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「円」(『晩歌 -BANKA-』) ゲームシナリオ⑥

《選択肢B - A》

(場面遷移。背景「神社」。SE「古い戸」)


(SE「ミンミンゼミの鳴き声」)

 萵苣「…………すみません」

 神主「こんにちは、あなたは…………?」

 萵苣「私、四阿萵苣といいます」

 萵苣「神主さん、単刀直入にお聞きします」

 萵苣「20数年前、ここに四阿佳江(カエ)という人が──」

 萵苣「私の母が、やって来なかったでしょうか?」


(場面遷移。背景「図書館」。SEそのまま)…★

 ※B - A、B - B共通。変数「BAFlag」「BBFlag」を使用。

  If RouteBA.Checked Then

    BATsugihe.Visible = True

    BAFlag = 1


  ElseIf RouteBB.Checked Then

   BBTsugihe.Visible = True

   BBFlag = 1

  End If


・私の母は、私を出産すると同時に亡くなっていました。

・彼女はきっと、それほど早く自分が

 亡くなるとは思っていなかったでしょう。(2行同時表示)

・だから、今日この日、父の本当の解放の日が

 訪れるまで双魚球を隠しておくつもりだった。(2行同時表示)

・母は、父が報いを受けて苦しんでいることを知り、

 1999年の今日小暮に再来した羽立氏と対峙した。(2行同時表示)

・しかし、この世ならざるものと接触していた彼女は、(改行)

・そこで致命的なほどに身体を摩耗させてしまった──。

・鹿嶋氏は、推測と同時に私に語りました。


 鹿嶋「お母さんを恨んではいけないよ、萵苣ちゃん」

 鹿嶋「佳江さんが君を産んだのは、彼女の起こした

    最後の奇跡だったのだから」

 萵苣「奇跡?」

 鹿嶋「彼女は残された命の全てを、君という新たな命を

    育むために使って亡くなったのだから」

(共通ボタン非表示)

 If BAFlag = 1 Then

   BATsugihe.Visible = True


 ElseIf BBFlag = 1 Then

   BBTsugihe.Visible = True

 End If


 ※この際、テキスト番号の変数を格納し直す必要あり…★


(場面戻る。背景「神社」。SEそのまま)


・だから、私は勢い込んで神主さんに尋ねました。

・母の行動によって父が救われたのだと、証明したかった。

・小暮の地に宿る存在を外部の存在から守るのに、

 それを祀る神社ほど最適な場所はありません。(2行同時表示)

・しかし、神主さんの返答は呆気ないものでした。


 神主「四阿さんとは町内会で顔は合わせていましたが、」

 神主「彼女が直接ここにいらっしゃったことはありませんよ」

 萵苣「そんな!」

 萵苣「ここしか考えられないんです、」

 萵苣「母が、あれをここに預けていなかったら──」


・なぜ、神主さんは嘘をつくのだろう、と思いました。

・しかし、言っているうちに私は、(改行)

・神主さんが本当に双魚球を母から託されていれば、

 嘘をつくはずがないのだと気づきました。(2行同時表示)

・双魚球に関わった者たちは、(改行)

・それを今日孵すことができなければ、

 みんなで報いを受けることになるのですから。(2行同時表示)

・母がそのことを伝えていたなら、(改行)

・神主さんが進んで自らを「報い」に

 追い込むようなことをするはずがありません。(2行同時表示)

・双魚球は、ここにはなかったのだ──。

・………………………………

・私はここで、全ての手掛かりを失いました。


(場面遷移。背景「花火」。SE「花火大会」)


・やがて日は暮れ、花火大会が始まりました。

・咲姉ちゃんと一緒に花火を見ながら、

 私たちは今日で終わりなのだな、と思いました。(2行同時表示)

・ただ、咲姉ちゃんが一緒でよかった。

・そうでなければ、私が「報い」を受けて

 いなくなった後、彼女が寂しがると思ったから。(2行同時表示)

・何度繰り返しても、私たちは一緒──(改行)

・私は、そう誓いました。


(画面暗転。背景、テキストボックス非表示。SE「目覚まし時計」)


 ─数秒後─

(背景、テキストボックス再表示。背景「物置」。SE「アラーム停止」)


・目が覚めると、デジタル時計の数字は

 8月15日、A.M. 8:30を示していました。(改行)

・何だか、随分と長い夢を見ていたように感じます。

・夏休みだからといって、少し寝坊しすぎました。

・着替えて居間に出ると、父がお客さんと話していました。


 勢威「この水晶によく似た宝玉をご存じありませんか?」


・彼が初めて眠堂を訪れた日だ、と分かりました。

・また、駄目だったみたいだな──。

・何度繰り返せば、探し物は見つかるのだろう。

・そんなことを考えているうちに、(改行)

・私はいつの間にか大人になっていたのでした。


(スタート画面に戻る)


《選択肢B - B》

(場面遷移。背景「玄関扉」。SE「古い戸」)


(SE「夏の昼間」)

・バスと電車を使い、家から1時間ほどの場所にある

 母──佳江(カエ)の実家に住む祖父母は、(2行同時表示)

・お盆に顔を出してから間もない私の

 訪問を喜んでくれました。(2行同時表示)

