第40話 冒険者ギルド
「ヤクザをボコって、お金奪っちゃおうよ」
最下級の『青の冒険者』になったプルムが、そう言って微笑む。
「真面目に冒険者なんかして、コツコツ稼ぐなんてバカバカしいしね」
「…………」
プルムのあまりに乱暴な提案に、太郎は無言になるしかなかった。
時間は少し遡る。
●
プルムと太郎が、南地区の冒険者ギルドに着いたのは日が暮れる頃だった。
リード王国王都は、王城がある北から南に進むに従って、治安も生活レベルも下がる。この点は、日本の平安京と同じであった。
平安京で言うなら、羅城門(後世では羅生門と表記されることが多い)に該当する南門に近くにある冒険者ギルド周辺は、スラム街に近かった。
「ヤギと五芒星の看板。ここが冒険者ギルドね、太郎」
「ここが……?」
太郎が首を傾げる。
入口の横には膝丈ほどの高さの天使像が鎮座ましましており、周囲の薄汚れた建物と比べると年季は入っているが、綺麗に磨かれており荘厳さすら感じる。
「宗教施設っぽいって思った? だって、そうだもん」
太郎の疑問を読み取ったプルムが、太郎の反応を楽しみにしながら言った。
「名義上は、ここはリセント教の礼拝所だしね。形骸化しているとはいえ」
「どういう……こと?」
太郎が磁器製の長い黒髪の天使像をじーっと見ながら、プルムに尋ねた。
白い服の天使像は太郎と同じように、無表情で口を堅く結んでいる。
この世界において、金に準ずる価値を持つ磁器で出来た像なのだが、不思議と盗まれたという話は聞かなかった。治安の悪いこの南地区でも同じだった。
「イシュメイル戦記の時代、リセント教を背景にした民間の相互扶助団体が冒険者ギルドの前身ね。リセント教は中国の太平道や、白蓮教と違い、武力は持っていたけど反体制の武装蜂起することなく、小さな国造りを目指していた宗教よ」
「だから……滅びなかった……?」
「うん。勇者王の軍門に下ったけど、反抗しなかったことと、数百万人程度の小国を統治した手腕を買われ、教祖の家系は今じゃリード王国の侯爵よ」
プルムが太郎へ、簡単に歴史の授業をする。
国教化しなかった武装宗教団体のその後としては、最上級ともいえた。
「宗教組織としては、一度解体されたから熱心な信徒は多くないけど、民間信仰としてはリード王国の生活様式に影響するくらい広まってるわ。多くの日本人が、ご飯を食べる前に『いただきます』と、仏教由来の言葉を言うようにね」
そう言って、プルムが冒険者ギルドのドアを開き中に入った。
太郎もそれに続く。
〇
最初に小さな部屋があった。
多目的トイレより一回り大きい程度のサイズだ。
白い服を着た長い黒髪の受付嬢が、葡萄杢目の机を前にして座っていた。
20代半ばほどであろうか。飾り気の少ない楚々として清らかな女性だ。
受付嬢の前にある机には、白磁の花瓶に紫色の桔梗の花が生けられている。
「プルム・アンシャールという不肖の身にございます。己が罪深きを恥て、大天使アメリロード様へ、至心に帰依し奉りに参りました。浅学菲才なれど、信徒の末席に名を連ねることが出来れば、これに勝る幸甚はありません」
普段は自ら恃むところすこぶる厚いプルムが、謙虚にそう伝える。
名前も含めて全て嘘の言葉を述べて、微塵の後ろめたさもない。
「ようこそ、救済の駅へ」
長い黒髪の受付嬢が聖母のように微笑みながら、涼やかな透き通る声で言った。
彼女の言う『駅』とは、その昔リセント教団の支配地域の街道に設置されていた救済施設のことだ。信者であれば、無料で食事が出来る。
「では、米1俵か麦2袋、もしくはそれに準じる物をお納めください」
「土の匂いを知らぬ者ゆえ、財貨を捧げます」
