殲滅継続
◆西暦2000年5月18日(木)◆
朝、目覚ましが鳴る前に起きた。眠いけど起きた。セラちゃんの寝顔を見る為だ。
「うふふ、セラちゃんも美人さんだねー」
「うぅ…はっ、ご主人さま、すみません。おはようございます」
「大丈夫よ。セラちゃんの可愛い寝顔見れたから満足よ」
「は、恥ずかしいです」
「うふふ、それじゃ、ミーアさんを起こして一緒に朝ご飯作りましょう」
「はい」
部屋を出ると丁度ミーアさんが部屋から出てきた所だった。
「ミーアさん、おはよう。紹介するわね。この子がもうひとりの使用人セラちゃんよ。13歳で年齢は下だけど、アメリカで経験しているから色々教えてもらってね」
「はい、宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「部屋は一緒だからね。セラちゃんの私物を先に入れちゃいましょう」
部屋に入り、洋服などを仕舞っていく。
「それじゃ、みんなで朝ご飯作ろうね」
「「はい」」
キッチンへ入り、仲良く朝食作り。今日はスクランブルエッグと鮭の塩焼き。洋風と和風だが、これが結構合うのだ。
まずは昨日教えたご飯をミーアさんに炊いてもらいながら、その都度セラちゃんに説明していく。ま、暫くは一緒にするからゆっくりと覚えて貰えばいい。
それからおかずとスープを用意する。スープは朝はいつもインスタントのカップスープなので、お湯を沸かすだけだ。簡単にスープが出来る事にミーアさんは驚いていた。
サラダを盛って、後はテーブルに並べる状態にすると、my天使たちが降りてきた。
「お姉ちゃん、おはようー。手伝えなくてごめんね」
「「「「おはよー」」」」
「いいのよ。でも私がいない時はあずさちゃん手伝ってあげてね」
「うん、分かったよ」
「「皆様、おはようございます」」
「ミーアお姉ちゃんたち、そんなに改まらなくてもいいよ。もっと気楽に話しかけて」
あずさちゃんがそんな事を言ってくれた。優しい子だ。
「そうね。もっと妹たちと親しくしてくれると嬉しいわ」
「「は、はい。分かりました」」
「それじゃ、ご飯が炊けるまで、みんなで朝の訓練するわよ」
全員が洗面を終わらせると声をかける。
「「「「「うん」」」」」「「はい」」
ミーアさんたちにも、毎朝出来るだけ訓練に参加するよう言ってある。
訓練が終わると、朝食タイム。みんな綺麗に食べてくれた。うん、素晴らしい。
そして時間が来ると、3人を学校に送り出す。
「よし、もうすぐ先生来るから準備しようか」
「「うん」」「「分かりました」」
長机と椅子、ホワイトボードをセッティングしていく。
子供たちはノートや筆記用具を部屋から取ってきてもらう。自分たちの部屋で授業して貰っても良かったが、ミーアさんたちが目の届くとこに置きたかったから居間にした。
先生たちが来ると挨拶して授業開始だ。暫く様子を見たが2人共真面目に勉強に取り組んでいる。これなら大丈夫そうだ。
「ミーアさん、セラちゃん、昨日も言った通り、お昼は先生も一緒にね」
「「はい、分かりました」」
こちらの声は結界により、向こうには聞こえていない。
昼食もまだ不慣れな2人の為に、先生方が来るまでの間にある程度仕込んである。後は焼くだけだ。
「それじゃ、仕事行ってくるね。後は宜しくね。交代で休んでくれていいからね」
「「はい、行ってらっしゃいませ、ご主人さま」」
* *
私の行き先はもちろん昨日と同じ、アマルフィだ。まだまだゴミも残ってるし、悪党共も、のさばっている。
【時差情報:-7時間】日本:9時30分 アマルフィ:2時30分
やる事は昨日と一緒だ。ひたすらゴミ掃除。市内はほぼやり尽くしたが、チンピラたちに”来たよー”って挨拶する為、適当に巡回する。
案の定わらわら集まって来ると一気に片付けてから、郊外の不法投棄を回収していく。それの繰り返し。
孤児は日が昇ってからだ。今は深夜なので迷惑にもほどがある。
ついでに他の街のボスクラスにもお邪魔する。寝ているところ悪いが、こちらはそんな事関係ない。貰う物は貰って、天罰の対象者は退場願う。
(うん、だいぶ終わりが見えてきたね。というかチンピラたちって本当に800人もいるの?
