殲滅開始
◆西暦2000年5月17日(水)◆
”おはようー”
そっとベッドを抜け出そうとすると周りに誰もいなかった。
(あ、今日は一人だったんだ。てへっ)
それから洗面後、キッチンへ移動し、朝食の準備。
「久しぶりにゆっくり休めたから、めちゃくちゃ調子良いわー」
♪マークが飛びかいそうな雰囲気で料理を作っていたら、天使たちが降りてきた。
「お姉ちゃん、おはようー」
「「「「おはよー」」」」
「おはよう。今日もみんな可愛いね♪」
「「「「うんっ」」」」
みんな自覚してるのかっ。
「昨日は早めに帰って来れたの?」
「何とかね。やっと落ち着けそうだよ」
「そっかー。良かったね」
それからみんなで楽しく訓練をして朝食を取った。
「はぁー、やっぱmy天使ちゃんたちとゆっくり食べる朝食は格別だねー」
「「「「「あはは」」」」」
朝食を終え、3人を学校に送り出すと、メモを取り出して確認する。
「うん、今日は時間指定のアポは無いね。溜まってる通報案件はちょくちょくやるとして、アマルフィの案件に専念出来そうだ」
ふと気づくと、残った2人がじっとこちらを見ている。可愛いー。
「おっと、そう言えばえっちゃん、今日ってネット開通日だよね?」
《YESマスター。もう繋がっております》
「こう言うのって繋がったら誰かが来て、”繋がりましたー”って言いに来ないの?電話とかでもいいけど?」
《接続をもって完了みたいです。若干不親切に思えますが、全国規模でそうなってるようです》
「ちぇっ…機械も勝手に送ってきて設置して下さい、だったし。何だかなー。しゃーない。それじゃパソコン置くか」
パソコン台を2台並べ、パソコンとプリンタを設置していく。ネット回線と接続して、きちんと繋がる事を確認したら完了だ。
「うん、印刷も問題無いね。これでよし、と」
「お姉ちゃん、もうパソコン使えるの?」
「うん、インターネットも出来るよー」
「「やったー」」
今度は私も加わって、3人ではしゃいだ。幸せー。
「次は2人の家庭教師だねー。ネットでググってみようか」
何件か、引っかかったが、何故か英会話とかもたくさん引っかかって見難い。
でも1件良さそうなのがあったので、電話で問い合わせたところ、学校の勉強以外にも日本語教育の対応までしてくれるそうなので、早速明日からお願いした。
取り敢えず明日から日曜までの4日間、お昼休憩を挟んで9時から15時まで生徒2名(小学1,2年生)。ちょっと大変だが頑張って貰おう。お昼はこちらで用意する旨を伝えておいた。
ちなみに2人共1年生の内容を教えて貰う事になっている。エマちゃんにはかなりの予習になりそうだ。
それから15時から16時まで毎日1時間日本語教師もお願いした。期間は日常会話程度話せるようになるまで。こちらはフランちゃんたち含め生徒4人。
但し、日本語の勉強の時はもちろん指輪等は外してもらう。となると問題はそれぞれ母国語が違うという事だ。その対応策として、後で連れてくる使用人に通訳をお願いする事に決めた。
「よし、2人共明日から日曜まではずっと勉強だけど頑張ってね」
「「うんっ、楽しみー」」
すぐに家庭教師派遣会社の事務所を訪れ、契約を行った。
「それじゃ、仕方無い。今日だけは一緒に行動しますか」
(えっちゃん、この子たちの周りにだけ”完全結界”って展開出来る?)
《YESマスター。可能です》
(なら、それで行こう。2人にはベールの他に、サングラスをして貰って、視界を遮り、あまり恐怖を感じないようにしよう)
ちょっと時間的に早いけど、東京に移動し、開いてる店があったので、毒マスクじゃないけど、PM2.5すら通さない防塵マスクと子供用サングラスを妹全員分購入した。
そして、自宅で着替えてから、満を持してアマルフィへ向かう。殲滅開始だ。
【時差情報:-7時間】日本:8時45分 アマルフィ:1時45分
「ここは深夜だから、真っ暗だねー」
「「うん、ちょっと怖い」」
「2人の周りにはね、見えない壁が囲ってて、例え襲って来ても、壁の中には絶対入れないし、石とか投げられても壁が跳ね返すからね。石だけじゃなくて、何でもだよ。だから安心して。これだけ暗かったらサングラスは要らないね。取っちゃおうか?」
「ううん、大丈夫。ちゃんと見えるよ」
「私もー」
「分かった。それじゃお掃除開始だー」
「「おー」」
(”除染”!)
「うわー、綺麗になったー」
「もう臭くないよー」
「わ、私じゃ無いよね?」
「違うよー。ゴミが消えたからだよー」
「お姉ちゃん、気にしすぎ!」
エマちゃんが抱きついて頬を膨らませてる。激おこモードのエマちゃんもめちゃ可愛い。ええい、突いちゃえ。
ぷっ…
「もうお姉ちゃんってば、今は大事な話してるんだよー」
「ごめんごめん、あまりに可愛かったからつい」
「ふん」
そう言いながらも離れないエマちゃん。ぎゅーっと抱きしめてあげる。もちろん、ラクワちゃんも一緒だ。仲間外れ良くない、うん。
それから子供たちが疲れないよう、”縮地”!を使いながら、どんどんゴミを綺麗にしていく。
何度かお掃除していると、後ろが騒がしくなる。やっと来たか。
『見つけたぞっ!野郎ども、分かってるなっ!!』
『『『『『おぅっ』』』』』
「2人共私に掴まっててね。ちょっと走るよー」
「「うん」」
2人を抱え上げると、身体に”迅速”をかけ、郊外に向かって走り出す。
『あ、待て、逃げるなー!』
『くぉらーっ、クソガキがー!』
走ってると、連絡を取り合っているのか、車やバイクの数が増えてきた。やったね。
追いつかれそうになると、”縮地”で少し先へ飛び、また追いつかれると…を繰り返す。
そして、民家の無い郊外まで来ると立ち止まった。
『『『ぜぇー、ぜぇー』』』
『『『はぁー、はぁー』』』
「あはは、何で走ってもない、あんたたちが疲れてるのよ。ばっかじゃない?」
『お前が大声出させるからだろうがっ!』
「大声出したからって追いつけるってものでも無いのに。やっぱりオツム足りないようね、あはは」
『こ、このガキゃー!おい、やれ。粋がってるお姉ちゃんの方はぶち殺してもいいが、小さい子たちは殺すなよ。高く売れそうだ』
『『『『『おぅ』』』』』
「なっ!…ちょっとあんたたちー、今何て言った?もっかい言ってくれる?誰が売れるってぇ?」
「てめぇの側にいるガキは俺たちが大事に扱ってやるよ。商品としてな。がははは」
「よくもまぁ、私に向かってそういう事言えるわねー。知ってる?それは決して言っちゃいけないんだよー。
ふふふ、あなたたちは私を怒らせたんだよ。もう後には戻れないからねー。覚悟は良い?」
