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第28話「14/15」

剣より頭、魔法より読み。


平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。


ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。

 その日の夜。マイトランド班は、全員で答え合わせなど、反省会を開いていると、


「やあ、マイトランド、学科試験は終わったのだから、そろそろ模擬戦の準備を始めないか?もちろんフレデリカ嬢も連れて来た。」


 そう言って、フリオニールと、フレデリカが入ってきた。もちろん付き添いのクレア、ロンベルト、アーシュライトも一緒であった。


「そうだな。今答え合わせも含め、反省会をしているところだ。少し待ってくれ。」


 マイトランドは反省会を手早く終わらせると、戻ってくるなり問いかけた。


「そう言えば、フリオニールとフレデリカは試験どうだったんだ?」


「私は1問だけ落としてしまったよ。貴族の作法と軍人の作法は違う物でね。」


「グレッテ卿の言っている問題は解けたんだがな。他を1問落としたよ。」


 2人が1問ずつ落としたと聞いて、ジェラルトが喜び勇んで話に割って入ってきた。


「じゃあ俺達が1位だな。平民の俺達に負けるなんて情けない貴族もいたもんだぜ。なあマイトランド。あーあ、明日の結果発表の楽しみが減ったぜ。」


 そう言いながらジェラルトはちらりとクレアに目をやった。クレアは腕を組んだまま、ふんと鼻を鳴らした。


「そ、そうか。」


 フリオニールは、悔しそうに肩を落としその一言だけを言うと、マイトランドに続けた。


「そんなことより、模擬戦だ、模擬戦の準備をしよう。」


「そうだな、戦場の地図はあるか?」


「もちろんだ、持ってきた。」


 マイトランドの言葉に反応しフリオニールは懐から地図を取り出すと、マイトランドに渡した。


 戦場地域の把握は、初期布陣場所、どこに何があるか、どこが狭いか、罠の配置場所、どこが待ち伏せに適しているかなど、様々な情報を得られるからであった。


「明日にでも異能で戦場を見ておこう。敵の兵力は、こちらよりも買収されて3個班多いんだったか?」


 マイトランドの問いかけに、少しばつが悪そうにフリオニールは、


「とても言い辛いんだが、平民班もグレンダ嬢に1個班多くとられてしまってね。どうしたらいいものか。平民1~27班がグレンダ嬢の統制下におかれる。残りはこちらだ。」


「こっちは約80名少ないって訳か。騎兵を歩兵5名分と換算すると320名分の差があるな。で?あちらさんの動きは?調べているんだろ?」


「ああ、重装歩兵用の盾と投擲もできる長槍を、大量に平民班の人数分運び込んでいると報告があった。」


「ってことはファランクスか。統制のとれていない平民班に、ファランクスが出来るとは到底思わないけど、こちらもファランクスであればなんとかなるだろう。問題は騎兵の戦力差だな。」


 ファランクス。重装歩兵が大盾と長槍を手に、肩を並べて密集する陣形である。兵一人一人の技量に左右されにくく、隊列さえ維持すれば、正面からの突破はほぼ不可能とされていた。騎兵の突撃すら、揃えられた槍の壁の前では止まる。古くから戦場を支配してきた陣形であり、その正面戦闘力は他の陣形の追随を許さなかった。


 だが、万能ではなかった。隊列を維持する為に機動力を犠牲にしており、側面や背後を取られれば脆い。また、密集しているが故に、一箇所が崩れれば隊列全体が瓦解する危険があった。何より、ファランクスの強さは兵の練度と規律に依存する。恐怖に駆られた一人が列を離れれば、そこから崩壊が始まるのだ。


「ファランクスか、密集陣形のことだな?左手に盾、右手に槍だったよな?右側がガラ空きになるじゃないか、騎兵でファランクス右列を突破すれば良いのではないか?」


 フレデリカが尋ねると、即座にマイトランドは反論した。


「お前はバカか、騎兵が敵より少ないのにか?こちらの騎兵の突撃なんて、当然敵騎兵が阻止するだろう。それにファランクス最右列は、お前の様な考え方をする敵の思考を見抜き、通常その部隊の、最精鋭兵が配置されるものだ。見抜かれている戦法ではどうにもならん。万が一、万が一だぞ?お前の言う通り、騎兵が数騎突破できたとしてその後どうする?敵の大将でも狙いに行くか?」


「申し訳なかった。でもバカはやめてほしい。しっかり勉強するから・・・。」


 フレデリカが下を向き、泣きそうになった。


「ちょっと!平民の分際でフレデリカ様に何てこと言うの!」


 クレアが詰め寄ろうとするのを、フレデリカが手で制した。


「いい、クレア。マイトランドの言う通りだ。私が勉強不足なだけだ。」


「すまん。言いすぎた。」


 と言って、マイトランドも下を向いてしまった。


「まあまあ二人とも、そんなに深刻にならなくても。マイトランド、何か方法はあるか?」


 そんな二人を気遣うように、フリオニールが尋ねると、マイトランドは上を向き答えた。


「ああ、全員の異能を調べてくれ。その後に装備を揃えよう。まずは異能だな、明日までに調べておいてくれ。俺は明日の朝、戦場を見ておこう。」


 フリオニールとフレデリカは了承すると、その日は解散した。


 翌日、学科試験の結果発表日。


 朝一番で戦場の確認を終えたマイトランドは、朝食を済ませると、班員を伴い、順位の発表会場へ向かった。


 順位の発表会場には大きな掲示板があり、順位を確認すると、


 1位、フリオニール・フォン・グレッテ 14/15


 2位 グレンダ・フォン・ロンメル 13/15

   フレデリカ・アルドリック 13/15


 などと書かれており、1位にいるはずのマイトランドとジェラルトはおろか、受験した47班全員の名前はどこを探しても確認できなかった。


「おい!これなんだよ!どうなってるんだよ!」


 別の掲示板を確認したジェイクが叫んだ。


 マイトランドとジェラルトがジェイクの指差す掲示板を見ると、そこにはこう書かれてあった。


"47班は不正の疑いがあり、順位を付けないものとする。尚、首謀者と思われるラッセル2等兵は厳罰に処す。"

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