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「円」(『晩歌 -BANKA-』) ゲームシナリオ④

《選択肢A》

(場面遷移。背景「蓮華」。SE「夏の昼間」)


・翌日とその翌日、咲姉ちゃんからの

 連絡はありませんでした。(2行同時表示)

・安里さん以外に有力な手掛かりがなく、それも

 あえなく途切れたので当然ではありましたが、(2行同時表示)

・実を言うと私はそのことに安堵していました。

・咲姉ちゃんと共に、一度手を引くと決めたことに

 ずるずると関わっていくのが怖くもあったのです。(2行同時表示)

・その一方で、勢威さんや父は双魚球を発見

 できたのだろうか、ということが気になっていました。(2行同時表示)

・………………………………

・花火大会まであと3日という日、父が座敷の

 箪笥や押入れの中を整理していました。(2行同時表示)

・やはり双魚球を探しているのだな、と思いながらも

 私は見て見ぬふりをしようとしました。(2行同時表示)

・すると、彼は不意に私を呼び止めました。

・父は私に、傍らにある大きな鞄を示しました。


 萵苣の父「もし、父さんに何かがあった時は、」

 萵苣の父「この鞄を持って母さんの方のおじいちゃんちへ行け」

 萵苣の父「店に関するあれこれは、ちゃんと書いておいた」

 萵苣「どうしたの、いきなり?」

 萵苣「やめてよ、そんな遺言みたいな…………」

 萵苣の父「いや、たまたま整理をしていて思い出したことだ」

 萵苣の父「いつかは言っておかなければいけないからな」

 萵苣「お父さん、まだまだ元気でしょ?」

 萵苣の父「…………そうだな」

 萵苣の父「そうでは、あるのだけれど」


・私は、そう言った父の目に、(改行)

・先日勢威さんに見た憐れみと義務感を感じ取りました。


(場面遷移。背景「花火」。SE「花火大会」)


・花火大会当日、私は咲姉ちゃんと一緒に

 打ち上げ場所の河川敷を訪れ、(2行同時表示)

・鹿嶋氏の打ち上げを行う対岸で花火を見上げました。

・咲姉ちゃんが浴衣姿で家にやって来た時、(改行)

・日限までに双魚球が見つからなかったとして

 私たちの間には気まずい空気が流れましたが、(2行同時表示)

・彼女は私を安心させるように笑顔を見せ続けていました。


 萵苣「綺麗だね、咲姉ちゃん」

 萵苣「さすが鹿嶋さん、咲姉ちゃんも将来こんなふうに……」

 咲子「…………無理なの」

 萵苣「えっ?」

 咲子「師匠からは、もう教われない」


・そう言った時、咲姉ちゃんは

 そこで限界が訪れたように涙を流しました。(2行同時表示)

・私は突然のことに動揺し、その時気づきました。

・対岸で打ち上げを行っているのが鹿嶋氏ではなく、(改行)

・咲姉ちゃんの兄弟子である湊(ミナト)先輩だということに。


 萵苣(咲姉ちゃん、まさか…………!?)

 萵苣(そうだ、お父さんは?)


(画面暗転。背景、テキストボックス非表示。SE「打ち上げ花火」)


 ─数秒後─

(背景、テキストボックス再表示。背景「参道」。SEなし)


・父がいなくなった後、私は彼の言葉通り

 母方の祖父母宅に身を寄せました。(2行同時表示)

・あの夜姿を消した父や鹿嶋氏、勢威さんがどこに行って

 しまったのか、今になってみれば薄々予想がつきます。(2行同時表示)

・彼らは未だにあの夜に囚われていて、(改行)

・私の進んだ8月以降の日常に出ようと

 彷徨っているのではないでしょうか。(2行同時表示)

・彼らは、私や咲姉ちゃんが自分たちと同じ運命を辿る

 ことがないよう、庇ってくれたのではないか──。(2行同時表示)

・だから私は、父たちがまだ生きていると信じています。

・ただ、もう会うことはできないのだとも分かっている。

・…………………………………………

・双魚球が何だったのか、私はもう知ることはできません。

・ただ、決して呪いなどではなかったのでしょう。

・父たちが、あんなに必死になったものなのですから。


(スタート画面に戻る)


《選択肢B》

(背景そのまま)


 萵苣「待って、お父さん」

 萵苣「私、このままじゃ気味が悪いよ」

 萵苣「お父さんたちが、何に必死になっているのか教えて」

 萵苣「もし、私にお父さんの手伝いができるなら…………」


・父は、また難しい顔で考え込んでいました。

・しかし、やがて意を決したように口を開きました。

・その私は父の目に、一縷の希望の色を見たのです。


(場面遷移。背景「灯籠と池」。SE「夜の屋外」)


 萵苣の父「眠って起きても、まだ夢の中にいるような、」

 萵苣の父「そんな気分になることはないか?」

 萵苣「えっ?(思わず首をかしげて)」

 萵苣「寝起きだと、そういうこともあるけど」

 萵苣の父「双魚球を手放してから、父さんは毎日ずっと

      そんな感覚に悩まされていた」

 萵苣の父「1つの夢が終わったことは分かっているんだ」

 萵苣の父「けれど──」

 萵苣の父「──正直、父さんはいつからが夢で、

      いつからが現実なのか、最早確信が持てない」

 萵苣の父「何度も夢が覚めたと思って暮らし、

      何年も過ぎてからそれが夢だと気付いているような、」

 萵苣の父「そんな気がする」

 萵苣「(不安になって)どういうこと……?」

 萵苣「お父さん、何の夢を見ているの?」

 萵苣の父「お前が生まれてから、丁度今の歳くらいになるまでの

      日常を、延々とだ」

 萵苣の父「終わりは、いつも同じで──」

 萵苣の父「いや、これ以上は気分が悪くなるだろう」

 萵苣「何なの? 大丈夫だから、最後まで教えてよ」

 萵苣の父「それじゃあ、どうか気を悪くしないでくれ」

 萵苣の父「5日後の花火大会の夢だ」

 萵苣の父「お前が、双魚球を持って祭りの雑踏の中を

      河川敷へと駆け下りてくる」

 萵苣の父「お前は打ち上げの場である対岸に向かって、

      川の中に飛び込んで歩いて行こうとする」

 萵苣の父「だが、流れが速くて進めない」

 萵苣の父「俺は必死に呼びかけるんだ、」

 萵苣の父「やめてくれ、お前がそこまでする必要はない、と」

 萵苣の父「だが、お前は川の中で見えなくなってしまう」

 萵苣の父「俺は後悔に苛まれ、岸辺で膝を突いて目が覚める」

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