夕闇と凪
ロバートの独白と、知られざる過去が明らかになります。
どうぞお楽しみください。
僕は、情報収集を終えた後に、サンフランシスコのベイエリアの海岸に来た。
日が沈む頃、僕は凪の音を聞いていた。橙色と黄色と緑、紺色が混じった空。その中で、凪のさざ波が聞こえてきた。
「思えば、ここ数日、不穏な噂が流れていたけれど、本当に小学校に噂なんてあるのかな。…フン、やりたいところだよ。」
でも。サンフランシスコ市民は守りたいし、愛する家族を守りたい。
「その中で、オレは…本当に人の役に立っているのかな。」
思えば、CIAの副長官や中央銀行総裁としての仕事は、本当にオレに合っているのか。オレに色々押し付けるな、と怒りたい気持ちはある。だって、もう少し経験を積んだり、あとは27歳らしい交流をしたかった。オレは政治と歴史の怪物たちに囲まれて、肩身が狭い思いをしたけれど、結局はアメリカのみならず、世界を救えていると、銀行の方の部下たちは言うけれど、そんなの現実離れしている。
「…お前は魔王を倒す勇者に選ばれた!と、賢者の爺さんがオレに行って、マスターソードを託すなんてね。そんなゲームみたいな話、信じるわけねえだろ。現実離れしているし。」
僕は砂浜に腰掛けて黄昏れていた。
夏なのか、小さな子供と親が海で水遊びしたり、サンフランシスコの男たちがサーフィンをしていた。
「―――たまには、サーフィン久しぶりにやろうかな。」
僕は、母方の祖父とともに小さい頃に、サーフィンをやって楽しんだことがある。そう思うと、僕は時にはこういう、平穏な日々もいいかなと。
さざ波の音が響く。僕は貝殻を拾った。
「私の耳は貝の殻、海の響きを楽しむ…なんかさ、これはフランスめいているな。ジャン・コクトーの詩だと言われているな。ロマン主義めいているなと思う。そういうさ、お気楽でさ、ロマンを楽しむ余裕があるものだな。」
でも、いささかこういうのもいいんじゃないかと思う。
「一人で夕方の砂浜で、黄昏れてさ、静かにしているのもいいよな。たまにはいいのかもしれないね。」
僕のスマホの通知が鳴る。
メッセージアプリに、盟主さまからメッセージが来ていた。
「親愛なるロバート、里帰りは楽しんでいるかな?私からの課題の解決がもうすぐだね。楽しみにしているかな?」
相変わらず、気味が悪い。
「うるせー、バーカ」と僕は返事した。せめて返せる言葉だ。盟主さまは確かに人を食うような態度で、オレにとってはめちゃくちゃムカつくけれど、なぜか憎めない存在だ。
「ロバート。お前が抱いている、その影なんだが、いずれかは解放しなきゃいけない存在だ。お前の影をね。…ファントム・アルというハッカーとしての顔。」
そう、オレは実は、ファントム・アルとして、ハッカーの活動をしていた。…過去の話なんだけどな。高校生、大学生の時に、面白半分でやっただけだけど。
仕事上、わきまえなくてはいけないので、あえて封印していた。あるときは、アメリカと対立する国やフロント企業のサーバーに侵入し、そこでCIAのラングレーに情報提供したことがある。それを、今回の事件に使えと?
「―――そうだ、王子。」
「そのハッキングの能力を使いなさい」
「気がついていたんでしょ、盟主さま。最初から」
「そうだよ」
僕は立ち上がって、砂浜から立ち去って、屋敷へと帰った。
また、お会いしましょう。




