第41話「配分の意味」
剣より頭、魔法より読み。
平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。
ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。
しばらくしてポエルがフレデリカとクレアを連れてやって来た。
「お待たせ。それで、話というのは——」
フレデリカが口を開きかけたところで、フリオニールが振り返った。
「マイト、フレデリカも揃ったぞ。」
フレデリカの目が大きく見開かれた。
「——今、マイトと呼んだか?」
「ああ。本人がそう呼べと言うのでな。」
フリオニールがさらりと答えると、フレデリカはマイトランドと、フリオニールと、もう一度マイトランドを見て、それから少し頬を膨らませた。
「ずるい。私もマイトと呼びたい。」
「別にずるくないだろ。好きに呼べよ。」
「よし、決まりだ。マイト。……うん、いい響きだ。」
満足げに頷くフレデリカに、ジェラルトが呆れたように笑った。
その横で、クレアが腕を組んだまま目を逸らしていた。
「……べ、別に私は、呼び方なんてどうでもいいけど。」
「誰もお前に聞いてないぜ、クレア。」
ジェラルトが軽く返すと、クレアの眉がぴくりと跳ねた。
「……あんたこそ、いつまでもランズベルクって呼ばれたいわけ?」
「は?俺は別にどっちでも——」
「ジェル。」
ぶっきらぼうに、しかしはっきりとクレアが言い切った。ジェラルトが一瞬固まる。
「……今後はそう呼んであげる。感謝しなさい、平民。」
顔を背けたクレアの耳が赤くなっていることに、ジェラルトだけが気づいていなかった。
全員揃ったところでマイトランドが口を開く。
「皆聞いてくれ、今回の模擬戦だが俺に良い考えがあるんだ。戦功上位者や班の指名も俺に任せてくれないか?」
「作戦だけでなく、戦功の指名もか?」
フリオニールが僅かに目を細めた。戦功の指名権とは、勝利した軍が上位10名もしくは10班を選べるという、今回の模擬戦だけに与えられた特権だ。それを作戦と同時に求めるということは、指名権そのものを戦の道具として使うつもりだということに他ならない。
フリオニールはすぐに理解した。マイトランドは、勝った後の話をしているのではない。勝つために指名権を使おうとしている。
「そういうことだ。それともう一つ、みんなに聞きたい事がある。この配分、おかしいと思わないか?」
「おかしいも何も、どう見たって不公平だろう。」
ジェラルトが即答した。だがマイトランドは首を横に振った。
「不公平なのは見ればわかる。俺が言いたいのはその先だ。あからさまに不公平な配分を、なぜわざわざ組んだのか。」
全員が黙った。マイトランドは地図の上に指を置いたまま続けた。
「12対48で攻城戦をやれ、ただし勝てば戦功の指名権を与える。正面から戦えば絶対に勝てない。でも指名権がある。これが何を意味するか、わかるか?」
「……まさか、調略や引き抜きができるかどうかを見ているのか?」
フリオニールの声が低くなった。
「俺はそう思っている。実戦で12対48の攻城戦を強いられたら、まともな指揮官は正攻法を選ばない。内応者を作るか、敵の足並みを崩すか、戦わずに勝つ方法を考える。評価者達はそれを見たいんじゃないか?模擬戦という小さい枠の中でも、そこに辿り着けるかどうか。」
「……つまり、この配分そのものが試験だと?」
アーシュライトが低く呟いた。
「確証はない。だが、もしそうなら、正面からぶつかって負けましたじゃ、評価は最低だ。」
マイトランドは全員の顔を見回してから、口元に笑みを浮かべた。
「だから勝つ。正攻法以外のやり方でな。」
「私は、元よりそのつもりだ。」
「私も、全く異存はない。」
2人の意見を一致させたところで、マイトランドは本題に入った。
「ポエル、すまないがライアネンを連れてきてくれ。大至急で頼む。」
ポエルは2度頷くと、その場を後にした。
「マイト、なんでライアネンなのだ?彼は今回敵だろう?」
フリオニールが尋ねると、マイトランドはニヤリと不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「まあ見てなよ。ところでフリオニール、今回も金一封は出るのか?」
「出るだろうさ。いや、だろうではなく出る。」
「そうか、安心したよ。」
マイトランドは、もう一度不敵な笑みを浮かべると、ポエルがライアネンを連れて戻るのを待った。
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