『いいから、かかれっ!』
「かかれって。あんたは来ないの?ヘタレなの?泣き虫なの?情けないわねー」
『なっ、クソガキがっ!いくぞっ!』
『『『『『おぅ』』』』』
(えっちゃん、こいつらの罪状鑑定しておいて。後で顔写真付きで出力して市長さんに渡すから)
《YESマスター、少しお時間を下さい》
(オッケー。それじゃ少し遊びますか。まずは何もせずにこのまま待機しよう)
手のひらを上にして、来い来いしてみる。ついでに中指だけ立ててみた。隣を見ると2人とも真似していた。
(いや、それはしなくていいよ。可愛い子がしちゃ駄目なのよ。後で教えてあげなきゃ)
ガンッ…ガンッ…ゴンッ…
『『『『『ぎゃっ』』』』』
見えない壁にぶつかって派手に倒れる男たち。
「あはははー。引っかかった、引っかかったー。超楽しいー。あはははー」
『な、何だ、これは。見えない壁みたいなのがあるぞっ!』
『『『『『なっ、何が…』』』』』
今度は逃げるフリをして、周辺の地面に氷魔法で薄く氷を貼る。
『ちょ、待ちやが…うおっ!』
ツルッ…ゴンッ…ゴンッ…
『『『『『ぐうっ、あ、頭が…』』』』』
氷があるとも知らずに、派手に転がり頭をぶつける男たち。
「あはははー」
倒れている男たちの元へ瞬時に戻ると、独楽を回すように、頭を蹴って回転させて遊ぶ。
「あはははー。人間独楽だー。楽しいー」
『くそっ、地面が滑ってうまく動けねぇー』
『てめぇ、遊んでんじゃねぇー!』
「だって、楽しいんだものー、あははは」
横に視線を向けると、氷を回避した男たちが迂回して襲ってくる。
「みんな、ちょっと格闘術の練習しよう。まずは1の構えからのぉ、ストレートぉ」
「「とぉー」」
パンッ…パンッ…
『何だー、そんなガキのパンチが聞くわけないだろっ。アホがっ。がははは』
「うーん、やっぱり狩りしてないから威力が全然足りないかー。みんな、よく見ててね。パンチはこうやるんだよー」
ドガンッ…ドンッ…ガンッ…ズザザー…
『ぐはっ』『『『『ぎゃっ』』』』
後ろを巻き込みながら、派手に転がっていく。
「「お姉ちゃん、凄ーい」」
反対側から来たやつらも吹っ飛ばす。
ドガンッ…ドンッ…ガンッ…ズザザー…
『『『『『ぅあぁー』』』』』
《マスター、完了しました》
(おっけー)
『てめぇー』
「はいはーい、みんな聞いて。もうあんたたちと遊ぶのに飽きたのでそろそろ天罰の時間にします、”停止”!」
『なっ、か、身体が動かんっ』
『てめぇー、何をしやがった!』
「さーて、お聞きします。あなたたちを差し向けたのは誰?」
『ふんっ、誰が教えるかっ!』
「だよねー、”催眠誘導”!……もっかい聞くよ?誰の差し金?」
『誰が…ボスの〇〇だ…』
『『『『『てめー、裏切りやがったなー』』』』』
『ち、違う、口が勝手に…』
「それじゃ、全員に聞いてみよう、”催眠誘導”!」
片っ端から聞いて回る。今回の件に絡んでいる他の人間も所在も含めて教えて貰う。
「オッケー。みんな良い子ねー。よく出来ましたー。パチパチパチー」
『『『『『く、くっそー』』』』』
「さて、本当は殺人とかしてないやつとかは、もしかしたら天罰の対象から外れたかもしれないけど、私たちに襲ってきた事と、この子たちの誘拐発言もしちゃったしねー。情状酌量は無いとします」
『な、何を言って…』
それからちびっ子たちには耳を塞いで貰い、シーツを被せて見せないようにする。
そして全員まとめてこの星から退場して貰った。死体はアイテムボックスに収納し、服やお金などの所持品は”清浄”で綺麗にして別途保管。汚れた地面も”清浄”で綺麗にする。
あ、こいつらのバッチィ服なんて誰かに履かせたりとかしないよ?後で纏めて布として売る予定だから、勘違いしないでよね。
「もういいよー」
シーツを取って、耳を塞いでいた小さい手を離してあげる。車やバイクもエンジンを切り、収納した。
「えっちゃん、こいつらの罪状一覧は、1人1枚でどんどん作って、アイテムボックスに入れといて。昨日の3人のもね」
《YESマスター》
直ぐにはボスたちの元へは行かない。末端の連中を炙り出してからだ。
その後、一旦郊外を何ヶ所か回り、市内へ戻ってを繰り返すと、またわらわらと湧いて出てきたので同じように処理する。
お昼はゆっくり食べたいので、”清浄”で綺麗にした後、自宅近くの幸お姉ちゃんの所で食べた。沖縄そばが定番になりつつある。
午後は時間指定無しの依頼元を訪ね、個別治療を熟すと、再度アマルフィでお掃除。
* *
あずさちゃんたちが帰って来る少し前、私たちは異世界にいた。2人にとって初異世界だ。
向かった先は、先日も来た奴隷商。
「こんにちわー」
「これはこれは、またおいで下さりありがとうございます」
「私はソルよ。お久しぶりね」
「ソル様、お名前を頂きありがとうございます。ゾフレフでございます。お客様のお名前を頂ける事は少なからずご信用頂けた証。大変嬉しく思います」
「えぇ、そうね。またメイドさんを見に来ました。今度は20歳以下でお願いします。あと料理人もね」
「承知しました」
「あ、前回見た人はパスで」
「はい、分かりました」
それからは前回と同じ。前回の人はパスしたので、人数は少なかったけど、条件に合った、子供好きな子を2人ゲットした。
料理人もザレフさんより若いが、それなりの技量を持っている人を見つける事が出来た。合計金貨160枚だった。うん、安い。
丁度あずさちゃんも帰って来る時間だったので、3人に”清浄”をかけて綺麗にした後、自宅へ帰還する。
* *
「「「ただいまー」」」
「「「おかえりー」」」
「「「?」」」
あ、言葉が通じないか。まずは翻訳ブレスレット…(これで分かるよね)…を作って3人の腕に着ける。
「取り敢えず、上がって。あ、靴はここで脱いでね」
「「「はい」」」
今回もソファに座るのを躊躇してたが、無理やり座らせる。
キッチンからコップなどを取り出し、みんなにオレンジジュースを出してから紹介をする。
「新しい使用人で、左からカミラさん、ミーアさん、ノットさんです」
「「「宜しくお願いします」」」
「「「宜しくね」」」
そしてあずさちゃんたちも紹介しておく。
「いきなり異世界に連れて来られて戸惑っているとは思うけど、もう既にアメリカという国に4人の使用人を送って生活しています。
あ、ここは日本という国です。私は主にこちらを中心に活動しています。
カミラさんと、ノットさんについては明日の朝、あちらにお連れします。こちらとは昼と夜が逆転した所なので、最初は慣れるのに大変だと思いますが、頑張って下さい。