・ですが、私が双魚球のことを切り出すと、

 2人揃って顔を強張らせました。(2行同時表示)

・その反応で、私は予想が的中したことを悟りました。


 萵苣「おじいちゃん、おばあちゃん、」

 萵苣「これは、大切なことなの」

 萵苣「お母さんは、あれを封じようとしたんじゃないわ」

 萵苣「守ろうとしたのよ、自分の命を賭けて」


 ★から★まで共通


(場面戻る。背景「玄関扉」。SEそのまま)


・既に咲姉ちゃんには連絡し、打ち上げ時刻までには

 双魚球を持っていくと約束しました。(2行同時表示)

・その時点で午後になっていたので

 無意識に切羽詰まった口調になっていた私に、(2行同時表示)

・咲姉ちゃんは何も問うことなく「分かった」と

 言ってくれました。(2行同時表示)

・………………………………

・おじいちゃんとおばあちゃんは、

 きっと双魚球が災いを招いたと思ったのでしょう。(2行同時表示)

・自分たちの娘は、それに取り殺されたのだと。

・しかし、私の切実な態度に何かを感じたらしく、

 彼らはほっと息をつきました。(2行同時表示)


 祖母「佳江が死んだ時──」

 祖母「こういう日が来るとは、何となく分かっていたの」

 祖母「周作(シュウサク)君から、話は聴いていたわ」

 祖母「分かっていても、怖かったのよ」


(SE「木材が動く」)

・彼らは、物置の大きな木製金庫から桐箱を

 取り出し、それを開けました。(2行同時表示)

・中には、私が想像していたものと

 寸分違わぬものが収められていました。(2行同時表示)


 萵苣「ありがとう、お父さん、お母さん」


・私は合掌し、そう言いました。


(場面遷移。背景「電車のホーム」。SE「夕方とヒグラシ」)


・緩衝材を詰め、双魚球を収めたリュックは

 予想以上に重いものでした。(2行同時表示)

・時刻は夕方5時を回り、打ち上げの時刻は7時、(改行)

・家から河川敷までは少し離れているので、(改行)

・1時間かけて家に帰ることを考えると

 そこまで余裕はありません。(2行同時表示)

・でも、絶対に間に合わせると決意していました。

・………………………………

・祖母の声が聞こえた気がしました。


 祖母「これはね、萵苣ちゃん」

 祖母「私たちのご先祖様が、ずーっと昔に生きていた

    世界から来たんだろうねえ」

 祖母「昔は私たちも、陸奥(みちのく)が未開だった頃は

    自然と仲良しだったんだよ」

 祖母「呪いなんかじゃないって、

    萵苣ちゃんが思ってくれて嬉しいわ」

 祖母「今でも、そんな大切なものを私たちの世に託して

    くれる神様は、きっと寂しがり屋なんだろうねえ……」


(SE「電車停車」)

・ホームに電灯が点き、電車の音が近づいてきました。


(画面暗転。背景、テキストボックス非表示。SE「打ち上げ花火」)

(スタート画面に戻る)

 お読み下さりありがとうございます。『晩歌 -BANKA-』Tale:04「円」のゲーム版シナリオはこれで全てです。「選択肢B - B」が一応トゥルーエンドですが、「水晶球の双魚」では本作の萵苣に相当する慎平君はこの後ぎりぎりで打ち上げに間に合わず二周目に突入しています。無論、二周目は開始時点で双魚球の在処が分かっているので、彼は今度こそ打ち上げに成功し、花火大会の夜以降の世界に進む事が出来る訳ですが、この場合でも直接双魚球の捜索に関与した人々以外からは普通に翌日はやって来たように見えます。「円」は、萵苣がこれから打ち上げ場所に向かう、というところで幕引きになっていますが、この後彼女が一回で成功するのかどうかは読者の方々のご想像にお任せします。

 また「選択肢A」では繰り返しの先に抜けられなかった周作や鹿嶋氏が萵苣たちの世界から姿を消した事が語られていますが、「水晶球の双魚」では理論上、もし慎平君たちが双魚球を巡る一件に深く関わる前に手を引いていれば街の他の人々と同様普通に翌日以降の世界に進み、周作たちの失踪を経験する事はなかったはずです。「円」での「選択肢A」のエンドはあくまでもゲームの為に設定を変更したものなので、ご理解の程宜しくお願いします。


 明日からは完全書き下ろしである第六弾の投稿を行います。「小説家になろう」に引っ越して来てから怪奇幻想を書いたのはこれが初で、『晩歌 -BANKA-』のゲーム版シナリオを除けば実に三年ぶりの執筆になります。「なろう」に来てから長期連載したものといえば『夢遥か』と『リ・バース』で、どちらも異世界ファンタジーでした。『闇の涯(はて)」は異世界ファンタジーとSFの中間くらいで、『神器』はほぼSFです。やはり純異世界ものの方が伸びはいいのですが、怪談を書いている今の私こそが本来の藍原センシなのです。という訳で、引き続きお付き合い下さいませ。


 追伸。本日から五日間に分け、「未分類」にノンシリーズものの短編小説を投稿します。宜しければそちらも是非お読み下さい。

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