プルムがそう言って、5枚の銀貨を丁寧に受付嬢の前の机に置いた。
五角形になるように、銀貨をくっつけて並べる。
横から見ていた太郎は「その並べ方にも宗教的意味あるのかな?」と思ったし、それは正解であった。教祖が自身を表すものとして、星形を好んで用いていた。
昔から五芒星の形に置いた銀貨5枚を、入信の際に寄進させたゆえ、リセント教は『銀星教』とも呼ばれている。もちろん受付嬢が言ったように米か麦でも良い。
イシュメイル戦記によれば、教祖である大天使アメリロードは俗名を神子柴桔梗という美しい女性であったらしい。桔梗の花は星形ゆえ、『★』は彼女を表す。
本来は『大天師』なのだが、いつのまにか『大天使』表記になっていった。
天使と書くが、アメリロード=神子柴桔梗はリセント教の女神である。
神子柴桔梗がなんらかのスキル持ちであった可能性は高いが、イシュメイル戦記に書かれている描写だけでは不明であり、彼女は実子を残さず、養子に家を継がせたので、今となっては何のスキルがあったかわからない。
「浄財確かに預かりました。これより、貴女はリセントの家族です」
受付嬢がそう言って、プルムに最下級の青い冒険者証を渡す。階級が上がっていくと『青→赤→白→黒』と色が変わり、黒の冒険者は上級冒険者とも呼ばれた。
「本当は青はベトール級、赤はファレグ級、ハギトにオフィエルと私がカッコいい名前つけてたんですが、ここ500年で誰も使わなくなっちゃって残念です」
そう言って「ふふ」と、悲しそうに苦笑する受付嬢にプルムが声をかけた。
「ああ、オリンピアの天使と、五行思想の四季の色を合わせたんですね」
「あっ、わかります? 嬉しいなぁ、このネタわかった人に会えたの初めてです」
プルムの言葉に本当に嬉しそうに、受付嬢が微笑む。
オリンピアの天使とは、16世紀の魔術書アルバテル・デ・マギア・ウェテルムで言及されている天使で、各惑星や月と太陽を司る。先ほど名が挙がったベトールは木星、ファレグは火星、ハギトは金星でオフィエルは水星に対応している。
一方、陰陽道などの五行思想では春は木気の青(青春という言葉はこれに由来する)、夏は火気の赤、秋は金気の白、そして冬は水気の黒として扱われる。
ウナギで有名な土用は、それぞれの季節の間に挟まる土気の黄色のことだ。
土用の『丑の日』は夏だけだが、『土用』自体は春夏秋冬に存在する。
また水を表す『黒』が冒険者として最上位なのは、リセント教が老荘思想の影響を強く受けているからだ。現在の冒険者たちの価値観に関してはさておき。
上善如水────日本酒の名前で有名だが、元は老子の言葉である。
水のような生き方が最上、という教えだ。
「ああ、そうそう。こちらの方は?」
受付嬢がわかりやすい首の動きをして、太郎の方を向いた。
「弟です」
そうプルムが即答した。
「…………弟の……太郎・アンシャールです」
太郎がちょっと不満そうに、自分のことをそう名乗った。
「信者の家族もまたリセントの家族。ですが、婚約者だと……うーん。まぁ、いいや。私が考えた名前の元ネタわかってくれたし、サービスでOKです」
受付嬢というより、浮世離れした女神官のような雰囲気の女が奥への扉を開く。
「どうぞ、ご一緒に奥へ。マリーナ・リードさん、渡来太郎さん」
それと同時に、活気ある喧噪が響いてきた。
多くの冒険者が食事をし、酒を酌み交わしていたからだ。
〇
先ほどまでの、宗教的秘密結社のような雰囲気とは一転していた。
実際、ここの冒険者もなんなら運営者側も、ガチのリセント教の信者はそれほどいない。あくまで、名目上の話だ。日本で少林寺拳法を習っている人が、宗教法人である金剛禅総本山少林寺の信者であるとは限らないようなものである。
