第18話「男だと!?」
剣より頭、魔法より読み。
平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。
ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。
森林入口で、マイトランド達2人は事前に仕掛けておいた縄に飛び移ると、クリスト達前衛重装騎兵5騎の目の前に、道を塞ぐ程度の小規模のパイクが出現した。
「グギャアアア!」
言葉にならない叫びと共に、ランスを構え、全速力で追撃していたクリスト達はなす術もなくそのパイクに突き刺さった。
「停止!停止!全体停止せよ!」
フリオニールは残りの15騎の進軍を停止させると、右手を振って損害の確認を急がせた。
——あれほど注意せよと言ったのに。
「まだ罠があるかもしれん。十分に留意せよ。」
そう言って、縄にぶら下がるマイトランドとジェラルトに目をやった。
「フレデリカ嬢の部隊か、貴様ら、こんな搦め手で敵を打って貴族として恥ずかしくはないのか?新貴族とはいえ貴族、搦め手で敵を討って家名に傷が付くぞ。正々堂々と正面から挑んだらどうだ?」
正々堂々、正面決戦を挑むフリオニールに、声を出さぬまま肩を揺らし、指を差して体全体で笑いを表現する2人。
顔も見えぬ、体もわからぬでは、正直フリオニール達を馬鹿にしているとしか言いようがない仕草である。
ジェラルトは調子に乗り、自分の尻をフリオニール達に向け何度か叩くと、
「淑女が、そんなはしたない真似をするとは!」
と大声を出し、頭を抱えて見せた。
フリオニールの命令で被害状況の確認が行われた。クリストの前衛5騎のうち、1名は馬を犠牲にして助かったようだったが、4名が脱落していた。
「女に4名もやられたのか!追いましょう、フリオニール様、私が先陣を切ります!」
隊の中で一際大きなランスを持った男が、ベンテールを上げそう言うと、馬の頭をマイトランド達に向けた。
「そうだな。ロンベルトの発言を是とする!パイク、残骸は飛び越えよ!前進!前進!」
フリオニールはロンベルトに触発され号令を飛ばした。
マイトランドは兜の中でにやりと笑うと、ジェラルトの尻を叩いて急かした。縄から手を放すと、馬はすでに先へ行ってしまっており、2人は徒歩で森林奥の陣地を目指した。
それを追うフリオニールは進軍と同時に全員に命令した。
「伏兵や、罠に気を付けろ!ロンベルト隊が前衛を、各隊の距離を保ち、歩様は速歩以上を禁ずる。突撃のタイミングはロンベルトが指揮せよ。パイクには十分気を付けろ。」
フリオニールは前衛5名、少し開けて、フリオニール達5名、後衛に5名配置すると、森林地域の奥深くまでマイトランド達の誘導により前進した。
陣地目前まで到着すると、ロンベルトはランスを高く掲げ、その大声で後方に声を飛ばした。
「アーシュライト!後ろはどうか!」
双剣を構えたアーシュライトが、ベンテールを開け反応した。
「大丈夫だ。伏兵はいない。」
——気配察知か、なにかの異能で確認したのだろう。マイトランドはそう推測した。
ロンベルトはマイトランド達に巨大なランスを向けると、
「突撃!我々の力女どもに見せてやれ!」
そう号令を出し、手綱を引くと一気に緩め突撃を開始した。
当然、後続の2隊10騎もこれに続いた。
これにマイトランド、ジェラルトの両名は即座に反応し、陣地の入口まで走った。
土塁を固め、狭く作ってある陣地入り口を一気に通り抜けると、少し距離があるロンベルト、フリオニール達をけん制するように、ロンベルトの到達よりも少し早くパイクの頭を持ち上げた。
ロンベルトは手綱を引くと、パイク手前で馬を止めて、
「そんな同じ手に引っかかる我々ではないわ。このド阿呆が。」
そう言うと、マイトランドとジェラルトが土塁の上に立ち弓を構えた。
「弓だ!魔法もあるぞ!密集陣形!ロンベルトの位置に集まり、防御の異能と魔法を展開せよ!」
さすがに独自の訓練を受けている貴族班と言ったところだろう。フリオニールは遠距離攻撃を警戒し、ロンベルトの位置に全員を集めると、異能と魔法を展開した。ある者は個人の異能、鉄壁を発動し、またある者は範囲防御効果のある魔法プロテクトを展開した。
鉄壁を発動した者は密集陣形の外側に立ち正面に盾を構え、内側の者は斜めに盾を構えた。中心をフリオニールにして、遠距離攻撃に備えた。
「そんな弓で貫ける我々ではないぞ!」
それを聞いたジェラルトは、装備していた兜のベンテールを上げ、ニヤリと笑うと、
「ああ、すまん。アホだから気付かなかったけど、俺弓使えないんだったぜ。うっひっひ。結構落ちるぜ、気を付けろよ。」
「お、男だと!?」
フリオニールとロンベルトが同時に声を上げた。
だがその声が消える前に、ジェラルトはゲラゲラ笑いながら傍にあった縄3本を切り払った。
ジェラルトが切った縄は、フリオニール達の立っている足場を支えていた丸太を抑えてある縄で、切られて支えを失った足場はぐらつき、徐々に崩れ出した。その場から逃げ出そうと、フリオニール達は我先にと馬を走らせた。
だがそうなった時にはもうすでに遅く、全ての重装騎兵は崩れていく足場と共に、事前に掘られていた深い穴の中へ真っ逆さまに落ちて行った。
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