あなたたちの仕事は、そこにいる、私が保護している子供30人の管理です。詳細はあちらの管理者、シャイラさんからお聞き下さい。ノットさんはあちらの料理人、ザレフさんについて料理を学んで下さい。何れ、他の地域の子供たちを任せる事になると思うので、しっかり覚えて下さいね」
「「「はい」」」
「カミラさんと入れ替えに、あちらのセラちゃんをここに連れて来ます。ミーアさんはカミラさんから色々教えて貰いながら、ここにいる私の大切な妹たちの面倒をお願いします」
「はい」
それから、私の活動内容や代理人である事などを説明し、活動映像を見せたりした。
「「「ご主人さま、素晴らしいです」」」
「えっへん」
「あ、それから、みんなにも報告があります」
「「「なーに?」」」
「明日から午前中、ラクワちゃんとエマちゃんに家庭教師が来ます。取り敢えず、今度の日曜まで。
それからみんなが帰って来た後、15時から1時間、ちびっ子4人は日本語の家庭教師が来るので、そのお勉強です」
「「「うん、分かった」」」
「そして、これから連れて来るセラちゃんとミーアさんには、お世話以外にも大事な仕事があります。
この4人の子供たちは全員、母国語が違います。なので、日本語の勉強をしている時は側についてあげて、先生と子供たちの通訳をお願いします。
そのブレスレットを付けていれば、全員の会話は理解出来るはずなので問題無いはずです。
勉強の間、子供達には指輪やブレスレットを外して貰うので会話がままならないはずなので、宜しくお願いします」
「はい」
「それから、本日からインターネットが使えるようになりました。あずさちゃん、悪いけど、時間ある時にでも、みんなに使い方を教えてあげてね」
「分かったー」
「以上です。その他の細かい事は少しづつ覚えていけばいいでしょう。
では、あなたたちにはまずお風呂に入ってもらいます。最初はカミラさんとミーアさんから。
あずさちゃん、使い方教えてくれる?私、この子たちの洋服を買って来るから。あ、説明の時はノットさんも聞いて下さい。その後は駄目ですよ?」
「分かったー」
「「はい」」「は、はいー」
それからあずさちゃんと一緒に3人のサイズを測っていく。足のサイズもだ。
テーブルに夕食までの繋ぎとしてパンを3個出してあげた。
「夕食までまだもうちょっと時間があるから、今はこれを3人で食べててくれる?」
「いいのですか?」
「もちろんよ」
「「「はい」」」
3人は美味しそうにパンを食べ始めた。
「もう少し出してもいいけど、夕食食べられなくなったら困るので、それまではこれで我慢してね」
「「「はい、ありがとうございます」」」
「それじゃ、買い物に行ってくるね。あずさちゃん、お風呂宜しくね」
「はーい」「「「「行ってらっしゃーい」」」」「「「行ってらっしゃいませ、ご主人さま」」」
いつものファッションセンターし○むらで1週間分の下着や洋服、寝間着、靴などを購入。ホームセンターで皿やコップ、カテラリー、洗面用具など細かい物を購入していった。
そして、スーパーで夕食の買い物を済ませて帰宅した。
* *
「ただいまー」
「「「「「おかえりー」」」」」「「「おかえりなさいませ、ご主人さま」」
それからカミラさんとミーアさんを連れて2階の空き部屋へ。
「ここでこれに着替えて頂戴」
新しい服に着替えてもらい、古い服はアイテムボックスの肥やしにした。いつものようにブラの付け方講座付きだ。あんたらもなのか!?くそぉ。
「ここはセラちゃんとミーアさんの部屋とします。
カミラさんもあちらに部屋あるけど、これから向こうに行って、朝からの仕事に就くか、明日の朝向こうに行って、すぐ寝る時間になるのと、どっちが良い?
これから行くと、半日以上は起きてないといけなくなるけど…」
「それなら、早く慣れたいのでこれから行きたいと思います」
「分かった。それじゃノットさんも一緒に連れて行こう」
ミーアさんの洋服などをクローゼットに掛けたり、小物類を仕舞う。ベッドも2つ用意した。くっつけなかったけどね。
「この部屋はセラちゃんと仲良く使ってね」
「はい」
それから下へ行き、細々とした説明をした後、みんなで夕食作りに取り掛かった。ちびっ子たちはソファで待ってて貰う。
「ノットさんたちは、こっちの世界の調理器具や調味料などの使い方を覚えて下さいね。では始めましょう。
この家には料理人を置く予定は無いので、ミーアさんと後から来るセラちゃんには料理も頑張ってもらう必要がありますからね。ま、料理は私たちも手伝いますけど」
「「「はい」」」
今日からは使用人も加わって家族が増えるので、ご飯を追加で炊いておこう。炊飯器に入っているごはんをボウルに取り出して、ご飯の炊き方から説明する。
「お米は収穫した時は、周りが糠で覆われてて、こうやって家庭に来るまでに、糠は殆ど削り落とされるの。これを精白って言うんだけど。完全には無くなってないので、ご飯を炊く前にお米を洗い、この残った糠を減らす事で更に美味しくなります。この洗う事を洗米と言います。無理して完全に無くそうとしなくてもいいからね。
まずはこのカップでお米を正確に測ります。適当にするとご飯が固くなったり、柔らかくなったりするのできちんと測って下さいね。
こうやって洗米が終わったら、水に浸して、夏は30分、冬は1時間浸け置きします。こうする事でお米は水を吸って、ふっくらと炊きあがります。
今回だけ、待ち時間が勿体無いので魔法で時間を進めますね、”時間操作”!。
次に水をよく切ってから、炊飯器の内鍋に米を入れ、カップで測った量に合わせたメモリがあるので、そこまで水を入れて、炊飯器にセットして、”炊飯”ボタンを押します。
出来上がったら、音が鳴りますが、直ぐには蓋を空けずに10~15分ほど放置します。これを蒸らしと言います。それ以上は放置しないで下さいね。ご飯が絞まってしまうので。
蓋を空けたら、今度はシャリ切りをします。釜の底からお米をはがすようにかき混ぜます。これで釜の底や中のお米が空気に触れ、余分な水分を飛ばすことができます。ご飯は優しく混ぜてね。ご飯を炊くのは意外と大変なのです。この工程を紙に印刷して壁に貼っておきましょう」
「助かります。一度では覚えきれません」「「うんうん」」
「ま、ノットさんがこれから行く、アメリカはパン食文化なので、ご飯を炊く事はほとんど無いと思うけど、カレーライスや、今日作るオムライスなどの時には必要となるので、是非覚えて行って下さい。それに、あちらのザレフさんにはまだ説明してないので、また向こうで説明しますけどね」
