43.泥棒の正体
昨日はログインに手間取り更新おやすみしました。無事ログインできました。
皆さまはスムーズにいけたでしょうか?
いつもお付き合いありがとうございます!
「これはクロエの部屋が映っているようだが?」
ノアの指摘通り、水晶には私の部屋のお菓子をいつも置く場所が見えるように対となる水晶を置き、そこから様子をうかがえるようにしたものだ。
空間と空間を繋げ、片方を覗き込むことによって離れていても様子がわかるようになっている。
「ええ。これなら部屋に潜まなくても、誰が何をしているか、私たちがどのタイミングで突入すればいいかわかるでしょ?」
「いつの間にこんなのを?」
「アカデミー時代に私の特有魔法の可能性を教授と話していた時に発想を得たの。まだ距離の問題も含めいろいろ不安もあるし、世の中に出すには微妙だからここだけの秘密ね」
私は時間や空間といった特殊な魔法が得意であり、教授たちの手伝いの傍ら、自分の独自の魔法の研究もしてきた。
魔力量が誇れるほどないため、魔法具や魔法装置といったものに活かせないか思いつくことから試しているうちの一つだ。
私たちの話よりも、目の前の映像が不思議なのかアリシアは興味津々に水晶を覗き込んでいる。
「クロエ、自分が何をしているのかわかっているのか?」
水晶に視線をやったノアが頭を抱えた。
「何が起こっているのかリアルタイムで見るために便利でしょ?」
「そうじゃない。これは使いようによっては……」
「うん。だから秘密」
「――わかった。この件はまた後で話そう。アリシア、クロエが言うように俺とアリシアと三人の内緒だ。秘密は守れるか?」
ぴこんと私のおでこを軽く弾くと、ノアはアリシアを見て話を切り替えた。
最近、魔法具の話をしたり、見せたりするとよくおでこを叩かれる。
驚き呆れつつ、それでも楽しそうに笑い好きなようさせてくれているので大丈夫だとは思うが、弾かれた分だけ何かが溜まっていそうでちょっと不安だ。
そっとおでこを押さえた私をアリシアはちらっと見て、それからノアに顔を向けるとこくりと頷きにこっと笑った。
「いずれ父や母には話すことにはなるが、まだ内緒だ。今は三人の秘密にしておいたほうがいい」
ノアが念押しすると、こくこくと頷く。
やはり家族であるノアの前では安心しているのか、いつもより表情は柔らかい。
「アリシアはえらいな」
くしゃくしゃとノアがアリシアの髪をかき混ぜると、そのたびに金の髪はきらきらと輝く。
微笑ましく眺めていると、水晶にお菓子を抱えたプララが映った。
「あっ、プララが入ってきたわ」
息を潜め、三人で水晶をじっと見つめる。
私のスケジュールに合わせ私が部屋に戻る前にいつもお菓子を置いてくれていたようなので、わりとすぐに動きがあるはずだ。
「出てくるかな?」
「私が部屋にいなければ出てくるはず。ただ、水晶の存在や隣に私たちの気配を感じていなければだけど」
何せ生態がよくわからない。魔力の感じ方や認識の違いがあってもおかしくない。
こそこそと会話をしていると、光の玉がふわふわと飛んでいる姿が水晶玉に映った。
「やっぱり」
「そうなるよな」
「そうでなかったほうが大問題だったけど、人騒がせよね」
私たちは顔を見合わせ、アリシアの反応を見た。
アリシアは興味津々に水晶を見つめており、光の玉が動くほうへ視線を動かした。
アリシアに光の玉が見えるらしいことは、花畑でのことは伏せ事前にノアには伝えてあるので問題ない。
「滅多に姿を見せていなかったんじゃないか?」
「ええ。月に一度姿を現して私の頭に花を飾ってはまたどこかに行っていたから、外で自由に過ごしているものだとばかり思っていたのだけど」
その花もあの花畑の花と思われ、アリシアをよく見てみるとそわそわと視線をうろつかせているので、どうやら光の玉はアリシアと一緒に遊んでいたようだ。
――別に後ろめたく思わなくてもいいのに。
私としては、光の玉がアリシアの癒やしになっていたのなら嬉しいくらいだ。
あまり見詰めすぎると勘のよいノアに何かあると気づかれるので、私は視線を戻した。
「それが違ったわけか」
「ええ。こうなってくると、なぜ私がいないときに持っていくのか気になるわ」
これもある意味自由だが、まさか私がいないときに部屋で好き勝手しているとは思わなかった。
まだ現場にいるだけで光の玉が犯人だと確定したわけではないので、私たちも水晶へと視線を戻す。
光の玉はふわふわと一直線にお菓子のかごへと向かう。期待を裏切らない。
かごの周囲をふわりふわりと飛び、少し停止した瞬間にお菓子がなくなった。
「うわっ」
「一瞬だったな」
文字通り、その場からあっという間に消えた。
消滅したのか異空間に放り込んだのかはわからないが、魔法が関連していることは確かだ。
まるまるすべてなくなったため、梱包の紙も出ず綺麗なものだ。
だがそのせいで、食べたことがバレたくなくてゴミを自分で処理しているとプララに思われていた。
堂々と食べるより、こそこそしていると思われていたことも地味にショックだったので、この件はしっかりと決着をつけたい。
「そうねぇ。これで犯人ははっきりしたし、犯人がわかった時点で私の大食い疑惑は晴れたのも喜ばしいわ」
「プララには誤解を解いたんだろ? ならもう誰も疑っていないって」
「でも、こうして犯行現場を抑えられたらより確実でしょう」
予想通り光の玉であったが、もし予想が外れていたらこの屋敷に何かしらの悪意を持った不審者が侵入していることになる。
だが、そもそも公爵家に簡単に侵入できるものではないし、実際にそういった形跡はないとのことで内部犯である可能性もあった。
どちらも最悪のケースであり、犯人が光の玉であったことはむしろ良いというか気は緩められる結果だ。
「まさか泥棒をしているとは思わなかったけれど。問題は大量のお菓子をどうしているかよ」
エネルギーとして消費されているならまだいいが、ただ盗んでいるだけならやめさせなければならない。
自由な存在とはいえ、その辺ははっきりとこちらの意思は伝えておきたい。
「直接、聞いてみるしかないな」
話がすべて通じるのかはわからないが、とにかく捕まえて伝えないと始まらない。
プララにも光の玉について話すことにして協力体制を取り、この日から光の玉捕獲作戦がスタートした。




