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アマルフィ

◆西暦2000年5月16日(火)◆


 朝6時、日課の訓練をするべく、ふらふらしながら起床し、1階に降りていく。

 みんなが揃うまでに目玉焼きとベーコンを焼き、お湯を沸かす。

 ご飯はあずさちゃんが昨日のうちにセットしてくれたようだ。有り難い。

 ベーコンエッグとサラダを小皿に盛ってるとみんなが降りてきた。

 

 するとあずさちゃんが見かねて手伝ってくれながら、

「お姉ちゃん、ちょっとふらついてるよ。大丈夫?」

「うん、何とかねー……」

「日課の訓練は私が見るから、お姉ちゃんはもう少し寝てきて。学校行く前に起こすよ」

「そだねー。うん、分かった。お願いします」


 自分の朝食だけラップをかけると寝室へ逆戻りした。


     *     *


 寝たと思ったらすぐに起こされた。もう時間のようだ。うぅ。

 ラクワちゃんとエマちゃんを放っておくわけにも行かないので起きる。

 

「おはよー」

「「「「「おはよう」」」」」

 あずさちゃんにお礼を言い、3人を学校に送り出す。

(今日は残り2人のちびっ子たちの入学手続きがあるから忘れないようにしないと…)


 メモを出して、今日の予定を確認すると、子供たち関連が2件と、出張と個別依頼のアポがあるだけで、今日は比較的のんびり出来そうだった。


  日本   米

┌ 6時-17時 日、起床→訓練

├ 7時-18時 日、朝食&米、夕食

├ 9時-20時 日、ひなた、ラクワとエマ入学手続き&スマホ購入。

├10時-21時 日、ひなた、ラクワとエマ連れロビー、環境活動 > 加18時、出張集団治療。

├11時-22時 |

├12時-23時 |日、昼食

├13時- 0時 |

├14時- 1時 ↓伊10時、個別治療アポ。

├15時- 2時 日、ひなた仮眠。

├16時- 3時 |

├17時- 4時 ↓

├18時- 5時 日、夕食

├19時- 6時 米、武術訓練、日、お風呂

├20時- 7時 米、朝食&ホワイトボードなど設置

├21時- 8時 米、家庭教師による勉強特訓開始&日、就寝

├ 1時-12時 米、昼食

└ 4時-15時 米、おやつ休憩


(うん、明日からは、この訓練や食事関連などは予定から外そう。もう私が関わらなくても、ザレフさんたちがきちんとやってくれるだろうしね。

 一番重要なのは活動以外では9時の入学手続きと20時からの家庭教師関連だけだね。)

 一人遅めの朝食を急いで取ると、2人を両脇に抱えて小休止。

「今日は学校の手続きして、2人のスマホ買いに行こうねー」

「「やったー」」

「あ、その前に昨日ゴミだらけだった、ヘンダーソン島をもう一度軽く巡回してみよう。今日もゴミが漂着してたら、まじで対策を考えないとね」

「ゴミいっぱいだったの?」

「うん、そうだよー。人が住んでいない無人島なのにゴミだらけっておかしいでしょ?」

「誰もいないの?」

「そそ、不思議だよねー」

「「うん」」

「そこ行って軽く掃除してから学校の手続きに行こうね」

「「分かったー」」


     *     *


【時差情報:-17時間】日本:7時45分 ヘンダーソン島:前日の14時45分


 昨日と同じ、島の北東にある砂浜にやってきました。

「流石に1日じゃ集まらないよね。ちょっと安心。それじゃ、海岸線を周って確認してみよう」

「「はーい」」

 2人を抱え、”縮地(クイックステップ)”で移動していく。

「「きゃっきゃっ」」

 移りゆく視界にとても楽しそうなmy天使たち。


 昨日来たとこ以外はやはりゴミが散乱していた。でも昨日の場所ほどではない。場所によって流れ着きやすい所とかあるんだろうか。

 ”除染(ディカンタマネーション)”で綺麗にしながら、”縮地(クイックステップ)”で移動を繰り返す。

 

「あ、お姉ちゃん、あれ人じゃない?」

「死んでるの?」

 砂浜に人が倒れている。エマちゃん涙目だ。

「ちょっとここで待ってて見てくるよ」


「あのー、大丈夫ですか?生きてます?」

 倒れている人に近づき、声をかける。無反応だ。

 首筋に手を添えると脈動が伝わってきた。どうやら無事なようだ。

 鑑定で見ると、かなり衰弱し、意識を失っているようだ。

 砂で汚れていたので水で顔を洗ってやると、ピクリと動いて目を覚ました。

「……こ、ここは?」

「イギリス領のヘンダーソン島です」

「私は一体…」

「何があったのですか?散歩してたらここに倒れてたので」

「あ、そうだ。船が高波で転覆してそれから…海に投げ出されて…その後は覚えてない。ここに漂着したのか…」

 椅子を出して座らせる。

「これ水です。どうぞ」

「あ、あぁ、ありがとう。君は?」

「私はソルです。ちょっと妹たちが向こうで待ってるので連れてきますね」

「あぁ、分かった」

 そう言うと水を勢いよく飲み始めた。かなり喉が乾いていたようだ。

 

「おまたせー。大丈夫だったよ。船が大きい波に襲われて沈んじゃったみたい。それでここまで流されたんだって」

「そっかー。他の人たちは大丈夫なのかな?」

「死んでなくて良かったー」

「2人共優しい子で嬉しいよ。それじゃ、一緒にあの人のところへ行こう」

「「うん」」

 2人を連れて”縮地(クイックステップ)”で男性の元へ向かう。

 

「き、君は何者なんだい?さっきから何もない所から椅子や水を取り出したり、瞬間移動したりしてるように見えるんだが…」

「さっきも言いましたが、私はソル。神様の代理人をしています」

 そう言うと背中に天使の羽の身体には光を(まと)わりつかせる。男性はそれを見て驚愕していた。

 

