廃村の死闘①
いつも応援ありがとうございます。明日から5日間、旅に出ます。しばらく更新お休みします。
(主様、村の外のオオカミたち、配置についています。およそ100頭。絶対に森の外に出さない布陣だ、ワン)
(村に攻め込むオオカミは、およそ50頭だ、ワオン)
偵察に出した地丸と天丸が帰ってきて、そう報告した。オオカミたちはここで確実に仕留めるために、完璧な作戦を取っているようだ。村の中に突入してくるオオカミの数が少ないのは、火を付けるというこちらの作戦を予想してのことだろう。
(さすがは川を渡らなかった賢いオオカミさんですね)
(どうします、主様。ワン)
(ここを守り切っても、森の出口まで包囲されているで、ワオン)
(村の外については考えがあります。それよりも今晩、例の作戦を実行します)
アリエスはそう言って微笑んだ。
(いよいよだ、ワン)
(任務達成だ、ワオン)
(いえいえ、さすがに全部は無理です)
(残りは明日ってこと、ワン)
(慌てないことが大切だ。ワオン)
(今晩で面倒な方々を片付けます)
2頭の精霊犬はアリエスの言葉を聞いて、今晩に実行すべきことを理解した。2頭とも賢いのだ。
(任務遂行はともかく、オオカミどもも侮れないで、ワン)
(この防御態勢で今晩、主様は生き残れますか、ワオン)
(傭兵さんたちはクズですが、戦闘に関しては優秀です。一番攻撃が集中しそうな正面玄関ですが、一人は前方の物見櫓からの狙撃。もう一人は、玄関前に築いたバリケードで有利な戦闘。あのバリケードは、まるで小さな要塞。あれを落とすのは、オオカミさんたちもさぞ苦労することでしょう)
アリエスは2階のバルコニーから、傭兵たちの防御態勢を確認している。今晩だけなら守り切れる可能性は十分ある。
表の出口を守るのは大男のゴードン。後ろは役場の建物。左右を大きな家具を使って作った頑丈なバリケードを築いた。まるで出城のようなこの場所は、正面のから突っ込んでくるオオカミたちを防ぎ、立ち往生したところで彼の巨大なハンマーの餌食となる。この出城を突破することは容易ではない。
(左右のバリケードが保てばよいですけどね。うふふ……)
(主様は相変わらずえげつないで、ワン)
(えげつないでワオン)
(えげつないって、随分と主を悪く言うのですね。)
アリエスの顔は笑顔であったが、本心から笑っていないことは忠実な下僕たちは分かっていた。2頭とも同時に『さーせん』と謝った。アリエスは、今度は本当の笑いを顔に浮かべて腰に着けた筒をポンポンと叩いた。
「そろそろ、あなたたちは帰る時間よ)
アリエスはそう言うと2頭の精霊犬は煙のように筒へ吸い込まれていった。
日暮れてオオカミたちの遠吠えが聞こえてくる。日が沈んで5時間が経過した。夜中である。オオカミたちも傭兵たちも十分に体を休め、日が昇るまでの戦いに奮い立った。
「まずは先制攻撃の狼煙を上げようじゃないか!」
役場のベランダからモーリスが次々と火矢を放つ。まずは物見台がない裏側。4つある家の屋根に次々と火矢を命中させる。乾燥した家はたちまち炎に包まれる。
「それじゃ、次は物見台から焼き払うぜ」
モーリスはあらかじめ、物見台へと渡してあったロープに手をかけた。両手両足をロープにからませて、芋虫のように移動していく。
そして5分もしないうちに物見台に到着した。そこから3方向に向かって火矢を放つ。あっという間に村中が火に包まれた。これではオオカミたちも数にものを言わせて攻撃する作戦は取れない。
「お、奴ら、来やがった」
モーリスは物見台から火が照らす中にオオカミらしき動物が無数走ってくるのを見つけた。
「隊長、奴ら来ますぜ!」
そう叫んで役場の表裏の出入り口を守るナダルとゴードンに知らせる。
「来たか!」
ナダルは槍を構えた。普通のオオカミなら家にこもれば何もできない。だが、このムルナウに住み着いたオオカミたちは、建物破壊はお手の物だろう。万が一、入り口の扉を突破されたら、数で負けてしまう。ならば、入り口付近で有利な体制で戦いを挑んだ方が賢明だ。
それに日が昇れば森を突破することになる。そのときまでにある程度のオオカミの数を減らすことも目的だ。
「ゴードン、無理はするなよ。2、30頭倒せば上等だ」
建物の裏口を守るナダルは、表を守るゴードンに聞こえるよう大音声でそう言った。村中が燃えているので明るく視界はいい。そして炎と煙がオオカミたちの行く手を阻む。大群で次から次へと襲いかかる戦法は取れない。
モーリスは物見櫓から、視認したオオカミを弓で射る。この攻撃がオオカミたちの動きを封じていた。特に役場前の広い場所は、物見櫓から丸見えで正面扉前のバリケードに向かうオオカミは、モーリスの矢の前に1頭、また1頭と射貫かれて死体を晒す。
うまくバリケードにたどり着いても、そこには巨大な戦斧を振り回すゴードンの一撃で葬られる。




