夏の一場面
「つっめたーい♪」
場所は屋台通り、休憩スペース
そこでは、ビニールプールが並べられ、初等部から高等部までが各々水遊びに興じていた。
ただ、初等部は学校指定の水着を着ていて、中等部以上は濡れてもいいような格好。
「いやー、あっついあっつい」
その中で裕樹は、短パンTシャツサンダル、そして裕樹の電子召喚獣カグツチのイメージカラー、赤と黒がメインのスポーツサングラスを描けた格好で、コーラのペットボトルとホースを手に1つのビニールプールの監視員
「…………ぷか……ぷか……♪」
「うん、ぷかぷか気持ちいいね。それでアサヒちゃん、眠たくない?」
「…………(うとうと)……ねむ……」
「って、言ってる側から!?」
浮き輪で水に浮かぶ感覚を楽しんでるアサヒに、それに付き添ってる裕香がアサヒのアサヒのおねむに慌ててる。
ちなみに2人とも、カグツチカラーのスポーツサングラスをかけてて、お揃いだと喜んだのがつい先程。
アサヒを拭いてやり、タオルをかけた休憩ベンチに寝かせ、パラソルをさしてやる。
それらが終わると、心地良さそうな表情でアサヒは寝息をたて始めた。
「…………zzz」
「最近のアサヒちゃん、最初みたいな怯えたような寝顔じゃなくなったね」
「だな、こういうのって進捗がよくわからんから、こういう実感できる要素は助かる」
「こういうのって、やっぱり嬉しいよね」
「何が嬉しいんだ?」
そんな事をアサヒの寝顔を見て話してる兄妹の後ろから、裕樹と同じ用な格好にホースと水の入ったペットボトルを手にしてる龍星。
そして、先程まで冷たいものを配ってただろう、水着ほど露出はないが普段よりも薄着なつぐみ、みなもが駆け寄ってきた。
「最近のアサヒちゃん、警戒心が薄れてる感じがしてるから」
「最初の頃は、家でもこんな表情で寝る事ってなかったからな」
「言われてみれば、屋台通りで寝てるときはいつも怯えていたな」
「朝霧先輩におんぶしてもらって寝てるときなんか、はっきりとわかる位だからね」
「確かにこう言うのって、うれしいですね」
なんて話してると……
「皆さん、何を話してるんですか?」
濡れてもいい格好、にも拘らず周囲に比べればビシッと決まった印象が強い、黛蓮華……もとい、クロがやってきた。
「お前も真面目だなあ。さっきからずっと模範的な監視員じゃないか、黛……」
「ですから、今はクロとお呼びくださいと言ってるでしょう」
「ああっ、悪い。じゃあクロ、あんたも少しは羽目を外したってバチは当たらねーぜ?」
「性分ですのでご心配なく、それに休憩と水分補給はきっちりとっています」
と言って、周囲の監視員へと戻っていった。
「すごいなあ、ああいうのを自立した女性って言うんだろうね」
「カッコいいですね、憧れちゃいます」
つぐみ、みなもに限らず、周囲の女性のほぼ全員が、クロに向けて羨望の視線を向けていた。
「流石、世界規模の財閥総帥令嬢の付き人。そうなるべく育てられただけあって。品格も立ち振舞いも大違いだ」
「その肩書きがないってのに、それでもってやつかね……内心不安でたまらないだろうに」
「で、足取りは掴めたのか?」
「うまく隠してるみたいで、まだ掴めてない。まああいつ相手に顔に傷をつけ、家宝を奪うようなのが簡単に掴ませると思うか?」
「違いない」
「ま、今は釣糸を垂らす時間さ。さて……何か食う? 屋台通りで一通り買ってきてるから」
夏の屋台通りは、今日も平和だった




