表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

怪物の略奪

いつも読んでいただきありがとうございます!

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。


――数日後


「高田さん、これ……タカシが命を削って書いた新作なんです。読んでください!」

 楽屋裏で、美優は祈るような気持ちで紐綴じの原稿を高田に差し出した。美優は机の上に無造作に置かれていた脚本を持ってきていたのだ。

 高田はシャンパングラスを置き、「ああ、例の素人脚本か」と鼻で笑いながら、片手で適当にそれを受け取った。美優の手前、一応目を通すだけのつもりだった。

 だが、表紙をめくり、最初の数行を読んだ瞬間。

「――――ッ!?」

 高田の身体に、凄まじい衝撃が走った。ズガガーン、と脳天を割られたかのような衝撃。

 タバコを持つ指先が、目に見えて震えだす。

(な、なんだ……これは……っ!?)

 そこに描かれていたのは、美優が信じ込んでいるような生ぬるい「純愛物語」などでは断じてなかった。人間の底知れぬ悪意、嫉妬、愛憎が、緻密かつ圧倒的な熱量でサスペンスとして構築されている。

 一文字読むごとに、心臓を直接掴まれて引きずり回されるような錯覚に陥る。プロデューサーとして数々の名作を見てきた高田だからこそ、理解できてしまった。

 これは、天才の領域すら超えた、時代をひっくり返す「怪物の脚本」だと。

「高田さん……? どう、ですか……?」

 不安そうに顔を覗き込んでくる美優に対し、高田は一瞬でプロの「邪悪な顔」に戻り、原稿をパタンと閉じた。

「あぁ、まぁ、素人の割には頑張ってるんじゃないか? プロの俺から見れば手直しが必要だが……預かっておいてやるよ」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 美優が嬉しそうに楽屋を出て行った後、高田は鍵を閉め、狂ったようにタカシの脚本を貪り読んだ。

「素晴らしい……! 素晴らしいぞ、これは……!!」

 読み終えた高田の顔は、興奮で紅潮していた。

 だが同時に、どす黒い独占欲が首をもたげる。こんな天才的な脚本を、あの一介の素人であるタカシの名前で世に出してなるものか。これは俺の、プロデューサーであるこの高田の作品として世に出すべきだ。

 高田はすぐにパソコンを開き、タカシの脚本の骨組みをなぞりながら、キャラクターの名前や設定を巧妙に変え、**「高田最高傑作の新作映画」**としてアレンジ(盗作)し始めた。タカシの血が通ったセリフを、自分の都合のいい言葉で書き換えていく。

 数時間後。データ化を終えた高田は、デスクの脇にあるゴミ箱を見つめた。

 その手には、タカシが涙と血を流しながら紡いだ、オリジナルの紐綴じ原稿がある。

「ふん……用済みだ」

 バサリ、と冷酷な音を立てて、タカシの魂の結晶は、紙クズと一緒にゴミ箱の底へと捨てられた。

 高田は誰もいない部屋で、紫煙を燻らせながら、邪悪な笑みを浮かべる。

「想像以上だよ、タカシ君。美優を寝取り、君の精神を限界まで壊したのは、大正解だったわけだ――。君が絶望すればするほど、俺に極上の果実が転がり込んでくるんだからなぁ」

 自分がタカシの才能を完全に奪い、支配したと確信する高田。

 しかし、彼はまだ知らない。

 ゴミ箱に捨てられたその「呪いの原稿」が、撮影所の暗がりのなかで、静かに次の持ち主――大女優・世奈を呼び寄せようとしていることを。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

面白かったと思っていただけたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると嬉しいです!

次回もよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