24☆
祥子の妄想癖が、父親の死がきっかけって……
修司さんはビールのおかわりを店員に頼んだ
「兄貴、何言ってんの?」
昇司くんもびっくりしている
「いや、違うか。俺のせいかもな」
そう言って、修司さんは僕を見た
「慎さん。長くなるけど聞いてくれる?」
僕は頷いて、修司さんの話を聞いた
祥子達の父親が亡くなったのは、修司さんが小学6年、祥子が小学3年、昇司くんが小学校にあがる前のこと
亡くなる半年前からずっと入院していたらしい
祥子はお父さん子で、学校からの帰り道、毎日病院に行って父親と会って家に帰っていた
父親も一人娘の祥子をとても可愛がっていたらしい
「だからかな?ちょっと祥子がうらやましかったんだ。当時の俺は」
修司さんは自嘲気味に笑いながら言った
そして父親が亡くなり、葬式もすんで、落ち着いてきたある日、修司さんは窓の外を見上げている祥子を見つけた
『祥子、どうしたんだ?窓の外なんか見上げて』
『ねえ、お兄ちゃん。お父さん、お空のどこかにいるのかな?』
まだ小学3年生の祥子には、父親の死というものが、あまり理解出来ていなかったのだろう
「その時、俺は言ったんだ『そうだな。ずっと話しかけてたら、お父さんが応えてくれるかもしれないな』って……そしたら、あいつ……」
『本当!?お兄ちゃん。じゃ祥子、ずっとお空と話してる!』
それからというもの、祥子はいつも空を見上げて話しかけていたそうだ
「俺はその時、コイツ馬鹿じゃないか?父さんはもう死んでいないのに、応えてくれるわけないじゃないかって、ずっと思ってた。でも、祥子はずっと話しかけてた。その内、気付いたのか、話しかけるのはやめたけど、ぼーっと空を見上げてるだけになった。そして、1人で笑ったり、怒ったりするようになったんだ……」
「それから、いつでも妄想するようになったと?」
修司さんは頷いて、ため息をついた
「だから、祥子が妄想してるの見る度に、責められてる気がしてた。『お兄ちゃんの嘘つき!』って言われてるみたいだったんだ……」
「兄貴……」
修司さんだって当時6年生だ
父親の死を簡単に受け入れることなんて出来なかったはずだ
「修司さん、祥子のトリップ癖のきっかけは、その事かもしれないけど、でも……」
修司さんと昇司くんが、僕を見る
「でも今の祥子は、楽しそうだよ。トリップしてる時。だから、そんなに気に病むことはないと思うよ」
「慎さん……」
僕は修司さんに笑いかけた
「そりゃ、勝手に不機嫌になったり、たまに暴走して、何のことだかさっぱり分からない時もあるけどね」
昇司くんが、ぷっと吹き出した
「それに、そんな祥子を見るのも僕の楽しみなんだ」
「慎さんの楽しみ?」
「そう。一体祥子は何を考えてるんだろうって……想像するのが僕の楽しみになってるから」
僕がそう言うと、昇司くんは大きな声で笑った
修司さんもそれにつられるように笑った
「姉貴の旦那は、慎兄にしか出来ないな。他の男じゃ無理だわ」
「そう?僕にとって最高の誉め言葉だよ。ありがとう、昇司くん」
更に昇司くんは笑った
「慎さん、祥子のこと……」
「修司さん、分かってます。妹さんは、一生大事にしますから」
修司さんは、僕に頭を下げた
それから3人でいろんな事を話した
祥子の子供の頃のことだとか、お義母さんと大喧嘩したことだとか、僕の知らない祥子の事がたくさん聞けて、凄く楽しかった
そうして、また3人で飲もうと約束して、それぞれ帰って行った
「ただいま」
家に帰り着いたのは、23時を回った頃だった
祥子はもう寝室で休んでいた
僕が風呂に入って、ベッドに入ったのは、0時近くになっていた
「……慎一郎さん?」
僕がベッドに入った時に起こしてしまったんだろう
「ごめん祥子。起こしちゃった?」
「ううん。半分起きてたから……」
そう言って、僕に手を伸ばしてきたので、祥子を抱きしめた
「修ちゃんと昇くんと、何話して来たの?」
「いろいろ。祥子の子供の頃のこととか?」
「ええ?どんなこと?」
「教えない。男同士の秘密だから」
口をとがらせて見上げていたので、その唇にキスをした
「もう、お休み。祥子」
「……あのね?慎一郎さん」
「何?どうしたの?」
「今日病院行ったら、もう診察来なくていいって言われたの。だから……」
祥子の顔を覗き込んだら、耳まで真っ赤になっていた
僕は笑って、祥子に深いキスをしながら、自分の体の下に祥子を巻き込んだ
だんだん、お互いの息が、熱が、あがってくる
僕は久しぶりに祥子を抱いた
我を忘れるくらい夢中になって、祥子の身体を貪った
祥子が言った
「幸せすぎて怖い」
僕は答えた
「怖いぐらい幸せだ」
と
祥子と出会えて良かったと、心から思った
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