↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
87/120

第76話「同期会」

剣より頭、魔法より読み。


平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。


ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。

「マジかよ。俺、第2軍に行きたかった!!」


「お、おう、簡単に手柄を立てられそうだしな。俺はジョディーと一緒に、ロンベルトの随伴騎兵になる予定だぞ。まぁ、でも近衛師団配属になるから、戦死はないな。手柄は無いけど、第1軍じゃないだけよかったわ。」


「ぼ、僕は、アーシュライトさんの所で働くよ。シュウと一緒にね。勝ってるって言っても戦場は怖いからね。助かった思いだよ。」


「あたいはジェイクと一緒。ロンベルトの随伴弓騎兵になるつもりさ。だから第1軍には行かなくて済むってもんさね。」


 『ヴェルタ第2軍、圧倒的優勢。破竹の勢いで進軍中。我が軍の損害は極めて軽微なり。』


 とだけ新兵教育隊に第2軍の戦況が発表されると、明日に控えた修了式と部隊配置を、皆が思い思いに話した。


 行き先が決まっている者は良いが、そうでない者は皆、先のイスペリアの内戦干渉で損害が出た第1軍に補充の為、配属が決まるのではないかと、内心ひやひやしていた。


 そんな中、マイトランドだけは違う思考でいた。


「なんだ、第1軍に配属されたら武功を立て放題じゃないか。俺は行きたいけどな。」


「皆マイトランドの様に考えられないぜ。変な上官に当たったら、変な命令貰って、それだけでお陀仏だろ?」


「確かに。指揮官次第ってとこだな。無能に当たればそれで終わりだ。せいぜい良い部隊に配置されるよう、祈るか。」


 消灯を過ぎても、そんな話を全員がやめることはなかった。


 それからしばらく長い話が続き、皆がそろそろ眠くなってきた頃、ヘクターが切り出した。


「な、なあ皆、僕達、2年に一度で良いから集まらないか?手紙で連絡を取り合って。僕達兄弟みたいなもんじゃないか。手紙は一番死ぬ確率の低いマイトランドが全員に。部隊が変わっても、マイトランドにその変わった部隊名を送るんだ。ど、どうかな?」