「おー、本当に本やアニメで見たみたいに、掲示板に依頼書貼ってあるんだ」
プルムがちょっと感動した声を漏らした。
その中の1つの詳細に、目を通す。
「これは白の冒険者以上限定の依頼ね。ゴブリン退治だけど……んん?」
プルムが、眉をしかめた。
違和感。奇妙な違和感を覚えていたからだ。
「さっき、誰かが私のこと本名で呼んだような……いや、それよりやっす。報酬が銀貨1枚って、準上級冒険者でもこんだけしか稼げないの? それに、場所がここからずっと東に行った国境付近だし……これって旅費だけで赤字じゃん」
「おや、お嬢ちゃん新入りかい?」
掲示板の近くの席にいた中年の冒険者が、プルムに声をかけてきた。
「ええ、今日からお世話になります」
そう言いながら、プルムがその冒険者の全身をよく観察する。
光沢のある、布製の鎧を身に着けていた。
コンポジット材の鎧ね。
冒険者を観察したプルムが、そう思う。
重ねた布に、樹脂をしみ込ませて固めた素材で作った鎧か。
軽いし、拳銃弾やクロスボウの矢を一度は防げるくらいの強度がある。
うちの国だと、下手なフルプレートアーマーより高価だし、やり手っぽい。
「わぁ、その鎧……素敵ですね。やっぱり、高かったんですか?」
とりあえずプルムが冒険者を褒める。
自分みたいな若くて可愛い子から褒められて、悪い気分になるおっさんはいないだろうと考えた。思い上がりも甚だしいが、正解である。
「へへ、わかる? そうなんだよ、お嬢ちゃん」
プルムの予想通り、冒険者が上機嫌になる。そして聞いてもいないこの甲冑のスペックや、武勇伝、どこで買ったかなどを延々と語り始めた。
対してプルムは前にネットで見たキャバ嬢の『さしすせそ』のテクで応える。
さ──「さすがですね!」
し──「知らなかったぁ」
す──「すごーい!」
せ──「センスいいんですね」
そ──「そうなんですか!」
の、『さしすせそ』だ。
「あはは、お嬢ちゃんと話していると楽しいなぁ」
と冒険者がいい感じに出来上がったところで
「あそこにある、ゴブリン退治の依頼って相場通りなんです? そもそも、旅費だけで赤字になっちゃわないですか?」
とプルムが尋ねた。
プルムの質問に、教え魔おじさんと化した冒険者が楽しそうに答えた。
「旅費なら大丈夫。冒険者は依頼書さえ提示すれば、リセント教の家なら一宿一飯の施しが受けられるんだよ。門の前にある天使像が目印だな。そういう信者宅を渡り歩いて目的地に行くから、徒歩であれば実質無料なんだよ」
「そうなんですか。しらなかったぁ。すごーい。さすがですね」
キャバ嬢流さしすせそを雑に使ってプルムが答え、考えた。
なるほどね、そういうシステムになってるのね。
流石は、宗教団体が基盤になってる冒険者ギルド。
お遍路の善根宿みたいね。
あとは、冒険者がこの国中ならどこでも無料で行けるくらいには、各地にそういう信者の家があるってことは……情報網も凄いことになってそうね。
全国津々浦々に、諜報員がいるようなもんなんだもん。
この情報力こそが、近代化しつつあるこのリード王国で、冒険者ギルドとかいうカビの生えた古臭いものが存続している理由ね。やっぱ、宗教の力ってすげーわ。
そのあともこの冒険者から、プルムが様々な情報を聞き出した。
趣味やゲームでは教え魔おじさんはウザいこともあるが、こと仕事に関しては色々な情報を教えてくれる先達ほどありがたい存在はないからだ。
〇
「ねぇ……プルム……」
ある程度情報を聞き出したところで、見計らったように太郎に呼ばれる。
