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生徒会室は秘密の監獄 ~義兄の執着と溺愛がひどくて困ってます~  作者: はなたろう


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3/7

#3 本当の顔は?

「4月に転入するまでに、その髪色は変えてくるように」



職員室で書類を渡すだけのはずが、運悪く生徒指導の教師に捕まってしまった。



「地毛なんで、これ」



しれっと答えた零に、教師は眉をしかめた。



「お義兄さんは優秀なのになぁ」


「生徒会長……ですよね」


「そうだ。金色の刺繍が施された制服を着ることのできる、唯一の生徒だからな」



金色の刺繍――?



「君も成績は良さそうだが……、素行不良で神大寺家に恥をかかせない方がいいぞ」


「あー、そっすね。じゃ、失礼しまーす」



零は短く返して、最後は逃げるように去った。



思ったより時間をとられた。

やけに広い校舎を再び彷徨い、ようやく一階の昇降口まで辿り着いた頃には、窓の外はすっかり黄昏色に染まっていた。



……誰かいる。



校舎の影、植え込みの奥。



どんよりと曇った空の下、そこだけが別の空間のように切り取られていた。



ひとりの男子生徒が、地面に身を屈めている。



――なんだよ。今度は誰かが隠れて煙草でも吸ってるとか?




零は息を潜め、そっと覗き込む。



「ひとりか、おまえも」



聞き惚れるほど、低く、柔らかな声だった。



「にゃお」



足元に寄り添う一匹の野良猫。

男は壊れ物を扱うように、優しく猫の頭をなぞっていた。



「悪いな、連れて帰れなくてさ」



独り言のように溢れた言葉。


零は、思わず息を呑んだ。


男を見て、綺麗だと感じたのは、生まれてはじめてのことだった。



夕闇に溶けそうな横顔。長い指先。

その透明な寂しさに、胸の奥がざわついた。



カサリ、と零の靴が枯れ葉を鳴らす。



「誰だ?」



男子生徒が立ち上がった。



「あ、君は――」



金色の刺繍が施された、紺色のブレザー。



「……!」



さっき、生徒会室で見た男子生徒と同じ制服。



零は踵を返すと、全力で校門を駆け抜けた。



ぽつり、と雨粒が落ちた。

零の頬を汗と一緒に伝い落ちる。



あの生徒会室での熱と、小さな猫に向けられた視線。

脳裏に焼きついて離れない、あの横顔。


自分の義兄となる男の、対比する顔を覗き見てしまった日。




――そして、数ヶ月経った今。




零は鍵をかけられた生徒会室で、その瞳に捕らえられている。

眼前にあるのは、あの時と同じ、生徒会長の証である金色の刺繍。



「どうした。大人しすぎるのも面白くないな」



耳元で囁く声に、零の背中をビリビリと電流が走る。


どれが本物で、どれが偽物なのか。



彼の本当は、いったいどちらなのだろう。


零は震える指先を握りしめたまま、その瞳から、どうしても目を逸らせなかった。

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