「はい」
(ご飯の説明がこんなに長くなるなんて…でもこれは非常に大切だから、適当には出来ないよね)
「次にオムライスを作ります。子供たちの大好きな料理なのでたまに作ってあげて下さいね。
まずは、玉ねぎをみじん切り、マッシュルームは根元の堅い部分を取って薄切りにし、ピーマンはヘタと種を取って細切りにします。
フライパンにバターという油を溶かして、こうやってたまねぎとピーマンを中火で炒め、玉ねぎが飴色になったら、塩を摘み入れ味をつけ、マッシュルームとハムを加えて炒め合わせます。
火が通ったら、トマトケチャップを加えて炒めながら混ぜ合わせ、水をほんの少し加えてのばします。
水気が無くなったら、そこにご飯を追加し、白い部分が無くなるまでゴムベラで解しながら炒め、塩、胡椒で味を調整し、フライパンから取り出します。
それから、フライパンにバターを入れ、その後、卵を入れ、かき混ぜ、広げます。卵の真ん中に、炒めたご飯を乗せ、フライパンの柄をこうやってトントン叩きながら、卵を回してご飯に被せ、卵の形を整えます。
後はこれを皿に乗っけてケチャップをかけ、粉パセリを振りかければ完成です。
今回は練習の為、少量づつ炒めますが、実際は最後の卵の工程以外は大量に作って構いません。
ではノットさんから順にやってみて下さい。」
「「「はい」」」
流石、元料理人とメイドさん。やる事がテキパキしてて、見てて自分が恥ずかしくなった。
途中戸惑ったり、躓いた時には助言をしつつ、全員に作らせてみた。
(ふむ、素晴らしい出来だ。私が見込んだだけはあるね)
それからスープはノットさんに得意なやつを作って貰った。あずさちゃんや、カミラさんとミーアさんにも覚えてもらう。向こうに行っても作って貰えるようにだ。味見をしたが中々の出来だった。見習いだからこんなものかな。
最後にサラダを皿に盛って、ドレッシングをかけたりしているうちに夕食になったので全員で頂く事にする。
「「「「「「いただきまーす」」」」」」「「「いただきます」」」
最初、一緒に食事する事に戸惑っていたが、この家にいる時はこれが作法だと説明しておいた。
「う~ん、美味しいー」
「ほっぺが落ちそう~」
「「「うんうん」」」
オムライスは大好評で、みんな食べるのに夢中で、3人のちびっ子たちは返事も疎かな有様だ。
「ご主人さま、これは素晴らしいです。こんなに美味しい料理は初めてです」
「ほんとに美味しい~」「ほんとね」
ノットさん、ミーアさん、カミラさんにも好評のようだ。
もう少し食べたそうにしていたので、もう2人前ほど作って、切り分けながら、それぞれのお皿に乗せていった。
ノットさんたちはパンを食べた後だったので、おかわりは要らないとの事。
「まだ夕方の6時半かー。向こうはまだ起きてないね。それじゃ、先にお風呂に入ろう。
ノットさんたちはソファでゆっくり休んでてね。カミラさんは30分ぐらいだけど、部屋行って、少しでも仮眠して体力残しといて」
「「「「「うん」」」」」「「「はい」」」
お風呂から上がると、カミラさんとノットさんを連れてマンハッタンへ向かった。
【時差情報:-13時間】日本:19時15分 マンハッタン:6時15分
「ハロー」
『あ、お姉ちゃん、おはようー』
『『『『『おはよー』』』』』「「「おはようございます、ご主人さま」」」
ザレフさんに朝食の準備を一旦止めて貰って話を聞いてもらう。
「訓練の前に新しい使用人を紹介するね。こちらカミラさん。セラちゃんと交換で今日からここで働く事になったので宜しくね。
それからこちらはノットさん。これからザレフさんと料理をしてもらう事になりました。次の施設が出来るまで、ここで働いてもらいます。
ザレフさん、ノットさんが一人立ち出来るように指導をお願いします。子供たちに喜んで貰える料理を作ってくれればいいので、あまり難しいものや凝ったものを求めたりはしませんので、そこを目標にお願いします。もちろん、料理の幅はあった方がいいのは間違いありませんが」
「「「分かりました」」」
「それからシャイラさん、カミラさんは日本やあちらの世界の時間から連れて来ているので、まる1日起きている状態です。途中、辛そうだったら仮眠取らせてあげて下さいね。
カミラさんの指導もお願いしますね」
「はい、承知しました」
それからみんなは朝の訓練、私とノットさんはザレフさんと朝食作りを行う。ま、朝食は簡単なものばかりなので、あまりする事はないけどね。
子供たちの朝食が終わり、先生方を迎えると挨拶をして、私はセラちゃんとお暇させてもらう。
「セラちゃん、向こうはこれから寝るとこなので、今から寝ると辛いでしょう?」
「そうですね」
「だから、このまま私のお仕事手伝って。と言っても見てるだけなんだけどね。ちょうどこれから集団治療する所に向かうので」
「分かりました」
【時差情報:-13時間】日本:21時30分 デュルビュイ:14時30分
「ちょっと早く着いたから、その辺散歩しましょう。
というか、ここ何?凄いわね。メルヘンの世界?おとぎの国?」
「ほんとですね。可愛らしい街です」
「世界一小さな街って聞いてたけど、こんなに可愛い街なんて。これは今度あずさちゃんたちも連れて来ないと」
ここ”デュルビュイ”はベルギーの首都ブリュッセルから南東に約80km、緑深いアルデンヌの森に佇む小さな、まるで絵本の世界に迷い込んだような街で、オランダやフランスからも近いので、観光客に人気のスポットだ。
「あんなところにお城がある。王様とかいるのかな?っているわけないか。
何々~。”ウルセル伯が居城に改築して、現在もその子孫が暮らしている”、か。なるほどー」
ネットで検索しながら色々見て回る。隣のセラちゃんも楽しそうだ。キョロキョロしすぎて手に持つアイスがポロリしそうでハラハラなんですけどー。
「お、次はここ行こう。”世界で一番小さな町にある、世界で一番大きなトピアリー公園”だって。行くよ、セラちゃん」
「はい、ご主人さま」
手を繋いで小走りに向かう。トピアリーって何ぞ?って思って調べたら”常緑樹や低木を様々な形に刈り込んだもの”とあった。中に入るとその意味を理解した。
「うわぁー、綺麗に刈られてるねー。歩いてても楽しいねー」
「はいっ」
その後も街をぶらぶらして、窓辺にぶたさんの大きな置物が足を乗っけて中を除いてるお肉屋さんとか、でっかいいくつもの地層を刻んだ半円の岩肌、デュルビュイ・アンチラインを見て回った。
そろそろ待ち合わせ時間になったので街の中心部ホワール広場にあるツーリストオフィスに向かう。ここの1室で行うらしい。
