第16話「搦め手」
剣より頭、魔法より読み。
平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。
ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。
ドスーン、ドスーン、ドスーン。
風魔法で切り倒された巨木が次々と地面を叩きつけるように倒れていく。倒れた木々は互いに重なり合い、折り重なりながら、森林出口を完全に塞いでいった。
それを見てジェラルトはこう呟いた。
「まあ、こんなもんだろ。早く戻ってやらなきゃな。」
ジェラルトは交代の後、新しい指示の元、北東の森林出口付近の木を魔法で伐採し、出口を潰し、陣地に帰還した。
パイクが備えられている場所前まで来ると、ジェイクが叫んだ。
「待て!ジェラルト、ちょっと待て、ゆっくりだ、そこからゆっくり真っ直ぐこっちに来い、絶対ゆっくりだぞ。」
ジェラルトは馬を引きながら、ジェイクの指示通りゆっくりと陣地に進入した。
「ジェラルト、色々ありがとう。負担ばかりかけてすまん。」
「ああ、気にするなって。それより、アレできたのか?ジェイクにゆっくりゆっくり言われたけど、アレって、そこまで強度がない訳じゃないだろ?」
陣地に入るとジェラルトはマイトランドに尋ねた。
「ジェイクは、アレで結構作業には繊細なところがあるからな。皆で作業したのに壊されたら嫌だってところだろう。仲間思いだしな。」
「ああ、言われてみればな。確かにエリオット、ダン、ロブは、アイツにおんぶに、だっこって感じだもんな。」
「ああ。あの三人うまく使いたいんだけど……今回は決戦まで出番なしかな。なかなかね。ジェイクも甘いしな。三人が何かするなら俺がやるって聞かなくてな。」
「ああ、そう言えば、最終的に貴族2班と決戦って言ってたな。どうしてまた2班なんだ?」
「うん、指揮官がそこそこ慎重な様で、森にはもう入らないと思う。プライドの高そうな1班に仕掛けたいんだが、どう思う?」
「マイトランドがそう思うなら、俺は反対しないぜ。今までだってずっとそうしてきたろ?」
事実ジェラルトは、過去マイトランドの作戦計画に反対したことは一度もない。
「ならフレデリカに1班と2班のことを聞いて、作戦会議にでもするか。」
「そうだな。新しい罠も完成したようだしな。」
マイトランドとジェラルトはフレデリカ、ジョディー、ジェイクを呼ぶと、地面に陣地の見取り図を描き、作戦会議を開始した。
マイトランドは地面に石を置き、指で動かしながら説明した。
「まず貴族1班をここに誘い込む。ここで最初の罠にかかる。回避してもここに次の罠がある。最終的にここ陣地前で仕留める。こんな感じだけどどうかな?」
フレデリカがマイトランドに尋ねた。
「そんな簡単に罠に嵌るかな。相手は貴族だぞ。それもグレッテ卿は自身も爵位を持っているほどの有力貴族だ。頭も良いし、戦闘能力も高い。私などは到底かなわない。特にあの班の副官、ライト卿とラーケン卿に関しては、異能も、魔法も、並みの1個小隊ほどの戦力があると聞くぞ。」
そう説明するフレデリカに、不敵な笑みを浮かべてマイトランドは答えた。
「だからさ。彼らは自信を持っているだろう?だから罠にかかりやすいのさ。実際こっちも一対一とか、正面決戦なら大分分が悪いだろうが、正面切って戦う必要は無い。プライドが高くて戦闘力が高い彼らほど、簡単な罠に嵌るってもんだ。切り札らしい物を一度見せてしまえば、見せた物を最初に警戒するって人間の真理もついたものだ。ああ、もちろん失敗した場合も考えてあるぞ。」
「そういうものなのか?」
「ああ、多分最後の決戦以外は楽勝だな。それに今回は出来るだけ搦め手のみで敵を圧倒したい。」
「それはどうしてだ?」
「うん?お前はなんで質問ばかりなんだ?少しは自分で考えろ。今回の模擬戦以外の質問はなしだ。それじゃあ、皆に伝えておいてくれ。」
「ジェラルトにはすぐ教えるじゃないか。」
「ジェラルトは俺自身も同じだ。教えて何が悪い。」
頬を膨らませるフレデリカを尻目に、作戦を話し終え、しばらくすると、イブラヒムが大声でマイトランド達に報告した。
「森林地域と湿地帯の間で交戦中!重装騎兵1個班と騎兵1個班、騎兵班は弓騎兵!壊滅寸前だ!」
報告を聞くとマイトランドは即座に、
「作戦通り、先ほどの20名は直ちに準備してくれ!貴族1班を招待するぞ!」
そう言って、装備を持ち馬に乗ると、マイトランドは先に陣地をゆっくりと出て行った。
罠の配置、誘導経路、退路の確認——頭の中で描いた盤面と実際の地形が一致しているか、自分の目で確かめておく必要があった。
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