傭兵たちの罪
「わ、わたしが……あなた方を満足させたら、娘たちには手出しをしないと約束してくれますか?」
女はそういって諦めたように服のボタンを1つ外した。家に不法侵入してきた3人の男たち。なりを見ればどういう男たちか分かる。町を占領した王国軍に雇われた傭兵。正規軍や傭兵には、町での略奪暴行を禁じる命令が出ているはずであるが、それが徹底しているわけではない。このようにめぼしい家に押し入り、金品の強奪や婦女子への暴行が散発していた。
目の前の男たちはそういう連中だ。特に自分を押し倒して馬乗りになっている入れ墨が入った坊主頭の傭兵は、目つきが危ない。これまで何人もの人間を殺してきた目だ。こういう男に抵抗しても無駄だと悟った。
(それならば……)
母親は娘を守るために自分の身を犠牲にするしかないと決めた。夫は戦争に駆り出されて行方不明。年頃の2人の娘を守るにはそれしかなかった。
「へへへ……そうこなくっちゃな、奥さんよ。俺たち3人を満足させてくれたら、お嬢さんたちには手出しはしない。ああ、これはお互いの合意の上の行為ということになるな。あとで軍に訴えるなよ。じゃあ、始めようか」
坊主頭の傭兵は母親の服を剥ぎ取った。母親は坊主頭の傭兵のなすがままに身を任せている。この悪夢が早く終わることをひたすらに念じていた。
「それじゃあ、いただきますっと!」
坊主頭の傭兵は遠慮無く突貫した。ここ数日の激闘で女に飢えていた坊主頭は、性欲モンスターと化していた。いきり立つものを突き刺し、激しく前後に動き、若い母親の体を思う存分陵辱して、ありったけの欲望をぶちまけた。
「ふい~。まずは1発終了。次は誰が行く」
「当然、俺だな」
坊主頭は行為が終わると、銀髪刈り上げ男と交替した。坊主頭は煙草に火を付けて、回復に努める。ようやくありついたご馳走だ。1回や2回で終わらせるつもりはない。銀髪刈り上げ男のプレイをにやにやして鑑賞する。
銀髪刈り上げ男が長い時間をかけて、後ろから欲望を解き放つと、次は熊のような大男の番だ。熊男は抱き潰すと言わんばかりに乱暴に襲いかかった。そしてあらゆる姿勢で母親を責め立てた。苦痛と恥辱で気を失いそうになりながらも、母親はその行為を受け止めた。むしろ、早く男たちが満足するように演技をした。
それでも男たちの性欲は尽きることがない。地獄のような時間は延々と続いた。長い長い時間を母親は屈辱に耐え抜いた。最後は3人同時に相手をせざるを得なかったが、男たちの欲望を全て搾り取ることができた。
(これでこの獣たちは満足しただろう。娘たちを守ることができた……)
行為が終わって、まるで死んだように横たわる母親は、自分の犠牲によって大切な娘たちを守ったことに満足し、涙を流した。しかし、その思いはいとも簡単に破られた。坊主頭の傭兵が信じられない言葉を吐いたのだ。
「よし、前菜はこれくらいだな。30過ぎのババアじゃ、やはり満足できねえ。それじゃ、メインディッシュといきますか」
この悪魔の言葉に3人の中で少しはまともな銀髪男が、呆れたように両手を少し広げた。
「おいおい、そりゃこの奥さんが可哀想だろ。娘守るために身を捧げたんだからな。サービスも悪くなかった。なあ、お前もそう思うだろ?」
銀髪男は熊男に同意を求めたが、まだ満足していない熊男はこのブレーキ役に協力をしなかった。
「ンゴ、ンゴ……オデは満足してないでンゴ」
「2対1だな。こういうときは多数決だろ。まあ、お前がやらないなら、別にいいぜ。どうせ、このババアで3発抜いてもう戦闘不能なんだろ。戦闘不能野郎は、ここで待ってろ!」
坊主頭はそう言って銀髪刈り上げ男の提案を却下した。馬鹿にされた銀髪男は怒るでもなく、やれやれと首を振った。坊主頭の男の狂暴ぶりは今に始まったことではない。それでも銀髪刈り上げ男の良心は消えなかった。さすがに年端もいかない娘たちが可愛そうに思ったのだ。
「まあ、待てよ。俺も若い女で口直ししたいぜ。だが、ここで時間をかけ過ぎた。部屋から逃げてなけりゃいいけどな」
銀髪男はそうわざと隣の部屋に聞こえるような声でそう答えた。坊主頭はケタケタと笑う。
「あの小娘たちが逃げる度胸があるわけがなかろう。それにドアは家具で塞いだ。開けて逃げられねえ。今頃、部屋の隅で震えているぜ。それを襲うのも興奮する!」
「お前、本当に悪い奴だ。だが、窓から逃げるかもしれない」
そう言いながら、銀髪男はどんどんと壁を叩いた。隣の部屋にいる姉妹に逃げろという合図だが、坊主頭や熊男たちは娘たちをわざと怯えさせていると思い込んだ。
「モーリス、お前も結構、残酷な奴だなあ。それじゃ、震えている子猫ちゃんたちのところへ行こうじゃないか」
傭兵たちは娘2人がいる隣の部屋に歩いて行こうとする。母親は濡れた体ののまま、泣き叫んで傭兵の足にしがみつく。