「そろそろ全世界規模で、有名になりつつあると思ってたんだけど、まだ知らない人もいるのね」

「そ、そうなのか。帰ったら調べてみよう」

「それよりも塩やらなんやらで汚れてるので綺麗にしますね」

「えっ?」

 いつもの生活魔法の”柔洗浄(ソフトウォッシュ)”→”乾燥(ドライ)”→”清浄(クリーン)”で綺麗にすると話を戻す。

「おー、これは凄いな。その羽も本物なんだね。助けてくれてありがとう」

「いえ、偶然見つけただけですから」

 そう言って羽を消した。


「さて、ちょっとここで待ってて貰えます?他にも漂着している人がいないか見てきますので」

「あぁ、分かった。頼むよ」

 2人を連れて”縮地(クイックステップ)”でまだ見ていない浜辺を捜索したが、彼以外には見つからなかった。


「おまたせー」

「あー、おかえり。どうだったんだい?」

「誰もいなかったよ。気の毒だけどあなただけみたいね」

「そうか…」

「もしかして知り合いとかいたの?」

「いや、そうじゃないんだが、船旅で知り合いになった者もいたのでね」

「そうですか」

 しばし沈黙が流れる。うぅ、こういうの苦手なのよねー。


「ところで私もあまり時間が無いので、自宅に送って行きたいのですが、どちらから来たのですか?住所を教えて貰える?」

「あぁ、そんな事まで出来るのか。有り難い。

 私は”ヘインツ”、スコットランドのエディンバラから来たんだよ。住所は…」

「うーん、エディンバラは今から行くと深夜になりますが大丈夫ですか?」

「あぁ、妻がいるはずだから、叩き起こすさ。ははは。……それにたぶん心配してるだろうし」

 心配そうに言葉の最後ではそう呟いた。

「分かりました。帰る前に身体を診察しましょう、(鑑定!)」

「えっ」


 鑑定でも特に大きい怪我や重い病気とかになってないようだ。

「うん、特に問題無いですね。ちょっと衰弱しているのと、肺炎になりかけてるようなので治療しますね、(”超回復(ハイヒール)”!”体力回復(ヘルスリカバリー)”!)」

「おぉ、身体が軽くなった。凄いんだね、君は」

「お代は100万ドルになります」

「え……えぇーーーーっ!?お金取るのーーーっ!?」

「嘘ですよ。本来なら10ドルから100万ドルまでの間で、皆さん、お礼をしてくれてますが、今日は私が勝手にした事ですから無料で構いません」

「100万ドルお礼する人もいるのか、凄いな…」

「お金に余裕があるんでしょうねぇ」

「ははは…」

「それじゃ帰りますよ。いいですか?」

「はい、お願いします」

「天使ちゃんたち、これから行くとこは、真っ暗だけど驚かないでねー」

「「うん」」

「天使も実在するのか…」

 どうやら勘違いしてるようだけど、天使なのは間違いないのでスルーしよう。


【時差情報:-8時間】日本:8時 エディンバラ:0時


 ちびっ子たちを連れて、真夜中のエディンバラに転移する。

「ちょっと待っててくれ」

 そう言うと自宅に駆け出し、名前を呼びながらドアを強く叩き出した。

 周りの電気もちらほら点き出す。傍からしたら迷惑行為だね。

 

「ヘインツ!!!無事だったのね!」

 声がして振り向くと女性がヘインツさんに抱きついて泣いていた。

「もう大丈夫だから。あちらのソルさんが助けてくれたんだよ」

「まぁ、そうなのね」

 こちらに視線を向け、コクリと挨拶をすると、近づいて来た。

 

「この度は主人をお救い下さり、ありがとうございます。真夜中ですが、良かったらあがって行って下さい」

「あ、いえ、すみませんが、この後用事がありますので失礼させて頂きます」

「え?こんな夜中に女の子たちだけでどちらへ?あまりこの時間帯にこの辺を彷徨(うろつ)くと危険よ?」

「あー。えっとこちらは今、深夜ですが、私たちがいた所は早朝なのですよ」

「え?どういう意味なの?」

「ボニー。彼女なら心配要らないよ」

「ヘインツ、こんな小さい子を夜中歩かせちゃ、駄目よ」

「ははは、参ったな…実は…」

 ヘンダーソン島からこれまでの事を話し出す。いまいち納得していなかったが、光る天使の羽を出すと信じてくれた。

 どうやらヘインツさんの乗った船がニュースで流れ、色々問い合わせたが詳細を知る者がいなく、気が気で無かったそうだ。そりゃそうだろうね。


「ヘインツさん、そろそろ帰ります。これ私の名刺と活動内容の書かれたチラシです。何かあれば連絡下さいね」

「あ、うん、ありがとう。助かったよ」

「本当に今回はありがとうございます」

「それじゃ」「「バイバイ」」


     *     *


 次は名護市役所教育委員会だ。

「おはようございます。娘たちの小学校転入手続きに来ました」


 それからは、もう慣れたものだ。ちゃっちゃと手続きを済ませると、学校へ行き、入学日を決め、学習机などフランちゃんたちと同じように必要なものを購入していく。

 それから自宅近くのファッションセンターし○むらで洋服や下着、靴など衣類を数点購入。

 ついでに変身用衣装も一式買い集めてきた。 

 更にスマホを2台購入して事前準備は完了だ。

 ちなみに入学日は案の定来週の月曜日からだった。

 

