精霊犬の報告
(主人様、あいつらやっぱりやばい奴です、ワオン)
(やばいけど、頭は悪そうだ、ワン)
(傭兵は頭が悪いのは当たり前だ、ワオン)
(次席家令のお兄さんは、少し頭は良さそうだけど……)
(天丸、地丸、今は頭の良さは関係ありません。オオカミたちを撃退できる体力があるかないか。そう言った意味では傭兵さんたちは合格でしょう。さて、どうやって任務を果たしましょうか)
精霊犬は主人と言葉を交わせる。それはアリエスにしか理解できない音であり、他の人間は、『ワオン』「ワン」という犬の吠え声にしか聞こえない。そしてアリエスも心の中で彼らと意思疎通ができる。
ちなみに『ワオン』と吠えるのが天丸と名付けられた全身白毛で頭に天使の輪のような黒い模様がある。「ワン」と吠えるのが地丸。こちらは天丸と対照的に黒毛で白い輪の模様が頭にある。
(任務を果たす前に主人様に無礼なことをしそうだ、ワオン)
(ほんと、特にあのルードとかいう奴、欲望の塊だ、ワン)
(そうね、傭兵というのは乱暴な人が多いようです。今のところ、あの3人はどうしようもないですね。隊長さんも優柔不断のようですし)
(主人様、あの家令の青年はどうだ、ワン)
(……あの人は傭兵さんたちとは違う種類のようです)
アリエスの口調は淡々としている。2頭の精霊犬は、アリエスに小声で自分たちがアリエスの代わりにやってきた悪戯を白状した。
(あらあら、それは意地悪なことを)
(罰だ、ワン)(罰だ、ワオン)
2頭はそう同時に吠えた。タイミングの良さにアリエスは微笑む。そして彼女は話題を変えた。
(あの方については、最後にします。まずは傭兵さんたち。そしてこの森を突破することが前提です。それについては、傭兵さんたちのおかげで計画が少し狂いました。オオカミさんたちが寝ている昼の間に、少しでも進みたかったのですが……。油断をすれば私も黄泉比良坂を抜けられないかもしれません)
アリエスは平原で草を食む羊たちを眺めている。太陽が少しだけ傾いている。そろそろ出発する頃である。傍らを見るとフェルナンドも毛布に包まって寝ている。
(天丸、地丸、そろそろ時間よ。羊たちを集めて)
(オッケーだ、ワオン、ワン)
精霊犬たちが走り出した。アリエスは首からかけた笛を手に取り、平原に向かって鳴らした。




