廃村の死闘②
長らく中断していました。今日から連載再開です。よろしくお願いします。
「ジャギよ、あの櫓の上の人間を排除しなければ、被害が大きくなるぞ」
物陰で戦闘の様子を伺っていたジャギにピピンがそう話しかけた。ピピンは村の総攻めをジャギに任せたが、人間たちの守備が堅いと見てやってきたのだ。
物見櫓から放たれる矢の攻撃に少なからず被害が出ており、それを警戒してバリケードへの攻撃に影響が出ている。村中が燃えているために視界が明るく、闇に紛れて攻撃する自分たちには不利な状況である。
「ピピン様、それは分かっていますが、あの高いところに我々は行けません」
(ククク……)とピピンは笑った。ジャギは自分の地位を虎視眈々と狙っていることは承知している。しかし、まだ自分に遠く及ばないのはこういうところだ。
ジャギには戦闘力があるが知恵が足りない。群れを統率するには力だけではダメなのだ。今も力押しで配下のオオカミを多数失っているのに、強攻策を推し進めるだけだ。
「ジャギよ。行けないのなら頭を使って人間を動かせ」
「……頭を使えとおっしゃられましても……」
ジャギはそう答えるしか無い。どうやって物見櫓の上の人間を倒せというのだろうか。ピピンは首を振った。そして鼻先を燃えて崩れていく小屋へ向けた。
「火の付いた木を運んで、あの物見櫓の下に運べ。燃やしてしまえばよいのだ。火は人間だけの特権ではない」
(な、なるほど……。その策があったか!)
「ピピン様、すぐに実行します」
ジャギはピピンに言われて、昨晩の丸太でたき火の防御を破壊した作戦を思い出した。獣は本能で火を恐れる。しかし、うまく使えば自分たちの役に立つことをピピンは示してくれた。
(俺はまだボスには遠く及ばぬ。だが、ここで功績を挙げて群れのオオカミたちに俺の力を見せておかねばならない)
ジャギはすぐに若いオオカミ5頭に命じた。正面バリケードへの攻撃を継続して、そちらに目を向けさせておくことも忘れなかった。
*
「ほい、5頭目!」
モーリスは矢が命中してハイテンションになっていた。自分が5頭。ゴードンが3頭倒して、オオカミたちの攻撃の勢いがなくなってきている。
「この防御態勢、完璧だぜ。オオカミと直接戦うゴードンの野郎と比べて、俺は襲われる可能性もないし。これは楽勝だな……。おや、なにか煙臭い」
下から薄らと白い煙を感じたモーリスは、慌てて物見櫓から真下を見た。攻撃方向とは逆の柱が燃えている。最初は周りの建物から飛び火したのかと思ったが、火のついた木が何本も柱の下に置かれている。燃えさしをオオカミたちが運んできたのだ。
「ち、ちくしょうめ!」
このままではいずれ物見櫓が燃え落ちてしまう。モーリスは役場へ退却することを決めた。こういう時のために、ロープを役場のバルコニーに縛り付けておいたのだ。
2階のバルコニーを見ると、フェルナンドが行ったり、来たりして戦況を確認している様子が分かる。ぐるりと囲まれたバルコニーを移動し、裏手で戦っているナダル隊長に状況を伝えているのだ。
「物見櫓はもうダメだ。オオカミが火を付けやがった。そちらに移動する」
モーリスは大声で叫んだ。正面玄関を守っているゴードンとバルコニーにいる俺に伝えるためだ。当初は矢を打ち尽くしてから、建物へ撤収するはずであったが、予定が狂った。
しかし、無事にバルコニーへ行ければ、今度は屋根に出て2階からオオカミを射殺することができる。モーリスの物語の第2章はこれから始まるのだ。
モーリスはロープを掴むと身を乗り出した。物見櫓から体を離すとすぐに両足を上げてロープに絡ませる。そのまま手と足をつかって少しずつ移動を始めた。
俺はモーリスがこちらに移動してくるのを見て、ロープの縛ってあるところへ移動しようとした。モーリスに何かあれば助けるためだ。
その時だ。