 一旦自宅に戻り、ラクワちゃんとエマちゃん専用の部屋を新たに設け、そこに学習机や洋服など、買ってきた物を設置していく。ベッドも2台並べた。

 2人共自分たちの部屋に大興奮だ。仲良く手を取り合って喜んでいる。私も混ざりたい。


     *     *


「何か、予定が狂っちゃったけど、急いで次行くよ。あまり時間ないのよー、ごめんね」

「「分かったー」」


【時差情報:-16時間】日本:9時50分 ミシサガ:17時50分


 今回来たのは、カナダ南東に位置する、オンタリオ湖湖畔の街、ミシサガ。

 市の中心部、市庁舎と中央図書館の北隣にある、ミシサガ・シビック・セ○ターを借りて行うとの事で入口前で待ち合わせている。


 やがて一人の男性が待つ場所へと到着した。

「本日は、お招きありがとうございます」

「これはこれは、わざわざお越し頂きありがとうございます。私、この市の福祉課で勤務しております、”エリック”と言います。

 と申しましても市庁舎とは特に関係は無く、祖母からのたっての願いもあって、今回の調整役を任された次第です」

 歩きながら挨拶をしてくれる。


 中に入り、エリックさんが一人のおばあさんに耳打ちした。

「あらあら、いらっしゃい。来てくれて嬉しいわ。私は”バーバラ”よ。宜しくね」

「はい、宜しくお願いします」


 バーバラさんと共に一つの部屋に入っていく。

「皆さん、ソルさんがいらっしゃいましたよ」

「「「「おー」」」」


 バーバラさんが私の事を説明すると、早速治療が始まった。

「お疲れさん、ようこそお越し下さいましたなー。わしももう歳じゃて、身体のあちこちが痛くてのぉ。宜しく頼みますじゃ」

「はい、分かりました。ではお手を借りて診させて頂きますね」

 今日はマンハッタンほどは人がいなかったので、一人ひとり診ていく。

(うん、この方もリウマチか。手足も少し腫れてて、辛そうだね)

「では治療します、”○▼★※…”!”絶対回復(エクストラヒール)”!」

 今回も異世界語でそれらしく魔法名を呟いた。


「おぉ、有り難やー。痛みが嘘のように消えましたぞ。助かり申したわい」

 おじいさんは10ドルをリュックに入れると、次の人に変わってくれる。

(わざわざアメリカドル紙幣に両替してくれたのね。ありがとう)

 心の中でお礼を言っておく。治療に専念する為、口には出さない。


 それから症状によって”完全治癒(オールヒール)”と使い分けながら治していく。

 目や腰、関節などを患っている人が多く、たまに癌などの不治の病にかかっている人がちらほらいた。

 バーバラさんも腰が悪く、歩くのにも支障を来たす程だった。


「バーバラさん、腰もそうですけど、全体的に骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になってますね。いつ骨折してもおかしくないほどですよ」

「おや、そんな事まで分かるんだねー」

「でも大丈夫ですよ。これから治療しますからね。でもこれからは意識してミルクなどでカルシウムを補って下さいね。

 では、皆さん、少し眩しいですから目を閉じましょう……”●☆※△*…”!(”完全治癒(オールヒール)”!)」


「はい、もう目を開けてもいいですよ」

「あら、腰が。凄いわ。こんなに楽になっちゃうなんて。ありがとうね」

 手を握ってニコニコ笑ってくれた。

「いえ、いつまでも元気でいて下さいね」

「ばあちゃん、病気が無くなって良かったな」

「そうね。ありがたい事ね」


 今回はセンターの中なので、浮浪児たちはいるはずもなく、無事に全ての治療が終わった。

「それではこれで失礼しますね」

「ソルさん、本当にありがとうね」

『『『『『ありがとうございました』』』』』


 センターを出て、何気なく周りを見回す。孤児らしき姿はない。

(カナダにはいないって事?でも、もしいても、今度は私の身体が持たないかも…。

 今後どんどん孤児が増えていったらどうなるんだろう?

 ザレフさんたちの次の世代を育成しないといけないだろうなぁ……今度からそれらしい人を見かけたら、声かけて採用していこうかな……。

 ロシア、中国、フランス、イギリスにも恐らく自宅があるはずだから、有効利用したいよね……

 うーん、おいおい考えて行くか…)


     *     *


「よし、みんなせっかくミシサガに来たのだから、ナイアガラの滝を見に行こうー」

「「滝?」」

「そうだよー、世界で一番?かは知らないけど、とっても大きい滝だよー。きっとびっくりするよー」

「お姉ちゃん、滝って何?」

「そっちかよ…ガクリ」

「滝ってのはね。川が途中で切れてて、そこから崖になってるの。するとね、水がそこからドドドーって下に落ちていくのよ。周りに水しぶきをドバーってばらまいて、凄い音がするんだよ?言ってる事分かる?」

「うん。凄そうー。楽しみー」「私もー」

(説明って以外と難しい…)


 2人を連れてゴート島にあるナイアガラ・フォールズの絶景地点に向かう。

 実はここはカナダではなく、ぎりぎりアメリカなのだが気にしない。特に誰にも止められないから無問題(もーまんたい)だ。


「うわー、お姉ちゃん、(うるさ)くてよく聞こえないよー」

「ほんとだねー。それにあんまり近づくと濡れちゃうよー」

「「分かったー」」

 大声で話す私たち。周りも一緒だ。

「えっちゃん、3人でもベストショットを撮ろう。後で印刷するよ。

 …あ、あずさちゃんたち、悔しがるかな?ま、その時はまた連れてこればいいよね」

《YESマスター。お任せ下さい》

「3人で滝を背に写真撮るよー。カメラ無いけどね。あはは」

「「うんっ」」

「もうえっちゃんが優秀すぎて、えっちゃん無しでは生きていけないね」

「「うん」」

《ありがとうございます、マスター》

 それからそこで売られていたジェラートを食べながらお昼まで観光したのだが、お昼近かったせいか、せっかく地元のレストランに行ったのに、2人ともほとんど食べなかった。ミスったー。