それにしては集まりが悪いなー。そろそろ一斉サーチして殲滅するか?
…いや、まだ郊外の不法投棄がたくさん残ってるし、これを中心にしていこう。きっと、その内出て来るでしょ。
あまり急いでやらないで、チンピラたちがこの街に集まるまでのんびり行きますか。でも掃除はちゃっちゃと終わらせるけどね)
* *
(そうと決まれば、ちょっと休憩しよう)
電話を取り出して、中国へ発信する。
「ハロー、陳さん、元気してる?」
『これはソル様。どうなさったので?』
「うん、大した用事じゃないんだけどね。この間、瑛華ちゃんに食べて貰ったスイーツに新作が出たから、持っていきたいけど、今、瑛華ちゃんって大丈夫?」
『えぇ、それはありがとうございます。瑛華も喜ぶと思います。是非、行ってあげて下さい』
「はいはーい。それじゃ、両親にも連絡しといてね」
『はい、分かりました』
新作なんて嘘だ。いや、きっと新しいのが出てるはず。取り敢えず今日は幼女成分が足りないので、息抜きに補給しに行く事にする。
* *
【時差情報:-19時間】日本:10時45分 ホノルル:前日の15時45分
「やっほー、ヘレンさん。何か新作とか出てないかなーって、来てみたよー」
「ひなたちゃん、いらっしゃい。そうねー。いくつかあるけど、これなんてどう?」
何でも、タイ発祥のロールアイスクリームで、冷えた鉄板でクルクル丸めたアイスは、軽い口溶けがクセになるそうだ。
「うん、これならおやつに丁度良い量だね。これを50個ほど下さい」
「えっ、そんなに買って大丈夫?溶けるわよ?」
「はい、孤児院の子たちにも食べさせたいので」
「分かったわ。少し時間かかるけど、待っててね」
「はーい」
お金を支払って、お店を後にする。
* *
【時差情報:-1時間】日本:11時 杭州市:10時
「ハロー、瑛華ちゃん、遊びに来たよー」
瑛華ちゃんの自宅を訪問し、ノックをすると、両親が出迎えてくれて、居間に通された。
一通りお礼を言われた後、
「お姉ちゃん、来てくれてありがとー。嬉しいー」
瑛華ちゃんが抱きついてきたので抱きしめてあげる。
(くぅー、生き返るー)
「あれからどうです?特に問題はありませんか?」
「はい、お陰様で。病院での再検査も全く問題無いとの診断で、あちらも大変驚いてました」
「そう、それは良かったわ。今日は瑛華ちゃんに新作のジェラートを持ってきたのだけど、あげてもいいかしら?」
「えぇ、是非。瑛華も喜ぶと思います」
「じぇらーと?」
「うん、瑛華ちゃん、美味しいよー」
「お父さんたちもどうぞ。いくつか置いていくので少しづつでもあげて下さい」
「はい、ありがとうございます。それでは少しだけ頂きますかな」
両親は2人で半分づつ食べると言うので、1つを両親に、そして1つを瑛華ちゃんに差し出し、3個ほどを冷蔵庫に入れてもらった。
「はい、どうぞ。召し上がれー」
「わーい、いただきま~す」「「頂きます」」
瑛華ちゃんは上に乗ったクッキーでアイスを掬い口に入れる。
「うわぁー、お姉ちゃん、これとても美味しいねー」
「おぉ、これは美味しいな」「ほんとね、アメリカにはこんなに美味しいアイスがあるのね」
「瑛華ちゃんの喜ぶ顔が見れて良かったよー」
それから瑛華ちゃんを愛でながら、楽しくお話しながら、先日カナダで買った、王室警察ユニフォームぬいぐるみをペアで上げたら、これもとても喜んでくれた。
(こんなんでいいのか?ま、喜んでくれてるならいっか)
「それじゃ、瑛華ちゃん、帰るね。仕事の途中だけど、瑛華ちゃんに会いたくて来ちゃったの」
「うん、来てくれてありがとう。お姉ちゃん、また来てねー」
「「良ければまた瑛華に会いに来て下さい」」
「はい、また来ます。それじゃね、バイバイ」
「バイバーイ」