セラちゃんにはあずさちゃんのレース付きベールを被せ、マスクもさせてある。私はいつもの変身衣装だ。
玄関で待っていたらしい男性に迎えられ中に入る。
「こんにちわー」
「まぁまぁ、ソル様。ようこそおいで下さいました。私は”キャサリン”と申します」
挨拶を交わすと勧められた席に座る。
「この街はとても素敵なところですね。来て驚きました。今度は妹たちも連れてまた来ようと思います」
「それはどうもありがとうございます。気に入って頂けてこちらも嬉しいですわ。大歓迎です」
それからいつものように治療を開始する。
世界一小さい街を謳うだけあって、集まった人も少数だ。こればかりは仕方無いね。
環境がいいのか、大病を患っている人はあまりいなかった。
それからほぼ全ての治療が終わった頃、キャサリンがベビーカーに乗せた女の子を連れてやってきた。ベニーカーの側には両親らしき男女が伴っていた。
「ソル様。この子は私の孫娘でアイリーンと言います。去年までは元気に駆け回っていたのですが、今年の始め頃にポリオウイルスに感染しまして、医者が言うには、この病気は急性灰白髄炎、一般では小児麻痺と呼ばれるもので、罹患してしまうと現在の医療では治療は不可能だと言われました。
どうかこの子をお救い下さい。またあの時のように元気で明るいアイリーンを取り戻してあげて下さい。宜しくお願いします」
キャサリンと、両親らしき人たちが並んで頭を下げた。
「分かりました。一人でも多くの子供たちを救うのが私の使命だと思っておりますので、お会いできて良かったです」
お互いにコクリと頷いて、ベビーカーのアイリーンちゃんの元へ向かう。
「アイリーンちゃん、こんにちわー。初めまして。私はソルだよ。
もうこんな病気なんて追い出して、これからは元気になって、私ともお友達になってねー」
優しく髪の毛を撫でながらそう言うと笑って喜んでくれた。
(あ、言葉は理解できてるのかな?)
「それじゃ、治療を開始します。少し眩しくなるので、皆さん、少しの間目を閉じてて下さい」
『『『はい』』』
アイリーンちゃんの手を取って、呪文を唱える。
「ちちんぷいぷい、痛いの痛いん飛んでけー、”●☆※△*…”!(”完全治癒”!)」
「ぷっ」
あ、今誰か笑ったなー。
すぐに光は収まり、アイリーンちゃんを見ると目をパチパチしてた。鑑定で見ても病気は完全に消えていた。
「はい、終わりました。アイリーンちゃん、お姉ちゃんの事分かるかなー?」
「うん、ここどこ?私どうしたの?」
「「アイリーン!!!」」
『『『おぉー』』』
両親がアイリーンに駆け寄り抱きついた。キャサインさんもハンカチを取り出し目元を拭っている。
「ちょっとだけ、病気で眠ってただけだよー。もう大丈夫だから安心してね」
「ソルさん、本当にありがとうございました。こうして目の前にしても未だ信じられないほどですが、元気なアイリーンを見て、神様は本当にいるのだと、改て実感致しました」
「「ありがとうございます」」
(神様逃亡しちゃったけどねー、あはは。うん、黙っておこう)
「さて、アイリーンちゃん、どこか痛いとことかある?」
「ううん、大丈夫。お姉ちゃんが私の病気治してくれたの?」
「うーん、私と神様かな。神様の力を貰った私があなたを治したってのが正解かな」
「お姉ちゃん、女神さま?」
「女神様とは違うかな。敢えて言うなら御使いかな。神様からね、アイリーンちゃんみたいな子をたくさん救ってあげなさいって言われてるのよ」
「そうなんだー。お姉ちゃん、ありがとー」
そう言うとアイリーンちゃんは両手を伸ばしてハグを要求してきた。もちろん、拒否するはずもなく、アイリーンちゃんを抱き上げて、優しくぎゅーっとしてあげる。
「お姉ちゃん、暖かくて良い匂いがするー」
「あはは、ありがとう。アイリーンちゃんもとても温かいよー」
そして突然にそれは起こった。アイリーンちゃんが私の頬にキスをしてくれたのだ。
(ぐはっ、この破壊力はやばい。倒れそうだが、今はアイリーンちゃんを抱きかかえているので倒れるわけにはいかない)
「わーい、可愛いアイリーンちゃんにキス貰っちゃった。ありがとねー」
「うんっ。私からのお礼だよ、うふ♪」
それから、まだ体力的には衰弱しているアイリーンちゃんをベッドに寝かせ、しばらく皆で団欒した後、帰る事にする。
「それじゃ、キャサリンさん、皆さん、これで失礼しますね。素敵な街なのでまた遊びに来ます」
『『『はい、ありがとうございました』』』
「アイリーンちゃん、また遊びに来るからね。元気でいてね」
「うん、絶対また来てね」
「約束するよ。それじゃね、バイバイ」
「バイバーイ」
みんなに見送られて自宅へ帰還した。
* *
「ちょっと休憩してから次の仕事行くけど、セラちゃんはどうする?そろそろ休む?」
「いえ、まだ大丈夫です」
「分かった。明日もあるからあまり無理しないでね」
「はい。それにしてもご主人さま凄いですね。アイリーンちゃん、本当に良かったです」
「そうね。世界にはまだまだ不幸な子がたくさんいるから、もっともっと頑張らないといけないけどね」
「素晴らしいです」
暫くホットココアで休憩した後、今度はお掃除をする為アマルフィに向かう。
* *
【時差情報:-7時間】日本:0時 アマルフィ:17時
まずは市長に確認したい事があるので電話する。
『もしもし、ソルさん?』
『ハロー。ちょっとお話したい事があるんだけど、今から行っていい?』
『えぇ、構いませんよ。私のいる場所は…』
『あー、私はソルよ。どこにいるかなんて分かってるわ。それじゃ1分後に』
『あ、はい』
扉をノックして執務室に入る。
「ハロー」
「お早いですね。あ、ソル様だからですな。
それと早速、街が綺麗になり、皆も大変喜んでおりました」
「そう、それは良かった。まだ郊外は全然だけどね。
では、早速だけど、今朝、というか深夜に100名近く退場願ったので、これから孤児になってる子がいないか確認して回ろうと思うの。
それでお願いなんだけど、ここか周囲の街に孤児院か、私に譲ってもいい大きめの建物ないかしら?お金なら払うわ。
うーん、出来れば、犯罪者の子なので、この街の住民から迫害を受けても可愛そうなので、違う街の方がありがたいけど、他の街は無理よね?」
「ソル様。犯罪者の子を保護するのですか?そこまでする必要は無いかと思いますが」
「犯罪者は天罰を下すべきだし、それを許容しているその配偶者も救う価値なんて無いけど、子供たちは別よ。子供たちは親を選べないもの。そうでしょ?
