報告した事で、社交界は混乱の真っ只中だ。それに、余も姪の様に可愛がってきたクラウディアがやっと相手を見つけたとあらば、体が動いてしまうものよ。のぅ、ハロルド公爵」
ウェドモンドがそう言うと「ハロルド公爵」と呼ばれた銀髪が特徴的な初老の男性は、「今の私の娘があるのも陛下のお陰でございます」とだけ返した。
今までの会話の流れから察するに……。
「シバ、紹介しよう。こちらにいるのがハロルド・フォン・ローゼン公爵だ。現ローゼン公爵家当主であり、クラウディアの父だ」
「陛下の紹介に預かりました、ハロルド・フォン・ローゼンと申します。君が娘の心を射抜いた男だね? 実に良い目をしている」
ここに来てまさかまさかの彼女の父親が向こうから現れた。
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