「ごめんなさい、弟からの指名が入っちゃいました。ありがとうございます、楽しかったです。また指名してくださいね。それとも今度は同伴出勤します?」
途中から、キャバ嬢ごっこのつもりで冒険者と話していたプルムが、そう言って太郎の元へ向かった。太郎はずっと掲示板と睨めっこしている。
「僕……この依頼やってみたい」
いつもより、目をキラキラさせて太郎が掲示板を指さす。
(おー、太郎もやっぱ冒険に憧れる男の子なんだなぁ)
そう思いながら、プルムが依頼書を見た。
北の海に時折出現する、深淵龍の討伐依頼だった。大軍を差し向ければ、深海に逃げるかそもそも現れないので、少数精鋭でなくては倒せない相手だ。
太郎であれば、聖剣弾があるので一撃で仕留められるだろう。
報酬は庶民の年収10年分ほどであり、プルムが言っていた『金が欲しい』という要望も叶えられる。
「あーごめん太郎。先に言ってなかった私が悪かったんだけど、別に今回は依頼受けて、お金稼ぐために冒険者になったんじゃないのよ」
「そう……なの……?」
少し残念そうな顔をする太郎を、奥のテーブルにプルムが誘った。
ふたりでそこに腰かけると、プルムが入口を見ながら語った。
「今回のターゲットは冒険者よ。麻薬の売人している……ね」
そう言いながら、プルムが何枚かの書類を太郎に渡した。
数名の人相書きと、プロフィールが書いてある。
「まったく、冒険者がリセント教の信者の家を渡り歩いて寝泊まりしてるとはね。どうりで、所在がわからない根無し草が多いわけだわ」
「この人たちも……そうなの……?」
内容を暗記した太郎が、書類を返しながら尋ねた。
「そうよ。だから、この冒険者ギルドで待ち構えようと思ったの。外で見張ってたら目立つしね。髪の毛を売ってまで、入団金用意したのはそのためね」
最初から冒険者として、依頼を受ける気などなかったプルムがそう言った。
「見つけたら……どうするの?」
「尾行して、ケツ持ちのヤクザを突き止めるわ。ああ、ここじゃ闇ギルドって言うんだっけ? まぁ、文字数少ないからヤクザって呼ぶけど」
扉を開けて、この冒険者ギルドに入ってくる者の顔をチェックしながら、プルムが太郎との会話を続ける。
ケツ持ちとは、ヤクザやマフィアが個人や店からみかじめ料を取り、いざという時に守るシステムのことだ。もっとも、実際はみかじめ料だけ奪って守らないことなどざらだし、みかじめ料を払わない人々に害をなすこともザラである。
「この町の裏で商売するなら、ヤクザのケツ持ちは必須だしね。みかじめ料を払ってないなら、始末されかねないわ。この地区だと、3つのヤクザ組織があるみたいだから、多分そいつらのうちどれかのはず。それでぇ……」
プルムが、ずいっと口を太郎の耳元へ近づけた。
「ヤクザをボコって、お金奪っちゃおうよ」
最下級の『青の冒険者』になったプルムが、そう言って微笑む。
「真面目に冒険者なんかして、コツコツ稼ぐなんてバカバカしいしね」
「…………」
プルムのあまりに乱暴な提案に、太郎は無言になるしかなかった。
「無法者相手に推定無罪なんて、なまっちょろいことはしないわ。ボコって壊滅させた結果、そのヤクザがヘロイン密輸の黒幕ならそれでハッピーエンド。そうじゃなかったとしても、私たちは調査資金ゲット出来て、街の治安もよくなるしね」
「まぁ……いいけど」
プルムの提案に、太郎が咀嚼しきれないものを感じつつ同意した。
ちょっと、プルムらしくない気がする。
そう太郎が思った。
問題の解決方法が強引で、いつもより雑な気がする。
急ぎすぎている?
やっぱりプルムもお姉さんを疑い続け、殺し合いになるかもしれない状況が嫌で一刻も早く変えたいから、こんな手段を取ろうとしてるのかな?