「待って、約束したじゃない、娘たちには手を出さないって!」
「うるせえなババア。この世はやったもん勝ちなんだよ!」
坊主頭の傭兵は母親を蹴っ飛ばした。それでも母親は立ち上がり、坊主頭の傭兵にすがりつく。
「逃げて、ローズ、アリサ、すぐに逃げるの!」
母親は大声で叫んだ。坊主頭の傭兵と熊のような大男は母親を抑えつける。そしてナイフを取り出した坊主頭は、無情にも母親ののどを掻き切った。
母親は鬼の形相で自分を殺す傭兵をにらみつけ、やがて(ヒグッ……)と息をもらし息絶えた。
坊主頭の傭兵は母親の死体を蹴り上げる。血を流しながら壊れた人形のように転がる母親。坊主の傭兵はつばを床に吐いた。もはや悪魔の所業である。
「おい、さすがにやり過ぎだぞ」
銀髪刈り上げ男は顔をしかめた。坊主頭は女と楽しむとは言っていたが、殺すとは言ってなかった。さすがに死体が見つかれば、戦時中でもそれなりの捜査が入る。犯行がばれれば、処刑は免れない。
「ふん。ここに侵入した時に、お前も証拠隠滅の方法を考えていただろう。それを実行するだけのこと。まさか、この女との約束を守るつもりだったか?」
「ンゴ、ンゴ……。約束しても訴えられれば俺たち死刑ンゴ」
「ちっ……本当にお前は鬼畜だな。だが、おかげで積極的なサービスでもてなされたわけだ……」
銀髪男は皮肉を言った。こうやって話すことで少しでも娘たちが逃げる時間を稼いでいる。幸い、頭の悪い坊主頭や熊男には感づかれていない。
「くくく……そういうことだ。行くぞ、抵抗する若い女とやるのもまた一興だ」
3人の男は隣の部屋に押し入った。だが、銀髪刈り上げ男の期待通り、窓が開け放たれて、娘2人はそこからシーツをつなぎ合わせたロープで逃げた後であった。慌てて窓辺に駆け寄った坊主頭は大声で怒鳴った。
「おい、嘘だろ!」
「ンゴ、ンゴ、あの小娘ども、逃げやがったンゴ」
2階の窓から地面を見る。姉妹はどこにもいない。
「早く逃げないと通報されるぞ」
銀髪刈り上げ男は、娘たちの逃亡に安堵したものの、そんなことは表情に出さずに、次は仲間に逃亡を促した。現行犯で捕まれば、3人とも極刑は免れない。
傭兵たちは、この犯行を隠すために、あらかじめ戦場から運んできた兵士の遺体を2階に運んだ。そして坊主頭の男が勢い余って殺してしまった母親の遺体に重ね合わせた。そして何食わぬ顔で傭兵隊の司令部に報告した。
2時間後、傭兵隊長はとある屋敷の凄惨な現場に立ちすくんだ。1人の女性が陵辱された挙げ句、殺されていたのだ。そしてそこには1人の守備兵が覆いかぶさるように死んでいた。部下の3人の傭兵が説明する。
「俺たちが駆けつけたときには、こいつが女を殺したところだった。あと少し早かったのなら、命だけは助けられたのに実に残念だ」
坊主頭がそう言って、覆い被さった守備兵の遺体を足で軽く蹴った。そして感情のこもってない口調で淡々と続ける。
「恐らく、この守備兵が負けて絶望的になってやってしまった犯行だ。実に嘆かわしいことだ」
「ンゴ、ンゴ……実に鬼畜の所業ンゴ」
熊のような男の言葉も感情がこもってない。銀髪刈り上げ男は何も言わない。
傭兵隊長はため息をついた。この傭兵たちの報告内容はにわかに信じられない。このむごたらしい現場をよく調べれば、おかしな点はいくつかあった。それを統合すれば、素行の悪いこの3人の所業ではないかと十分に疑うことができた。
しかし、陥落したばかりの町の混乱に乗じて同様の事件は頻発していた。状況証拠もある。守備兵は裸で女性の上に覆い被さっていた。守備兵のものと思われる凶器の傷もある。状況だけを見れば、守備兵が負けたことに絶望し、この凶行を行ったとも言えなくはない。
それにこの3人の犯行であると実証されれば、この3人は間違いなく死刑である。その場合は上官の自分も罰せられる。3人の素行はすこぶる悪いが、戦闘能力は随一で今後も自分の部下として役立つことは間違いがない。死んでしまった女には悪いが、この3人を罰したところで生き返るわけではない。
(所詮、この世は弱肉強食だ……。この狂犬どもに目を付けられた時点で、運がなかったのだ)
ここで部下の3人の罪を暴いたところで、自分に利益はない。そして3人を糾弾したところで、女が生き返ることもない。ここは見なかったことにするのが正解だと隊長は心の中で頷いた。
「わかった。ご苦労」
傭兵隊長は司令部にこう報告した。
『敵守備兵が民家に押し入り、女性に暴行。そして証拠隠滅のために殺害。その現場に駆けつけた傭兵3名が守備兵を排除した』
司令部は本国にこの日の状況をこう報告した。
『占領地の混乱は修復しつつあり、治安は落ち着いている。国軍の損害0名。住民の被害、若干名』




