オオカミたちの追撃
光と爆音と共に先頭を走っていた親衛隊の若いオオカミが宙に舞った。そのまま地面に叩きつけられる。命は失わなかったが気絶して先頭不能になる。さらに1頭、2頭と同じように舞った。
「ピピン様、地面に罠が仕掛けてあるようです」
妃隊のハクヒがそう進言した。ピピンはすぐに吼えた。停止命令である。人間たちを追っていたオオカミたちはその場に停止する。
「被害は?」
「親衛隊が2頭。妃隊が1頭。全員重傷。戦闘不能です」
ハクヒはそう報告した。どうやら地面に何か仕掛けがしてあるようだ。3頭を失ったが、まだ罠は仕掛けられてそうだ。
「迂回する」
ピピンはそう命令した。迂回と行っても右に30メートルほど移動し、直進するのだ。
「ピピン様、その程度で大丈夫でしょうか?」
ハクヒの疑問にピピンはこう答えた。
「不思議な力は羊飼いが使っている。ならば羊飼いの通った道を含めたせいぜい幅10mほどのところに仕掛けられているはずだ。奴らも進みながら罠の魔法を設置したのだ。広範囲に仕掛ける余裕などあるまい」
これを聞いたハクヒも他の妃のメスオオカミ、親衛隊の隊士たちも感心した。ピピンの洞察どおり、30m離れて進むと誰も罠にはかからなかった。
そして川岸へ到着した。人間たちも羊たちも川を渡ってしまっていた。向こう岸に去って行く羊と矢をつがえて狙っている人間たちが視界に映った。
(この流れの早い川をどうやって渡った?)
ピピンは川を観察して疑問に思った。しかも水深は深さそうだ。
「川底に足場があるはずだ、探せ」
そう親衛隊に命ずると確かに川底に岩があり、それにより川底が上がって浅瀬になっているようだ。しかし、水の色が緑色で岩がよく確認できない。
(これは後を追うことは危険だ。それに人間の魔法使いのことだ。川底に何か仕掛けをしている可能性がある。ここは迂回して橋へ向かうしかない)
ピピンはこれ以上追跡することを諦めた。それより、味方と合流をして数を集めた方がよいとの判断だ。
「どうせ、奴らの逃げ込み先は廃村だ。あそこで全員、食ってやる!」
ピピンは森中に響く声で吼えた。妃隊の雌オオカミと屈強な親衛隊もそれに応えるように吠えた。囮に騙された第1軍団と第2軍団のオオカミたちも廃村に集結するだろう。人間たちに生き残るすべはない。




