米(マイ)ホーム
◆西暦2000年5月14日(日)◆
「あー、お姉ちゃん、どこから攫ってきたのー」
「「また増えた」」
いきなりの声に起こされた。
「うぅ、まだ眠い…おはよう、みんなー」
「おはよう?…すぅ」
「すぅすぅ」
2人はまだ夢の中だ。
「「「お姉ちゃん、おはよう」」」
「何か機嫌悪いの?声が尖ってるよ?」
「お姉ちゃん、お隣さんはどなた?」
「「どなた?」」
「お隣?…あ」
忘れてた。慌てて起き上がる。
「可愛いでしょ?エマちゃんって言うのよ」
「それで?」
「道に落ちてたから…つい…ウソウソ。怖い顔しないで」
「「「・・・」」」
それから身支度をして、朝食を取った後、昨夜あった事を話してあげた。もちろん全員起きている。
話しをする前にエマちゃんにも”言語把握”を付与した指輪を渡してある。
「浮浪児か。道に落ちてたってのも、あながち間違いじゃないわね。それでこの子もうちの子にするの?」
「ううん、しないよ。たぶん。(してもいいならするけど…)
今市長が建物探してくれてるから、それまで預かってるのよ。
エマちゃん、洋服離してくれなくて、帰してもらえなかったのよー。
…あ、そう言う意味ではうちの子かな。その建物には30人ほど入る予定なの。30人の兄妹が出来るのよー」
「お姉ちゃん、その後どうするの?」
「その後って?」
「誰がその子たちを育てるの?」
「そこなんだよねー。でも今も子供たちだけでボロボロな廃屋で生活しているから環境が良くなっても悪くなる事はないと思うんだよねー」
「毎日ご飯届けに行くの?掃除、洗濯、それにエマちゃんみたいに小さい子のお風呂はどうするの?」
「どうしよう。家政婦さんとか雇う?向こうの世界の院長先生引き抜こうか?」
「引き抜いたら子供たちが困るでしょ。子供たちも一緒にとかも駄目よ。新しく孤児になる子の保護してくれるところが無くなるもの」
「うーん、暫く私たちは向こうで生活しようか。って学校があるから駄目か」
「その学校もどうするの?行かせるの?」
「やっぱり朝と晩だけは暫く向こうにいない?みんなの学校は朝連れてくればいいでしょ?」
「それは別に構わないけど、早めに建物含めて子供たちを管理してくれる人見つけないとね。しかもお金渡しても安心できる人じゃないと…」
「そんな人、院長先生ぐらいしかいないよー」
「だよねー。あ、やっぱ駄目だよ、お姉ちゃん。時差があるから私たちの身体がおかしくなっちゃう。ニューヨークからの通学はどう考えても無理だよ」
「あ、そっかー。そだねー。駄目だこりゃ。おのれー時差めー」
「お姉ちゃん」
突然フランちゃんが会話に入ってきた。
「なーに?」
「奴隷を買えばいいんだよ。絶対裏切らないよ?」
「「!!!」」
「そ、そんな手があったかー。流石フランちゃん。向こう育ちじゃないと出てこない発想だね」
「うん、びっくりだよー」
「えへへー」
《マスター、宜しいでしょうか?》
「うん、えっちゃん、何?」
《わざわざ向こうから人を連れて来なくても、これから雇う人に奴隷契約をすればいいのです》
「いやいや、それは流石に駄目でしょ」
《向こうの世界の奴隷契約ではなく、主従契約と言いますか、最低限必要な事だけ違反しようとした時に発動する限定的な魔法にすればいいのです。どちらにも対応できる契約魔法を創造しましょう》
「なっ、えっちゃん、天才かっ」
《恐悦至極に存じます》
「固い。固いよ、えっちゃん…よし、それじゃ能力創造で作ってくれる?」
《オッケー》
「今度は柔らかすぎ…ガクリ」
「あずさちゃん雇うとしたら何人が良いかな?もちろん通いじゃなくて泊まってくれる人が必要だよね」
「うーん、とりあえず最低でも1日3回の炊事と、掃除、洗濯…庭掃除もか。男女別でお風呂に入れないといけないから男女1名づつは必要だよね。最悪小さい男の子は女子と一緒でもいいかも。
それから学校をどうするかによるよね。学校に通わせるならいいけど、自宅で勉強教えるならそういう人も必要じゃない?
後は24時間働かせるわけにもいかないからローテーションも必要だし」
「あずさちゃん、本当に10歳?年齢誤魔化してない?」
「お姉ちゃん、私まだ10歳だよ。嘘ついてないよ」
「この世界の10歳恐るべし」
「えっへん」
(ぐはっ、あざと可愛いすぎる)
「取り敢えず風呂は夜、子供たちと一緒に入ってもらえればいいから、ローテーションには入れなくていいし、庭掃除は定期的に業者に頼んでも良い。
家の中の掃除も部屋の中の何かに”清浄”を付与すれば子供たちでも出来るし、週に1回は子供たち全員で拭き掃除もしてもらおう。それなら掃除も要らないね。
学校はいきなりは学力的にも無理だろうから、何れは行かせるとして、それまでは誰か付けよう。となると教育経験者を雇いたいところだね」
「小さい子はいきなり学校でも大丈夫だと思うけど…大きい子も1ヶ月でも教えれば大丈夫のような気がする」
「でも学校って保護者一緒じゃないといけないでしょ?私この国の市民権持って…あれ?あーーっ!!」
「「「「「!!!」」」」」
「あ、ごめん、ごめん。そうだよ、何で忘れるかなー。確かここに…」
アイテムボックスからクリアファイルを取り出しグリーンカードを取り出す。
「あった。すっかり忘れてたよー。私この国の国民だった」
「「「「「えーーーっ!」」」」」
みんなに見えるようにカードを見せる。
「神様がね、日本以外にも中国、ロシア、フランス、イギリス、そしてここアメリカの市民権も用意してくれてたのよー」
「お姉ちゃん、何でそんな重要な事忘れるかなー。ちなみに住所はどこ?」
「えっとねー。あれ?嘘?ニューヨークだ…」
「おぅ…建物要らなかったんじゃ」
「ちょっと見てくる。ついでに市長に学校の事聞いてくる。みんなは朝の勉強してて。宿題でもいいし」
「「「うん、分かった」」」
「ラクワちゃんとエマちゃんは勉強無いから一緒に行こうね」
「「うん」」
「えっちゃん、市民カードの住所にお願い」
《YESマスター》
* *
【時差情報:-13時間】日本:7時45分 マンハッタン:前日の18時45分
「ここかー。って、えぇ!?おっきくない?…えっちゃん、この家の名義は誰なの?」
《YESマスター、少々お待ち下さい…春日太郎、マスターの父名義になってます》
「あ、お姉ちゃん、ここ私たちも一度入ろうとしたんだけど、どこも鍵かかってるし、窓ガラスも固くて入れなかったんだよ」
「エマちゃん、それはやっちゃいけないんだよ?ま、仕方無いか。住む家無かったものね」
「ごめんなさい。私やミラお姉ちゃんは止めたんだけど、お兄ちゃんたちが住む場所が必要だからって…」
「うん、分かった。それはもう良いよ。許してあげる。後でお兄ちゃんたちにも注意しとこうね。悪いことはしちゃ駄目よって」
「うん」
「もしかして窓全部強化ガラスになってるのかな?」
《マスター、ここに限らず世界中の自宅は神様により荒らされないように魔法で堅牢に出来ております》
「そうなんだ。神様、ありがとうー。でもそれって入れなくない?」
《マスター、転移で中までお連れします。鍵も中にあります》
「オッケー。それじゃお願い」
「うっ、ちょっとホコリ臭いね。”光源”!、からのぉ…”清浄”!」
「「うわぁー、ひろーい」」
見た感じ暖炉もあるし、少し裕福なお宅の家みたいだ。キッチンも広い。家具も揃ってるね。流石神様。
「よし、みんな。この家を探検だ!」
「「おー」」
お風呂やトイレ、キッチン、応接間、倉庫。一つ一つ広さを確認しながら”清浄”をかけて回る。
2階も全て確認し、家具を覆っていたシーツや布団、枕などを自宅に持ち帰るべくどんどん収納していく。ここはもう夜なので日本で干すのだ。
庭は総芝生だが、伸び放題になっていた。建物の隣にガレージのような物置があってそこに草刈り機があったので取り出して庭の草刈りをする事にする。
最初”風刃”で一気にやってしまおうかとも思ったけど、壁などに傷が付いたら嫌なので止めておいた。
「よし、こんなとこかな?」
「「綺麗になったー」」
刈り取った芝は収納し、水魔法で散水していく。うん、完璧。
中に戻ってみんなでオレンジジュースを飲みながら一休み。
私は自宅に戻りあずさちゃんを連れてくる。
「ここなんだけど…」
「結構大きいねー」
あずさちゃんを連れて、各部屋を案内して回る。
「寝室に使えそうなのは応接室と2階に5部屋か…1部屋に2段ベッド2つ置いて4人部屋として20人。応接室をちびっ子たち用の雑魚寝部屋にすれば…うん、ギリギリかな。
でもみんなが動き回ったら狭そうだね。お風呂も毎日30人はきついね。寝るだけならいいけど、やっぱ無理かなー」