* *
「よし、元気充電100%。頑張るぞー」
王さん宅を出て、イタリア以外の不法投棄やロビー活動を行う。
お昼は久しぶりに孤児院に向かった。いい加減あれを渡さないと。
「やっほー」
『姉ちゃん、久しぶりだな』
『わーい、お姉ちゃんだー』
『今日は私が隣ー』
『僕が先ー』
『私もー』
(ふっ、モテる女は辛いぜ…ってあれ?ちょっとデジャヴ…ま、いっか)
「おやおや、ひなたさん、ようこそ」
「今日はみんなにプレゼントを持ってきました。お昼一緒してもいいですか?」
「はいはい、どうぞ。お上がり下さい」
久しぶりの肉祭りでみんなも大はしゃぎだ。もちろん肉の提供は私だ。
今日は奮発してステーキにした。タレは日本から持ってきた定番のやつだ。
お昼が始まると、私の両脇と膝の上にはちびっ子たちで占拠されていた。3人の世話で私の食べる時間が無いが、それでも至福の時間には変えられない。
可愛い手を拭いてあげたり、ソースまみれになった口を拭いてあげたりしながら仲良くお昼を頂いた。私も隙を見てなんとか食事を終える事ができたよ。
「はい、まずみんなにプレゼントがあります。それはこのネックレスです。
これはみんなを守るネックレスです。これを着けている限り、例え、剣で切られようが、魔法で撃たれようが怪我をする事はありません。
なので、これからは必ずお風呂の時以外は身につけるように。いいですね」
『『『『『はーい』』』』』
「それから、このネックレスは他の人には見せないでね。取られたら大変だからね」
『『『『『はーい』』』』』
ま、一応この子たち以外には使えないようにはしているが、絡まれないように念の為にね。
そして、子供たちのネックレスは地球とは違うバージョンだ。トップを叩いて静電気を出す能力の代わりに”魔法攻撃無効”を付与している。そう、こっちには魔法があるからやっかいなのだ。
「院長先生のもありますからね。子供たちが無事でも院長先生が怪我をしたら大変ですからね」
「まぁ、ありがとうございます」
それからみんなにネックレスを着けてもらう。喜んで貰えたようで良かった。
『姉ちゃん、この可愛い絵は姉ちゃんなのか?』
「ミシェルくん、目のつけどころが違うなー。そう、この絵は私なのだよ。わははー」
『お姉ちゃん、可愛いよ』
「わーい、ありがとー。大好きよー」
「それと、もうひとつプレゼントがあるぞー。それは、美味しいお菓子です」
『『『『『わーい、やったー』』』』』
美味しいアイスのジェラートをみんなに配ると、目をキラキラしながらよだれを垂らすのではないかという程、ジェラートを凝視して待て状態を維持していた。
「はい、どうぞ。召し上がれー」
と同時に一心不乱に食べ始める。
『『『『『うーーーん、美味しいー』』』』』
『やべー、姉ちゃん、これめちゃ美味いぞ』
「おや、ほんとね。美味しいわ」
「そうでしょう、そうでしょう。なんたってこれはお姉ちゃんイチオシのスイーツだからね」
『すいーつ?』
「お菓子って意味よ」
『そっかー、すいーつ美味しいね』
「うんうん」
(さてと、これだけ幼女成分補充したら、暫く安泰でしょ、うん)
「それじゃ、みんな、また来るわね。元気にしてるのよ。院長先生の言う事はちゃんと聞いてね」
『『『『『分かったー』』』』』
それから午後はまた個別治療依頼やロビー活動、アマルフィを含む不法投棄の回収などを行っていった。やっぱ一人は寂しいな。
* *
ちびっ子たちが学校から帰ってくる頃、自宅に帰還した。これから日本語の先生を迎えないといけないのだ。
暫くすると、小学1年生の指導をしてくれる先生が帰る頃になったのでみんなで見送り、直ぐに日本語の先生を出迎える事になった。
「こんにちわ。日本語の授業を行いに派遣されて来ました。宜しくお願いします」
