ウガンダ
◆西暦2000年5月10日(水)◆
今日はちょっと、いや、かなり忙しい。
早めに起床すると、訓練、朝食、身支度など一通り済ませる。
「それじゃお勉強頑張ってね」
2人を学校へ送っていく。ファティマちゃんも一緒だ。
「「うんっ」」
自宅に戻るとすぐに市役所へ赴く。
これまで保険証を取得していなかった事に小言を言われたが何とか取得。
その足で教育委員会に行きファティマの入学の手続きを行った。具体的な入学日は学校と調整との事だった。
それ程間を空けずに新しい子の手続きを行ったにも関わらず、その手続きは機械化されたものだった。何だかなー。
それから学校に連絡をすると、すぐにでも面談してくれるとの事で学校へと向かう。
結果ファティマの入学は案の定月曜日からとなった。名簿など色々やる事があるらしい。大変だねー。
面談後、学校指定用品のリストを貰い、早速購入しに行く。フランちゃんの時と同じだからあっと言う間だった。
次にツ○ヤに向かった。保険証を出すとすんなり会員証を作ってくれる。昨日とは雲泥の差である。
面白そうなシリーズ物の魔女っ子アニメやジ○リのアニメを数本借りて帰宅した。
「プ○キュアかー。これはみんな喜びそうだね」
「うんっ」
私的にはフェ○トとか良さそうだったけど、裏背表紙を読むと、ちょっと暗いイメージがあったので今回はパスした。
自宅に戻って、ちょっとだけ見てみたけど、危うく嵌るとこだった。これはみんなで見よう。国民的アニメも伊達では無いな。
その後、お昼までの間にアポ先を訪れ、不法投棄を何か所か回り帰ってきた。
* *
自宅で昼食を取り、テレビを見ながらお茶を飲んでいると、
「な、何?エボラ?致死率53%?えっ、まじで?」
ニュースではアフリカのウガンダで流行病で多数の死者が出た事を報じている。
試しに“疾病相談窓口”を見ると、そのような依頼はない。
「あ、あちらではインターネットが普及していないのかな?というか私の事アフリカまでは広まっているはずないか」
「?」
そんなどうでもいい事を考えていたが、これはまずいと気を取り直して急いで準備をする。
「これは流行病どころの話じゃないでしょ。何を呑気に他人事みたいに報道してるのよ。ったくー、これだから日本のマスコミは…」
「お姉ちゃん、今度はどこ?」
「あ、ファティマちゃん、今回のはちょっと連れていけないよ。病気でたくさんの人が死んでて、触ると病気が伝染るみたいだから危ないからね」
「そうなんだ。怖いね」
「孤児院に預かってもらおうね。終わったらすぐ迎えに行くからね」
「うん、分かった」
それからヘレンお姉ちゃんのところに行き、スイーツを購入後、異世界へと飛んだ。
「おはようー」
『あ、お姉ちゃんだ』
『久しぶりだなー。もう忘れたのかと思ったぜ』
『寂しかったー』
「あー、ごめんね。忙しくて。院長先生にお願いがあるんだけどいる?」
『呼んでくるー』
「ひなたさん、おはようございます。おやまぁ、今日は可愛らしい子を連れてるのね」
「私の3人目の妹です。ファティマちゃんって言います」
「ファティマです。宜しくお願いします」
「はいはい、こちらこそ宜しくね」
「すみません、ちょっと急なんですが、半刻ほどこの子を預かって貰えませんか?この子を連れていけない仕事が出来てしまったもので」
「えぇ、構いませんよ。それじゃファティマちゃん、こちらにどうぞ。みんなも仲良くするのよ?」
『『『『『はーい』』』』』
それからファティマちゃんやみんなにはスイーツを配り、院長先生には肉をいくつか置いていった。
「それじゃファティマちゃん、また後でね」
「うん」
『姉ちゃん、もう行くのかー』
『あそぼー』
「ごめんね、病気で苦しんでいる子たちがいるから急いでるの。また今度ね」
『そっかー、分かった』
『うん』
「それじゃ院長先生、宜しくお願いします」
「はいはい、いってらっしゃい」
* *
【時差情報:-6時間】日本:13時30分 ウガンダ:7時30分
孤児院を出ると急いでウガンダの問題の村へ向かう。
「こんにちわー、村長さんいる?」
「私が村長だが、お嬢ちゃんはどこの子だ?ここは流行病で危険だからすぐに立ち去ったほうがいい」
話かけた人とは別の方から声がして振り向くと初老の男性がやってきた。
「えぇ、報道で流れていたので知っています」
「わざわざ死にに来たのか?命は大切にしないといかんぞ?」
「ご心配は無用です。私にはどんな病気も効きませんから」
「ははは、そんな馬鹿な…」
村長さんも目から血を流していた。やばい…