それに子供たちを見捨てて餓死しろとでも?それとも市がきちんと養ってくれるならそれでもいいわよ?」
「確かにそうですな。この街や他の街にも孤児院はありますが、規模はそれほど大きくありません。数人程度なら大丈夫だと思いますが、それ以上だと管理している者の負担がオーバーしてしまうでしょうな。それにもし犯罪者の子供と知ったらどうなるかも心配ですから、この街では無理でしょう。
そういう事なら、他の街にも知り合いがおりますので、確認しておきましょう」
「分かったわ。それでお願い。ちなみに孤児院の子たちって学校は行かせて貰えてるの?」
「はい、もちろんです。子供たちには教育の義務がありますからな」
「そう。それなら、もし孤児院じゃなくて、建物を譲り受けて私が保護する場合、子供たちの学校の手続きやその建物で泊まり込みで働いてくれる家政婦さんの紹介とかもお願いできないかしら?」
「分かりました。では、その方向で進めさせて頂きます」
「それじゃ、その御礼に、期間限定ですが、あなたの家に悪意を持った者が入って来られないように、結界を張らせてあげるわ。あなたの名前はもちろん出してませんが、どこかの馬鹿なチンピラが思いつきであなたのせいにしないとも限らないもの。用心の為にね」
「それは助かります。ご要望に添えるよう努力しますので、どうか宜しくお願いします」
「えぇ」
それから市長の家に転移し、結界を張った後、まだ掃除してない地域を回る。
「あれ?ここ今朝、掃除したばかりだけど、こんだけのゴミ、どこから出てきたのよっ」
「す、すみません、ソル様」
いきなり背後から謝られた。
「あなたは?」
「私はこの近くに住む者です。ソル様がせっかく掃除して下さったのに申し訳ありません。
どうやら皆も同じ考えだったらしく、これ以上ゴミの山を増やしたく無かったのか、家の中にもゴミを抱えていたようでして」
「なるほど…それなら仕方無いわね。分かったわ。もう無いわよね?」
ポンッと手のひらを叩き納得した。
「かと思います。何回か自宅を往復してましたので。では、私はこれで」
そう言って男性は離れて行った。
「と言うか、ゴミの日って無いの?すぐその日に出すって……ま、しゃーないかー」
仕方無いので昨日と同じように”除染”→”縮地”の繰り返しで掃除しながら、昨日退場してもらったチンピラの自宅を回った。
コン、コン…
「誰~?あなたなの?帰ったの?」
「こんにちわ。私はソルです」
「ソル?誰?」
玄関を開けて女の人と小さい男の子が出迎えてくれた。
(うぅ、小さい子の前では言い出し辛いな)
「私は神様の代理人ソルと言う者です。神からの指示によりこの街の掃除と、昨日までの街の状況を仕切っていた悪人たちへの天罰を行ってます。
こう言えばお分かりかしら?」
(えっちゃん、この家のチンピラから巻き上げたお金っていくらだっけ?)
《YESマスター。〇〇リラです》
(ありがと)
「これはあなたの夫が持っていたお金です。お返しします。もう彼は帰って来ません」
「ちょっと、どう言う事?意味分からないんだけど」
「あなたの夫は神の天罰により、天国以外の場所へ落とされました」
「な、な、どう言う意味よ!天国以外の場所?地獄って事?
…もしかして、あんたが殺したの!?こ、こ、この人殺しー!!」
(うわぁー、急にヒステリーになった。耳が痛いー)
「はぁ、あなたね。あなたの夫は、これまでどれだけの人を不幸にしたのか知ってて言ってるの?」
「他人なんてどうでもいいわよ。夫を帰して!!子供もいるのよ!これからどうやって生きていけばいいのよっ!!!」
セラちゃんを見たら耳を塞いでいる。
(うん、良かった。それでいいよ。ちょっと我慢しててね)
「私に言われても仕方無いわ。あなたも夫のやってた事を知ってて放置したんだから、本来ならあなたにも天罰あってもおかしくないのよ」
「わ、私は何にもしてないわよ。私まで殺すって言うの!?」
「うわーん、お母ちゃーん」
子供が泣き出した。でも気にしていないようだ。
「お子さんも泣いてますから、少し落ち着いて話をしましょう」
「あんたも煩いよ。少し黙ってな!」
バシッ…ドシャッ…
「あ」
突然母親が子供の頬を叩きつけた。
「うわーーーーん」
「いきなり殴らなくても」
「煩いっ!あんたも一体何しに来たのよ!私の悲しむ顔でも見に来たって言うのっ!それとも殺しに来たのっ!」
「違うわよ。子供だけが残ってないか、心配で見に来たのよ。あんたの事はどうでもいいわ」
「本当にどうすればいいのよっ。というか、本当に夫は死んだの?」
仕方無いので洋服と所持していたアクセサリーなどを一式渡した。
「あ、ぁ、あなたーーーーっ!!」
洋服を見て、それを掴んだと思うと、突然泣き出す。
「もし、これからの事を思って、子供を育てられないと判断したら、2時間後に市庁舎前に来て頂戴。私が大切に育てるから。もちろん、落ち着いてから引き取りたいなら、その時は連絡して。状況によっては、子供が望むならだけど、返してあげるわ」
「・・・」
無言で泣き続けているので、取り敢えずその場を後にした。
それからも掃除をしながら回ったが、ほとんどが独身だった。ただ、1件を除いては。
コン、コン…
「はーい。お父ちゃん?」
ガチャとドアが開くとエマちゃんぐらいの女の子が出てきた。
「こんにちわ。私はソルよ。宜しくね」
「うん」
「お名前は何て言うの?」
「ビビアナだよ」
(うぅ、何て切り出そう。本当の事言った方がいいのかな?もう少し大きくなるまで待つ?)