「うん、そうだね。私もそう思う」
あずさちゃんも同じ意見らしい。
* *
結局今日のところは良い案が出そうに無かったので、あずさちゃんは自宅に送り届け、元の3人で市長の元を訪れた。
「ハロー」
「うわっ。ソルさん、出来れば事前にアポを取って欲しいんですが。ま、いいでしょう」
「ごめんね。忙しくて。それで今日はお願いがあってきました」
「前回も建物のお願いだったような…」
「あれは抗議で来たのよ。それでね、浮浪児たちをきちんとした生活が出来るようになったら学校に行かせたいのよ。どうしたらいいのか分からなくて…」
「学校は必要ですね。うん。詳しくは私もよく知らないので、こちらのスクール・ディストリクト・オフィスへ行って下さい。私からも連絡しておきます。
ただ、今の時期にたくさんの子供は厳しいかもしれません。どの学校も定員がありますので、出来たとしても学校がバラバラになる可能性があります」
「えー。バラバラはキツイなー。9月なら大丈夫なの?」
「前もって登録しておけば大丈夫です。でもあまり数が多いと早めに手続したほうがいいかもしれません」
「30人ですけど、年齢もバラけているからどうだろう?」
「うまくバラけてれば問題ないでしょう。予防接種も義務なので早めにするに越した事はないですよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「いえ、本来なら私たちが面倒見るべきなのですから、出来るだけお力になります」
「えぇ、助かるわ」
「それから話しは変わるのですが、例の土地と建物の件ですが、お急ぎでしたらすぐにでも容易できる案件がございます」
「え、本当?学校からも近い?」
「3つの学校の中央辺りで15分~30分程の距離です」
「30分…微妙ね。ま、いいわ。それはどういったところなの?」
「はい、市の職員寮として使用していたのですが、この度別の場所に新築したので取り壊そうかと思っていたところなんです」
「それってオンボロじゃないでしょうね?」
「築年数は30年ほどですが、見た目はわりと綺麗ですよ。こちらでしたら建物は無料で土地代もこちらで3割負担しましょう。外壁のリフォームもおつけします。これでまだまだお使い頂けるはずです。2人部屋が20部屋と寮母室、客室が3つとなってまして人数的にも問題ないかと。お風呂も男女別で大きいですよ」
「3割かー。うん、妥当なところね。それでいつから使えるの?」
「こちらにサインを頂いて料金を頂ければいつからでも構いません。一度ご覧になってみますか?」
「えぇ、お願いします。契約はその後ね」
「分かりました」
すると市長さんは扉の外で誰かを呼んで連れてきた。
「こちらのソルさん方を取り壊し予定だった職員寮に案内してあげて下さい」
「はい、ではどうぞご案内します」
* *
連れられて来たところは私のアメリカの米ホームよりも断然大きかった。
(うまい事言った私、アメリカ=米=まい、まいほーむ!!…ぷぷぷ)
言われた通り内も外も案外綺麗にされてて、これで外壁リフォームしてくれるなら格安じゃなかろうか。
各部屋のベッドを2段ベッドにすれば4人部屋になれるし、寮母室や客室は雇った人に使って貰えばいい。
あとは土魔法や錬金術を使って壁や天井、床を強化すれば当分問題なく使えるだろう。よし、決めた。
それから市長の元に戻り契約書にサインをして料金を支払った。キャッシュでドンッと出したら驚いてたよ。ぷぷぷ。
契約書の一部と領収書を貰い完全に私の物となった。やっほー。
置いてあったベッドや家具などはそのまま使っていいとの事だったので、後は布団類を購入するだけだね。
電気やガス、水道などもまだ使えるらしく、名義も変更しておくので後日サインすればいいらしい。ありがたやー。
* *
一旦自宅に戻ると勉強や宿題は終わったようで、あずさちゃんたちはソファでのんびりしていた。
「「「ただいまー」」」
「「「おかえりー」」」
「お姉ちゃん、どうだった?」
「うん、新しい建物ゲットしたよ。
元は市の職員寮だったとこで2人部屋も20部屋、寮母室や客室3つもあって、お風呂も男女別で大きいの。
築30年だから土地代だけで、外壁も綺麗にしてくれるっていうから、現地見て買ってきたよ」
「学校は?」
「学校はもしかしたら9月からになるかも。定員で入れないかもってさ」
「そうなんだー」
「お姉ちゃん、後から思ったんだけど、その子たち市民権あるの?」
「えっ!?あるんじゃないの?あるよね?」
思わずエマちゃんに聞いてしまう。
「分かんない」
「だよねー」
何かちびっ子たちが暇そうにしてる。
「ラクワちゃん、あまり構ってあげられなくてごめんね」
「ううん、お姉ちゃんと一緒だから楽しいよ」
「ありがとー。フランちゃんもファティマちゃんもごめんねー」
エマちゃんも一緒に4人まとめて抱きしめる。
「「「きゃー、あははー」」」
「ちょっとアメリカから持ってきた家のシーツを洗濯したり、布団とか干してくるね」
「「「「「手伝うよー」」」」」
「ありがとー」
それからシーツをいっぺんには無理なので少しづつ洗濯機にかける。これはラクワちゃんとエマちゃんにお願いした。枕カバーなどもあるので結構大変だ。
残りのみんなで布団や枕を干していく。全て干し終わってもラクワちゃんとこはまだ終わる様子が無い。
時間的にも厳しいので仕方なく、”柔洗浄”→”乾燥”→”清浄”のパターンで処理したが、この流れはうまく洗えているか不安が拭えないので本当はやりたく無かった。洗濯したシーツと比べて匂いも無いのでどうしても洗濯をしたくなる。清潔度は後の方が上かもしれないけどね。
残りのシーツやカバーも干し終わる。
「みんなありがとうね。助かったよー」
「「「「「うん」」」」」
「本当は全部洗濯したかったけど時間ないから仕方無いね」
「「「そだねー」」」
「あ、もうこんな時間だ。やばい、向こうはもう夜だよ。引っ越ししたいけどもう無理かな」
「うん、慌てずに、ちゃんと準備してからがいいと思うよ」
「分かった。それじゃ布団とか買ってから狩りに行こう。土日しかできないから勿体無い。
ラクワちゃんとエマちゃんは向こうの孤児院にお願いして預かってもらおう」
「「「うん」」」「「?」」
まずは、浮浪児たちの買い物だ。
みんなで布団一式やお風呂用品、洗面道具、タオル、皿、コップ類などを纏めて購入。管理人たちの分も含め少し多めに購入する。
ファッションセンターしま○らで下着や靴下を購入したが、洋服や靴はサイズが分からず断念。現地で購入する事にした。
それから勉強用の文房具など必要な物を買っていった。
* *
それから全員で孤児院に向かう。
「やっほー」
『あ、いらっしゃーい』
『お、フランもいっしょじゃねぇか。久しぶりだな』
『フランちゃーん』
「あらあら、ひなたさん、いらっしゃい」
「院長先生、おはようございます。またこの子たちを預かってほしくて」
「えぇ、いいですよ。可愛い子たちですね」
「ご挨拶して」
「ラクワです。宜しくお願いします」
「エマです」
「はいはい、宜しくね」
「半刻ぐらいで戻ってきますので、お昼はご一緒しましょう。お肉置いていきますね。
みんなもその間この子たちと遊んであげてね」
「いつもありがとうございます」
『『『『『分かったー』』』』』
キッチンに肉を置くとすぐに狩りに向かう。今日は森の奥辺りからスタートだ。もうゴブリンは卒業したからね。
今日は色々あってあまり時間が取れなかったのでみんな必死になって狩りを行った。結果いつも以上の成果となった。今回はツインヘッドが獲得できた。
みんな満足行く結果だったのか意気揚々と孤児院に戻った。
「戻りましたー」
『きたー』
『待ってたよー』
『姉ちゃん、早く飯作ってくれ』
「わたしゃ、飯炊きかっ!」
『『『『『きゃはははー』』』』』
逃げ惑う子供たちを追いかけ回す。私は狩りに参加していないので元気なのだ。
気づけばフランちゃんとファティマちゃんも参加しての大人数での鬼ごっことなっていた。疲れたー。
みんなで仲良く昼食タイム。ラクワちゃんとエマちゃん、先日私の隣に座った孤児院の女の子で壮絶なポジション争いが勃発するのであった。フランちゃんたちもうずうずしてたようだが何とか我慢してくれた。偉いぞー。
えっ?何のポジション?もちろん私の両脇のだよ。わははー。結論としては女の子が膝の上、後の2人が両脇で落ち着いた。
”ねね、あずさちゃん、この子もお持ち帰「駄目です」…そんなー”
自宅に戻ってきてから、サイトをチェックし、依頼元へ時間の調整、ロビー活動もちょくちょく入って来たのでそれも調整していく。