「時間が勿体無いので、私の事話しますね」
そう言うと天使の羽と周りに光を纏わせる。いつものあれである。
「「なっ」」
「私はソル。神からこの世界を託された者です。
村長、時間がありません。患者の元へ案内して下さい。
それから村人を全員一箇所に集めて下さい。患者の治療が終わったら纏めて診ますので」
「りょ、了解じゃ。私はこの村の村長で”イディ・ビゴンベ”と言いますじゃ。では、こちらへ」
案内された場所は酷い有様で治療どころか放置されている状態だった。
「なっ、何ですか、これは」
「す、すみません。如何せん何も出来なくて…」
「そうですか…」
既に亡くなっている方もいたが、その人も含めて大急ぎで治療を行った。感染防止の為である。
治療を終え、”清浄”で患者含め室内を清潔にすると、今度は村人が待つ部屋に向かった。みな怯えた表情をしている。
「こんな小さい子まで…」
思わず抱きしめようとしたが、それどころでは無いと気付き、纏めて治療していく。
「これで全部ですね?」
「はい、女神様ありがとうございます」
不穏な言葉はスルーして外に出ると、サーチ範囲内に”清浄”をかけていく。
(これで大丈夫かな…)
みんなの待つ部屋へ戻り確認する。
「ちなみに今回の流行は原因とか分かってるの?」
「はい。実は子供たちが死んだチンパンジーを触って帰宅したら発熱をしたのが原因らしく…」
「チンパンジーか。原因が分かっただけでも良かった。誰かそこに案内してくれる?原因を除去しないとまた病気になったら堪らないものね」
「私が案内するー」
小さい女の子が前に出てくる。
「ラクワ・オピ、まだ寝ておれ。無理するでない」
「お姉ちゃんのお陰でもう大丈夫だよー」
「しかし…」
「分かった。ラクワちゃん、案内してくれる?もう病気にはさせないから安心して」
「うんっ」
案内された場所は異臭の立ち込める場所だった。あまりにも酷い有様に直様チンパンジーからエボラ菌を除去し、収納、分解。周りには”清浄”をかけておいた。
ラクワちゃんにももちろん念の為鑑定をかけたが感染は無かった。接触しない限り大丈夫みたいね。
村に戻り、これは4人目の妹激誕かと思われたが両親がやってきた。
「うちの娘を助けて頂きありがとうございます。その上村人まで…」
「間に合って良かったです…(ちぇっ…)」
それから歓迎してくれると言うので遠慮なく参加した。もちろん、ラクワちゃん目当てである。
ラクワちゃんは今、私の膝の上でご飯を食べている。
(ぐふっ、世界には天使が溢れている…幸せ~)
(ここではロビー活動はあまり意味ないね。そのまま帰りますか)
「それじゃ、帰りますね。ラクワちゃん、また遊びに来るね」
「うんっ、絶対だよ?必ず来てね、お姉ちゃん」
「分かった。良い子にしてるんだよー」
「うんっ」
「この度はほんに助かりもうしたわい。いつでもお越し下され。歓迎しますぞ」
『『『『『ありがとうございました』』』』』
「うん。それじゃ」
そう言うといつものパターンで帰宅した。羽と光のセットの中空演舞、あれである。
もちろん、自分に”清浄”をかけ、感染の無い事をしっかりと確認したのは言うまでもない。my天使たちに感染ったら洒落にならないもんね。
孤児院に戻り、孤児院の子たちと暫く遊んだ後ファティマちゃんと帰宅した。
自宅に戻るとえっちゃんと相談しながらラクワちゃんの写真を印刷した。ついでにあずさちゃんとフランちゃんのランドセル姿やファティマちゃんのベストショットも。
そして居間にそれらを飾っていく。あ、瑛華ちゃんも貼っとこう。
「ぷはぁー、こ、これは壮観だ。素晴らしい。これぞ天国」
ウガンダの件を活動報告に上げたりしていると、やがて2人が帰ってきた。
居間の写真を見て、あずさちゃんに猛抗議を受けたが涙目で懇願したら許して貰えた。よしっ。
(あずさちゃん、お主もまだまだよのう~)
「お姉ちゃん、でもこの子可愛いねー」
「おぉ、流石あずさちゃん、この子の可愛さが分かるとはやるなー」
「で、どうしてこの子なの?」
ウガンダでの出来事を話してあげた。両親がいてお持ち帰り出来なかった事も。
「お姉ちゃん、少し落ち着こうか」
「お姉ちゃん、これ以上増えたら大変だよー」
「?」
2人に怒られた。うん、分かってた。ファティマちゃんは相変わらずだ。
「ごめんなさい…」
「カーチャさんとこ行くまでにはまだ時間あるなぁ。微妙な時間だ。どうするべー」
「パパっと行っとく?」
「「行っとく?」」
「どんどんネタが増えてくね、君たち。それじゃちょっとだけ不法投棄回収して来よう」
「「「イエッサー」」」