「ようこそお越し下さいました。4人ですが、宜しくお願いしますね」
「「「「先生、宜しくお願いします」」」」「「宜しくお願い致します」」
「はい、分かりました」
今日だけは私も参加する。セラちゃんとミーアさんに通訳の仕方を覚えて貰うのだ。
先生の授業が始まる。先生の発音に続いて復唱する声がめちゃ可愛い。やばい、指先がうずうずする。
先生が個人に質問する際に通訳してあげる。逆もしかり。
みんな楽しそうに授業を受けたからか、私もみんなの可愛い勉強姿勢に虜になったからか、日本語の授業はあっと言う間に過ぎた。うぅ、1時間は短かったかな。
先生を見送ると、私は全員を襲い始める。
「君たちは何て可愛いんだー。こいつめー」
「「「「きゃー、あははは」」」」
もちろん、あずさちゃんだけ除け者にはしない。
「あずさちゃん、お前もだー。逃さんぞー」
「きゃー」
「はぁ、はぁ、みんな日本語の授業1時間で足りる?何かあっと言う間に終わったからさー」
「うーん、お姉ちゃん、何日かやらせてみて判断したら?」
「そうだねー。そうしよっか。ま、アニメでも勉強できるものね」
「「「「うん」」」」
「それじゃ、ちょっと休憩しよう。セラちゃんもミーアさんもここに座って」
「「はい」」
みんなが座ったのを確認して、
「じゃーん、今日はヘレンさんとこで新作ジェラートを用意してみましたー。美味しいよー」
目の前に並べていく。
「「「「「やったー、いただきまーす」」」」」「「ありがとうございます」」
みんな一斉にスプーンをつける。
「うわっ、これ美味しいー」
「「「「ほんとだー。美味しいー」」」」「「美味しいです」」
「ふふふーん、でしょう?瑛華ちゃんも美味しいって言ってたからねー」
「瑛華ちゃんって会った事ないなー」
「「「「私もー」」」」
「可愛いよー。みんなと同じぐらいね」
「そっかー」
「私も瑛華ちゃんに会ってみたいなー」
「「「うんうん」」」
「よし、今度みんなで会いにいこうね」
「「「「「うん」」」」」
「それじゃ、私ちょっと仮眠するね。また寝不足だよー。夕食になったら起こしてね」
みんなで仲良くアイスを食べ終わると私は仮眠を取る事にする。今夜もアマルフィに行かないといけないからだ。
「うん、分かった。いつもありがとうね」
「「「「お姉ちゃん、大丈夫?」」」」
「少し寝たら復活するから無問題。それじゃセラちゃんたちも、後は宜しくね」
「「はい、お任せ下さい」」
そして、自室に戻ると、ベッドに横になった。
* *
夕方に起こされると、一緒に夕食を取り、みんな仲良くお風呂。
「うーん、セラちゃんたちも来たから、このお風呂も大きくしたいよね」
「うん、そだねー。リフォームするの?」
「私たちは後から入っても」
「駄目よ、セラちゃん。みんなで入った方が楽しいでしょ?」
「「は、はい…」」
「それに、みんなも足伸ばしてゆっくり入りたいでしょ?」
「確かに」
「「「「うん」」」」
「ま、私的にはこうして、みんなを順番に抱きながら入るのも悪くないけどねー」
「「「「「あはは」」」」」
「でもそうすると、その間お風呂どうするの?」
「うーん、近くに銭湯無いしねー。と言うか、この沖縄ってもしかして銭湯って無くね?」
ネットで調べて見ると、案の定2,000円前後するリゾートスパしか無かった。
「やっぱり無かった。東京とか500円以下で入れるとこあるのに……湯船に浸かる習慣の無い沖縄じゃ、やっていけないのかなー」
「そうかもねー」
「マンハッタンでもいいけど…あぁ、アメリカにも自宅があるじゃない。そこで入るか。昼間だけどね」
「いいけど、明るいうちにお風呂入るのも、何だか変だねー」