それから午後の予定を確認。今日は依頼元が2件、ロビー1件、後は不法投棄だった。これらを周りながらロビー活動をするのが今日の予定だ。但し…
「今日はあちらの時間でお昼、こちらでは夕方にロシアのアリサちゃん家の退院祝いに呼ばれてます。それまでこららの予定を熟しましょうね。疲れたら言ってね、自宅で休憩させるからね」
「「「「「うん」」」」」
それからはいつもの事なのでみんな慣れたものだ。招待組は別として。
それでも体力はあるらしく、文句も言わず招待組は付いてきてくれた。
スイス、スペイン、フィンランドと世界を駆け回ってアポを熟していく。そのついでで近くの村や街でロビー活動や環境活動も行う。
* *
時間になったので、アルスクのイヴァンさんの自宅へ向かう。
【時差情報:-6時間】日本:17時50分 アルスク:11時50分
「アリスちゃん、来たよー」
『はーい』
今回は誰も外に出てなかったのでノックをして呼んでみた。本当は”アリスちゃん、遊びましょう”って言おうかと思ったが何とか思いとどまった。
「お姉ちゃん、いらっしゃーい。来てくれて嬉しいー」
いきなり抱きついてきた。不意打ち禁止だよー。
「これはソル様、アーリャの為にわざわざ遠くからようこそおいで下さいました。ありがとうございます」
「こちらは私の妹と預かっている子です。ちょっと大所帯ですが、宜しくお願いします」
「えぇ、大丈夫ですよ。お友達がいっぱいなほうがアーリャも喜ぶでしょう」
「お姉ちゃん。アリスちゃん?アーリャちゃん?どっち?」
「あー、アリスちゃんは本名で、アーリャちゃんは愛称。どちらも正しいよ」
「ははは、外国の方にはこの文化は難しいようですな」
「そうですね。私も最初は混乱しました」
「そうでしょう。あぁ、すみません。立ち話も何ですから中へどうぞ」
「「「「「「はい」」」」」」
「アリスちゃん、私の妹たちとも仲良くなってあげてね」
「うん、もちろんだよ」
歩きながらお願いすると満面の笑顔で応えてくれた。くぅー、笑顔が眩しいぜっ…ちょっと言ってみたかっただけよ。
ねね、私がプレゼント忘れてると思ってる?残念。ベッドを買う時についでに買ってきたのだよ。大きなくまのぬいぐるみと小さなうさぎのぬいぐるみを。
…6人もいてぬいぐるみ1つじゃなんだから2つにしておいたよ。ついでにホノルルのデザートセットも持参しているよ。
「アリスちゃん、これあの時食べたケーキと同じとこのだよ。プレゼントとは別だから。後ででも食べて」
「ありがとうー。嬉しいー」
アリスちゃんに手を引かれ、中へ通されるとパーティー会場らしき部屋へ通された。既に何人かの人が飲み物を手に和やかに寛いでいる。
ラクワちゃんとエマちゃんは、初めてのロシア料理に最初は戸惑っていたが、食べると美味しいと分かったのか、一心不乱に食べだした。
(ふふふ。真っ赤なボルシチとか最初は食べるのに勇気いるよね)
暫くするとパーティーが始まった。
「本日は私の一人娘、アーリャの退院祝いにこんなにもたくさんの人にお越し頂きありがとうございます。
さて、みなさんご存知の通り、アーリャは心臓に重大な欠陥をかかえ余命宣告さえされていました。
もはや移植にしか存命の機会は得られなかったのです。
私は世界中色々な病院を訪れ、たくさんの学者の元を訪れました。しかし、その返事はみな同じ内容でした。
それでも最後の希望を求め探し続けたのです。そこで出会ったのがソル様でした。これはまさに奇跡以外の何者でもありませんでした。
ここにアーリャが元気に笑って立っているのが何よりの証明でしょう。そう、アーリャはソル様に救われたのです」
(やばい、何か恥ずかしくて顔が赤くなってるんじゃない?)
妹たちをみるとあずさちゃんだけ顔を真っ赤にしていた。あとはニコニコ顔である。
「今日はこの晴れやかなる日を祝ってパーティーを開催致しました。
どうぞ皆さんごゆるりとご歓談下さい。これからも私共々アーリャを暖かく見守って頂けると幸いです」
パチパチパチパチ…
(あ、あんなところにカーチャさんたちもいる。来てたんだ)
あまりの気恥ずかしさに、カーチャさんの所へすっ飛んで行きたくなる。
それから来賓者がイヴァンさんやアリサちゃんの元へ挨拶をし、プレゼントを渡すと、何故かその後私の元へ挨拶に来る現象が続いた。何故に!?
全員のプレゼントが終わると今度は私たちの番だ。
私たちみんなでアリサちゃんの元に行き、
「アリサちゃん、退院おめでとうー。これからも仲良くしてね」
そう言いながら中空から大きなくまのぬいぐるみを取り出した。あずさちゃんにはうさぎのぬいぐるみを持たせてある。
「はい、これは私たちからのプレゼントだよ」
私とあずさちゃん両方からそれを差し出した。残りの妹たちはそれに手を添えて一緒に手渡す。
「うわぁ、みんなありがとう。こんなにおっきなくまさんと可愛いうさぎさん、とても嬉しいです」
(はいー、満面の笑顔頂きましたー。この為に生きてると言っても過言じゃないね、うん。出来ればぎゅーと抱きついて欲しかったけど…ぬいぐるみ作戦は半分失敗か)
「イヴァンさん、再検査は問題なかったです?」
「えぇ、医者も驚いていましたよ。何が起こってるんだってね。お見せしたかったですよ、ほんと」
そう言ってイヴァンさんは楽しそうに笑った。
「そう。それは良かったですわ」
「はい、ソル様には感謝してもしきれません。ありがとうございました」
「いえ、もうお気持ちは頂きましたのでお気になさらずに。もっと気楽に行きましょう」
「えぇ、そうですね」
それからアリサちゃんと同じ目線で話しかける。
「アリサちゃん。もうお胸が苦しくなったりしなくて良かったね。
もう元気になったんだから、これからはやりたい事をたくさんやるといいわ。お父さんやお母さんのお手伝いもするのよ。困っている人にも親切にね。でも簡単にお金をあげたりしちゃ駄目よ。その人にも良くないからね。困った事があれば私に相談してね。良い子でいればまた会いに来るわ」
「うん、分かった。良い子でいるからまた会いに来てね」
アリサちゃんが抱きついてくる。
「もちろんよ」
その後、ある程度お開きとなった頃、来賓者たちが私のところにやってきた。
この人数の多さからある程度予測していたが、やはり前回のカザン同様ご家族の相談のようだ。ただ前回と違うのは数が多かった。一瞬びびった。
イヴァンさんを見ると恐縮していたので承知の上らしい。
それならばと完全にパーティーがお開きになってから別室で個別に対応した。計7組。
こんなに世間は病に苦しんでいるのだなと思った。
糖尿による手足の震えで仕事がままならない方。関節痛に悩んでいる方。うつ病になった奥さんを伴いやってきた男性。もちろんお子さんを連れてきた人もいた。
一人ひとり治療していく。治す度に泣いてお礼を言ってきたり、安堵からか座り込んでしまったり、お子さんが私に抱きついてきたりと結構大変だった。そして何故か皆さんジュラルミンケースだった。不思議だ。
ここでも私の活動目的と内容、実績そして、周知拡散をお願いしてお開きとなった。
「それじゃ、イヴァンさん、アリサちゃん帰るわね。招待してくれてありがとうね。
ミハイルさんとカーチャさんもまたね」
「こちらこそお越し頂きありがとうございました」
「うん、バイバイ。また来てね」
「はい、また会いましょう」
「ソルちゃん、カザンにも来てね」
「はい、それじゃ、またね。アリサちゃん」
コクリと頷き、最後にアリスちゃんをぎゅっと抱きしめて自宅に戻った。
* *
ソファに座ってテレビを付け、ホットココアを飲みながらほっと一息付きながら、これからの事を思案するひなた。
「さて、夜の7時か。となると、マンハッタンは朝の5時。まだ起こすのは可愛そうね」
「そだねー。何を悩んでるの?」
「これからの事よ。あの子たちの毎日の生活の事とか、学校の事とか。たまには遊びに連れて行ってあげたいけど、これは私の活動に少人数づつ同行させればいいか。まる1日時間取られるのは避けたいしね」
「うん、誰か雇えばそう言う事も可能になると思うけどね」
「ちょっと混乱してきたからやる事をノートに書いていこう」
ノートを取り出し、書き始める。
1.新しい家での必要な物の買い出し。→寝具やバス、洗面用品、食器などは済。2段ベッドにするかは未定。
2.子供たちの衣類や靴、寝間着、カッパ、傘、長靴、リュックの購入。
3.建物の補強。家具などの修繕。外壁のリフォームは市長の仕事。
4.子供たちの管理人を雇う。子供たちに出来る事は一緒にさせる。
