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Solomon's gate (試作_3回目失敗)  作者: にしてつ
1章 死体の標
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18 中洲の戦い

「戦闘員は残れ!火矢を放て!」ロイドが矢を穿ちながら叫んだ。

 先頭の帆船が接岸してきた。そして中からぞろ甲冑で固めたオーク達が這い出した。

 数多の火矢が放たれた。しかし蚊蜻蛉のように船の表面に弾かれた。火矢は小さくくすぶるだけで消えた。船にはなんらかの防御が施されているのか?それとも水で濡らされているだけだろうか。

 後続の船は帆を膨らませ速い速度で彼らを追ってきた。ロイドは指をなめて風を確かめたが無風だった。しかし向こう岸の土手の野原は強い風にたなびいていた。船の張り詰めた帆には大きな魔法陣の文様が描かれていた。おそらくあれが、速さと防御のひみつだろう。しかしそれを確かめる時間はなかった。

 先頭をゆく大盾を構えたオークが土手の草むらを突っ切り殿に突入した。彼は大盾に身を隠し降り注ぐ矢の雨の中を突進した。そして殿のオーエンに全速力で突撃した。

 オーエンも中盾で真正面からこれを受けた。衝撃で彼の両足は乾いた土手の土にめり込んだ。金属同士が震える鈍い音が響いた。オーエンは返す刀で大きくグラディウスをふるった。オークは手甲でこれを受けた。鋳造製の分厚い手甲は片手剣など軽々と弾き返した。

 そのとき殿の老槍兵が二人に割って入った。オーエンの肩口から鋭くオークの顔面に突きを放った。しかし彼は首を引っ込め兜の頂点で受け流した。鋳鉄製の重く厚い兜にに槍は軽々と弾かれた。

 その時2体目のオークが殿に追いついた。味方の影となり降り注ぐ矢の雨がとまった。たちまち殿は混戦となった。

 そして後ろの帆船がスピードを上げた。そして殿の戦場を追い抜こうとしていた。奴らは我々を挟撃して全滅させる気だろう。

「すまぬ、先頭へゆく!」ロイドはそう叫んでゴードンのもとへ向かった。


 ロイドは先頭を走るゴードンを見つけて駆け寄った。

「ゴードンさん、奴らは我々を追い抜いて挟み撃ちにする気です。この近くでもっとも喫水の浅い場所はどこですか?」

 ゴードンは言った。「俺はわからねえ。村をでたことねえからな。アイル!」

 アイルは応えた。「川の曲がった先に中洲があってそこが一番浅くなっています。向こう岸は通れません。こっちの岸は隘路になってぎりぎり通れるかと」

 ロイドは大声で叫んだ。

「皆聞け!女子供を守るため決死隊募る!あの中洲にて船を挟撃し沈めるのだ !誰か手を挙げる者はおらんか!」

 何人ものエルフが槍を掲げ従った。ゴードンや北部連隊の騎士もそれに続いた。

 アイルも手を上げたがロイドは首を振った

「君はまだ若い。女衆を先導しろ。必ずブリスコーまで送り届けるのだ」

 そのときアイルのすぐ横の女の子も志願の手を上げた。彼女は細い金髪をサイドテールにまとめていた。会話を聞いた感じだと彼女は赤髪のエルフの従者らしかった。

「私にも志願させてください。私の呪文なら船を阻害することができます。絶対に迷惑はかけません」

 ロイドは一瞬迷ったがすぐにうなずいた。

「テオ、すまんが頼む」

 彼らは先行して土手を駆け下りた。そして中洲に渡り隠れて待ち構えた。船は蛇行して右岸の隘路に入り込んできた。兵士達が左右から一斉に飛び出し、船のヘリを掴みよじ登った。しかしオークの水兵が大鉈で兵士たちを払った。

 腕を吹き飛ばされた兵士が血しぶきを上げながら水面に落ちた。その時土手の弓兵から矢が放たれた。背中に屋を受けたオークがよろめいた。その隙に甲板に登りきった兵達が剣を振りかざしオークの中に突撃した。

 船の上はたちまち混戦になった。甲板は血に染まった。

 テオが草むらから飛び出した。左手のタクトで魔法陣を描きつつ、船の手前に飛び込み水面に剣を突き立て呪文を唱えた。

『Rehme-ël-jackt-ël-Ark!』

 瞬間川の隘路は凍りついた。しかし帆船の厚い船底は氷を砕き突き進んだ。

 テオは立ち泳ぎで下がりながら氷結魔法を唱え続けた。

 しかし船の重量は少女の魔法で押し止めることはできなかった。船が迫りテオは船首の波に飲み込まれそうになった

 その時船はなにかに乗り上げ止まった。氷に乗り上げて座礁したのだ。しかし、それも氷が砕けるまでの時間の問題だった。


 ゴードンは船倉に突撃した。中には今だ軽装のオーク共が間抜けにたむろしていた。戦う準備のできていない間抜けな雑魚どもは振り払い一気に船底まで駆け下りた。

 船底には紅いマントを着けたオークが鎮座していた。数多の鎧の古傷がこのオークの何たるかを語っていた。

 やつは鋳鉄製の犬を形どった兜を着けた。そして巨大な鉄斧を握り立ち上がった。

 ゴードンは体を丸めて突進した。やつが鉄斧を振りかざした。

 ゴードンは足を踏み込み更に速度をあげた。大振りの戦斧が凄まじい速度で振り下ろされた。

 ゴードンは右手の小盾でこれを受けた

 凄まじい衝撃音とともにオークの戦斧が弾かれた。そして刃が砕け散った。オークは驚嘆に目を見張った。

 ゴードンはそのまま盾で兜の鼻先をかちあげた。

 脳を揺らされオークはよろめいた。

 その時、刹那の速度で放たれた突きがオークの喉笛を刺し貫いた。ロイドの細剣が致命の一撃を放った。

 オークは血を吹き出し崩れ落ちて死んだ。

「その盾はなんだ」ロイドが訊いた。

「これか?鎢鋼で出来てるんだ」ゴードンは答えた。

 ゴードンは斧を拾い船底に叩きつけた。床から水が吹き出し船は傾いた。ゴードン達は船から脱出した。

 帆船は倒れ隘路に沈没し川を塞いだ。

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