岩場の攻防①
ルードは最後のオオカミの脳天を手に入れたハンティングナイフで貫いた。隣では弓の使い手であるモーリスがオオカミを射貫いたところであった。
「ふん、ちょろいぜ」
「ああ。でもこいつら、こっちから攻撃してくるとは思ってもみなかったみたいだな」
モーリスはこの作戦がオオカミたちの出鼻をくじいたことを知った。3つに分かれての行動がオオカミたちに混乱をもたらせたことは、この小さい群れの3頭のオオカミが不用意に近づいてきたことからも分かる。
今は音も臭いもオオカミたちに察知されている。この戦いを察知して、オオカミの群れがここに殺到してくるはずだ。
そうすればナダルたちが逃げる隙が与えられる。ナダルたちに向かっていたオオカミが、ルードたちのところへ救援に向かうからだ。
それらを振り切り、岩場めがけて脱出できる。アリエスは偵察のオオカミたちを20分以内で倒せと指示していた。ルードは時計を持っていない。しかし、一連の戦闘は20分もかかっていないことは間違いがない。
「よし、右回りで岩場へ向かうぜ」
「おうルード、今晩の宿へご招待するぜ」
ルードとモーリスはそう言って走り出した。3頭のオオカミを倒したとはいえ、それぞれかなり強いオオカミたちであった。口ではチョロいと言ってはみたものの、これ以上の数のオオカミと戦うのはかなり厳しいと実感したからだ。
「30分が経った。我々も移動するぞ」
ナダルは腰のベルトに鎖でつながれた懐中時計を取り出して、時間を確認した。オオカミたちの咆哮が、ルードたちが進んだ先から聞こえてくる。恐らく、ルードたちは戦闘に入っている。
自分たちもうかうかしていられない。何分もしないうちにここにオオカミの群れが殺到してくるだろう。疲れてはいたが、さっさと岩場めがけて移動を開始する。
(それにしても……)ナダルは感心した。ここに留まることで、オオカミたちはルードたちに引きつけられ、自分たちの方に来ていない。
ここから、ルードたちがいたエリアをかすめるように進めば、時間差でオオカミたちの背後をかすめて突破できるであろう。まるで空から見ているかのように、時間差をつけ、オオカミたちの包囲網の隙をついているのだ。
ナダルは馬車を進ませる。オオカミに気づかれないようにゆっくりと動く。馬車の後方を進むゴードンは、後方からの襲撃に備えていたものの、岩場へ着くまでにオオカミに出会うことはなかった。アリエスが言ったように、この待機組が一番安全だったようだ。