1)管理人3名。うち男女各1人は必須。できれば教育経験者。
仕事内容は料理支援、洗濯、屋内掃除(隔日)と庭掃除(週1)、子供たちの風呂付添(共に入浴可)、学校へ送り迎え、朝の訓練や勉強指導、建物や物品管理。
2)料理人1名。1日3食(入学後の弁当含む)、おやつの準備、食材管理、発注など料理全般。基本専属とする。
5.スクール・ディストリクト・オフィスへ行き、学校の相談。入学の時期と登校先を決定。
6.子供たちの入学のための予防接種。これは入学時期が決まってから。優先順位度低。
「あずさちゃん、こんなところかな?」
「うん、他に思いつかないから、取り敢えずこれから手を付けた方がいいかも?」
「そうだね。それで管理人だけど、やっぱり向こうから奴隷を買ってこようと思う。メイドさんとかは向こうの方が優秀みたいだからね。取り敢えず執事1人、メイド1人、料理人1人でどう?」
「メイド2人じゃないの?」
「まずはやってみて足りないようだったら、また買うかこちらで見つけよう」
「うん、分かった」
「と言っても先立つ物が足りるか不安なんだよね。今金貨220枚しかないや。時間あればミスリルとか採掘にいくんだけど…」
「いくらぐらいするんだろうね?」
「足りるかな…。取り敢えず買えそうなら買ってくるよ。ちょっと待ってて」
「一緒に行かなくていいの?」
「うん、たぶん見ない方がいいと思う。臭いも酷いと思うし」
「そ、そうだね。うん、待ってるよ」
「アニメとか見てるといいよ。それじゃみんな行ってくるねー」
「「「「「行ってらっしゃーい」」」」」
* *
異世界に転移し、街の人に聞いて奴隷商を訪れた。
「ちわー」
「いらっしゃいませー」
「ちょっと奴隷を見たいのだけど、相場とかも教えてくれる」
「どのような奴隷がご希望で?」
「男女の執事やメイドがこなせる人、あ、させる仕事は同じです。それと料理人を見せて欲しいんですが」
「なるほど。分かりました。執事ですと金貨150枚から500枚まで揃っております。メイドは40枚から130枚、料理人は30枚から100枚ほどでしょうか」
「執事って高いのね…それじゃ執事はいいわ。メイドと料理人を見せてくれる?」
「はい、どうぞこちらへ。私ゾフレフと申します。どうぞこれからもご贔屓に」
店主に案内され、応接室のような部屋に通された。でも側には舞台みたいなのがある。店員らしき人がお茶を持って机に置いていった。
「では、用意して参りますので少々お待ち下さい」
お茶を飲みながら待ってると、貫頭衣をつけた女の子たちが舞台に並べられた。
「こちらがメイドの出来る奴隷となってます。一人ひとり説明しましょうか?」
「えぇ、お願いします」
「まず最初の子はメイドとして一通り出来ますが、1年程で解雇されたようで熟練度はあまりありません」
「どうして解雇されたの?」
「主人に関係を持たれそうになって暴れたようです。主人に怪我をさせたとかで犯罪奴隷としてうちが引き取りました。名前はリリアナです」
鑑定でこの子のステータスを見てみる。
名前:リリアナ
年齢:15歳
主人:ゾフレフ
レベル:8
HP:93/93 MP:155/155
STR:19 VIT:27 INT:23 MND:25
AGI:20 DEX:31 LUK:36
能力:算術Lv1 料理Lv4 掃除Lv5 洗濯Lv3 短剣術Lv2
称号:犯罪奴隷
「この子はいくら?」
「金貨60枚になります。見習いとは言え、1年間しっかり教育されておりますので」
「リリアナさん、子供は好きかしら?」
「はい、弟と妹がいましたので仲良くしておりました」
「そう。分かったわ。店主さん続けて」
「はい、次は…」
次は何だか目つきが嫌だったので聞き流した。
3人めはやる気が無いようなので論外だ。
「こちらは男爵家に使えていたベテランですが、男爵が犯罪を犯した事でお家取り潰しにされ、使用人も同罪として犯罪奴隷落ちにされました。しかし何事もそつなく熟す力量から金貨100枚とさせて頂いております。名前はシャイラです」
(これは掘り出し物かも。鑑定!)
名前:シャイラ
年齢:18歳
主人:ゾフレフ
レベル:12
HP:115/115 MP:191/191
STR:24 VIT:35 INT:30 MND:33
AGI:26 DEX:40 LUK:45
能力:指揮LV4 連携Lv5 集中Lv3 消音行動Lv3 算術L4
料理Lv8 掃除Lv8 洗濯Lv7 裁縫LV6 短剣術Lv4
格闘技Lv3
称号:犯罪奴隷
(な、なんじゃこれー。掘り出し物なんてものじゃないわよ。これは確定ね)
「シャイラさん、子供は好きかしら?」
「私は今までお世話をした事がないのであまり自信はありません」
「正直ねー。うちは子供が30人いるんだけどやっていけそうかしら?」
「お仕事ですのでしっかりと働かせていただきます」
「そう」
その後もどんどん紹介され、質問していった。
必死になって子供大好きアピールしてきたのはちょっとドン引きだった。
「以上こちらがメイド候補の中で実力的にオススメできる奴隷になります。性格的なものは購入される方によって趣味嗜好が異なりますので、オススメの判断材料には加味しておりません」
「実力的?それ以外がいるの?」
「えぇ、まぁ。1人おりますが、こちらはあまりオススメできません」
「一応見せてくれる?」
やってきたのは私と同じくらいの少女だった。
「こちらは奴隷として運ばれている途中で、ツインヘッドに襲われてほぼ全員死亡の中、唯一生き残った奴隷です。しかし、ご覧の有様でして。怪我をする前はかなり有望な素材だったんですが、こうなってしまっては。こちらは金貨25枚となります。名前はセラです」
ただ他の子と違うのは左半分が目から頬に掛けて爪らしきもので抉られているのと、左腕が肘から先が無かった。
あまりにもの痛々しさに思わず駆け寄って抱きしめてあげたくなったが取り敢えず我慢した。
名前:セラ
年齢:13歳
主人:ゾフレフ
レベル:10
HP:103/103 MP:172/172
STR:21 VIT:31 INT:27 MND:29
AGI:23 DEX:35 LUK:40
能力:算術Lv3 連携Lv3 集中Lv3 料理Lv6 掃除Lv5
洗濯Lv6 裁縫LV3 短剣術Lv2
称号:一般奴隷
(セラちゃんって言うのか。シャイラさん程じゃないけど、この子も優秀ね)
「セラちゃんはどう?子供は好き?」
「私は旦那様のお嬢様の側仕えをしておりましたし、仲良くさせて頂きました」
「あら、そうなのね」
それから私は店主に料理人の紹介をお願いした。
現れたのは5人。うち2人は犯罪奴隷。2人は料理のレベルが低かった。
一応全員の説明を聞いて、最後に残った奴隷に質問した。値段は金貨45枚。
「料理を作るのは子供30人とあなたを含む使用人4人。料理人は基本1人だけですが、子供たちの中で年長者も手伝わせますし、忙しい時はメイドにも手伝って貰う予定にしてますができそうですか?」
「はい、お任せ下さい。料理店を経営しておりましたので、毎日朝から晩まで料理を作り続けてきた自負があります」
「うん。では子供は好きですか?」
「はい。私にはかけがえのない子がいました。病気で助ける事はできませんでしたが…」
「嫌な事思い出させてごめんなさいね」
「いえ、もう昔の事なので大丈夫ですよ」
「そう。分かったわ」
ステータスはこうだった。
名前:ザレフ
年齢:28歳
主人:ゾフレフ
レベル:8
HP 93/93 MP 155/155
STR:19 VIT:27 INT:23 MND:25 AGI:20 DEX:31 LUK:36
能力:算術Lv5 連携Lv2 集中Lv3 料理Lv9 掃除Lv5
称号:一般奴隷
「商会長さん、決めました」
そう言うと奴隷を一旦戻し、私の前に座る。
「それでどの奴隷でしょうか」
「シャイラ、リリアナ、セラ、ザレフの4人でお願いします」
「サラですか。宜しいのですか?」
「えぇ、構いません。それで相談なんですが、今手持ちが金貨220枚しか無くて…一括で支払いますので220枚まで値引きしてくれませんか?」
「うーん、そうですねー。はい、分かりました。今後もご贔屓にして頂く事を願って220枚で売りましょう」
「ありがとうございます」
「いえ、こちらとしましても、セラの引き取り手が見つかってほっとしました。このままでは鉱山送りにするしかなかったので良かったです」
「鉱山送り!?犯罪奴隷じゃないのに?」
「えぇ、それでも永遠に養うわけにもいきませんので、3年経っても売れなければそうするよう国の方から圧力が掛かっているのです。あちらも人手が足りないようでして」