 こっそりアイテムボックスに仕舞ったのは内緒だ。

 帰る際には、あずさちゃんたちと施設の子供たちの土産として、カナダの王室警察のギフトショップで、王室警察のユニフォームを着たぬいぐるみをいくつか買った。くまさんとトナカイの2つのバージョがあったよ。あと、忘れてはならないメープルシロップも、もちろん外さない。今度パンケーキを作ろう、うん。


     *     *


 それからロビー活動や不法投棄処理、時間指定のアポなどを(こな)し、フランちゃんたちが帰ってくる頃を見計らって自宅へと帰還した。

 

「「「ただいまー」」」

「「おかえりー」」

 みんなの待つ居間へ行き、みんな仲良くホットココアを飲む。

「フランちゃん、ファティマちゃん。ラクワちゃんとエマちゃんの入学が来週月曜日からに決まったからねー。お姉ちゃんとして2人を守ってあげてね」

「「うんっ、分かった」」

 小休憩をはさみ、直ぐにナイアガラの写真を印刷する。

「だからみんな何か濡れてるんだねー」

「え、分かるの?とりあえず綺麗にしとくか、”清浄(クリーン)”!」

 どこか行った事がバレてたらしい。

 そうこうしているとあずさちゃんも帰ってきた。

 

「お姉ちゃんたち、いいなー。私も滝見たかったなー」

「「私もー」」

 案の定、羨ましがられた。学校だったんだから仕方無い。

「今度、みんなで行こうね」

「「「「「うんっ」」」」」


 休憩が終わると、あずさちゃんたちは宿題を、ラクワちゃんたちはDVDを見ると言うので私は2時間ほど仮眠を取らせてもらった。

(明日から、きっと楽になるはずだ。たぶん)


     *     *


 たった2時間の睡眠でも取る取らないでは効果が全然違うものだ。起きると疲れが若干取れていた。

 何故、2時間かというとアポがあるからなのだ。残念。

 

「ちょっと17時にアポが入ってるから、夕食はあずさちゃんお願いしていい?」

「うん、いいよ」

「「私も行くー」」

 フランちゃんとファティマちゃんが飛びついてきた。

「宿題とか終わったのー?」

「「終わったー」」

「ラクワちゃんとエマちゃんはどうする?」

「うーん、私はアニメ見てていい?」「私もー」

「良いよー。分かった。それじゃ行ってくるね」

「「「行ってらっしゃーい」」」


【時差情報:-7時間】日本:16時50分 アマルフィ:9時50分


 今回はイタリア南部カンパニア州アマルフィだ。ソレント半島南岸に位置し、世界遺産に登録されたアマルフィ海岸の観光拠点として知られる場所だ。

「うっ、ここ観光名所だよね?」

「お姉ちゃん、臭い…あ、この街がだよ。お姉ちゃんじゃないよ」

 フランちゃんに再度撃沈されそうだった。

「う、微妙にセーフかな。危うく膝をつくとこだったよ」

「うぅ、ごめんなさい」

 悲しそうにするフランちゃんを抱き寄せる。

 

