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第62話 スキル

あと3万字切りました

ザームの件はあと1〜2話。

 

「まだ分かんねえのか! 要は俺もお前もここで消される運命なんだよ!」


 不快を隠そうともせずに吐き捨てると更に上昇、気力と魔力を高めながら詠唱(小声で何か)を呟く。


 ……この気配はあの時と同じ、いやそれ以上!


 関所の森を抜ける際に受けた広域殲滅系の魔法を思い出す。


 ……アレは不味い!


 あの術をマトモに喰らったら俺では骨も残らないだろう。なので回避行動に移るべきなのだが……後方にはルーシアがいる。


「ルーシア逃げろ!!」


 声は届いたらしくこちらから離れるように回避行動に移った。だが、


 ……あの速度では間に合わない。


 ルーシアなら奴が発動しようとしている魔法のヤバさは見ただけで分かる。躊躇わずに逃走を図っているところを見るに対抗する術もないのだろう。


 やられる前にやる。全てを失う前に。


 ……スマン、シーラ。


 覚悟を決め型に入ると奴の首に狙いを定め居合抜きをはな……




 なりません山水様!




「!!」


 初めて見るシルヴィアの悲痛な表情と叫び声が()()()()()()。そのせいで僅かに(りき)み軌道にズレが生じる。

 薄くて鋭い、何もかもを斬り裂く斬撃は狙いであった「ザームの首」ではなく頬を掠めた。


 対して発動寸前であった奴の魔術も居合抜き同様に止まらない。

 俺は刀を抜かないだろうと高を括っていたのか、こちら以上に動揺した奴は術を保てなくなったらしく、太陽のように光り輝いていた赤い球体が崩壊。真下にいた奴を飲み込んでから四方へと飛散した。


 その一つ、自分に被害をもたらしそうなモノだけを斬撃で相殺する。だが他の者には防ぐ手段がない。


「に、逃げろ──!」

「ギャ──」

「あ、熱い!!」


 一瞬で視界に入る全てか赤く染まった。そこらじゅうで立ち昇る火柱と人の背丈の倍の高さの炎の大波が暴れ回りながらそこにいた全てを分け隔てなく飲み込んでゆく。


 ……炎が!


 コチラにも迫りくるが予想に反して炎の波は直ぐ消え元の暗闇が復活する。

 そこで周囲を見回す。すると正面には奴と思しき黒い塊が一つ。それ以外、見える範囲には「何も」残っていなかった。


 ……あっ、ルーシア!


 気配を探る。すると()()()()にいた。


 ……不味い!


 巻き込まれたらしく気がみるみる弱まっていく。このままでは長くは持たない。それを知って血の気が引く。


「クソ!」


 全速力で駆け寄り真っ黒に炭化した上半身を起こす。


「クッ……」


 全身酷い火傷。衣服どころか美しかった姿の面影は何処にも残っていなかった。


「そ、そうだ回復を」


【収納】に入っていたポーションを取り出すが動揺しているせいか落として容器を割ってしまう。


「はあはあ、クソ!」


 震える手を握りしめ拳を地面に叩き込む。


「良し!」


 再度取り出し今度はしっかりと持ちながら蓋を外し半分ほどルーシアの身体にふり掛けてみる。

 だが効果が無いのか変化は見られない。


「く、口からでないとダメなのか? そもそもポーション(コレ)じゃ効かないレベルなのか?」


 飲み口を添えてみるが意識が無いせいか口を開かない。


「迷っている場合か!」


 俺の知る限りポーションは全て口から取り込んでいた。なので口から体内に入れると効果が発揮されるのだけは間違いない。


 ただ取り込んだからと言って効果があるとは限らない。傷の状態によっては「焼け石に水」なこともあり得る。


 今【収納】に入っている中で最上級の回復薬は【エリクサー】だが、エルアノームが乱用したせいで王国の在庫は尽きていた。なので有事を心配したロザンヌにより俺が持っていたエリクサーは全て没収されたが「エステリーナのため」にと貰った1本のみ。


 その一本を取り出し口に含むとそのままルーシアの炭化した口に添える。舌でザラザラした唇を無理やりこじ開け流し込む。



 ……頼む! 飲んでくれ!



 ゴクリ



 一口分、飲む感触が唇を伝わってくる。


 すると炭化した皮膚の隙間から光が漏れだす。


 ……良し効いた!


 明らかな変化が見られたのでそのまま強引に流し込む。すると間を置き、二口、三口と飲んでくれた。


 ……そうだ! その調子で飲むんだ!


