25 義勇兵の試験 2
6人が冒険者ギルドを出たところ、後ろから女が彼らに声をかけてきた。
「あの、待って・・・」女はどもりながらいった。「あたしも義勇兵試験受けてて、ゴブリン倒せって言われてて、でも私は魔法使いで前衛を探していて・・・」アイルは彼女を見た。昨日スラム街で助けた魔術学校の生徒だった。
「あたしも仲間に入れておらえませんか。お願いします」女はアンナと名乗った。彼女は深々と頭を下げた。
7人はアナトマ川を西へ下り、橋を渡りルケントについた。
ルケントの城壁は年月に晒されボロボロに崩れ去っていた。レンガ積みの薄い城壁は風雨と魔物の襲撃に耐えることはできなかった。いつしかこの拠点は魔物に奪われ悪鬼が跳梁跋扈する魔窟と化していた。無論幾度となくのこの街は掃討された。正規軍が駐留したことも何度もあった。しかし時間が立つとまたどこからか魔物が湧き出して結局支配を奪われ返されるのだった。
「いっそのことすべてを打ち壊すべきだろう」トグマが言った。
アイルもそれには同感だった。教会の尖塔は北部では類を見ないほど空に天高くその頭上を伸ばしていた。ここはかつては風光女雛な美しい都だったらしい。いまはゴブリン共に汚された不潔で薄汚れた遺跡にすぎなかった。
アイル達はルケントの城壁を左回りに見て回った。西側の城の外壁に2匹のゴブリンがたむろしていた。彼らは焚き火で魚を焼いていた。一匹は槍、もう一匹は長剣を持っていた。
「周りに敵がいないか見てくる」アイルがそう言って外壁の隙間から都市の中へ入っていった。
城壁の内部は瓦礫だらけのゴミ捨て場のようだった。崩れた衣装瓦が細かいチリとなってあちこちに積もっていた。何年も水を通したことがない枯れた側溝は土砂とゴミで埋まっていた。石畳の隙間から陰毛のように細かい草木が突き出していた、
彼は慎重に道を歩いた。しばらく進むと家の壁の内側からゴブリン共の笑い声が響いてきた。そこはゴブリン共の焚き火のすぐ裏だった。外壁のひび割れから中を覗くと最低でも3匹のゴブリンがそこに座り込んでいた。
アイルはその家の周囲を探ったあと、皆の元に舞い戻った。
「そこの紅い屋根瓦の家にゴブリンが三匹たむろしてる。ただ出口が通りの反対側だから気づかれても時間はある。俺はゴブリンの動きを見張るから、合図したら下の二匹を殺して耳削いですぐに森に撤退して」
アイルは都市の内部に戻ると、塀の上から手を出して合図した。
森の隙間からゴブリンに向かって矢と炎の魔法が同時に放たれた。
矢は槍のゴブリンの腕に突き刺さった。そして炎が後から追いすがり二人のゴブリンを包んだ。彼らは恐怖の叫びを上げた。
3人の男が一斉に飛び出した。トグマが先行し、がむしゃらに突き出された槍を盾で弾いてゴブリンの懐に入った。しかし剣のゴブリンが割って入りトグマのブロードソードを受け弾いた。ジョシュアが右に回り込み一気に距離を詰めゴブリンの飛び出した腹をレイピアで素早く突いた。
へそから血をふきだしながら槍ゴブリンは壁際まで後退した。
剣ゴブリンは怒声を発しながらジョシュアに切りかかった。彼はすばやい足さばきで距離を取り避けた。
ルイは左から回り込み剣持ちの側方に廻った。
上段で深く踏み込み剣を振り下ろしたが返す刀の巧みな剣捌きに弾かれた。この剣持ちのゴブリンはかなり使えるようだった。
いつの間にか魔法の炎は消えていた。
ゴブリンは突如大きな雄叫びを上げた。それは薄い城壁を突き破ってルケントの内部深くまで響いた。
家の中のゴブリン共が気づいた。各々は武器を取り立ち上がった。そして武装をカチャカチャ鳴らしながら2階から二匹のゴブリンが降りてきた。
アイルは城壁に飛び移り叫んだ。
「気づかれた!五匹来る!急げ!」
槍オークが気を取られ上を見上げた。その隙きにジョシュアが細剣を鋭く突き喉を貫いた。
アイルは城壁のブロックを拾い上から剣ゴブリンに向かって投げつけた。ヘルメットを叩きつけられゴブリンは大きくよろめいた。
トグマが盾を低くかまえ突進した。がむしゃらに振り下ろされた剣を無視して体当りした。
ゴブリンは吹っ飛び壁にぶつかり倒れた。
ルイがその上に飛びかかり腹に剣を突き立て刺し貫いた。
まだ血の泡を吹きながら息をしているゴブリンを無視して彼らの右耳を削ぎ落とした。胡乱な目でゴブリンはルイを見つめた。
ルイはその右目を剣で突いた。