「そりゃあいい。ヘクター、お前、初めて部屋長らしい仕事をしたな。同期会か!やろうぜ!みんないいだろう?」


 ジェイクはヘクターの提案を皆に確認した。


「ああ、誰かが死んだら葬儀の連絡も俺がしよう。」


 マイトランドがそう言うと、一同は黙り、重い空気が流れた。


「だ、誰が一番最初に死ぬのかな・・・。」


 クリスが言った一言で、更に重い空気が流れると、ジェラルトが場を和ませた。


「まあ、あれだ!同期会楽しみにしてるぜ!マイトランドも余計な事言うなよ。」


「ああ、すまなかった。善意のつもりだったんだが。何にしても、葬儀の棺桶の中には死体は入っていないことが多い。行方不明程度で、死んだなんて誰も思わんさ。」


「かああ。こいつは。おお!そうだ!ライアネンも呼ぼうぜ。」


 皆が全会一致で同期会を約束し、新兵教育最後の夜の眠りについた。


 翌朝、修了式は拍子抜けするほどあっけなかった。


 教育隊長が壇上に立ち、簡潔な訓示を述べた。戦時下ゆえ、来賓も祝辞もない。首席の名が呼ばれることもなかった。


 訓示の後、配属部隊が読み上げられた。名前と部隊名が淡々と続き、呼ばれた者が一歩前に出て敬礼する。それだけだった。


 正式な軍服と兵科徽章、軍靴が支給されると、新兵達はそれぞれの荷物を整え、見慣れた教練服を脱いだ。


 配属部隊について知っているところで言えば、フリオニール、グレンダ、フレデリカ、クレア、エルンスト、ヨーゼフは、士官学校へ入校。


 ロンベルトは、首都ヴェルテブール防衛の任につく近衛師団、第105騎兵連隊本部中隊へ。


 ジョディー、ジェイクはロンベルトと同じ第105騎兵連隊へ。


 アーシュライトは、同じく首都防衛の任につく近衛師団、第210重装歩兵連隊本部中隊へ。


 シュウ、ヘクターも同じように第210重装歩兵連隊へ。


 ライアネン兄弟は第1軍の第2軍団、第16歩兵師団へ。


 トッド、ルーク、フィン、アルベルト、クリスは第1軍の第4軍団、第901後方支援連隊へ。


 ロブ、ダン、エリオット、スナイダー、フォルカン、フランは、第3軍の第5軍団、第92騎兵師団へ。


 ポエル、アダムス、イブラヒム、アツネイサはマイトランド、ジェラルトと共に、第2軍、第2軍団、第198騎兵連隊、偵察中隊へ。


「アニキ、俺達第2軍団だ。こりゃ楽勝だよ。」


「考えろ、イブラヒム。トッド達に悪いと思わないのか。」


「まあ確かに。すまんな。みんな。」


 アダムスとイブラヒムがそんな会話をしていると、ポエルがアダムスの頭を叩いた。


「大丈夫!みんな強くなった。異能も増えた。」


「いってえな。ポエル。お前はマイトランドが好きだから、一緒になって嬉しいんだろうけどよ・・・。」


「ポエルは、そんなことない。なんでそんな事言うの。」


 顔を真っ赤にしたポエルは、少しムッとすると、更にアダムスをポカリと叩いて続けた。


「マイトランドに聞こえたら、敵より先に殺すから。」


「いや、分かったよ。マイトランドには内緒にしておくから叩くんじゃねえよ。」


 配属が決まると、出発の順番がやって来る。第1軍の前線補充が最も早く、近衛師団、第3軍と続き、第2軍の出発は翌日だった。


 ライアネン達の第1軍の出発は、名目が補充であるが故、他の部隊よりも幾分早かった。


「ライアネン、第1軍は過酷と聞く。絶対に死ぬんじゃないぞ。」


「おお、マイトランドの下で働くまでは死なないさ。お前こそ死ぬなよ。」


「俺が死ぬと思うか?誰に言ってるんだ?」


「ははっ、違いねえ。」


 ライアネンは笑ったが、その笑い方は、演習場で先鋒を務めた時の豪快さとは少し違っていた。弟のクリードは黙って兄の隣に立ち、マイトランドに深く頭を下げた。


「軍師殿。兄をよろしくお願いします。」


「よろしくも何も、部隊が違う。自分の身は自分で守れ。だが、同期会には必ず来い。2人とも。」


「ああ、必ず行くさ。」


 ライアネンはそう言って背を向けた。マイトランドはその背中を、見えなくなるまで見送った。


 次はトッド達の後方支援部隊を送り出す番だった。


「クリス、あんた、あたいより先に死ぬんじゃないよ。あたいばっかり安全なところですまないね。」


「わかってるよ。姉さん。僕は大丈夫さ。」


 ジョディーとクリスが抱き合い、兄弟の別れを惜しんだ。ジョディーは目を赤くしていたが、クリスの前では涙を見せなかった。


 マイトランドはクリスに声をかけた。


「クリス、言っておいた件頼むぞ。」


「ああ、大丈夫。何かあったらすぐに連絡するよ。」


「トッド、ルーク、アルベルト、フィン、無事で。」


 クリスの返事を聞くと、マイトランドはトッド達を送り出した。


 続いて、近衛師団の出発だった。


「ロンベルト。フリオニールを頼む。」


 マイトランドがそう言うと、ロンベルトは少し意外そうな顔をした。


「フリオニールは士官学校だ。私は近衛師団だぞ。」


「わかっている。だが、士官学校を出た後の話だ。あいつは変えようとしている。貴族の中にいると、足を引っ張る奴が必ず出る。お前がいなければ、あいつは潰される。」


 ロンベルトは黙って聞いていたが、やがて口元を緩めた。


「マイトの口から、そういう言葉が出るとはな。盤の外の話もするようになったか。」


「盤の外も盤だろう。盤面は生きている。」


「ふっ。あの方は私が守る。心配するな。」


 ロンベルトはそう言うと、ジョディーとジェイクを従え、近衛師団の列に加わった。


「アーシュライト。お前もだ。フリオニールの盾になってやってくれ。」


「はい。命に代えても。」


 アーシュライトは簡潔に答えると、シュウとヘクターを伴い、第210重装歩兵連隊の列へ向かった。


 ヘクターが最後に振り返り、ぎこちなく手を振った。


「ま、マイトランド、同期会の手紙、忘れないでね。」


「忘れるわけないだろう。お前が言い出したんだ。部屋長。」


 ヘクターは嬉しそうに何度も頷くと、走ってアーシュライトの列に追いついた。

面白いと思っていただけたら、ブックマークしていただけると大変励みになります。次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。