「それなら中国にする?時差1時間だし。ロシアは、6時間でまだ明るいからアウトだね」
「うん、それでいいと思う」
「よし、それなら明日早速頼もう。この家、バスタブはそれほどでもないのに、バスルームは結構広いのよね。神様ももうちょっと気を利かせてくれれば良いのにね」
「「「「「あはは」」」」」
「後は中国自宅の掃除と光熱費支払いだね。あ、工事入る前にお風呂使えるようになるかなぁ…」
「「「「「なんくるないさー(沖縄方言:どうにかなるよ)」」」」」
お風呂を上がると、早速リフォーム会社に連絡して明日の朝来て貰えるようお願いした。
「ちょっと中国のお家見てくるね。ゆっくり休んでて」
「お姉ちゃん、私も行こうかな」
「お、あずさちゃん、珍しいね。いいよ。でもお風呂入ったばかりだから、ちょっと綺麗にしてくるよ。そしたらみんなで見に行こうね」
「「「「「うん」」」」」
* *
「さて、中国の自宅はどこだろう…お、浙江省杭州市?あれ…それって…陳さんとこかっ。何というラノベ的ありえない展開!ご都合主義!…ま、いっか。
それじゃ、えっちゃん、私をおうちに連れてって!」
《YESマスター》
「乗り悪いなー、もー」
【時差情報:-1時間】日本:18時30分 杭州市建徳市:17時30分
やってきました。浙江省杭州市の南に位置する県級市である建徳市。
「ん?杭州市の建徳市?どっち?どういう意味?」
《建徳市は杭州市が管轄する県級市で、杭州市に含まれています》
「ややこしいなー、もー」
自宅を見上げると意外と大きい。これはちょっとした孤児院に出来るかも?
敷地に入って、まずは”完全結界”で不法侵入しないようにしておく。
「あ、えっちゃん、この建物と土地はちゃんと父親(仮)の名義になってるよね?」
《YESマスター。間違いありません》
「オッケー。では、いざ参るー」
中へ入ると思ってた通り結構な広さのリビングとキッチンが広がっていた。
「よし、それでは一通り”清浄”しちゃいましょう」
いつものように各部屋を回り、簡易掃除ボタンを設置し、シーツや布団類などは回収していく。
「うん、お風呂も大きいし、部屋も10あるし、生活の拠点、ここに移しちゃうか?なーんて思ってしまいそうだ」
そして、あらかた掃除と確認が終わったので、一旦自宅に帰り、みんなを連れてくる。
「ただいまー」
「「「「「おかえりー」」」」」
「どうだった?」
「うん、結構大きいよ。みんな、その目で見てみるといいよ」
「「「「「分かったー」」」」」
みんなを引き連れて建徳市に戻る。
* *
「じゃじゃーん、どう?」
「大きいねー」
「「「「うわー」」」」」
「そこに誰かいるのか?」
「「「「「!!!」」」」」
「誰?ここ私の敷地なんですけど?」
「いや、ここは建徳市が没収する事になったから、建徳市の所有物件だ」
「はぁぁあああああ?何言ってくれちゃってるわけ?勝手に人の家を没収するとかどう言う意味?」
「どう言う意味も何もそう決まったのだ。早急に立ち去りなさい」
「それって、浙江省の上の人も承知しているの?」
「当たり前だ」
「な、な…陳のやつめー」
怒りでだんだん頭が沸騰してきた。拳がわなわな震えて仕方無い。
「お姉ちゃん落ち着いて」「「「「「お姉ちゃん」」」」」
「だ、大丈夫よ。落ち着いてるわ。」
(ちょっと深呼吸しておこう。すー、はー、すー、はー…よし)
「陳ってもしかして、浙江省委員会書記様の事じゃないだろうな」
「もしそうだったらどうなるの?」
「そんな無礼な物言い許されるわけないだろうが!貴様を逮捕するまでだ!」
「な、な、な…」
「どうどう、落ち着けー」「「「「つけー」」」」
「うーん、これじゃ埒が明かないわね」
* *
スマホを取り出して、陳さんに電話する。
「ハロー、陳さん、さっきぶりー。今大丈夫?」
