第76話 領地開発編 「強(したた)か」
ロザンヌと共に慌ただしい雰囲気の部屋に入る。
「待たせたか?」
「いや、丁度良いタイミングだ」
部屋に入ると皆が動きを止め俺に視線を向けてくる。
「で俺は何をすれば?」
急いできてくれと言われたので来たのだが?
「この二枚をリストに沿って複製を作って欲しい」
と二枚の紙と一枚のリストを手渡される。
「……地位の剥奪と所領の没収。こちらは降爵と天封の通知。成程、では紙とインクを」
「そちらに用意してあります」
とコンラッド側の文官が手で指し示す方を見ると、交渉用のテーブルの端に紙の束が。
確かにこれだけの枚数を短時間で複製するなら俺が適任。
「コチラをお使いください」
と別の文官が椅子を引いた。
「では早速」
直ぐに済むので椅子は不要。その場で手を翳し必要なもの全てを【収納】に入れる。
「「「…………」」」
その途端、コンラッド側の時が止まるが気にせず、取り潰す貴族とそれ以外の貴族に送る書状を「リスト」に従い【収納】を使って人数分を複写する。
「はい終了」
「「「え?」」」
【収納】から出したら驚かれた。
説明してなかったの?
もしや能力を見せつけるため、ワザと言わなかった?
エステリーナを見たが俺に背を向けて団長やロザンヌと打ち合わせ中。なのでシーラを見ると……ニコッと反応しただけ。
「では俺はこれで」
「あ、はい。ありがとうございます」
それにノイエン伯自ら署名と印を押していく。
コンラッド国の王として、最後となる封蝋をしてから配下の文官に手渡すと、受け取った文官は部屋から足早に出て行った。それを見送ると徐に王冠を頭から外した。
でも聞き分けの悪いヤツもいるだろうに。そんな奴らにはどう対処するんだろうか?
〈クズに加担した貴族のところにはマトモな兵は残っていないのよ〉
〈先の戦いに自領の兵まで注ぎ込んでたのか?〉
〈そう。逆にクズと距離を置いていた貴族は主力を温存しているの。数は少ないけどね〉
〈そちらは大丈夫なのか?〉
〈大丈夫って? いったい誰の心配をしてるの?〉
そりゃ……って確かにパイモンの言う通り。この地は既にアラナート王国。王への反抗は謀反であり剣を抜いた瞬間、内乱認定される。
内乱であれば騎士団の出番。責任感が人一倍強いエステリーナは自ら兵を率いて対応するだろう。
だが俺としては人同士の争いに参加させたくない。ならば知られる前に広域気配探知を使える俺が一人で潰せばいい。……ってことは?
〈……俺?〉
〈はいはい〉
呆れられた。
パイモンによればノイエン伯は愚王の子とは思えないくらいに有能だから任せても問題ないよと。
ここで団長達やロザンヌと小声で何やら話していたエステリーナが会話を終える。それに合わせてシーラが立ち上がると二人揃って俺に寄ってきた。
一方のロザンヌはノイエン伯に向き直ると声を掛ける。
「では建て替え作業に移るので城外へ出ましょう」
「え? は、はい?」
「時間はかかりません」
「はあ」
「待ち時間を活用し、今後の打ち合わせを行います」
「は、はい」
半ば強引にノイエン伯らを連れ出した。
「後は任せる」
「「「了解です」」」
最後にエステリーナが団長らに声を掛けるとロザンヌらの後に続く。
そしてこの場には俺とエステリーナとシーラだけが残った。
「山水、どうだ?」
「ああ、順調に退避中」
この部屋に到着する前に「今日中に建て替えを行う可能性がある」とロザンヌから聞かされていた。
ロザンヌはその可能性を考慮し、騎士団を使って人や馬らを城の敷地外に追いやっている。
「ノイエン伯には説明していなかったのか?」
「土地の接収と建て替えは言っておいた」
「……方法は?」
「していない、というか見れば分かるから言わなかった」
最後は目を逸らして答えていた。
