第15話「戦車」
剣より頭、魔法より読み。
平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。
ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。
アツネイサに食料を届け、マイトランドとポエル、ジェラルトとアツネイサがそれぞれ警戒を交代すると、次の警戒の交代までは何もなかった。罠に引っかかった数人はいたものの、その全てが平民班の生き残りであり、意図せぬ形での脱落だった。
警戒の交代は、負担を強いるポエルとアツネイサを気遣ってのことだった。
罠の張り替えなど、少し面倒な作業はあったものの、警戒の交代までは何事もなく2日目の朝を迎えると、マイトランドは森林地域以外の地域を水色の鳥を飛ばして確認した。
水色の鳥との繋がりを断つと、マイトランドは班員達にこう告げた。
「残る班は、騎兵がフレデリカ達を入れて5個班、歩兵が俺たちを入れて7個班だ。」
初日に60個班で開始された模擬戦は、2日目になると1/5になっていたのだった。
「多分、俺達以外の平民班は今日で全滅するだろう。潰し合いを待とう。何かあったら起こしてくれ。」
マイトランドはそう言い残すと、少しの間眠りについた。
だが、ほとんど時間を置かずに起こされることとなった。
ピューン。
という蟇目鏑矢の音を目覚まし代わりに飛び起きると、
「どっちだ?」
「北東方向からだ。移動はしていない。1回、騎兵だぜ。」
マイトランドの問いかけに、ジェラルトはいつになく真剣な顔で答えた。
「アツネイサと変わってくれるか?北西はお前に任せたい。そこで可能な限り休んでくれ。もし危ない場合は、わかってるよな?」
「任せてくれ。」
マイトランドはジェラルトにアツネイサとの交代の指示を出すと、班員に、
「ジェイク、フラン、シュウ、ジョディー、フレデリカ、と新貴族4名は俺と共に北東方向の森林出口に向かう、装備を整え前進する!急げ!」
そう言うと、自身の装備を整え、遊撃隊全ての人員の準備が整うと、その足で北東出口へ向かった。
マイトランドは敵との交戦も考えて進軍したが、何事もなく出口付近に到着すると、ポエルが警戒場所から降りてきた。
「ポエル、敵は今どの辺だ?」
マイトランドが確認すると、ポエルは申し訳ないといった様子で答えた。
「さっきまでそこにいた。でももういない。」
「理由は?」
「そのまま入ってくるかと思って。入って来たら一人罠にかかって、それを見て引いていった。」
「引いた部隊の特徴とか覚えてるか?」
「うん、女の子が、一人用の荷馬車に乗ってた。」
「荷馬車?」
「うん、荷馬車。でも荷物は乗らないかも。荷馬車にしては小さい。馬2頭で引いてたし、あの子結構重いのかな?」
「荷馬車……馬2頭で……小さい……。」
マイトランドは少し考え込むと、
「あぁ、もしかして指揮官用の戦車じゃないか?」
「戦車?」
「ああ、戦闘用馬車、つまり戦車だ。フレデリカ、戦車を使う班は?」
フレデリカは少し考えると、答えた。
「多分、ロンメル嬢の班ではないか?」
ロンメル嬢とは、貴族2班のグレンダ・フォン・ロンメルのことである。
ロンメル家は代々、2院制であるヴェルタ議会の貴族院を纏めている、由緒正しき家系だ。なぜ貴族の娘が軍に志願するのか、それだけ軍がひっ迫しているという事なのか、それとも自分の娘を軍に志願させることにより、ロンメル自身の発言力を高めようという事なのか、今は本人以外の誰にもわからないだろう。
「とすると、貴族2班か。これで貴族2班と新貴族4班には待ち伏せは通じなくなったな。もう森には入って来ないと見るべきだ。どこかで正面から当たるしかない。ポエルありがとう。引き続き警戒を頼むよ。」
そう言って、部隊を引き返した。
陣地に帰ると、班員全員に、
「最終局面は、多分貴族2班か新貴族4班と当たることになる。皆で例の準備するぞ。」
マイトランドはそう言うと、貴族1班を引き込む準備にとりかかった。2日目の正午に差し掛かろうかという時間であった。
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