『はい』
「それじゃ、今から建徳市の役人連れてそっち行くねー」
『えっ』
ツーツーツー…
「なっ、今の電話って、まさか…」
「そのまさかよ。それじゃちょっと陳さんの前でもっかい説明して貰える?」
有無を言わさず、全員で陳さんの執務室へ。
コン、コン…
「入るわよー」
「やぁ、これはこれは、いらっしゃい。して何用で?」
「ち、陳様。す、すみません。お忙しいところ」
「おや、あなたは、建徳市の…取り敢えず、どうぞこちらへ」
全員でソファに座ってお茶を頂く。狭いので私とあずさちゃんの膝の上にはラクワちゃんとエマちゃんが乗っている。
建徳市の役人は縮こまって、顔面蒼白だ。
「ごめんね。何かこの人が私の家を没収するとかふざけた事言っててね」
「ソル様の家ですか」
「あ、そうそう。言ってなかったわね。私、建徳市に自宅があるのよ。ご近所さんね、うふふ。
これで瑛華ちゃんにもどんどん会いに行けるわー。楽しみー。
あ、でも自宅は日本やアメリカなど、世界各地にあるのでここにはたまにしかいないけどね」
「なるほど。それは瑛華もきっと喜ぶと思います。しかし、びっくりですな。郊外とはいえ、この市内に居宅があるとは」
「そうなのよー。父が私に教えてくれてなくて、最近知ったのよー。それで掃除がてら確認に来たら、このザマよ」
私はパネルに先程の一件を映像で流す。
「あーーー。やっちゃいましたかー。大変申し訳ありません。その者にはよく言い聞かせておきますので、どうか穏便に願えませんでしょうか?」
「ち、陳様。あのー、すみません。こちらの方はどう言った知り合いで?教えてくださると助かります」
「この方はソル様だ。世界中でたくさんの人たちを救って下さると、ネットで話題の方だ。”神様の代理人”ってサイトを知らないのか?」
「す、すみません。戻ったら確認致します。それでその方と陳様がどのような関係で?」
「私の孫娘も彼女によって命を救われたのだよ。この方に手を出したら私が承知しないと肝に命じておけ。それから、その自宅を没収する件も取り下げろ、命令だ」
「わ、わ、分かりました。戻ったら早急に取り下げます」
「それなら良いわ。邪魔したわね。それじゃ戻るわ」
「えぇ、この度はすみませんでした」
「じゃーねー」「「「「「バイバイ」」」」
そのまま建徳市の自宅に帰還する。
「ソル様、この度は本当にすみませんでした。そのような素晴らしいお方とはつゆ知らず、大変ご無礼を致しました」
「分かって貰えたならそれでいいのよ。あ、そうだ。この家の電気、水道、ガスの支払いってどこでやればいいの?ネットも繋げたいのだけど」
「はい、それでしたら…」
それらの所在地とネット業者も紹介して貰い、男性は帰っていった。
「お店が閉まる前に、先に電気代とか支払いに行こう」
「「「「「うん」」」」」
何とかぎりぎり支払いに間に合った。直ぐに使えるようにしてくれるそうだ。
* *
「ふぅー、中国ってちょっといなくなると家を取られちゃうのね。びっくりだよー」
「「「「「ねー」」」」」「「うんうん」」
それからみんなで中を見て回る。お陰で楽しかった雰囲気も台無しである。
「これなら孤児20人は保護できそうね」
「「「「「・・・」」」」」
「す、すぐじゃないからね。でも、この家には誰か置かないと駄目ね、きっと」
「それはそうだね、じゃないとまたああいうのが来たら面倒だものね」
「取り敢えず、お風呂はたまにここに来ようね。それともまじで拠点ここに移す?」
「学校は?」
「あ、そうだった。駄目じゃん。むむむ…。
そうだ…えっちゃん、あのアニメみたいに、ここと日本を扉で常時接続して、”どこ(ピー)もドアー”、うわっ、放送禁止用語なのか、これ?どこからなったピー音!?