あー違ったか。
これは単に説明するのが面倒くさいだけで能力を見せつけるといった意図ではないな。
「フフフ、では移動します」
とシーラが歌うように詠唱を開始。数秒後に俺達三人は城全体が見渡せる上空に転移。その場で下方を見下ろしながら宙に漂う。
「何度も体験してるが未だに慣れないな」
転移魔法の事ではない。宙に浮く浮遊魔法に。
「そうか? 私はもう慣れたが」
幼い頃から魔法という超常現象に慣れ親しんでいたから抵抗がないのだろ。
これが移動しているのであれば然程気にはならないが、水中に漂っているのとは違った平衡感覚と地に足がついていない感覚には、多分一生慣れることはないだろう。
「フフフ、術が切れることはありませんのでご安心ください」
「と言ってもな」
高所が嫌いという訳ではないが、この高さは流石に身が竦む。
「なら私が抱えましょうか?」
と両手を俺に向け差し出してくる。
「い、いや我慢する」
それはもっと怖い……じゃなくて地上は約1kmと遥か下。余程目が良くない限り俺達を見つけるのは不可能な距離にいるが、前回の反省から話のネタにされるような行為は控えるように心掛けている。
「我慢は身体によくありませんよ。ささ、遠慮なさらずに」
前回の「アレ」はエステリーナらにまんまと嵌められた。シーラはあんな事はしない……と思うし、これから起こることを考えれば俺達に気付く者はいないだろうと思うが念の為。
「シーラ」
「リナ様に怒られちゃいました」
テヘと舌を見せてから引き下がるのを見て、不貞腐れずに済んだと安堵する。
そうこうしている間に最後の一人が門の外へ。
「ではサッサと済まそう。まず俺から」
と左手を城に向け翳す。
城壁及びその内側にあった全ての建造物、さらに地表から下方10mまでの土岩も丸々【収納】に入れて、一旦更地にする。
「何もないと広いな」
「はい」
一応、国の方針としてアラナート城以外の城は建ててはならないと言う決まりがあるらしい。なので即刻取り壊し。
「え──と井戸は全部で八箇所か」
ゆっくりと降下しながら数を数える。
いずれは上下水道を整備していくことになるだろうが、いつ導入するかはその土地を管理している領主が決める。
実際、その分野では最も進んでいるアラナート王国でも人口密度が低い地域では昔ながら井戸を使ってたりする。
なので今は現状は変えずに進める。
井戸以外の元々存在していた地下空間は備蓄している岩石などを詰め込み整地は終了。
次に井戸を起点に【収納】に大量に保管している岩石を使い土台と地下室を作る。
そして城を構成していた資材を使い、ノイエン伯の理想に沿った領主の館(地上二階建て/本邸)と必要と思われる建物や設備、更に働いていた者らの宿舎も組み上げていく。
勿論調度品も再配置。置ききれなかった備品や私物は分別してそれぞれの地下の倉庫へ。
最後に広大な庭には適度な間隔で樹木を植え直す。
「シーラ、仕上げを」
「お任せを」
詠唱を終えると高さ1m程の「真木」そっくりな木が外周に沿って生えてきた。
アラナート王国やパルミラル王国の貴族の邸宅では、岩やブロックといったモノで物理的に侵入を阻止するよう防壁を使わない代わりに柵などを使う。
これは平和な国ならではの習慣であり、今まで強固な防壁の中で育った者には不安に思うだろう。
「よし、次は騎士団用駐屯地か」
残りの半分の敷地に手を向ける。隣に騎士団の兵舎があれば少しは気が休まる……かもしれない。
でコチラは設備の仕様を本国の団舎と統一させるので多少時間が掛かる。
「位置は?」
「門側に寄せて欲しい」
「なら先ずは塀から造ろう」
軍事施設という都合上、外からは覗けない高さの岩塀で外周を囲む。
それを終えてから井戸が無い場所である程度の広さがある場所にノイエン伯邸と同じく地下室を造る。