「それにゴミがいっぱいだよ。片付けないのかな?」

 エマちゃんが鼻を押さえて抗議する。

「本当だよねー。何でこうなってるの?」

「「分かんない」」

「だよねー」

 急いで待ち合わせ場所に向かう。


 到着すると、私たちが鼻を押さえているのを見て、依頼主が苦笑いをしている。だって臭いんだもの。

「ソルさん、ようこそおいで下さいました。ははは、どうやら、この臭いに参ったようですな」

「すみません。でもここ観光名所なのでは?」

「えぇ、その通りです。これには理由がありまして……とりあえずここだと臭いがきついので中へどうぞ」

「「「はい」」」

 私たちが迎えられたのは、アマルフィ大聖堂の一室。自宅ではまずいらしく、ここへ案内された。


 席に着くと、私たちにはスプレムータと言う、しぼりたてオレンジジュースが配られた。大人はエスプレッソだ。

「ソルさん、改めまして、アマルフィにようこそ。私はここの市長をしている”エンリコ・フェレッロ”です。こちらは妻の”フローレンス”です。

 私たち夫婦は長年、私が糖尿病、妻が慢性群発頭痛に悩んでおりまして、今回依頼をする事にしました。ですが……。

 実は、本来のお願いというのはこの病気の事ではないのです。もちろん、苦しんでいるのは確かですから、こちらも診て貰いたいのですが」

「なるほど、長くなるようでしたら、先に病の方から治療しましょうか」

「そうですね。それでお願いします。特に妻は痛みが酷いらしく、見ているこちらとしても何もできずに辛いのです」

「分かりました。では一人づつ近くにいらして下さい」

「「はい」」


 すぐに、手を取って一人ひとり診ていく。

「エンリコさんは視力の方にも影響が出ていますね。では治療しますね。少し眩しくなりますから、おふたり共少々目を瞑っていて下さい。ちびっ子たちもね」

「「はい」」「「うん」」

「”●☆※△*…”!(”完全治癒(オールヒール)”!)」

 もうこの異世界語は定番になりつつあるな。よし、このスタイルで行こう。

 するといつものように眩く光り、それが収まるとエンリコさんの病気は消えていた。

「おぉー、何だかいつもと違います。なんと言うか身体の調子が良いと言うか…視力もはっきりと見えます。ありがとうございます」

「はい、ではフローレンスさん、こちらへ」

「はい」

 同じようにフローレンスさんも治療する。流石(さすが)、”完全治癒(オールヒール)”。どんな病でも問題なく治癒できるようだ。

「あ、あ、あなた、私の頭の痛みが無くなったわ……もうあんなに辛い思いをしなくていいのね、うぅ……やっと…良かった」

「あぁ、そうだな。ほんとに良かった…」

 するとポロポロと涙を流し始めるフローレンスさんを、エンリコさんが後ろから抱きしめて一緒に涙ぐんだ。

 隣のちびっ子たちも貰い泣きしたようだ。抱き寄せて頭を撫でてあげた。

「はい、これでおふたりの病気は完治しましたよ」

「「ありがとうございました」」


     *     *


「では本題とやらをお聞かせ下さいませ」

「はい、実は、ここに来る際にご覧になられた、あのゴミ山の件です。

 本来ならば清掃業者が定期的にゴミを回収するはずなのですが、突然ストを決行しだして、回収してくれないのです。

 そのストの要求が、現在、市を上げて取り組んでいる焼却場の新規建設を反対しているのです。ゴミを焼却する施設が足りない為の新規事業なのですが猛反発されてまして」

「えっ?よく意味が分からないのですが、足りないなら追加するのは当たり前なのでは?」

「はい、そこには深い闇が潜んでまして…」

「闇?」

「そうです。どうやらこのゴミ収集事業には、この辺りを仕切っているマフィアが裏で絡んでいるようでして。

 最近判明したのですが、マフィアたちはゴミを収集し、焼却する費用を貰っているにも関わらず、この街の周辺に埋めたりなどの不法投棄を行い、荒稼ぎをしているようでして。

 焼却場が出来ると入ってくる収益が減る為、清掃業者を操ってデモを起こして、何とか阻止しようとしているのです。

 先日はこの事業を立案した副市長が何者かに殺害されました」

「それは聞き捨てならないわね。神が知ったらこの地が焼き野原にされかねない事案ね」

「そ、それはご勘弁を」

「私じゃないわよ。神がよ。でも丁度、ここ100年は戻って来ないから大丈夫だけどね。それで?」

「はい、ここからは極秘のお願いなのですが、市からソル様へ正式に要請致します。

 どうかこの街のゴミと周囲に不法投棄されたゴミを掃除して欲しいのです。我々もほとほと手を焼いておりまして、中央からの了解も得ましたので、どうかこの街を綺麗な街に戻して下さい。

 費用としては環境回復と治安回復にそれぞれ500万アメリカドル。合計1,000万ドルでどうでしょう。

 そして、これはお願いなのですが、治安回復の依頼は、私たちからは無かったと表上はして頂きたいのです。環境回復の際、襲って来たから撃退しただけとして欲しいのです。

 副市長と同じ目に合うのだけは避けなければなりません。うちにはまだ幼い子がいるのです」

「ちなみに構成員は何人ですか?」

「把握しているだけで、この市だけでも800人以上はいるかと思います」

「うーん、まず、基本的に治安に関しては1人1万ドルとさせて頂いております。

 そしてその治安方法ですが、全員を捕らえて来る事はしません。神の裁定により天罰に値すると判断した者は、この世界から退場してもらいます。

 裁定の基準ですが、殺人や強姦、詐欺、誘拐、麻薬絡みなどで天罰に相応するほどの罪を犯した者が対象となります。細かい判断はこちらにお任せ下さい。先程の罪に該当していれば、ほぼ間違いなく該当するはずです。

 逆に同じメンバーでも新しく入った者など、天罰に値しない者については情状酌量の余地はありますが、これも私たちに攻撃してきた場合にはその限りではありません。

 そして、押収したものは全てこちらで没収します。特に、麻薬や武器などはこちらで分解、無害化します。

 と言う事で、治安回復に関しては数瞬懸念しましたが、良いでしょう。この話、正式に受諾させて頂きます。場合によっては、市街にまで及ぶ恐れもありますのでご了承下さい」

「はい、それで構いません。この街に平和さえ戻ってくれれば、それで良いのです」

「分かりました。では決行は明日からとします。この子たちを巻き添えにするわけには、参りませんので」

「えぇ、もちろんです。それではこれを」

 そう言うと、机の上に契約書を広げ、大きめのジュラルミンケース3つと、小さめのケースを1つ差し出してきた。

「小さい方は、私たちへの治療のお礼です。大きいのは前金として500万アメリカドル入ってます。残りは依頼完了時に支払います。

 それとこちらにサインをお願いします」

「えぇ、分かりました。ありがたく頂戴します」

 書類にサインをして1枚を受け取った。ケースは全てアイテムボックスへ収納した。

「あと、判明している不法投棄場所も教えて下さい」

「はい、では持って来させますので、少々お待ち下さい…」

 それから暫くして地図を受け取るとその場を後にした。


     *     *


「「「ただいまー」」」

「「「おかえりー」」」


 自宅へと戻ると、まずはみんなで仲良く夕食だ。

「今日、学校で何か面白い事あった?」

「えっとね…」

 和気藹々(わきあいあい)と和やかに夕食を進めていく。

 それが終わると、みんなとお風呂に入り、のんびりした所で本日の内容を説明した。


「と言う事で、明日からはかなりの危険が予想されるので、暫くは私一人で行動するからね。

 となると問題はあずさちゃんたちが学校に行っている間のラクワちゃんとエマちゃんの事なんだけど、どうしたもんでしょうねぇ。

 学校が始まれば、学校にいるから問題ないんだけど。問題はその間なんだよねー」

「アメリカは寝てる時間だから駄目だし…孤児院に半日預けるのも気が引けるよね…」

「「「「・・・」」」」

「やっぱりここにも女性の奴隷おこうかな。

 実はね、今日カナダで出張治療した時に、アメリカみたいに孤児たちがやってくるんじゃないかと思ったんだよね。

 その時は大きい市の運営するセンターの中だったからか、いなかったんだけど、もしいたらどうしたらいいか悩んじゃって。

 正直これ以上増えたら私が持たないなーって思ってね」

「うん、アメリカが完全に落ち着くまでは増やしたら駄目だよ」

「うーん、分かってるんだけどね。もし見つけたら、たぶん放っておけないと思うんだよ」

「う、うん。その未来が見えるよ。当たり前のようにやってきそうで怖いよ」

「そうなると必然的に次の養護施設を想定して、使用人を今からでも育成していくべきだと思うの」

「お姉ちゃん、毎回養護施設準備してたら大変だよ。アメリカはたまたますぐに手に入ったからいいけど、普通は建設したりで半年~1年は待つと思うよ?」

「ど、ど、どうすれば…むむむ…」


「そこには孤児院ないの?」

 フランちゃんがまた援護射撃をぶち込んできた。ピコーーーーン!