…おほんっ、で、そういうの出来ないよね?」
《YESマスター。空間魔法の”転移”を付与魔法で扉に付与する事で可能です。但し、予め転移先を設定しておく必要があります》
「出来るんかいっ。くぅー、もっと早めに聞いておくんだったー」
思わず地団駄を踏んで悔しがるひなた。ちびっ子たちも真似をする。可愛い。
早速アマルフィの誰もいなくなったチンピラ宅のドアを引っ剥がし、”清浄”と”時間操作”で新品同様にしてから戻ってくる。
「よし、これをこの辺でいいかな。設置して、と…」
リビングの壁に扉を設置し、壁の前には四角い絨毯を置く。そして日本の自宅に繋がるように、扉に”転移”を付与する。
扉が開いている間、”転移”機能がONとなり、絨毯に乗った者が次々と向こうへ送られる寸法だ。扉を閉じると機能はOFFになる。
しかし、一つ欠点がある事に気づいた。開いた状態で逆から戻ってきて、絨毯に乗るとまた元の場所に強制的に戻されるのだ。ま、絨毯を踏まなければ問題は無いのだが。ちなみに絨毯はあくまでも範囲設定の目安であり、無くても構わない。この範囲に入れば飛ばされると、分かり易いようにだ。
つまり、この機能はあくまでも一方通行なのだ。逆から来る為には向こうにも扉を用意しなければならない。ま、仕方無いか。
ただ、一つ、利点も発見した。扉に複数のスイッチを設け、それぞれに行き先を設定する事で、行きたい所のスイッチを押して扉を開くと、そこに繋がるようになったのだ。一度押すと、そこがデフォルトとなり、他のスイッチを押すまでは切り替わらないようになっている。スイッチが凹むのでデフォルトが何かは一目瞭然だ。
「こ、これは大発明じゃないか?」
「魔法だけどねー。でもとても便利になったねー」
「「「「凄ーい」」」」
「マンハッタンの自宅が今、誰もいないから掃除どうしようと思ってたけど、これならシャイラさんたちにお願いできるね。人数増やして、週1ぐらいでもいいから、ここもお願いしよう」
「それなら、時々誰かがいるから良さそうね」
「セラちゃんたちも、お互いにヘルプが必要な時や質問したい場合に、向こうと行き来が出来るようにするから活用してね」
「「はい、助かります」」
「それと、どうせだからをチャイムボタンにビーコンを設置しよう。この家に誰かが訪ねて来て、チャイムボタンを押されたら、このビーコン経由で日本の自宅でも音が鳴って、パネルに来訪者の映像と音声が聞こえるようにしよう」
早速、玄関のチャイムボタンにビーコンを設置し、押されたら映像を数分表示するようにした。パネルはここと日本と2箇所同時に表示するようにする。映像は音も流れるので、もちろん、チャイム音も聞こえ、周りも気づくはずだ。
「セラちゃんたち、このパネルが表示されて、音が鳴ったら、こちらに移動して来客の対応をお願いね」
「「はい」」
「お姉ちゃん、今日は冴えまくってるねー。凄いよ」
「「「「かっこいー」」」」
「えへへー。でしょう?ふふふ。
これでもし私が仕事で遅くなっても、工事中は、私を待たずに、ここに来てお風呂に入れるね」
「「「「「うん」」」」」
「あ、そうだ。ついでに庭も掃除していくか」
庭に出て、雑草を”空間探査”!で特定し、マジックアイテムへ収納、水魔法で散水し、土魔法で凸凹地面を均して完了。もう慣れたものだ。
「それじゃ、マンハッタンの自宅と施設も同じようにしてくるね。それ終わったらアマルフィに行くから、みんなは時間が来たらちゃんと寝るのよ」
「「「「「うん、分かった」」」」」「「行ってらっしゃいませ、ご主人さま」」
* *
【時差情報:-13時間】日本:20時10分 マンハッタン:7時10分
それからマンハッタンの自宅と施設に行き、同じように扉を設置、自宅に来客があった時は施設で分かるようにしておいた。
「と言う事で、私のマンハッタンの自宅に来訪があったら、このパネルに来訪者の映像と音声が流れるので対応して下さいね。