疑わしき時点で色んな容疑者を罰し続け、早々に真犯人が見つかればお姉さんのルナリアとトラブルが起きず、今まで通りの姉妹の関係続けられるし。
「…………ッ」
無口だが、頭の中では多くの言葉で考える太郎が、何かに気付いた。
〇
「プルム……今、入ってきた男……真っすぐに見ないで……」
「…………うん、わかったわ」
プルムが入口付近から、少し視線を左側にそらす。
直視はせずに、視野のギリギリに、太郎が言ってた男が入るようにした。
「ねぇ太郎、あの濃い臙脂色のコートの男?」
プルムが小さな声で、探るように尋ねた。
「手配書の冒険者じゃないみたいだけど」
「あの人……懐に銃を持っている……」
よく日焼けした男前な髭面の冒険者について、太郎が述べた。
年齢は50歳ほどで、白髪交じりの灰色の髪と髭をしている。冒険者にしては高齢に見えるが、精気溢れる肉体をしており弱々しさや老いは感じられない。
厚手の暗い臙脂のダスターコートの下は、黒い革製のベスト。その下は濃紺のシャツで、下半身は黒いズボンを履いている。靴は革製のウェリントンブーツだ。
黒いテンガロンハットと、黒いマフラーがよく似合っていた。
中世の冒険者というよりは、西部劇の巡回聖職者のように見える。
「へぇ……あのイケオジがねぇ……」
太郎にその情報を与えられ、プルムが一言反応してから、しばし沈黙する。
少なくとも、公的や表向きには、この世界には銃火器は存在しない。
冒険者は、背中に幅30センチほどで長さ80センチはある袋を大剣のように背負っていた。おそらく中身は、ライフルやショットガンなどの銃であろう。
そして、西部劇風の冒険者は、依頼書のひとつを手に取り外に出た。
「作戦変更。今のガンマン気取りを追うわよ、太郎」
そう言って立ち上がったあと、プルムが一度太郎を真っすぐに見た。
「ごめんね。三分の一とはいえ、報復のチャンスをナシにして」
太郎にそう伝えて、一足先に先ほどまで男がいた掲示板の前に向かった。
「……え?」
太郎が数秒きょとんとする。
そして、自分の鈍さに気付いて、恥ずかしさと嬉しさと悔しさが入り混じった不思議な感情のゆらめきを覚えた。
乱暴な作戦だと思ったけど……プルムは僕に、お母さんの敵討ちのチャンスを、『報復の機会』を与えようとしてくれていたんだ。
そう太郎が理解する。
僕のお母さんは、この王都南地区のヤクザ組織の1つに焼き殺された。
でも、僕は今は目立つことも、勝手なことも出来ない身。
城を抜け出して、私情に任せて報復することは出来ない。
だから、プルムは仕事の一環という大義名分を作ってくれてたんだ。
「…………」
太郎が元から強かったプルムへの想いを強めて、足早に彼女の元へ向かう。
「さっきの変なゴブリン討伐の依頼書だけない……あれは、本当は依頼目的じゃなくて、特定の相手にだけメッセージを伝える『符号』だったのね。だから、誰も引き受けないような無茶な条件にしていた……おっ、来たわね太郎」
ほぼ無表情だが、不快とは程遠い感情が伝わってくる太郎の顔を見て、プルムがほっとする。作戦変更で、母親の敵討ちの機会をふいにしたことを申し訳ないとさえ思っていた。もっとも太郎は、機会を作ろうとしたこと自体を感謝している。
「それじゃ行くわよ! 在野のスキル持ちかも知れないから、気を付けてね」
プルムが冒険者ギルドのドアを開くと、外はもう日がほぼ沈みかけている。
「あれ……?」
不思議そうな顔をして、プルムが呟く。
後ろを振り返ると、冒険者ギルド内で酒を飲んでいる冒険者たちが見えた。
正面を見ると、夕暮れの王都の道を行く人々が見える。
「ここって……こんなんだっけ?」と疑問符を浮かべながらプルムが太郎に視線をやると、太郎はきょとんとしていた。
「なにか別の部屋があって、誰かと会話したような……いや、気のせいよね。それよりも、早く銃を持った男を追わないと」
そう呟いて、太郎と共に夕暮れの町を二人で進む。
プルムも太郎も気付かなかった──背後にある磁器で出来ているはずの神子柴桔梗=大天使アメリロード像の口元が、微笑みの形に変わっていることに。
天使の顔の形が、先ほど言葉を交わした受付嬢と同じであることに。
うふふ……
あはは……
あはははははははははははははははははははははははは
逢魔が時の王都で、天使像が倩兮と笑い続けた。
面白かったらモチベと励みになりますので
ブクマや★評価してくださるとうれしいです。