「それは酷いですね。商会長さん、また来るかと思いますので、セラちゃんのようなケースの奴隷がいれば囲っていただけると助かります」
「それはこちらとしても助かります。了解しました」
4人を連れて奴隷商を出ると、
「セラちゃん、これから私の家に4人を連れて行くんだけど、幼い子たちなので悪いけど顔を半分隠すわね。少しの間辛抱して頂戴」
「ちゃんですか!?呼び捨てにして頂いて構いません」
「どうやら私の方が1つ上みたいなので、私がお姉ちゃんでしょ?だからセラちゃんよ。呼び捨ては嫌よ」
それからタオルを取り出してセラの顔半分を隠した。
「あと、奴隷として買ったけど、奴隷と言うより使用人として雇うつもりなので、みんなも畏まらなくていいわよ。
購入した金額分は毎月の給金から少しづつ引かせて貰うけど、払い終えたら奴隷から解放するので、その後は自由にしてもらっていいわ。
但し、これから行く世界はこことは違う世界なので、うちを辞める時はここの世界に戻ってもらうわね」
「ここと違う世界ですか…」
「えぇ、全く違う世界です。剣や弓で戦う事もしなければ、魔法を使える人もいません。魔物も存在しません。鉄で作った乗り物が空を飛びます。こちらより遙かに進んだ、文明の発達した世界なのです」
「すみません。よく分かりません」
「今は分からなくて結構です。少しづつ慣れて行って下さい」
「「「「はい」」」」
「では私の住む世界に転移…の前に綺麗にしましょう。これでは家につれていけません。”清浄”!」
「「「「うわっ」」」」
うん、みんな綺麗になったね。
「よし、では行きます」
* *
「ただいまー」
「「「「「おかえりー」」」」」
「あ、靴はここで脱いでね…もう一回靴の中まで綺麗にしておこうね、”清浄”!」
「「「「すみません」」」」
4人を居間に連れていく。
「みんなにも紹介して置くわね。今夜からあの子たちの面倒を見る事になるシャイラさん、リリアナさん、セラちゃん、ザレフさんよ」
「「「「「宜しくねー」」」」」
「「「「・・・」」」」
「あ、言葉が通じないか。ちょっとそこのソファで休んでて」
「いえ、奴隷が勝手に座るなど以ての外です」
「「「うんうん」」」
「シャイラさん、さっきも言ったけどそう言うのはいいから。気楽にして」
「しかし…」
あずさちゃんたちが手を引っ張りソファに座らせてくれた。テレビを見て驚いているよ。ふふふ。
みんなの紅茶を準備して目の前に差し出した。
そして徐に銀貨を取り出すと、ブレスレットを作って行く。指輪だと家事に支障が出ると判断したからだ。
今度は目の前で姿を変える銀貨に目を丸くしている。
そして”言語把握”を付与して4人に配る。
”お姉ちゃん、一人多くない?”
あずさちゃんがこそこそと聞いてきた。
”うん、本当は3人だったんだけど、隠してる子がいてね。あの左手の無い子。能力は優秀なんだけどあの通りで、左目も見えないの。
重罪の犯罪者が送られる危険な仕事をされる鉱山に送られそうだったのよ。何も悪いことしてないのに”
”そうなんだ。納得だよー。お姉ちゃんなら治せるものね”
”掘り出し物だよー。シャイラさんも化け物レベルの掘り出し物だったけどね”
”凄ーい”
”お陰で金貨がスッカラカンだよ…ぐすん”
”よしよし”
あずさちゃんに頭を撫でられた。ラッキー。
「今のままだとこの画面の中の人が言ってる事とか分からないでしょ?それを付ければどこに言っても言葉が通じるようになるからずっと付けといてね。この世界の言葉も覚えて貰おうと思ってるのでそれまでの繋ぎね」
戸惑っているようなので、一人ひとり付けてあげる。
「これでどう?言ってる事分かるでしょ?」
「えぇ、凄いですね。分かります」
シャイラさんが驚きながらも、角度を変えたり、透かしたりしてブレスレットを見つめている。
みんながキラキラした目でブレスレットを眺めているのを見てたら急に大事な事を思い出した。
「あーっ、布団取り込むの忘れてた」
「「「「「あーーーっ」」」」」
慌ててみんなで布団や枕、シーツなどを取り込んで、アイテムボックスに収納していった。
「何か毎回忘れてる気がする…」
「「「「「ごめんなさい」」」」」
「あなたたちのせいじゃないから謝らないで」
「お待たせー。それでは、もう少ししたら子供達が起きるので皆さんを連れて、子供たちも一緒にこれから住む建物に案内します。
その前に皆さんにはお風呂に入ってもらいます。まずは女性3人からね。その間、洋服を買って来るので、先に胴回りとか寸法を測りますね。
フランちゃん、ファティマちゃん、悪いけどお風呂の用意してくれる?あずさちゃんは計測手伝って」
「「「うん」」」
ちびっ子たちがお風呂場に向かう。なぜかちびっ子4人全員が。
それから4人の身長や胴回り、足のサイズなどを図っていく。
「みなさん、お風呂の入り方を軽く説明しますので付いてきて下さい」
「「「「はい」」」」
ちびっ子たちが一所懸命お風呂にお湯を貯めているのを横目に、
「これがシャンプー、頭を洗う石鹸です。この頭の部分を押すと石鹸が出てきますので、それで頭を洗って下さい。この蛇口を回すと水が出ます。お湯の暖かさはこれを回すと熱くなったり、冷たくなったりします。自分の好きな温度に調整して下さいね。このレバーを回すとあちらのシャワーに切り替わります」
「「「「きゃー」」」」
「あ、ごめ」
幼女が水浸しだ。いや、狙ってないからね。
「戻すとまたここから水が出ます」
「こちらが身体を洗う石鹸です。こちらのスポンジに垂らしてよく泡立ててから使って下さい。
湯船は身体を洗ってから入って下さいね。最後に身体を拭くタオルはあの棚にあります。
以上ですが分かりました?」
「「「「はい」」」」
「ちびっ子たちはもうそのままお姉さんと一緒にお風呂に入っちゃいなさい」
「「「「「はーい」」」」」
「お風呂が貯まるまでもう少しかかりそうなので居間で待ってましょう」
「「「「はい」」」」
「ちびっ子たちがいない間に…あずさちゃん、セラちゃんのタオル取るけど驚かないでね。ツインヘッドに襲われたみたいで…目を瞑ってても良いよ」
「う、うん…」
「「「「治療?」」」」
「セラちゃん、こっち来て。皆さんはソファに座ってて…」
セラちゃんは私の隣に座らせ、3人はソファに。
「それじゃタオル取るわね」
「はい…」
「!」
あずさちゃんが驚愕に目を見開いた。ちなみにあずさちゃんは私の隣。セラちゃんと別隣。
あずさちゃんを私の方に抱き寄せると、肩が生暖かくなってくる。
「あずさちゃん、泣いてるの?ごめんね」
「ううん、そうじゃないの。セラちゃん、とても辛かったでしょう?大変だったのでしょう?それを思うと涙が止まらなくて…」
「そう、いい子ね。でもその辛いのもこれで終わりだからね」
「うん」
「あずさ様、私なんかの為にありがとうございます」
「ううん、私年下だから様付けないで呼び捨てでいいよ」
「いえ、そう言うわけには…」
「それなら私と同じあずさちゃんと呼ぶと良いわ。他のちびっ子たちもね。みんなもそう呼んで頂戴」
「「「「「は、はい…」」」」」
「さぁ、あんまりのんびりできないわ。子供たちが戻ってくる前に終わらせましょう」
セラちゃんの手を取り、無くなった左目と左腕、抉れた頬の傷、その他全ての傷が治るように意識しながら魔法を唱えた。
「少し眩しいからみんな目と閉じてて、”完全治癒”!」
全員が目を閉じる中、周りは光で溢れ、顔や手を始めとする、身体中の細かい傷全てが逆再生するかのように盛り上がりながら修復していき、やがて光が収まると、何事も無かったように綺麗な顔立ちのセラちゃんがいた。
「さぁ、みんな、目を開けていいわよ」
「「「「!!!」」」」
「…あ、手が、左手が…左目も見える…うそ…」
やがて俯いたままポロポロと涙を流し始めた。
「泣くのは鏡を見てからにしなさい」
近くの棚から手鏡を取り出し見せてあげる。
「ほら、セラちゃん、美人さんなのね。びっくりしちゃった」
「わぁぁあああああ」
自分の顔を見て、思わず私に抱きついて泣き出したセラちゃん。
「約得、約得ー。幸せー」
「お姉ちゃん、声に出てるわよ」
「え!?あ…嘘!?やっちゃった?…てへっ」
取り敢えず笑って誤魔化した。
「ふふ、ありがとうございます。ご主人さま」
「うぅ、ありがどうございまず…」
「「ご主人様凄いです」」
シャイラさんにお礼を言われた。うん、この人も当たりだね。
暫く泣き止むのを待ってたら子供達が戻ってきた。
「準備できたよー」
「うわぁ、セラお姉ちゃん、綺麗ー」