それと、すみませんが、私の自宅も週に1回でもいいので、簡易掃除ボタンを押してからの拭き掃除をお願いします。それと庭も月1でね」
「はい、分かりました」
「それから、この扉で日本とも繋がったので、セラちゃんが質問に来たり、お互い忙しい時に人を派遣したり、臨機応変に活用して下さいね」
「「「はい」」」
【時差情報:-7時間】日本:21時 アマルフィ:14時
「さて、殲滅作戦の続きをしますか」
まずはゴミが増えてないか確認。
「うん、大丈夫そうね。それじゃ郊外に行ってみよう」
郊外はかなり広い。マフィアたちも適当に投棄しているらしく、しかも埋めてあるのもあって、結構これが大変だった。
エンリコさんから貰った地図に載ってない場所でも時々発見するのだ。仕方無いので掃除したところは地図にマーキングしている。
海にも廃棄していると末端のチンピラが言っていたので、一応海岸から”除染”をしているのだが、沖に捨てられたら今の所どうしようもない。
それでも、一応出来る範囲はと言う事で、”空歩”と”縮地”で海の上を駆け抜け、”除染”をしたのだが、これが地上に比べてかなり疲れる結果となり、それほど広範囲には行けなかった。
そして、今日もこいつらは現れる。一体どこから湧いてくるのやら。
「あんたたちも、大概暇ねー」
『うっせ、おとなしく殺られろ!』
「あはは、ばっかじゃないの?はい、良いわよーって言うとでも?」
『くそっ、かかれっ』
「いっつも同じセリフしか出てこないのね。みんなで練習してるの?」
ザシュッ…
その後はお決まりの、子ボス部屋へ。
「ハロー」
『なっ、ちょ、ちょっとまってくれ。俺は関係ない』
ザシュッ…
とまぁ、こう言う流れが掃除の間に入ってくるわけで、アイテムボックスが車やらバイクやら拳銃やらで満杯にならないか少し心配だ。
(えっちゃん、このアイテムボックスって容量制限あるの?)
《いえ、亜空間を利用しておりますので使い切るのはまず不可能かと。例えこの星丸ごと入れてもまだ、1%すら使っていません。ちなみにこの星を収容するのは規約違反となってますので不可能です》
(そんな恐ろしい事しないわよ。でも無制限と聞いてちょっと安心したわ。
とりあえず収納したものは有価値とリサイクル可能な物を除き、元素単位まで分解しとけば後で売る時に売りやすいよね)
《YESマスター。その方が管理もしやすいかと》
(だよねー)
そして、いつものように合間合間に他の国の不法投棄やロビー活動、個別依頼のアポも併行で熟していく。
「うぅ、眠い。よし、今日はここまでにしといてやろう。わははー、はぁふわぁー。いかん、あくびが止まらん。ではさらばじゃ」
誰もいなくなった中ボス宅で貰える物は貰って、そう独り言を呟いて帰還した。
一応、母子家庭になった母親が、私に子供を託すべく、市庁舎前に来てないか何度か確認したが、やはり今日もいなかった。
自宅に戻ると、シャワー→サイトチェックしながら休憩→歯磨き→ベッドのいつものルーチンを辿った。サイトチェックは眠くて直ぐに諦めたけどね。
「おやすみー、my天使達。チュッ」
もちろん、一番近くで寝ていたフランちゃんのおでこにキスをしてからだ。他の子にもしたいのは山々だが、たぶん途中で誰か起きるからここは我慢の子である。
今回は短かったので連日で投稿できました。
しかし、同じ案件で書き続けるのは難しいです。でも1~2日で終わるのも規模的におかしいので葛藤中です。アマルフィ、次回で終わらせようかな…むむむ。
それとセリフに個性を出せてないのが、最近の悩みです。きっとみなさんは誰が喋っているのか分からないとこばかりなんでしょうね。orz
腰をやってしまいました。もうね、パソコンの前でキーボード叩いている状態じゃないです。
すみません。更新がかなり遅れるかも。