「次は飲み水っと」
既存の井戸に【収納】から直接配管を設置。そのまま管を伸ばしてゆき、その先に魔道製ポンプと貯水タンクを置いて繋げる。
この辺りは大使館で経験済みなのでテンポ良く進める。
「今度は下水」
ここからはシルヴィア任せ。
敷地の端まで地中配管を伸ばし、そこに小型の循環式の浄化設備を設置していく。
これは城下町に下水が完備されるまでの一時的な処置でいずれは不要になるだろう。
因みにノイエン伯の邸宅の下水(特にトイレ)だが、失業者が出ても困るので敢えて変えずに昔ながらにしておいた。
「シーラ、いいぞ」
「では流します」
各タンクや浄化槽を井戸水だけで満たすにはかなり時間が掛かる。なので今回に限り水を魔法で生み出して溜めてもらう。
それらを終えたら城を構成していた材料と【収納】に入れてある在庫を使い、凹形宿舎および付随施設や設備をササっと組み上げ各配管を繋いで完成。
「よし、では降りよう」
隣の邸宅ではロザンヌ主導で数百人単位の大移動が始まっていた。
それを横目に転移魔法を使って(上空から見て)コの字型をした巨大な兵舎の正面入口の先にある防壁の切れ目の前へ移動する。
「最後に門を置いて」
鉄製の両開き門を設置。
「では皆を呼んできてくれ!」
「了解です!」
門から30m程離れた外側で待機していた騎士団員の一人が本隊に向け馬を飛ばす。
残りの団員は門の守備に就いた。
「では今の内に内装を整えておこう」
ここから先は流れ仕事。基本的には本国と共通の仕様となるので悩まなくて済む。
先ずは必須である馬房やら軍事物資兼装備品保管室、及び魔鉱石を含めた各倉庫に向かい、あらかじめ持ってきていた物で中身に整える。
次は兵舎。
地下はトレーニングスペース。筋トレは勿論剣を振り回せるだけの広さと高さを確保してある。
1階は共用スペース。食堂、調理場、トイレ・大浴場(男女別)、談話室等。さらに今後ここで働く者の居住部屋。
外の給排水設備と繋いだ後にお湯を張り循環させておく。
2階は騎士団員専用の宿泊部屋。団長は個室で正騎士は二人部屋。準騎士や見習いは四人部屋で最大三団隊まで。
一部屋ずつ回り【収納】に入れておいた騎士団員らの私物を置いてゆく。
3階は貴賓室として両翼に四部屋ずつの計八部屋。王族や貴族の利用を想定した造りで広々としており、各部屋にはトイレ・浴室を完備。
中央には壁を取り払った開放型の歓談デッキスペースを門の反対側にある内庭方向に設けた。
今回、国軍ではなく騎士団を連れてきた理由は以下の通り。
先の戦闘終結後「攻め入るべきでは?」との意見も出たが、未知の領域に進入しいつ襲ってくるか分からない脅威を退けながら広大な土地と制圧占領を行うのは、それに見合った数の兵を擁する国軍の役割。
なのだが将軍は戦死しており本営も混乱していたのと、大量の捕虜の管理に手を取られ攻め入るどころではなかった。
なのでその時点では先ずは立て直しを図り、それが終わり次第反攻に出る方向で話がまとまった。
そんな矢先、敵国の使者が唐突に関所現れ停戦及び無条件降伏を申し出てきた。その報を聞き俺が直接関所に出向いて「諸々の調査」を行った結果、降伏の意志と敵国内にマトモな兵が残っていないのが確定する。
ならばと調整を進めた結果、新たなコンラッド王の意向で国民に敗戦を知らしめる為、コンラッド城に出向いて調印を行うこととなった。
ここでエステリーナに出番が回ってきた。
彼女はコンラッド国民の間でも「名君」として知られている。その名君が国軍ではなく騎士団を連れてきたら国民も受け入れてくれるだろう。
指名を受けたエステリーナは「山水も行くなら」と二つ返事で了承したがエルアノームは猛反対。二人の間で喧嘩が始まる。