「あ、お手々が…」
「本当だ」
「良かったー」
「皆さんありがとうございます」
「よし、それなら女性陣はお風呂に入ってきて。ずぶ濡れたちもね」
「「「はい」」」「「「「うん」」」」
今の内にとご飯のスイッチを入れておく。お風呂が終わったら食事させなきゃね。
「それじゃ洋服買ってくるね」
「お姉ちゃん、私も行こうか?」
「ザレフさんが覗かないように見張ってて」
「えっ、ご主人様それはないです。覗きなんてしませんよ」
「冗談よ。すぐ戻るから待ってて」
「はい」「うんっ」
店が閉まる前に急いでしまむ○に向かって全員分の洋服や下着、寝間着、靴など必要な物を買って戻ってきた。
丁度女性陣が居間に戻って来る頃で、ザレフさんをお風呂に行かせた。
それから別室で貫頭衣から着替えて貰ったのだが、全員反則級だった。特にセラちゃんが…裏切られた…ガクリ。
ブラジャーの付け方が分からないと言うので付け方教室が始まった。むむむ…くそぉ…いつかは私だって…無いんだった…ガクリ。おのれー、不老不死さえなければー。
ザレフさんがお風呂から上がると、服を着替えさせる。古い貫頭衣や靴はアイテムボックスの肥やしにした。
「さて、みなさんまともなご飯食べてないでしょう?簡単な物だけど、すぐ作るね。
あ、ザレフさん、こちらの調理器具の使い方教えるので手伝って」
「はい、喜んでお手伝いさせていただきます」
「私たちもお手伝いします」
「そうね。分かったわ。今日のところは時間が無いから見るだけにしといて。向こうに行ったら早速子供たちの朝ご飯だから、その時は協力してやってみて」
「朝ご飯ですか?」
「この世界は広いのよ。みんなのいたとこもそうかもしれないけど、今私たちがいるとこは夜でも、子供たちがいるところはそろそろ夜が空けるのよ」
「そうなんですね、不思議です」
「うん、時差って言うんだけどねー。本当に面倒なやつなのよー」
「そ、そうですか」
それからみんなでコンロや蛇口の使い方を説明しながらお湯を沸かし、調味料の説明をしながらフライパンでワイルドボアの肉を炒め、コップにインスタントのカップスープを入れ、お湯を注ぎ、ドレッシングの味見をさせながらサラダを用意し、結局簡単な料理のつもりが何だか疲れるものとなった。
ご飯の炊き方は教えてない。向こうはパンメインだからね。落ち着いたら教える事にする。
ご飯に戸惑いながらも料理の美味しさに舌鼓を打ちながら全てを胃袋に収めてくれた。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
食前や食後の挨拶も教えておいた。
食事している間サイトをチェックしていると、パリのフランソワーズさんから”お礼をしたいので連絡が欲しい”と書き込みがあったので明日何時でも良いとの返事をしておいた。
他にもいくつか依頼があっていたので承諾と日時の調整の返事をした。
ちなみにセラちゃん以外の方の体調チェックをしたが体力消耗などの軽い症状だけだったので”範囲回復”と”体力回復”だけで済んだよ。
「あと、その首輪取っちゃいましょう」
「「「「えっ!」」」」
(えっちゃん、契約魔法使えるよね?)
《YESマスター。現在使える魔法は次の4つです
【契約魔法:従者契約 契約解除 契約変更 隷属強制解除》
(”契約解除”と”隷属強制解除”の違いは何?)
《前者はマスターがかけた契約の解除で、後者は他人がかけた奴隷契約などの解除となります。後者は魔力を大量に消費します。マスターの魔力量では微々たるものですが》
(なるほどね。それじゃ…)
全員に”隷属強制解除”をかけて行った。その度に首から首輪がポロリと零れ落ちていった。
「「「「なっ」」」」
(からのぉ…)
今度は私との従者契約をかけていく。これは首の後ろ、背中の上部に天使の羽を広げた私をデフォルメし、それをモチーフとしてデザインした図柄を小さめに刻印してある。
「セラちゃん、ちょっと背中見せてね」
そう行って服を少し下にずらし、刻印を確認する。
「これが新しい従者契約の刻印です。以前の奴隷契約は解除し、皆さんを信用し、かなりゆるい設定にしてます。命に関わるようなものはありません。
但し、子供たちに害意を向けたり、悪意ある行動をしたりすると動きが阻害されますので注意して下さいね」
「「「「は、はい。かしこまりました」」」」
「それに前の首輪したまま外に出たりすると、警察、向こうで言う衛兵とかが、飛んできそうだからね。気分的にも良くないからね」
「「「「了解です」」」」
* *
ご飯が終わると歯磨きを使い方などを説明しながらしてもらい、子供たちの待つマンハッタンへ転移した。
あずさちゃんたちはもう寝る時間なので寝室へハグして送り届けたよ。もちろん、あずさちゃんはお風呂まだなので入らせてからだ。
【時差情報:-13時間】日本:21時 マンハッタン:8時
「ここは新しい建物に入るまでの仮の家なの。これから新しい所に移るから。
一応掃除はしてあるけど、雑巾での拭き掃除を子供たちと一緒にして貰う予定。
ザレフさんはその間に子供たちの食事を作って頂戴。もう向こうの調味料は無いけど似たような物はあるからそれを使ってね。
その後は子供達をお風呂に入れて頂戴。仮の家にはお風呂が無いのよ」
「「「「分かりました」」」」
それから全員で廃屋の中に入る。
「ハロー」
『あ、お姉ちゃんだ』
『おはようー』
『お弁当ありがとー』
『おじちゃんたち誰?』
「おはよう。全員いる?みんなをここに集めてー。弁当とか食べ物残ってたら持ってきてー。あと自分の大事な物とかもね」
『『『『『うん』』』』』
「朝ご飯まだよね?」
『『『『『まだー』』』』』
全員が集まったのを確認して”清浄”をかける。残った食べ物は腐ってない事を確認して収納した。1日で腐るわけ無いか。
「よし、それじゃこのボロ屋敷捨てて、引っ越しするよー。朝ご飯は引っ越ししてからねー。
あ、この人たちはこれからみんなの世話をするお兄さん、お姉さんたちよ。
これからはお兄さん、お姉さんたちの言う事を聞いて良い子にするのよ。本当に駄目な子だったら追い出すからね。ご飯もあげないよ。分かった?」
『『『『『分かったー』』』』』
ぞろぞろと小鴨宜しくみんなを引き連れて新居へ向かう。名前は”Orphanage villa sunflower(養護施設ひまわり荘)”とした。うん、やるな私。
周りから奇異の目で見られるがスルーだ。あちらも通勤時間なので構っている暇は無いはずだ。
やがて新しい建物に到着する。
『『『『『わー、おっきいー』』』』』
「ここがこれからのみんなのお家です。今日からあなたたちは私の家族だからね。
毎日ご飯も食べれるし、温かい布団にも寝れる。その代わり出来るお仕事はやってもらうからね。勉強もしてもらうわ。いいわね」
『家族?』
『お姉ちゃんの本当の妹になれるの?』
『俺たちなんかでいいのか?』
「そうよ。これからは私が守ってあげる。えーと、あなた名前何だっけ?聞いてないと思うけど」
「俺はドナルド。ドンで良い」
「何か紙で遊ぶおもちゃみたいな名前ね」
「俺の名前はおもちゃじゃねーぞ」
「ごめんね。何か人種差別する嫌な大人にそういう人がいたなーって思って」
「そいつ駄目なやつだな」
「そうなのよー。何れこの国の大統領になる人なんだけどね」
「うわっ、この国大丈夫なのか?てか、何で未来の事分かるんだ?」
「あれ?どうしてだろうね。私の知識さんが変な方向に突出している気がする」
「どういう意味だ?」
「ま、いいわ。さっきの質問ね。自分たちなんかって思うのは禁止ね。
いい?あなたたちはまだ子供よ。何も出来なくて当たり前なのよ。これからたくさん勉強して立派な大人になればいいの。分かった?」
『『『『『うん、分かったー』』』』』
「よし、では入ろう」
建物の中に入ると、
「みんな!ようこそ私たちの新しい家”Orphanage villa sunflower(養護施設ひまわり荘)”へ!」
「何かかっこいい名前だな」
『中もひろーい』
『ここが私たちの新しいおうち?』
『『『『『うわぁー』』』』』
「8歳までの子はみんな大きい部屋で一緒に寝るからね。9歳からは暫くは2人で一つの部屋を使って。増えてきたら4人で一つになるけど暫くは大丈夫だから今は気にしないで。
自分たちの部屋を与えられた子は、きちんと掃除して綺麗に使うのよ。部屋の中はお姉さんたちは掃除しないからね」
『『『『『はーい』』』』』
「オッケー。それじゃ、一つづつ部屋案内するからね。終わったらみんなで拭き掃除しましょう。