少しの間、葛藤したが、隠し通せないと思ったので、犯罪者と言う事は隠して本当の事を説明する。
「ビビアナちゃん、お父さんの事でお話があるの。お家に入れてくれる?」
「えー、どうしよー。お父さんに怒られるかもー」
「大丈夫よ。お父さんからお許し貰ってるからね。ほら、これお父さんの時計でしょ?預かってきたのよ」
「あ、ほんとだー。分かったー」
部屋の今に通して貰う。健気に冷蔵庫からオレンジジュースを取り出すとコップに入れて持ってきてくれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとー。偉いのねー」
「えへへー」
「ビビアナちゃんは、お父さんと2人暮らしなの?」
「うん、そうだよー。お母さんは私が生まれて直ぐに死んじゃったんだって」
「お祖父ちゃんやお婆ちゃんは?」
「どこかにいるって言ってたけど、お父ちゃん、お家から追い出されたから、もう会えないんだって言ってたよ」
(えっちゃん、この子の祖父母ってどこにいるか分かる?)
《YESマスター。住民データベースを調べますので少々お待ち下さい》
「ビビアナちゃん、これから大切な話をするから、よく聞いてね」
「うん」
席を立つと、ビビアナちゃんの隣に腰掛ける。
「実はね、とても良いにくいんだけど…お父さんは事故で亡くなったの。今警察が探してるけど、崖から海に落ちたみたいでたぶん見つからないって」
(うぅ、もっと良い嘘つけないの?私の頭脳、もっと仕事して)
「えっ………うそ…やだ……お父さん、帰ってくるもん…死んでないもん…うわーん」
泣き出すビビアナちゃんを抱きしめて、泣き止むまで頭を撫でてあげる。
《マスター、ここから数キロ山に入った所にある”ピアニッロ”の街に住んでます》
(そう、ありがとう。分かった)
暫くして泣き止んだのを確認すると声をかける。
「ビビアナちゃん、ごめんね。お姉ちゃん、何も出来なくて」
「ううん、お姉ちゃんは悪くないの」
(ぐふっ、本当にごめんなさい。背徳感で押しつぶされそう。でも私のやってる事は間違いじゃないんだ。後悔しちゃ駄目だ)
「それでね、ビビアナちゃん。少し山の方に行った所にお祖父さんたちがいるんだけど、どうする?これからお祖父さんたちと生活する?それともこの街の孤児院に入って、他の親のいない子たちと一緒に暮らす?それも嫌なら、私の所に来て一緒に暮らしてもいいよ?」
「お祖父ちゃん、どこにいるか、分かるの?」
「うん、分かるよ」
「でも急に行って大丈夫かなー。顔も知らないよ?」
「うん、取り敢えず行ってみようか。もうお年寄りかもしれないから、ビビアナちゃんを育てるのが大変そうなら、孤児院か私の家にしようね」
「うん、分かった」
「それじゃ、この家はもう使わないから、洋服とか布団とか大切な物を持って行こうね」
「うん」
それから必要な物を集めて収納していった。
「お姉ちゃん、お洋服消えちゃった。どこ行ったの?」
「あ、大丈夫よ、ほら。たくさんあると持つの大変でしょ?だから、私の魔法で見えない所にちゃんと保管してあるからね」
再度、洋服を取り出しながら説明する。
「わー、凄いねー。魔法使いなの?」
いつものように、簡単に私の説明をすると、”ピアニッロ”の街へ向かう。
コン、コン…
「はーい。どなたさま?」
「こんばんわ。ソルと言う者です」
「ソルさん?はて?」
玄関を開けてお婆さんが姿を現した。
「お祖母ちゃん?」
「おや、その子は?」
「いきなりですみません。実は相談があって参りました。実はこの子はあなたのお孫さんでビビアナと言います」
「私の孫?こんなに可愛い子がいたら忘れるはずは無いのだけどねぇ。ボケちゃったのかしら」
「いえ、あなた方が家を追い出したと聞きました、息子さんの子供です」
「えっ…な…何で今頃になって息子の子供が?……ちょっと待ってて。主人を呼んで来ますわ」
『何っ!?あいつの子供だとっ!』
それから慌ただしく家の中に駆け込むと、ご主人と見られる老人を連れてやってきた。
「こんにちわ。私はソルと言います。そして、この子がお孫さんのビビアナちゃんです」
「ビビアナか…そうか…よくおいでなさった。わしは”サビーノ”だ。そして、こちらは妻の”マリエッラ”。とりあえずお上がり」
優しそうな方たちで良かった。
リビングらしき場所に通され、紅茶を出された。ビビアナちゃんはホットミルクを飲みながら、少し離れた場所でお婆さんとテレビを見ている。辛い話があるので、そうして貰った。
「それで、あの子が息子の子だと言うのは本当か」
「はい」
(えっちゃん、ビビアナちゃんとお父さんの住民票を印刷してくれる?)
