未来へ
フジリナです。第三章、最終回です。
第四章の詳細な内容は、のちほどお伝えします。
僕は、教員補助の仕事を終えて、無事にカリフォルニアからニューヨークに帰還することができた。たった数ヶ月の潜入捜査だったが、いまはニューヨーク中央銀行の、総裁執務室で仕事をしている。子どもたちからのお手紙や、絵画作品は、ちゃんと書類ケースに入れてある。
「若様、任務お疲れ様でした。」とハロルド。
「どうも、ハロルド。でも、大した収穫はできなかったよ。それが、お掃除ロボットを自宅に回収して、母さんがお世話をしなきゃいけないなんて」と僕はコーヒーを飲む。「姉貴からのお叱りが来るだろうな。もっと、収穫を持ってきなさいよ!って。クローデット長官は、めちゃくちゃシゴデキなキャリアウーマンだからね。」
ジャクリーン・クローデット長官が、僕の拙い報告書を見たら、「もう少しいい報告書はないかしら?あと、お掃除ロボットを回収できたなんて言う、子供じみた作文じゃないのにしなさい!」って檄を飛ばすだろう。
「でもね、僕の母校の小学校の地下室は、後に戦争遺構として子どもたちの戦争学習のために、保存されるみたいだよ。日系アメリカ人の保護者もさ、『ナカムラ副長官が実際に子どもたちを救助したのなら、それは保存してもいい』ってさ。まあ、曾祖父さんの日記も役に立ったんだけどな。」
僕は古びたノートを丁寧に撫でた。これは後に、データベースとしてデジタルアーカイブにする予定だ。
「これはとても貴重な記憶だからね」と僕。「でもさ、もうすぐ夏だもんね」
そう、日本人にとって夏というのは、かつての戦争という過ちを見つめ直すのと、あとは戦没者を悼む季節でもあるのだ。僕は、祖母の部屋から出てきた、祖母が幼い頃に、祖師谷のひまわり畑に来た写真で、国民服を着た曾祖父の伝次郎とともに、写るセピア色の古ぼけた写真を、見つめていた。
「今は、祖母は亡くなったけど、こうやって後世に残すことはいいことだからね」と僕。
僕がふと見ると、写真の中の曾祖父の伝次郎がこっちに微笑みかけているのを見た。
「…曾祖父さん?」
日本の夏の夕方の、ひまわり畑から、ひぐらしが鳴いているのが聞こえた…。
「お盆で、お墓参りに行かないとな」
カナカナ…と、ニューヨークなのにひぐらしが鳴いている感覚がした。
◇
僕は、この事件は解決したと見なした。まだ哲人王子としての仕事が残っているが、次の事件はもっとめんどくさくなるだろう。けれど、今は休むとしよう。
ペントハウスに帰ると、盟主さまが待っている。
曾祖父の古びたノートと、思い出の写真をカバンに入れて、そのまま帰っていった…。
また、お会いしましょう。