「そうか。流石(さすが)フランちゃん。いっつも肝心な所で的確なヒント貰えて、お姉ちゃん嬉しいよ」

 フランちゃんの両脇に手を入れ持ち上げると、ぎゅーっと抱きしめて振り回す。

「きゃっきゃ」「「「「じーーーっ」」」」

 視線が痛かったので全員やってあげる。

「「「「きゃっきゃ」」」」

「あずさちゃんもどう?」

「い、いいです」

 少し恥ずかしそうにしている。さてはやってもらいたいな。そうとなれば仲間外れは良くないね、うん。

「きゃー、あははは」

 うん、正解でした。


「ちょっと脱線した。つまりは私が現地の孤児院に介入すればいいのか。

 となると、これからどれだけ孤児が増えるのか分からないけど、孤児院に既に入っている子も含めて養育費を援助するわけだから、今後どれだけの予算がかかるのか想像もつかないね」

「お姉ちゃん、そうなったら世界の施設の運営を管理する人が必要だよ?お姉ちゃん一人じゃ無理だよ」

「ま、取り敢えずそれは置いておこう。まずはここに2人ぐらい若い女性の奴隷を連れてきます。

 そして、その子たちが育ってきたら、アメリカの使用人と入れ替えて、各地へ飛ばし、また育ててを繰り返せば人は育つかな」

「うん、それでいいと思う。後は連れてきたとして、ラクワちゃんたちに何をさせるかだけど。

 お姉ちゃん、フランちゃんたちみたいに、午前中ラクワちゃんたちに勉強教える事が出来ないと思うから、アメリカみたいに家庭教師雇ったら?学校始まるまでの1週間」

「おぉ、それは良いアイデアだ。でもエマちゃんは1年生だからほとんど勉強する事ないんじゃない?」

「あ、そっか。それじゃ予習と日本語の勉強させる?」

「うん、そうだね。それに家庭教師も9時から3時までにして、後はあずさちゃんたちもいるし、アニメで日本語勉強してもらおう」

「うん、それがいいかも」

「よし、決定。それじゃ、この後マンハッタンの子供たちに家庭教師が来るから向こうに行くね。

 ちょっと時間あるから向こうのお金調達してこよう。すっからかんだった。忘れてた。あはは…」

(確かザレフさんから聞いた、売れそうなこっちの調味料を書いたメモがあるから、それを換金して、後はミスリルでも採掘してくるか)

「それじゃ、さっそくラクワちゃんたちは、アニメでも見て日本語勉強しておいて。行ってきまーす」

「「「「「行ってらっしゃーい」」」」」


 異世界に転移すると商業ギルドにやってきた。

「すみません、買い取ってもらいたい物があるのですが…」

 塩、胡椒、お酒…売れそうなのは片っ端から売っぱらった。

 

「ありがとうございました。またいつでもお持ち下さい。お待ちしております」

「はーい、また来ますねー」

(やばいやばい、めちゃくちゃ高く売れた。数が多かったのもあるけどびっくりする程売れたよ。占めて金貨1,800枚也。もうミスリルよくね?いやいや、一応採掘しに行こう)


 その後は家庭教師が来るぎりぎりまで粘ってミスリルやら銀やらを採掘した。金と違って大量だった。


【時差情報:-13時間】日本:20時30分 マンハッタン:7時30分


「ハロー」

『あ、お姉ちゃんだ』

「姉ちゃん、今日もちゃんと訓練したぞー…です」

「「「「お帰りなさいませ。ご主人さま」」」」

「うん、それじゃ、今日から家庭教師の方が来てくれるのでみんなこの1週間頑張ってね。逃げ出す子には褒美あげないからね。分かった?」

『『『『『分かったー』』』』』

「よし、それじゃ、一緒に机並べよう。3つのグループに分けるから…」

 そうしてみんなで手分けして机やホワイトボードを並べていった。

「それじゃ、みんな、前あげたノートや筆記用具を机の上に準備してお座りしてお迎えしようね。おトイレ行きたい子は先に行って来なさい」

『『『『『うん』』』』』


 それほど待たずに先生方が到着した。

「おはようございます。組合から参りました。これから約1週間、子供たちをお預かりします。宜しくお願いします」

「「「宜しくお願いします」」」

(思ってたより大人数だな。お金の効果か?ふふふ)

「はい、それでは来週から学校が始まりますので、ある程度ついていけるレベルにはして貰えればと思います。こちらこそ子供たちを宜しくお願いしますね」

「「「「宜しくお願いします」」」」

 途中で幼少組は勉強が終わるので、勉強区画とリビングを衝立で仕切り、尚且つ勉強部屋には結界でテレビの音が入ってこないようにしてある。うん、完璧。

 これからは学校に合わせて、基本45分単位で授業を行い、10分休憩。お昼を挟んでみっちりやってもらう事になっている。

「何か足りないものがあれば言って下さいね」

「「「「はい、分かりました」」」」

「では、お願いします」


 そうして子供たちにとっては楽しいのか辛いのか分からないが、勉強漬けの毎日が始まった。

 褒美がかかっているからか、みんな真剣だ。特にドンくんは妙にやる気を出しているみたい。ミラちゃんは楽しそうだ。

 