シャイラさんを管理責任者に任命するので、子供たちの管理とリリアナさんたちの指導をお願いします。
それからシャイラさんたちは部屋を見て足りない物があれば教えて頂戴」
『『『『『はーい』』』』』「「「「はい」」」」
まずはキッチンだ。入口の電気のスイッチの下に錬金術で押しボタンのような物を設置し、それに付与魔法で”清浄”を付与する。
「入口の電気のスイッチはここね。これをこうすると明かりがつくし、こうすると消えるわ」
「姉ちゃん、そんな事みんな知ってるよー」
「いいのよ。知らない子がいるかもしれないでしょ」
本当はシャイラさんたちへの説明だが言わないでおく。
「そっかー」
「そしてこれは良く聞いて、覚えてて頂戴。これはこの部屋の中を一気に掃除してくれるものよ。ザレフさん、押して見て」
「はい」
ザレフさんが押すと部屋の中がキラキラ光って綺麗になった気がする。だって昨日綺麗にしたばかりだからあまり違いが分からないもの。
『『『『『スゲー』』』』』「「「「おぉー」」」」
「毎日1回は全ての部屋のボタンを押してね。みんなで手分けしてやるのよ。少し身体の中の力を使うから、誰か一人にさせたら駄目よ。倒れちゃうからね。
一応これで綺麗にはなるけど、1日おきにみんなでこれからやる拭き掃除もして頂戴。分かった?」
『『『『『はーい』』』』』「「「「はい」」」」
大きな保冷倉庫があったので、そこにパンや肉、野菜など食材を入れていき、調味料や器具などキッチン関係を全て出し、飲み物などを冷蔵庫に入れ、ザレフさんにそれぞれの使い方などを説明して朝食の準備に取り掛からせた。初回なのである程度の指示を出しておく。
ザレフさんを残して全ての部屋を回り、布団やハンガーなど必要なものを出し、簡易掃除ボタンを設置していく。
『ここが私の部屋?』
『ミラちゃん、部屋いっしょだね。やったー』
そんな感じで年長者たちの部屋も決めていく。
そして1階でモップとバケツを取り出すと、全員に配り拭き掃除を開始させた。
私はシャイラさんに足りない物を聞いてから、みんなが掃除している間、壁や床、天井を魔法で強化しながら、家具など修繕が必要な物は直しながら回っていく。外装は市長の仕事なので何もしていない。
それからシャイラさんたち3人を連れて庭に出ると、物置から草刈り機を取り出して、使い方などをレクチャーしながら庭の草刈りをした。
狩り終わったら、アメリカンレーキ(アメリカ版熊手箒)で芝を集めてゴミ袋に入れていく。
「この作業を”サッチング”と言って、この集めた芝の事を”サッチ”と言うわ。覚えといて。これをやらないと芝生が死んでしまうから庭掃除の時は必ずやってね」
「「「はい」」」
それを敷地内のゴミステーションに持っていけば完了だ。
「これを芝がある程度伸びたらやって下さい。最低でも月に1回。伸びるのが早いようだったら2~3回に増やしてもいいわよ。すぐには伸びないと思うから頻繁にする必要はないわ。
あとゴミは私が回収するか、この街のルールに従って決められた日に出す必要があるけど、それは後日教えるわ」
「「「はい、分かりました」」」
拭き掃除が終わると、みんなで手分けして子供達を風呂に入れてさせた。
その間私はザレフさんと朝食作りの手伝い。いくつか質問を受けながら料理を作っていくが、飲み込みが早く2~3日もあれば使い熟せそうだった。
風呂から上がると席に座らせ、みんなの前にパンや飲み物の入ったコップ、お湯を注いだカップスープ、ザレフさんの作った料理とサラダを出して食べさせた。
「どうぞ召し上がれー」
『『『『『いただきまーす』』』』』
みんなが食べている間、私はシャイラさんやザレフさんに聞いた足りない物を買いに行き、戻ってから設置していった。
2人からOKを貰うと、彼らを自室に案内し、目覚まし時計を設定し数時間寝かせる事にした。本来ならもう寝てる時間だ。
最初は遠慮したが、お昼は今日のところは私が準備するからと言って、強引に寝かせた。
それからご飯を食べている子供たちの所に戻り、
「みんなシャイラさんたちは本当なら寝ている時間なのに連れてきたから、今寝かせたからね。暫くは寝かせといて。起こさないでね」
『『『『『はーい』』』』』
朝食が終わると歯磨きをさせる。
「朝ご飯の後と夜の寝る前には必ず歯磨きをする事。分かった?」
『『『『『分かったー』』』』』
「良い子ねー。それじゃ先にみんなの身体のサイズを図るわよー」
アメリカの子供服のサイズ表を元に一人ひとりサイズを確認していく。もちろん靴もだ。
「よし、それじゃ、お洋服を買いに行きましょう」
『『『『『わーい』』』』』
やってきたのはアップスステイトと呼ばれるニューヨーク州北部のセントラルバレーにある”ウッドベリーコモンアウ○レット”。
220もの店舗が並び、子供服も充実しているようなのでここにした。今はその中でも一番安いと噂の”OSH K○SH B'GOSH”の入口にいる。
『うわぁー、広いねー』
『人もいっぱいだー』
子供たちを連れて道草せずに子供服売り場へ。予め書いてあったサイズを元に子供たちに服を宛てがいながらどんどん決めていく。可愛いツナギ服があったので作業着として人数分チョイス。洋服と下着などは数日分なので量が凄い事になった。下着は既に2~3枚づつは買ってあったが、いくつあっても足りないと思ったので追加しておいた。靴も普通の靴と雨靴両方を購入した。
「こりゃ、普通に持って帰れるレベルじゃないね」
「お客様大丈夫ですか?」
「うん、子供たちにも持たせるから子供たちごとに袋を分けて貰える?」
「はい、分かりました」
それから頑張って袋を持って貰って外に出ると影に隠れて次々と収納していった。
『『『『『わー、お姉ちゃん凄ーい』』』』』
それから自宅に戻り、それぞれの部屋で荷物を取り出し、自分たちでクローゼットに整理させていった。ちびっ子たちは大広間に設置した家具の中に名前が分かるように入れていく。ハンガーにも名前を書いてすぐ分かるようにした。
洋服の裏や靴の中に自分たちの名前も書かせた。
そして新しい服に着替えさせると古い洋服と靴はアイテムボックスの肥やしにした。
「あ、えっちゃん、この子たちの名前分かったから市民権があるか市のデータベースで確認してくれる?」
《YESマスター》
「えっちゃんって誰だ?」
「あ、そうねー。天国にいる、色んな事を何でも知ってる天使みたいな感じかな。直接おしゃべりできるのよ」
『『『『『スゲー』』』』』
「なぁ、姉ちゃんって何者なんだ?」
「ちゃんと話して無かったわね。私は神様からこの世界を助ける為に力を貰った御使いってとこかしら。女神とまではいかないわね。簡単に言うと”神様の代理人”よ」
「姉ちゃん、頭大丈夫なのか?」
『ドンくんってば、お姉ちゃんに失礼だよー』
『謝って!』
「だってよー」
「いいわよ。普通は誰も信じないわよね。でもエマちゃんやミラちゃん、マイクくんの病気を一瞬で直したのを見たでしょ?買い物やこの間の浜辺の時も一瞬で違う場所に行けたでしょ?だからこれは信じて頂戴。これから私の仕事をみんなにも見て貰う事になるからすぐに信じられると思うわよ」
「あ、そっかー。姉ちゃん、ごめんな」
『『『『『うん、分かった』』』』』
「あと、ドンくんは特にそうだけど、みんなも”スゲー”とかじゃなくて、もっと言葉使いを丁寧にしてね。これからその辺も教えていくからね」
『『『『『はーい』』』』』
《マスター、確認終わりました。全員ニューヨーク市の市民権を持っておりますが、所在地が空き地になってたり、他人が住んでいるようです。両親の行方も調査しますか?》
(いや、そこまでしなくてもいいよ。捨てた親の事なんてどうでもいいし。それじゃ全員姓を”KASUGA"にしてうちの戸籍に移しといて)
《YESマスター》
「さて、まずは、みんなは今日から”KASUGA”姓になるからね。ミラちゃんだと”Mira Kasuga”ね。”KASUGA"は日本語で”春のお日様”って意味なのよ。覚えといてね」
『俺は”Donald Kasuga”になるのか?』
『私は?』
『お日様の名前って素敵ね』
みんなはっきりと自分の名前を確認したかったのか全員が質問してきた。うぅ、これはしんどい。
「それでは、みんなには掃除とかお家のお手伝いをする以外にも仕事があります。
女の子はザレフさんの手伝いで料理を覚えて下さい。料理に興味がある男の子もオッケーよ。料理を覚えて将来お店をやっても良いわね。
男の子は買い物に行って頂戴。ザレフさんに頼まれたら買ってくるのよ。その時は勉強の為に小さい子も1人か2人連れて行って買い物の仕方を教えてあげて。