『降伏は事実でも敗戦を受け入れられない奴らが玉砕覚悟で反抗してくる事態も考えられる。その場合は俺とエステリーナは兎も角、団員らが無傷で帰国するのは難しい』
『ならば突破力には優れているが防衛面で難のある第二を除いた第三、第四・第五の騎士団と「集団転移魔法」が使えるシーラも連れていけばよい』
シーラはシーラで『旦那様が行くのならどこまでもついて行きます』と。
そういう訳で先行して騎士団の拠点を俺が造り、国軍の拠点が出来上がり次第維持管理要員を残して撤収する。
なので俺達は数日間はここに滞在しなければならないので急いで造ったのだ。
「後は明日にしてシーラ、出掛けるぞ」
三階の中央部の開放デッキに出るとエステリーナが俺に向け言ってくる。
「どちらへ?」
その言葉に俺よりも先にシーラが尋ねた。
「今のうちにこの地の状況を見ておきたい」
「え──と、分かりました」
今日中に上空から旧コンラッド国土の地理を把握しておきたいらしい。
まあ二人は役目を終えたし、今はハッキリ言えば暇なのだ。代わりにロザンヌの仕事が激増したが。
「山水、日が落ちるまでには戻る」
「俺は?」
「お前がいないとロザンヌや団長らと連絡が取れなくなる」
「…………」
確かに。今は、いや国軍が到着するまでは、チート持ちが揃って出掛けるのは良くないか。
「昼食は?」
「適当にとる」
適当って……。なんか「早く行きたい的」な雰囲気?
エルアノームと喧嘩した時もそうだが、最近のエステリーナは自分の意見を曲げなくなった。いやそうではなくハッキリと自分の思いを主張をするようになった。
それはシーラやエルアノーム、さらにはルーシアも同じで、言葉だけでなく態度でも表すようになった。
なのでこれ以上は何を言っても無駄だと悟る。
「分かった。エルは?」
「私たちが戻ってからにしてくれ」
「はいはい。でもルーシアは呼んどかないと」
「当然。優秀なメイドには来てもらわないと困る」
と端的に答えるとシーラに向き直り「では頼む」と。
「はい」
詠唱を始めたシーラと手を繋ぐ。すると二人の身体が淡く光り出した。
そして少々長めの詠唱が終わる。
「シーラ、頼むぞ」
「お任せ下さい。夕方までには戻ります」
そう答えると二人の身体が宙に浮く。
「二人とも気を付けて」
飛び去る二人に手を振ると二人も手を振ってくれた。
見えなくなったところで銀の指輪を使ってルーシアに呼びかける。
──ルーシア。
──……おや? 旦那様、如何なさいましたか?
在パルミラル大使館にいるルーシアに状況を説明する。
この兵舎は出来立てのホヤホヤで初めから全てが揃っているが、それを維持管理する者はまだいない。なので炊事から洗濯・掃除に至るまで自分達でやることになる。
そんな理由からルーシアに声を掛けた。
──成程。状況は理解しました。準備が整い次第、そちらに向かいます。
──頼む。
そこで会話を終えると一旦門まで戻り警備に当たる団員にその旨を伝えた。
「了解です! 団長に伝えておきます」
王都の騎士団舎の設備と同じにしておいたので使い方が分からないということもないだろう。
なので「今晩だけは三階のことは気にせず休息を取るように」と最後に付け加えておく。
「宜しいので?」
「構わない」
明日にはロザンヌが現地で確保した従業員が配置される。なので今晩さえ凌げればいい。
そう答え、再度三階へ戻る。
「お待たせしました」
「ひょ、ひゃい⁈」
突然後から女の声が。不意を突かれて素っ頓狂な声を上げてしまう。
振り向けばそこにはいつも通りの澄まし顔で、本人専用に新しくデザインしたライトブルー色のメイド服と純白なエプロンを着たルーシアが立っていた。
金の指輪も同じだが、同じ色の指輪を装着した者の所になら魔力を消費せずに行けれる転移魔法が付与されている。早速その機能を使って来てくれたのだ。