「ザレフさん、先日お願いしました通り、今日から1週間は先生方の分まで料理を用意して下さいね」

「はい、分かりました」

「それから今日はこちらのレシピを持ってきました。材料も持ってきたので、一緒に教えますので、昼食はハンバーグにしましょう。

 レシピの見方が分かったら、他のレシピをたまにでいいので、再現して食べさせて下さい。

 更にレシピが必要でしたらまた後日お持ちしますが、来週からパソコンが繋がるので、ザレフさんでも自由にレシピの検索と印刷が出来るように、今度の月曜日に説明しますね」

「レシピを公開しているのですか!?この世界は信じられない事をするのですね」

「いえいえ、あちらの世界がおかしいのですよ。レシピは公開しないとそれ以上発展しないじゃないですか。こうして公開する事で更に美味しくなって行くのですよ?」

「な、なるほど。確かにそうですな。だからこちらの料理はあんなにも美味しいのですな」

「うんうん。では仕込みだけやりましょう。後は昼前に焼くだけなので問題ないですよね。一応焼き方の目安もレシピには書いてありますので参考にして下さい。

 シャイラさんたちも新しいレシピは覚えて下さい。後日、料理を手伝う女の子たちにも教えて下さいね」

「「「「はい、分かりました」」」」


 それからレシピを元に材料を取り出し、一つ一つ説明していく。タネが出来たら、試しに一つだけ焼いて、焼き終わったフライパンを使ってのデミグラスソースまで作らせてみる。最後は味見をしてもらった。

「こ、これは素晴らしい料理ですな。肉なのにこんなに柔らかいなんて驚きましたぞ」

「「「うんうん」」」

「そうでしょう。それじゃ、お昼はお任せします。今度は日本で食べたご飯の作り方と、子供たちが大好きなカレーライスを教えに来ますね」

「「「「はい」」」」


「あ、それから、今後、ここの子たちのような孤児を、世界各地で保護する可能性が高いです。実際に、明日からイタリアで、犯罪者の掃討に乗り出す依頼を政府関係者から受諾しました。大掛かりな仕事なので孤児も出てくる可能性があります。

 こちらに直ぐに連れて来るというわけではありませんが、現状を踏まえ、将来の為にも、シャイラさんやザレフさんたちの後任を養成していく必要があります。

 なので、育成をお願いする為、随時新しい人を連れてきて交換する予定である事を予め申し上げておきます。

 差し当たっては、明日新しい使用人を1人連れてきます。セラちゃんには変わりに日本の自宅で私たちの妹たちを任せようと思っています。そちらにも新しい使用人がもうひとりいます。

 暫くはイタリアにつきっきりになるので、その間セラちゃんには、もうひとりの使用人の指導と妹たちの世話をお願いします。

 (いず)れ使用人が育ってきたら、シャイラさんたちも他の土地の子供たちをお願いするかもしれませんので、宜しくお願いしますね」

「「「「はい、分かりました」」」」


「それじゃ、戻りますね。何かあればいつでもスマホに連絡してね」

「「「「はい」」」」


 施設を出ると、近くのマイホームへ行き、軽く掃除を済ませ、簡単掃除ボタンも設置した。

(えっちゃん、自宅に帰る前に、アマルフィ周辺の不法投棄場所とか、マフィアの連中の様子を見てこよう。

 あと、恐らく銃で射ってきたり、中には機関銃とか持ち出してくる輩もいるかもしれない。

 アイテムボックスに収納すればいいだけなんだけど、ちょっと気になるのが、時間が止まっていたわけだから、何かの拍子に、後で取り出した時に、突然連射し始めたら洒落にならないわけよ。

 だから、一旦手元に奪って、空に向けて、射つのが止まるのを確認してから収納したいんだけど、一気に掻き集める能力って作れる?)

《YESマスター。空間魔法に新しく”瞬間物質移動(アポーツ)”を創造しましょう。

 ”空間探査(サーチ)”で物質を特定し、アイテムボックスに収納するイメージで手元に瞬時に引き寄せる魔法です。

 引き寄せる際には銃身を上に向けるイメージも同時に持ってから行って下さい。そのまま引き寄せると顔面や身体に弾丸の嵐を浴びる事になりますよ》

(い、イエッサー。物理攻撃無効があるとはいえ、それは勘弁して欲しいので了解だよ。

 いやー、助かったよー。それじゃ、早速、不法投棄の地図のこの場所にお願い)

《YESマスター》


     *     *


「う、うわっ、くっさ、めちゃ臭い。明日来る前に毒ガスマスク買って来ようかな。まじでこりゃあかんわ。

 うぅ、メタンガスやアンモニアなど収納!&”消臭(デオドラント)”!」

 やる事メモに”毒ガスマスク”と記入する。

「ふぅー、死ぬかと思った。死ねないけどね」

 あたりを見回すとゴミしか見えない。これは酷い。何かムカついてきた。これは天罰確定だね。

「まずはどれぐらいの規模があるのか見てみよう、”空間探査(サーチ)”!