そして7人は森の中に逃げ込んだ。
森をしばらくさまようと、水場でゴブリン達3匹を見つけた。まだ若いゴブリンたちだった。彼らは薄い石をひろい水切りをして遊んでいた。
そのうち一匹は大きなブロードソードを地面において岸際に座り込んでいた。
「できれば3匹を引き離したいけど」アイルは言った。
「待つ?」ルイが訊いた。
「今日中に北側にまわって警戒が濃くなる前にもう二人殺したい。いま殺そう」アイルが答えた。
「水に入ってるのは私一人で殺せるわ。残り二人はあんたたちで殺して」テオが言った。
「わかった。後衛は森の中で待機」
5人は一斉に森から飛び出した。
アイルとジョシュアは右のブロードソードを持ったゴブリンを抑えにかかった
そしてトグマとルイは左手の棍棒持ちに突っ込んだ。
その真中を割ってテオが水辺に飛び込んだ。
そして左手の小杖で魔法陣を描きつつ、剣を水面に突き立て呪文を叫んだ。
「イータ・エム・ヤクト・エル・アクア!」
水面を割った水しぶきは瞬時に凍った。
ゴブリンは腰の短剣に手を伸ばしていた。しかし右手は氷の塊に閉ざされ動かせななかった。
テオは剣を横一線に振るいゴブリンの喉を裂いた。
アイルとジョシュアは全速力でゴブリンに詰め寄った。ブロードソードに手を伸ばすゴブリンの腕を蹴り上げ、一気に岸際まで追い込んだ。アイルは森の側に陣取り逃げ道を封じると、ジョシュアはリーチをとった突きでゴブリンを翻弄した。素手のゴブリンに勝ち目はなかった。アイルは地面を蹴り上げた。ゴブリンは顔面に降りかかる石礫を払った。その隙きにジョシュアが一気に距離を詰め胸を突いた。
トグマとルイは迷わず相手に肉薄した。相手の棍棒はトグマの盾に容易に弾かれた。ルイは背後から距離を詰めゴブリンの背中を刺した貫いた。内臓が飛び出し水面を赤く染めた。ゴブリンはぬかるみに倒れた。トグマが体重を駆けて剣を刺し喉の骨を断ち切った。彼らは手早く耳を削いだ。
その時森の奥から犬の遠吠えが聞こえた。
ゴブリンの探索隊がやってきたのだ。下生えが生い茂る森の中を4匹のゴブリンが間隔を開けて進んできた。
「待って!引き離せる!」アンが言った。そして呪文を唱えて放った。アンナの杖の先から炎が噴出した。それは一直線に地面を焼き炎の壁となりゴブリンを分断した。炎は森の下生えを焼き、シダの燃える鼻をつく匂いがあたりを覆った。犬の遠吠えがやんだ。煙が上がり森の見通しを遮った。
ゴブリン達は混乱して立ちすくんだ。その時木々のわずかな隙間を通って矢が飛翔した。それは槍持ののっぽなゴブリンの肩を貫いた。
ゴブリンはけたたましく叫び声を上げた。
「一気に囲め!」アイルは下生えに身を隠して移動しつつ投石した。剣持ちゴブリンの額に当たり血が吹き出した。
テオはいつの間にか池の水で作った氷の長槍を握っていた。そして木々の隙間から槍を突きを入れゴブリンの注意を引いた。
トグマが大声で叫び敵を威嚇した。そして盾をガンガンと打ち付けながら敵を挑発した。
アンナが呪文を唱えもう一つの炎の壁がゴブリン達の退路を塞いだ。
ゴブリン達は恐怖と混乱で動けなくった。炎の壁は三角形の二辺となりその鋭角にゴブリン達は追い詰められた。
テオが前に躍り出て雑に槍を突き出した。
氷の長槍はゴブリンの剣で薙ぎ払われ簡単に折れた。
「きゃっ」テオは驚きの叫びを上げた。しかしそれは、罠だった。
剣のゴブリンがここが機会と見て突っ込んできた。2匹のゴブリンは離れた。
そのとき後ろの炎の壁からがアイルが飛び出してきた。下生えに身を隠して裏手に回り込んだアイルが背後を取ったのだ。そして棒立ちになっていた槍ゴブリンの喉を一閃に裂いた
剣のゴブリンは一瞬振り返った。その隙にトグマがテオとの間に割って入り、シールドバッシュでゴブリンを打ち払った。
ゴブリンはよろめきひざをついた。
そのゴブリンの頭に水筒が投げつけられた。それは中身を吹き出しゴブリンを濡らした。
テオは呪文を唱えた。顔面が一気に氷結し、ゴブリンは思考停止に陥った。
トグマがありったけの膂力をつかって剣を振り下ろした。ゴブリンは両断され崩れ落ち死んだ。
アイル達はやつらの耳を削いだ。
アンは魔力切れを起こし息も絶え絶えだった。テオが肩を貸して立たせた。
そして7人は森から脱出した。
2章を全体的に書き直します
全話において行間開けをやめ一字下げに直します