 効果があったらしく炭化していた身体は光を発しながら元のエルフの身体と肌へと変化を始める。

 一旦口を離し再度ポーションを口に含んでから同じ事を繰り返し、無くなるころには元の身体に戻っていた。

 そしてゆっくり瞼か開かれると視線が合う。


「…………」

「…………」


 ごっくん ×2


 口の中に残っていた僅かなエリクサーを同じタイミングでお互い飲み干す。

 直後、ルーシアが俺の手首を有無を言わさず掴むと自分の胸に持っていき俺の掌を押し付けてた。

 突然の不可解な行動に顔を離す。すると、


「山水様」


 息が間近に感じられる距離でそっと名を呼ぶ。


「は、はい?」

「我慢できなかったの?」

「へ? なにが?」

「初めてはベットで、と思っていたのに」

「はい?」


 そういえば今のルーシアは素っ裸。しかも恋人以上の関係の者同士がするような口付けまでしていた。


「い、いや違うんだ」



「純潔の乙女の唇を奪った上に胸まで鷲掴みしておきながら何が違うっていうんだ、山水君?」



「へ?」


 耳元から聞き覚えのある声が。


「や、ヤーム⁈ いつここに?」

「今来たところ」


 振り向くと真後ろで覗き込んでいた。


「って気付かなかったのかい?」

「うっ」


 その言葉を聞いて一気に冷める。

 確かに気付けなかった。それくらい動揺していた。これは戦場においては致命的な油断に繋がる。


「それよりこの状況は……そういうことで良いのかな?」


「へ?」


 そういうことって?


「遊び、じゃないよね?」

「へ?」

「なら()()()()()()()るよね?」


「いや誤解だ!」


 と()()()()()()


「ルーシア」

「はい」

「国王として許可する。君は現時点を以て山水君の(モノ)となった」

「ありがとうございます♡」


 何の許可だ? いや何だこのやり取りは? まさかの「ぐる」か?


「なーに大丈夫だって」

「何がだ?」

(めかけ)は妻扱いにはならないから」


 同じこと言ってやがる。


「で状況は?」

「芳しくありません」


 モゾモゾと動く黒い塊を見て「みたいだね」と。


「で山水君」

「なんだ?」

「このままでは埒が明かない、いや勝てない。理由は分かるね?」

「ああ」

「ではもう一つヒントをあげよう」


 言えるならまとめて言えって!


「先ず今の我が子の状態は?」

「奴に乗っ取られている」

「他には?」

「ルーナの力を」

「そう二十年以上前、()()()()()()()()()()

「らしいな」

「うん」


 奪った。



 〈今日の分は使い果たしている〉



 ……そういえばザームの基本魔力量では賄えない程の魔力はどうやって「回復」してるんだ?


 あの時は何を言っているのか分からなかった。

 ザームの魔力があろうが無かろうがルーナの力、正確にはルーナの魔力が使えるのだから大勢に影響はない。だからこそ転移による逃走を恐れて遠回りして近付いた。


 ……その肝心の魔力はどのような手段で回復、いや補充しているんだ?


 考えてみれば本体はまだダンジョン内にいる。


<第二階位が邪魔をしている>


 何のために?

 もしや魔力だけを奪い続けている?

 それを魔族が邪魔をしている?


 だとしたら何らかの形で今でも繋がっている。


「……何かに気付いたようだね」

「かもしれん」

「なら後は君次第」

「俺次第?」


「ああ。実は既にこの事態を打開する(すべ)を君はもっている」


「…………」


「後は君が気付くだけ。それに気付けてさえいればルーシアの魔の手から逃れ」


「陛下?」


いつの間にか元のメイド服と装備を身に付けていたルーシアの冷めた声。


「い、いやルーシアおめでとう。君は()()()()()()んだ、もう何も言うまい」


「はい、お約束通り好きにさせてい貰います♡」


艶やかな笑みを返した。


「……(すべ)か」


「そう。君にしか   し、君なら     はず」


 ? 所々、言葉が途切れた?

 そうか、これが呪いの影響か。


 俺の主な能力(スキル)は【居合抜き】【万感】【威圧】くらいで武器もシルヴィアが【虚無の間】で作ってくれた刀のみ。


<今後を考えて>


「万感か」


 これしかない。


 立ち上がると奴に向き直る。

 まだ蹲っているが身体はほぼ完治している。


「…………」


 薄暗い中、集中して目を凝らすと「何かの新たなスキル」を覚えた気がした。


「…………アレか」


 首の後ろ辺りからうっすらと線のようなモヤが見えた。


まさかの「ぐる」か?・・山水君、運命なので諦めて下さい(「妾」とうい立場なので表だった公表はしません/現代感覚でのツッコミはなさらぬように)


 因みにルーシアは第三章以降の「ナート家」での重要度は格段に高くなる予定。



*今後も作中で個々の性格についての具体的な説明を入れることはないと思うので*


ルーシア・・ここまでに登場した女性陣の中で一番の危険人物で「表向きは真面目で誠実で仕事も護衛も完ぺきにこなせる超優秀な美人メイド。その反面、己の欲望が絡むと・・」と少々取扱注意な人です。それを知っているのはヤーム夫妻、そして一番の「被害者」であるシーラの三名のみ。

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