プロローグ最終話「差出人不明」
剣より頭、魔法より読み。
平民の少年が戦場の頂を目指す、泥臭い成り上がり戦記です。
ゆっくり読んでいただけると嬉しいです。
丘の頂上付近の木の陰で腰を下ろし、2人はグレイグから送られた最後の箱を開けた。
「うわ、すげぇなこれ。新品の剣なんて初めて見るぞ。盾も使いやすそうだ。兵士になるお祝いってやつか?」
ジェラルトの箱には、まるでジェラルトの為に誂えたかの様な、新品の鋼鉄製の片手剣と同じく鋼鉄製のラウンドシールドが入っていた。
「俺には新品の剣なんて入ってないけど。」
マイトランドが自分の箱を開けてみると、古びた短剣2本とドルトン銃を短くしたような短銃、それに羊皮紙が入っていた。
マイトランドは首を傾げながら、その羊皮紙を手に取ると開いて、ジェラルトと一緒に読み始めた。
そこには、丁寧な字でこう綴られていた。
"親愛なるマイトランド、ジェラルトへ
覚えているか?オルメアの兄グレイグ・トランガである。
マイトランドが予測した通り、あの戦場での戦闘は我が軍の大敗であった。圧倒的大多数の我が軍が負けたのだ。
もしかしたら我々ヴェルタは自国可愛さに、とんでもない戦争に足を突っ込んでしまったのかもしれんな。
遅れはしたが、先日お前達が持ち帰った首、私も含めた将軍4名の遺族に掛け合って、軍に入るお前達へ餞別を送ってもらうことにした。
アルドリック夫人からはマイトランドの馬、これはアルドリック将軍の予備馬だ。ベルナード夫人からはジェラルトの馬、これはベルナード将軍の予備馬だ。どちらも名馬である。
ラーム将軍の父君からは防具一式、これはグエスタ製の最新式だ。
そしてオルメアの妻からはジェラルトの剣と盾と手投げナイフ、見つかり辛いとは思うが、剣の柄に搭載されている。
私からマイトランドに送るのは、オルメアが軍に入る前に父からもらったよく手入れされた形見の短剣、同じように私の短剣だ。
そしてもう一つ、同封されていた短銃についてだが。帝国以外ではドルトン騎兵銃とも呼ばれている。帝国ではピストオレ、我が国ではピストレットと名付けた。これは私からではない。心当たりがあるなら、大切に扱うように。
軍では支給品を使おうが、自前で用意しようがどちらを使ってもいいことになっている。だが、新兵教育ではくれぐれも支給品を使うように。
私が言うのもおかしな話となるが、それらを有効に使いオルメア達のような悲劇を二度と起こさぬようにしてほしい。
間もなく、2人にも召集令状が届くことになると思うが、新兵教育を無事修了させ、戦地での活躍を期待する。
最後になったが、マイトランドよ、平民のお前は、軍師への道は厳しいものとなるぞ。
貴族どもに何を言われても、決して諦めること無く、首席で修了しグリルファウスト大将の元へ報告に行くのだ。大将も楽しみにしていたぞ。
ジェラルトよ、友として、ライバルとして、良い兵士として、マイトランドを補佐するのだ。無論お前が首席でも構わんぞ。
お互い切磋琢磨し、己の技術、異能、魔法、俯瞰力、すべての面において他の者を凌駕してほしい。
そして本当にオルメアのことありがとう。
ヴェルタ陸軍参謀本部 グレイグ・トランガ"
グレイグの手紙を読み終えると、マイトランドはしばらく無言だった。
羊皮紙を箱に戻し、静かに口を開く。
「ジェル、この装備全部箱に戻して、首都に行って馬と一緒にグレイグに預けないか?」
「なんでまた?」
「俺達にはまだ早いだろ?それに新兵教育には使えない。だったら新兵教育が終わるまでは必要ないだろ?」
「フフッ。それもそうだな。俺達だけ強い武器を使ってフェアじゃないしな。いいぜ!のった!」
2人は無言で装備を全て箱の中に戻すと、馬を村から引き、首都に向け出発した。
「なぁ。」
「なんだ?」
「新兵教育でさぁ、俺に遠慮して次席なんてことはやめろよ?」
唐突なマイトランドの言葉に一瞬言葉を失うも、ジェラルトは聞き返す。
「どうしたんだ急に?らしくないな。」
「俺は首席を狙うけど、ジェルも狙ってくれ。」
マイトランドの顔は真剣だった。
ジェラルトもいつもの様なふざけた表情ではなく真剣な顔で答える。
「わかったよ。でも俺が本気出したらお前やばいぞ?それにライバルは俺だけとは限らないだろ?」
「確かに。でもジェルとは親友であり最強のライバルでいたいんだ。だからこれからもよろしくな!相棒!」
「気持ち悪いな。グレイグの手紙に中てられたか?まぁわかった。こちらこそよろしく!相棒!」
マイトランドがそう言った瞬間、2人の背中を押すように風が走った。
「行こう。ジェル。」




