「円」(『晩歌 -BANKA-』) ゲームシナリオ③
(場面遷移。背景「帰り道」。SE「夕暮れ」)
・その日、塾からの帰り道、私は鹿嶋氏の花火工場の
方から歩いてきた勢威さんと会いました。(2行同時表示)
萵苣「勢威さん、咲姉ちゃんに何かご用ですか?」
勢威「嫌だなあ、萵苣ちゃん」
勢威「それを言うなら、鹿嶋さんに、じゃないのかい?」
勢威「まあ、萵苣ちゃんの事情も分かってる」
勢威「君と八重さんも、双魚球を探してくれているみたいだね」
萵苣「あんまり頻繁に来られると、うちの営業に関わりますし」
勢威「…………ごめんね、嫌がられているのは分かってるんだ」
勢威「だけどさ、私の立場も分かって欲しい」
勢威「さっきも、鹿嶋さんに叱られてしまった」
勢威「双魚球を紛失したのは、私ではないのに……」
萵苣「ですから、眠堂を探しても見つからないんですよ」
萵苣「父が知らない以上、
既に売られているとすれば祖父の代です」
萵苣「戦後は代替わりまで営業されなかったんですから、」
萵苣「顧客リストにそれらしい記録がなくても当然です」
勢威「………………………」
勢威「じゃあ、どうして四阿さんはそう言わないんだろう?」
萵苣「勢威さんは、父が売ったという確信がおありですか?」
勢威「………………………………」
萵苣「…………羽立という、金融業者に?」
・勢威さんは、しばし沈黙しました。
・まじまじと顔を見つめられましたが、(改行)
・それは「なぜそこまで知っているのだ」という
性質の驚きのようでした。(2行同時表示)
勢威「……萵苣ちゃんも、そう思う?」
萵苣「教えてください、勢威さん」
萵苣「その羽立っていう人は、一体何者だったんですか?」
勢威「………………もう、知りようがないんだ」
勢威「安里さんたちは、知らなくて当然だった」
勢威「彼は、1999年に死んでいる」
勢威「その年の花火大会の日、河川敷で倒れていたらしい」
勢威「死因は、卒中じゃないかってことだった」
・勢威さんが私の父に顧客リストを要求していたのは、
それが見たいからではありませんでした。(2行同時表示)
・父の口から、羽立氏の住所を捜索したが双魚球は
見つからなかった、ということを聞きたかったのです。(2行同時表示)
・勢威さんは私に、咲姉ちゃんと共に
この一件から手を引くように言ってきました。(2行同時表示)
・それ以上のことを父に尋ねるのも、やめた方がいいと。
・私はその勢威さんの顔に、
なぜか私を憐れむような色を見ました。(2行同時表示)
・そして同時に、(改行)
・何としてでも目的を遂げる、というような義務感も。
・もしかしたら、鹿嶋氏や勢威さんが
双魚球を見つけたいのは、私のため?(2行同時表示)
・そう思うのは、自意識過剰というものでしょうか。
(場面遷移。背景「物置夜」。SEなし)
・その夜、私はこっそりと店に降り、
顧客リストを調べました。(2行同時表示)
・その結果、やはり父は1992年に双魚球を
羽立傅吉(デンキチ)という男に売っていました。
・記録を発見した瞬間、
(SE「ドア開放」)
萵苣の父「何をしているんだ?」
・不意に電気が点き、座敷の方から父が入ってきました。
・………………………………
・咲姉ちゃんとのことも含めて正直に話すと、
叱られはしませんでした。(2行同時表示)
・ただ、彼は話は終わったと言わんばかりに
立ち去ろうとしました。(2行同時表示)
・そこで、私は思わず父に何が起こっているのかを
尋ねようとしましたが、そこで思いとどまりました。(2行同時表示)
・勢威さんは、この件について父に尋ねることも
しない方がいいと言っていました。(2行同時表示)
・もし、父も今私の知らないところで、(改行)
・来るべき何かに備えて動いているのだとしたら?
・私が口を挟むのは、私を巻き込むまいとしてくれている
父の思いを踏み躙ることになるのではないでしょうか。(2行同時表示)
・ですが、もしも私が
父のためにできることがあるとすれば?(2行同時表示)
・私は考えました──。
(ボタン2つ表示。《選択肢A》…引き下がることにする/《選択肢B》…父を呼び止める)