 ……あは、あははは。何だこれ。探査範囲全てに渡って散乱しているんですが…むむむ。

 取り敢えず、今日のところはこの見えてる範囲だけは処理しよう。上下左右、地下まで含めて、三次元範囲内全ての有害物質を、”除染(ディカンタマネーション)”!」

「うん、綺麗になった……と思ったら誰か来たよ」

 トラックでゴミらしき物を運んでくるのが見えた。


『おい、何か綺麗になってないか?』

『何?どういう事だ?』

『ま、俺たちは言われた通り捨てるだけだ。気にするな』

『そりゃそうだ。とっとと終わらせるぞ』

『『おぅ』』


 ”縮地(クイックステップ)”でトラックの側に並ぶ。

「何を終わらせるって?あんなたち、これが違法だって知っててやってるの?」

『何だ、このちびは?』

「ちびって言うな!」

『うぉっ、びっくりした』

『嬢ちゃん、邪魔だから消えろ!』

「消えるのはあんたたちよ。誰の指示でゴミを捨てに来てるの?」

『うるせえガキだな。失せろって言ってんだろうが!』

 男が車から降りてきたので、そのまま地面に叩きつける。

『ぐはっ!』

「降りてる時ほど無防備なものは無いわね。無様ね」

『このアマー!!』

 反対側からも男が2人降りてきた。鳩尾(みぞおち)に蹴りを入れて黙らせた。

『『ぐっ!』』

「丁度良いわ、ちょっと調べさせて貰うわね、(”鑑定”!)」

 見ながら男たちを縄で縛る。

「ふぅーん、あんたたちも結構悪い事してるわね。強姦が多くない?盛りのついた猫か!気持ち悪いな、ったく。

 どれどれー、全員”ガムッラ”のメンバーか。ここらの不法投棄はあんたたちの仕業?」

『知るか。離しやがれ』

(”静電気(スタティックエレクトロ)”!)

『ぎゃっ』

「今度は火ぃ点けちゃおうかなー」

『こんな事してただで済むと思ってるのか!』

「あら、どんな楽しい事をしてくれるのかしら?逆にあんたらゴミ共をいっぺんに掃除出来そうだからありがたいわね。うふふ」

『くそー、覚えてろよっ!』

「はいー、”覚えてろよー”だって。陳腐なセリフ頂きましたー。お腹痛い、あははは」

『ぐぐぐぐっ』

「さて、今日はあんまりのんびり出来ないから、誰からの指示か教えてくれる?」

『誰が教えるか!』

「あらそう。まぁ良いわ。それじゃ、あなたはもう用済みだから天罰下しちゃいましょう」

『『『何っ!』』』

 いつもの天使の格好で、光を(まと)わりつかせると、”致死宣言(デスカウントダウン)”で一人の男を葬り去る。

『『えっ』』

「さて、次はどなた?」

『『ひっ』』

 それから人の男を残して、もうひとりにも天罰を下す。

(あ、そうだ。またこういう奴らが来た時の為に、ビーコン設置していこう。うん、そうしよう)

 トラックとそれらのゴミを収納したら、残った男を連れて、指示を出した男の元へ。


     *     *


「ハロー」

「だ、誰だ貴様は!」

「私?私はソル。神の代理人よ。ご存知かしら?」

「知らん。お前頭大丈夫か?」


 ドゴッ…


 蹴り飛ばしてやった。

「ぐふっ、貴様、俺を誰だと…ぶち殺す!」

 銃を取り出したので、早速”瞬間物質移動(アポーツ)”で取り上げて、”停止(ステイ)”で動けないようにしてやった。

「くそっ、身体が動かねぇ。てめぇ、一体何を…おい、誰かいないのか!!」

「あー、無駄無駄。音が出ない結界してあるから誰も来ないわよ」

「くそがっ!」

 必死に動こうともがいている。

「この男たちから聞いたわ。あ、2人は地獄に行ってもらったけどね。

 あんた、誰の指示でゴミの不法投棄をしてるのかしら?投棄するにも限度ってものがあるでしょう。何、あの量。ふざけてるの?」

「てめぇに関係ないだろうが!」

「あら。そういう態度だと後悔するわよ、(”鑑定”!)

 あなたも相当な悪ね。強盗、殺人、強姦、誘拐、麻薬…まさに犯罪のオンパレードね。びっくりだわ」

「な、何を証拠に」

「さっきも言ったでしょ?私は神の代理人よ。あなたたちの犯罪歴はすべてお見通しよ。何なら紙に被害者の名前と犯行時間、場所、全て列挙しましょうか?

 それに関係ないと言ったけど、私は神様からの指示で、こうやって勝手にこの星を汚している輩を殲滅したり、代わりに掃除させられてるの。だからあなたたちみたいなのは、まじでムカつくし、この星から退場して貰っていい事になってるの。どう?嬉しい?」

 確信をもたせる為、天使の羽と身体を覆う光を出現させる。

「・・・・・」

「あら。こんどはお黙りなの?

 ま、いいわ。時間も勿体無いので、そろそろ話して貰おうかしら、”△※●…”!(”催眠誘導(ヒプノシス)”!)

 ……で?誰からの指示なの?」

「だ、誰が…”〇〇”だ…なっ、お前何をした!」

「ありがと。で、そいつは今どこにいるの?」

「今なら、〇〇にいるはずだ…く、くそっ」

「本来ならあなたは天罰の対象で、こいつみたいにするつもりだけど、今日だけ見逃してあげる。明日首を洗って待っててね。

 あ、そうそう。トップが誰なのかは知らないけど、そいつの元にもお邪魔するからそう言っといてね。首を綺麗にするのを忘れずにってね」

 そう言うと、連れて来た男を”致死宣言(デスカウントダウン)”でこの世界から退場してもらった。死体は残したままだ。

「ひっ」

「それじゃまたねー」


     *     *


 同じパターンで2段階上まで脅してから日本に帰還した。もちろん、その都度、貰うものは貰っておいた。”催眠誘導(ヒプノシス)”にかかれば、どこに金庫があるかなど簡単なのだ。

(よし、これで宣戦布告はばらまいた)


”ただいまー”

 自宅に戻ると、静かにそう呟いて、お風呂に入り、そっとみんなの寝顔を見てから、別室のベッドに潜り込んだ。

”おやすみー”

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