「俺達の滞在中は二階から下は騎士団に。三階はルーシアに任せる」
「わたくしは三階エリアだけで?」
「今晩は。明日以降はロザンヌと打合せてくれ」
明日には三階も含めた全館に人が配置されるだろう。
「多分それらの教育と指導を任されると思う」
「成程」
「そこで、だ。有望なヤツがいたらリナに言ってくれ」
面談した後、侯爵領で一括して雇うから。
「では?」
「ああ、その一部は将来的にはルーシアの部下にする。相性も見極めた上で選んでくれ」
「委細、承知しました」
まだ内々の話で口外は出来ないが、どうやら俺は独立し領地を与えられるらしい。その時までに「山水家」を興すことになるがルーシアには家全般の管理をしてもらうつもりでいる。
勿論、シーラも含めて二人にはやんわりとその辺りの事情は伝えておいた。
「では早速設備の確認を」
俺の手を掴むと強引に室内へ。
「ち、ちょっと待て!」
「いいえ、待ちません」
と物凄い力で引きずられながら寝室へ連行された。
「……ふふ。ベッドに不備はなさそうですね」
「同じ仕様なんだから差はないだろうに」
「格闘」に限ればルーシアの独壇場。殴る蹴るだけでなく、シメる絡める羽交い締めと攻撃の手段は多彩で豊富。俺のステータスでは掴まれた時点で勝ち目が無くなる。
なのでルーシアから「返し技」を習いはじめたが……全く通じなかった。勝てる
「次は浴槽を」
と裸のまま抱えられ連行されると今度は身体の隅々まで洗われた。
「二人で入っても余裕の広さ。造りもしっかりしており多少騒いでも……」
「…………」
何やらブツブツと呟きながら俺をチラ見している。なので視線を合わせないように顔を背けた。
つい先日まで生娘で大使館で会う時も受け身であったルーシア。だがここにきてこの変わりように違和感を覚えた。
何かあったのかな? と心配になりチラ見してしまう。
するとバッチリと視線が合ってしまい……そのまま第二ラウンドに強硬突入。
「も、もう勘弁してくれ」
これじゃ体が持たない。
全く、エステリーナもそうだがこの世界の女は一旦スイッチが入ると見境が無くなるんだよな。
「旦那様が悪いんですよ」
「お、俺?」
エルフの時のルーシアは感情はあまり表に出さない。
感情を出さない=「気のコントロール」が出来ているので、怒っているのかそうでないのか今一分からない。なので今はなされるがまま服を着させられている。
(因みに「夫婦の営み」に限らず、普段から妻の「気を読む」のはマナー違反だとシルヴィアから警告を受けている)
「そうです」
なにかした? 記憶にないんだが?
「思い当たる節がない?」
「ごめんなさい。今後は注意します」
取り敢えず謝っておく。
「分かりました、今回は許します。ですが今後、新妻を放置するような真似をしたら許しませんから」
新妻? 放置?
お、連れてこなかったことに腹を立てていたのか。
「スマン。俺が悪かった」
そんなことにも気付かずに淋しい思いをさせてしまった。
申し訳ないという気持ちと謝罪の意味を込めて抱きしめる。
「だ、旦那様?」
珍しく? 動揺したのか尖った耳が赤くなっている。
その時、制御されていたルーシアの「気」に乱れが生じ、感情が伝わってくる。
普段の雰囲気とはかけ離れた初心な感情に身体が勝手に反応してしまう。
「…………」
「…………旦那様?」
素知らぬ顔で通そうとしたが……見抜かれてしまう。
「そういうことでしたら本来は今日はわたくしの日。なので満足いくまでとことんお付き合いいたします」
「……誰が満足いくまで?」
「ふふふ」
言葉通りの声と初めて見る「したり顔」でそう言われた。
*諸々の調査・・気配探知とシルヴィアの「心層鑑定」
もう少しで戦後処理を終え帰国します。