《YESマスター》
「こちらが住民票の写しになります」
「わざわざすまない」
そう言うと住民票を確認するお祖父さん。
「うむ、確かに。間違いないようだ。してお前さんは?」
「私はソル。神の代理人をしております。こちらが私の名刺と活動内容などが書かれたチラシです。後ででもご覧になって下さい。私の後ろに控えているのは使用人ですので、お気になさらずに。
早速ですが、あなたの息子さんは政府による掃討作戦により、今朝亡くなりました。あ、この作戦については他言無用でお願いします。特にビビアナちゃんには、事故で崖から転落し亡くなったと言ってあります。どうやら、父親が犯罪者とは知らないようでしたので。
私はこの作戦で孤児になってしまったビビアナちゃんを見つけて保護しました」
「あなたが噂のソル様なんですな。
そうですか。息子が…いつかはこうなるんじゃないかと思ってました。
…あのバカタレが…こんな小さな子を残して逝きやがって」
「それで、こちらでビビアナちゃんを引き取って貰えますか?大変であれば私の方でお預かりしますが…」
「少々お待ち下さい…おい、お前。ちょっとこっちに来てくれ」
『はいはい』
それから息子さんの事を言って聞かせると、涙をボロボロ流しながら静かに頷いた。
「では、ソル様。ビビアナは私たちで育てようと思います。ただ、私たちに何かがあった時には頼らせて貰っていいでしょうか?」
「えぇ、それは構わないわ。これも何かの縁ですからね。ところで、ここから学校には行かせられそうですか?」
「はい、少し下ったとこに小学校と中学校がございますので大丈夫です。すぐにでも転校の手続きをさせてもらいます」
「良かったです。ビビアナちゃん!」
手招きしてビビアナちゃんを呼ぶ。
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんがこれから一緒に住んでくれるって良かったね」
「ほんと?分かったー。お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、ありがとー」
「「いいのだよ(ですよ)」」
お婆ちゃんがニコニコとビビアナちゃんを抱きしめた。
「では、早速ですが、ビビアナちゃんの部屋とかありますか?持ってきた勉強机とか置きたいのですが」
「おぉ、そうじゃな。それじゃ昔息子が使ってた部屋を使って貰うかの。ばあさん、それでいいか?」
「あー、そうねー。暫く使ってないし、いくつか荷物も置いてあったから、少し掃除しないとね」
「それなら私も手伝います。あまり時間が無いもので魔法で簡単にしちゃいましょう」
「まぁまぁ、魔法ですか。面白い事を言う子ね」
「お、おい、お前。ソルさんに何て事を言うんだ。このソルさんは…」
サビーノさんに説明している時は、マリエッラさんは離れていたので冗談だと思ったようだ。
「大丈夫ですよ。見て貰えれば一目瞭然ですから」
そう言って部屋に案内してもらう。
(うん、これは少しどころじゃないね。このままではビビアナちゃんが病気になってしまうよ)
それからは要らない荷物を別の部屋に移動し、”清浄”で部屋全体を綺麗にした後、雑巾で隅々まで拭いていく。全員でやるとめちゃ早い。セラちゃんもプロだしね。
そして古い布団やシーツなどは、新しいのと交換し、机や洋服を取り出すと設置していった。新しい布団などは私からの餞別だ。
「本当に魔法使いだったのね。疑ったりしてごめんなさいね」
「だから、言ったじゃろうに」
「はい、大丈夫です。あと、こちらは荷物を整理している時に見つけた貯金らしき物です。通帳などはありませんでした。養育費にでも使って下さい。もし困った事があれば相談下さい」
そう言って少し追加したお金を渡してあげた。
「ありがとうございます。これで少しは安心出来ます。何せ年金生活なもんじゃて、ははは」
「それじゃ、失礼します。またビビアナちゃんに会いに来てもいいですか?」
「えぇ、構いませんよ。いつでもいらして下さいな」
「そうじゃな。いつでも歓迎します」
「それじゃね、ビビアナちゃん。また会おうね」
「うん、また来てね。バイバイ」
「バイバイ」
お祖父さん宅を後にすると、市庁舎前に向かった。そろそろ待ち合わせ時間だ。誰かいるかなー。
しかし、行ってみると、母子家庭になった、子を連れた人は誰もいなかった。
(うん、知ってた。夫を殺した女に子供を託す親なんていないよねー。でも大丈夫かな?ネグレストとか無ければ良いけど…)
それから郊外の不法投棄をどんどん熟し、そして昨日宣告した下っ端ボスの家に行く。約束を果たす為だ。
* *
「ハロー」
「ひっ。ま、待ってくれ。もう悪いことはしない。誓うから。命だけは…」
「今朝、掃除してたら大勢のチンピラに襲われたんだけど、あんたには関係ないとでも?」
「お、俺は知らん。たぶん、上の者がやったと思う。信じてくれっ」
そう言うと金庫からお金を差し出してきた。
「あれ?昨日貰ったのに、また増えたのね。どんだけ隠してるのよ」
「ぜ、全部渡す。だから命だけは…頼むっ…」
次に通帳とキャッシュカード、暗証番号を書いた紙を渡してきた。
(こういう世界の人ってみんなこうやったら許して貰えるってルールがあるのかしら?ありがたく頂くけどね)
「その上の者って誰?全部吐きなさい」
「わ、分かった。Aと、隣町のB、それから…」
喋るわ、喋るわ。他の街まで教えてくれた。良い子やー。でも許さないけどね。
ザシュッ…
それから、昨日宣告した小ボスクラスを3人ほど退場させ、本人に偽装して銀行からお金を引き出しまくると自宅へ帰還した。
事務所の立派な机や椅子などの家具と金庫(暗証番号聞き取り済み)。少し裕福なボスクラス宅には、子供がいないのにピアノとかあったので貰っておいた。
それ以外にも高そうな絵や壺など誰も見てない事を幸いに片っ端から没収しまくった。
「よし、それじゃ帰ろうか」
「はいっ」
* *
「ただいまー」
「ただいま戻りました」
「今日からここがセラちゃんの家だからね。自分の家だと思っていいよ」
「は、はい、分かりました」
「でもお姉ちゃんは私だけどね」
「はい」
「それじゃ、ゴミ掃除とかしたから、ちょっと軽くシャワー浴びようか」
「はい、お背中お流しします」
「それはいいよ。一緒に入ろうね」
「は、はい」
* *
「ちょっと、セラちゃん、それは良くないよ。私より年下なのに、何なのその胸は!?ムキー!」
「す、すみません、すみません」
お風呂場で裸になると、あまりに存在感を主張していたので、ついムキになってしまった。
(神様、この差は何よっ!って元々ですか。転生前からそうですか。はい、知ってました。グスン)
「って、冗談よ。いや、冗談じゃないけど。別に怒ってないわ。悔しいだけよ」
「は、はぁ…よく分かりませんが」
それから仲良くシャワーを浴び、たまに隙を突いて、柔らかそうなとこをつついて大声出させたり、慌てて静かにさせたりしながら、寝間着に着替えて居間に戻った。
「もう、急に大声出さないでよー」
「すみません。でもご主人さまが急に触るから」
「女の子同士なんだからちょっとぐらいいいじゃないの。どんだけ柔らかいのか気になったのよ」
「もう触っちゃ駄目ですからね」
「分かったわよ。今度はミーアさんにするわよ」
「誰です?そのミーアさんってのは?」
「あなたとここで働く使用人よ。歳は2つ上の15歳ね。寝室も2人で使ってもらうからね。ミーアさんはもう寝てるから、今日のところは私と一緒に寝ましょう」
「は、はい」
何か警戒されてるんですけど。
「大丈夫よ。取って食ったりしないわよ。つんつんもしないから、逃げないで」
「分かりました」
「でも抱きつかせてね」
「えーーーっ」
「しーーーっ」
それからホットミルクで小休止してから、歯磨きして開いてる部屋のベッドに仲良く潜り込んだ。えへへへー…し、しない、しないから。
気配を察知したのか逃げ出す雰囲気だったので、首を振って違うアピールをしておいた。ちぇっ。
それから目覚ましを朝6時にセットすると電気を消した。時計を見ると、もう2時半だった。やばい。
「おやすみー」
「おやすみなさいませ、ご主人さま」
遅くなりました。すみません。