もしその時あなたたちのような親のいない子を見つけたら連れてきて私に連絡して頂戴。家に入れる時は玄関でこのお掃除ボタンを押して綺麗にしてから入るのよ。それからシャワーで綺麗にしてあげてね。
日曜日はお風呂とトイレの掃除をお願いね。男の子は男子用トイレとお風呂、女の子は女子用ね。
あと毎朝朝食の前に短剣術と格闘術の訓練も行います。悪い人たちから小さい子を守る為にも覚えてもらいます。でも無理はしない事、お家まで逃げられるくらいでいいです。そしてそういう時は誰か必ず私に連絡してね、すぐ来るから。
そして一番の仕事はお勉強です。これが一番大事です。勉強の間はお家の手伝いはしなくていいです。毎日必ずやるのよ。これは明日からね。
ここまで分かった?後で紙に印刷して壁に貼っておこうね」
『『『『『うん、分かった』』』』』
「取り敢えずはこれだけね。あとあと私の仕事のお手伝いもして貰うからその時に説明するね」
『『『『『はーい』』』』』
「それじゃ飲み物飲みながらテレビでも見ていて頂戴。遊びに言ってもいいわよ。
あ、ごめん。外行くのはちょっと待って。危ないからおまじないのネックレス作って渡すわ」
そう言ってリビングで休憩させながら、銀貨で人数分のネックレスを作成する。
アンクレットと同じような簡単には外れない磁石で止める形式で、長さはPrincess。種類は丈夫はロールチェーンにした。もちろん作成はえっちゃんだ。
そしてチェーンの先には先程従者契約でデザインした図柄を、シックスペンスコイン風に仕上げトップとしてぶら下げる。そして裏には”Kids are Sol's family. If you reach out, you will be punishable.(ソルの家族です。手を出したら天罰よ)”と刻印しておいた。
出来上がったネックレスのチェーン部分に付与魔法で”物理攻撃無効”を、トップには2回叩くと目の前に発動する”静電気”を仕込んだ。発動したら私にアラームが届くビーコンも付けておいた。
「はい、それじゃ、みんなこれをいつも身につけるのよ。お風呂以外は外しちゃ駄目よ。
これも週に1度、お皿を洗う洗剤で優しく洗ってね。
これはあなたたちを守ってくれるお守りなの。もし悪い人に捕まったらこのトップを見せなさい。裏も見せるのよ。
裏には”ソルの家族です。手を出したら天罰よ”と書いてあるので、私を知っている人は手を出して来ないわ。
それでも襲って来たらこのトップを2回コンコンと叩きなさい。目の前の相手に電気がビリビリッとするからその隙に逃げればいいわ。
悪戯とかで使ったら駄目よ。お友達が前にいる時も使っちゃ駄目よ。本当に危険な時に使うのよ。良い?分かった?」
『『『『『うん、分かった』』』』』
「この絵お姉ちゃん?」
「そうよー。可愛いでしょ?ふふふー」
「うんっ」
「それじゃ遊んできてもいいよー。お昼には戻って来てね」
(このネックレス、使用人たちやあずさちゃんたち、孤児院のみんなにもにも作っておこう)
(うぅ、眠い。もう少しだ。頑張れー私ー)
他の人のネックレスもどんどん作っていく。
「私はお昼ご飯とか買ってくるから待っててねー。シャイラさん、このネックレス、あなたたちも肌身離さず付けててね。お守りみたいなものだから」
『『『『『はーい』』』』』「「「「はい」」」」
《不眠不休を習得しました》
(いや、それ要らないよ。やめてー。
…あ、一応、どんな能力か確認しておこうかな、”鑑定”!)
・不眠不休:眠気を無視して行動可能。睡眠時間をストック出来る。ストックが無い場合はスキル終了時、眠気が一気に押し寄せる。睡眠の質が向上し、短時間で疲れを解消できるようになる。
(あ、ごめんなさい。やっぱり要ります。ありがとうございます。助かります。
いやー、良い能力ゲットだぜー)
それから市内のスーパーのデリコーナーで昼食と夕食用に使用人たちのも含め大量に購入していく。パンも大量に、飲み物もガロン単位で買っていく。
(これは子供たちでは買い物言っても、持って帰れるの無理だよね。ザレフさんでも無理だわ。免許も無いから運転も出来ないし…これは運転要員が必要かなぁ…)
店長さんらしき人を見つけて、配達をしているか聞いてみた。
「あぁ、1回5ドルで配達するよ。ネートスーパーもあるから、パソコンやスマホから注文してくれてもいいよ。是非利用して貰えると嬉しいよ。アドレスの載ったチラシを渡しておこう」
「あー、助かったー。結構大量になるけど大丈夫ですか?」
「店の商品全部買っても届けてやるよ。任せとけ。どんどん買って行ってくれ。わははは」
「分かりましたー」
(ほっ、良かったー。でもパソコンも必要なの?あ、ネット回線って引かれてるのかな?)
* *
「ハロー」
「なっ、びっくりしたー。ソルさん…」
「あ、すぐ終わるから。あの建物ってネット回線引かれてるの?プロバイダと契約したいんだけど」
「えぇ、もちろん使えますよ。そうしないと、寮に入っている職員から苦情が殺到しますよ」
「あ、そっか。それでプロバイダとの契約はどうすればいいの?」
「そこまで私に聞きますか。私市長なんですけど、一応」
「今度何かあったら手助けするし、サービスするから、お願い教えて」
「仕方ありませんね。それではあの寮と契約していたプロバイダを紹介します。連絡しておきますのでそちらへ直接行って契約して下さい」
「はーい、ありがとう」
「いえいえ。あ、それから明日の朝から外壁のリフォーム会社が行きますので対応お願いします」
「オッケー。ありがとねー。またねー」
紹介状を貰い、速攻でプロバイダに行って契約してきたよ。1週間ぐらいで繋がるってさ。
(あ、スクール・ディストリクト・オフィスにも行かなきゃ。もう寝たいんだけど…)
それからオフィスで学校の相談をした。
幸いにも、市長から連絡があった事と、学校に空きがあり年齢がバラけていた事、2つの学校に分かれる事を了承してくれればとの条件が付いたが、15分と20分の距離なので許容範囲として了承した。
それも暫くの間だけで、9月から一つの学校に移れると言うので一番近い学校にして貰った。
但し、必要書類と予防接種証明書が揃ってから入学日を決める事となり一旦挨拶してオフィスを後にする。
予防接種可能な病院を紹介して貰い、その場で明日の予約を取って貰った。流石市長、至れり尽くせりである。
そして本屋で子供たちの勉強になりそうな絵本や教本、アニメのDVDの中古があったのでそれも纏めて購入した。
その後、緊急連絡用にスマホを使用人たちに1台。子供たちに2台手続きした。
(勉強の用語検索とかにも使えるだろうし、いいよね。使い方はあずさちゃんにお願いしようっと)
パソコンとプリンタ、専用台も5台購入してきた。2台はうちに置こう。
* *
「ただいまー」
『お姉ちゃんだ』
『帰ってきたー』
「こういう時は”おかえりー”って言うんだよ?お家に帰ってきたら”ただいま”ね」
『『『『『おかえりー』』』』』
食堂のテーブルにデリとパン、飲み物を半分出していく。カトラリーも人数分ケースに入れ、皿とコップは紙にした。
それからミラちゃんたち数人を呼び、
「お昼置いておくからみんなが戻ったら食べてね。
そしてお皿に分けたら、その分は出来るだけ残さないように注意して。それでも皿に残ったら一つにまとめて置いておいて、勿体無いから私が食べるよ。
食べかけはこの生ゴミ用の箱に捨ててね。食べ物は大切にするのよ。
使った皿やコップはこの燃えるゴミ用の箱に入れてね。」
『『『『『うん、分かった』』』』』
そして絵本や教本を本棚に並べていく。
「これ自由に見ていいけど、破いたり、汚したりしないように大事にするのよ」
『『『『『わーい、ありがとー』』』』』
そうこうしてると外に出てた子供たちが帰ってきたので、さっきの説明をしてから食べさせた。
「うん、それじゃ私もう眠くて死にそうだから帰るね。夕方また来るよ。それまで良い子にしてるのよ」
『『『『『うん、分かった』』』』』
キッチンのテーブルの上に残りのデリやパンなどを並べ、シャイラさんやザレフさんたち宛てに”夕食は子供たちとこれを食べて下さい”と書いた紙を置いて帰宅した。
それからお風呂に入り、歯を磨いて、開いてる部屋のベッドにダイブした。
目覚ましを5時間後の朝7時に設定して泥のように眠ったよ。
(うぅ、時差のせいで、私の睡眠時間が削られていくー。おのれー…おやすみ…すぅ)
今回長いです。いつもの倍くらいあります。途中で切れなかったです。
年齢に対して学年が一つ低かったので、”養子縁組”の話から後を訂正しました。




