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マッチ売りの少女、前世の記憶を取り戻す  作者: 佐藤謙羊


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15/19

15 神族の儀式

 儀式にあたり、ルシファー様にはロングソードにレザーアーマーという装備を選んだ。

 剣以外の装備の選択は自由なので、大きな盾を持ったり重い鎧を着込んだりする神族もいる。


 しかしルシファー様には鬼ごっこで培った素早さがあるので、その武器を殺さない軽装がベストだと判断。

 それに相手が20匹ものゴブリンとなると、スタミナとフットワークも要求されるはずだ。


 そして同行者であるわたしは普段着での参戦だったんだけど、顔がわからないよう頭巾を深くかぶっていた。

 女は剣を持ってはいけないので、サブウエポンとして木刀を腰にさしている。


 肝心の、メインウェポンはというと……。


「それではこれより、ルシファー・フリントロックの『神族の儀式』を開始する!」


 審判席にいたハンドラー様が立ち上がり、闘技場じゅうに響くほどの大きな声を張り上げていた。


「今回、2年ほど遅れての挑戦ということもあり、通常の儀式よりも難度を高くしてある! しかし、神族であれば難なく乗り越えられるものだ! 挑戦者ルシファーよ! 貯えたその力、いまこそぞんぶんに民に見せつけるがいい!」


 わざとらしい……!

 14歳の子供にゴブリン20匹をけしかけようとしてるくせに……!


「それでは……はじめーっ!!」


 号令とともに鳴り渡るラッパ。

 それらを合図として鉄格子が開き、ゴブリンたちが大挙としてなだれ込んできた。

 客席から「うおおーっ!?」と驚きの声がおこる。


「なんだ、いつもはゴブリン1匹なのに、メチャクチャいるじゃねぇか!」


「ひーふーみー……20匹はいるぞ!?」


「すげぇ、これだけのゴブリンを相手にどうやって戦うつもりだ!?」


「きっと、ビビって腰を抜かしているに違いないぜ!」


 実をいうと、わたしもそれを心配していた。

 儀式とはいえ、ルシファー様は今回が初めての実戦。

 しかもモンスター相手となると、迫力に押されて戦意を喪失してしまうかもしれない。


 しかしそれは杞憂だった。


「いくよ、セリージャさん!」


 ルシファー様はわたしを引っ張るくらいの勢いで、ゴブリン軍団めがけて走りだす。

 ……よかった。ちょっと緊張している感じはあるけど、率先して動けるなら大丈夫なはずだ。


「はいっ!」


 わたしも返事とともに後に続く。

 走りながら狙いを定めるように、秘密兵器を構えた。


 わたしの秘密兵器は、竹で作った水鉄砲。

 自転車の携帯型の空気入れのような形状をしており、水平に構えてハンドルを動かすと、先っちょの穴から勢いよく水が飛び出す仕組みだ。

 水鉄砲は背中のタルとチューブで繋がっているので、そう簡単には弾切れしない。


 ゴブリンたちを射程距離に捉えたわたしは、ハンドルを高速でポンピングして水鉄砲を連射する。

 レーザーのように放出された水が、ゴブリンの先頭集団の目にヒット、それだけでゴブリンたちはのけぞっていた。


「ギャーッ!?」


 被弾したゴブリンは目が開けていられなくなり、足元の石に躓いてしまう。

 ひとり倒れたが最後、後続も巻き込まれるようにして倒れていく。

 ルシファー様がゴブリンの元にたどり着く頃には、みんな倒れていた。


「せいっ! やっ! えいっ! それっ! どうだっ!」


 無防備を体現するかのようなゴブリンたちの背中めがけて、次々と剣を突き立てていくルシファー様。

 戦いが始まっていきなり、5匹のゴブリンを仕留めた。


 そうしてようやく立ち上がるゴブリンたち。

 一気に15匹まで減らせたが、ボーナスタイムはここまでだろう。

 あとは、地道に1匹ずつ減らしていくしかない。


 わたしは立ち上がったゴブリンから順番に、目に向かって水鉄砲を浴びせる。

 視力が回復したばかりのゴブリンたちは、またしても目潰しをくらって右往左往。


 観客たちはきっと、ゴブリン側の一方的な戦いを想像していたのであろう。

 しかし始まってみれば真逆の展開に、誰もが唖然としていた。


「な……なんだありゃ!? 女は水をひっかけてるだけなのに、なんでゴブリンたちはあんなにいいようにやられてるんだ!?」


「あっ、また1匹やられた! これで7匹目だ!」


「くそっ……どうなってんだ!? あの女、いったいなにをやってるんだ!?」


 わたしが水鉄砲から発射しているのはただの水じゃなくて、レモン果汁が含まれたもの。

 だから目に当たると悶絶するほどに痛いんだ。


 それをしつこく浴びせるものだから、ゴブリンたちはとうとうキレてしまった。


「ギャーッ!!」


 ルシファー様そっちのけで、こっちに向かって突進してくるゴブリンたち。

 わたしは彼らに背を向け、一目散に走り出した。


 そう、これこそが本命の戦法。

 ゴブリンのヘイトを稼ぎ、逃げまくってルシファー様から引きはなす。


 わたしは前世において、100メートル走で10秒50のタイムを叩き出したことがある。

 だから、ゴブリンなんかに追いつかれることはない。


 しかし同行者であるわたしはモンスターを倒せないので、ぜんぶ引きつけてしまっては意味がない。

 ルシファー様のほうに1匹だけゴブリンが行くように、集団をうまくコントロールしてやれば……。


「くらえっ!」「ギャーッ!?」


 タイマンとなり、危なげなく処理できるんだ……!


 そうこうしているうちに、ゴブリンを半分の10匹まで減らせた。

 この作戦は大成功かに思われたが、


「ギャーッ!」「ううっ!?」


 ルシファー様が利き腕を斬られてしまうというアクシデントが発生。

 それだけで、観客席は歓声に包まれる。

 いつもは神族を応援するはずの者たちが、こぞって拳を振り上げていた。


「やった! ついに一発入ったぞ! 血が出てやがる!」


「しかも利き腕となりゃ、もう剣は振れねぇ!」


「一時はどうなるかと思ったが、なぶり殺しタイムがやってきたようだぜ!」


「ああっ!? おい見ろよ! あの女、ゴブリンじゃなくてルシファー様を狙ってやがるぞ!?」


 被っていた頭巾が、風にあおられて脱げる。

 わたしの顔が白日のもとに晒された瞬間、観客は総立ちになった。


「ああーーーっ!? 見ろよ、アイツ!」


「希代の悪女といわれた、セリージャじゃねぇか! なんでこんなところに!?」


「ミカエル様に追放されたと思ったら、次はルシファー様に寄生してたのかよ!」


「そのうえ水鉄砲でルシファー様を狙うなんて、気でも狂ったのか!?」


「いや、違う! ルシファー様がやられちまったから、アイツはゴブリン側に付こうとしてるんだ!」


「ピンチになったからって見捨てるなんて、実にアイツらしいぜ! 相変わらず腐ってやがるな!」


「クソがっ! ルシファー様なんかより、テメェが血祭りになりやがれ!」


 ヤジを無視し、わたしはルシファー様めがけて水鉄砲を発射。

 それがルシファー様に着弾した瞬間、さらなる驚愕が闘技場を席巻する。


「えっ……ええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」

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