「何かみんなでサインでも決めてるの?」
「「「ふふ」」」
あまり時間が無いが、せっかくなのでロビー活動もしながら何箇所か回って戻ってくると、その成果を活動報告に上げて行った。
「不法投棄はどんどん増えて来たから国別に1つ下の階層に纏めて、不法投棄専用報告ボタンを作ろう」
ちゃちゃっと修正し出来栄えを確認し、着替えを終えると丁度良い時間となった。
「お、丁度良いね。そろそろ行こうか」
「「「はーい」」」
4人が今着ているのは変身用衣装。但し、前回と違いマスクはしていない。食事には邪魔だし、誕生日会なのに失礼だしね。帽子からベールを垂らしているのは勘弁してもらおう。ちなみにベールは鼻までしか覆わないよう調整してある。
「カーチャさんの家族だけだったらベールを脱いでもいいけど…うーん、悩ましいところだー」
「お姉ちゃん、やっぱり失礼だよ。外に情報を漏らさないようにお願いしたらいいんじゃない?」
「そうだよねー。うん、分かった。
ただせめて魔法でみんなの瞳の色だけは変えていこうね。
髪の毛はもうバレてるから要らないか…。
…よし、それじゃー、”隠密偽装”!」
「うわぁー、お目々が金ピカだよー」
「本当だね。ちょっと不思議な気分」
「金ピカだー」
「ふふふ、お気に召したようで良かったよー」
* *
【時差情報:-6時間】日本:17時50分 カザン:11時50分
それから待ち合わせ時間少し前にカザン駅に到着。
「ようこそ、おいで下さいました」
「ソルさん、お久しぶりです」
「ご招待頂きありがとうございます」
「「「ありがとうございます」」」
既にカーチャさんたちが待っていて、用意してあった車に乗り込んで自宅へ向かう。
車の中でファティマちゃんも紹介しておいた。自宅には数分で到着した。
「「おっきぃ」」
結構な豪邸だった。ちびっ子2人が口を開けたままポカーンとしている。
「ははは。それでは中へどうぞ」
「お嬢ちゃんたち、我が家へようこそー」
「「「「お邪魔します」」」」
中も結構な広さだった。
ミハイルさんの後に続き、2人づつ並んで歩く。
パーティー会場らしき部屋に通されると、見知らぬ顔の人がちらほら見えた。
「ミハイルさん、家族さんだけならこのベールを取るつもりでしたが、知らない方もおられるようですね」
「えぇ、私やカーチャの友人たちです。みな良い者ばかりなので心配はいりませんよ」
「分かりました。それでは私たち姉妹の素顔や見た目の情報は他言無用と言う事でお願いします。
マスコミや何かを企む者たちにこの子たちが危険に遭うと困りますので。すみませんが」
「了解しました。みなにも言っておきましょう。カーチャも頼むよ」
「うん、私の友達はみんな良い子だから大丈夫ですよ」
「信じてますからね」
それからみんなの帽子とベールを取ってアイテムボックスへ収納した。
「金色の瞳、綺麗ー」
「ありがとうございます」
それから事前に注意事項が全員に伝えられ、了承を得ると、お互いの紹介をした後、パーティーが始まった。
(小さい子もいるけど大丈夫だよね?…ま、子供の話しを間に受ける事もないか)
ロシア料理に舌鼓を打ちながら、団欒も交えてパーティーは和やかに進む。
こちらはお昼なのでお酒はない。ひなたたちは飲まないが、酔って帰って秘密をバラされる事もなさそうだと安堵した。
しばらくするとプレゼントの時間になった。みんながどんなプレゼントを贈るのか見ていたが飛び抜けた贈り物があったりするわけではなく、在り来りな言い方をすると普通だった。
ただ、大きなぬいぐるみをプレゼントするツワモノもいて、カーチャさんもちょっと顔が引きつっていたよ。
一通り終わったみたいなので私たちの番である。
「カーチャさん、これ私たち4人からのプレゼントです。受け取って下さい」
「わぁ、ありがとうございます。開けてもいい?」
「えぇ、構いませんわ。ただ、サイズが分からなかったので、ここで付けて貰っていいですか?調整しましょう」
「えっ?そんな事出来るんです?」
「私はソルですよ?」
「あぁ、そうでした。それでは遠慮無く付けさせて貰いますね。
…うわぁ、金色のアクセサリーだー。綺麗~」
指と手首に嵌めると大きさを確認していく。
(うん、指輪はやっぱりちょっと大きかったか…)
全員の見ている前で指輪を付けた指の大きさに調整する。
「うわぁ、目の前で大きさが変わったー。うん、これなら丁度いいですね」
「ブレスレットは大きさどうです?見た感じ違和感は無いように思われますが」
「大丈夫です。抜け落ちる事もないようなので問題ないです」
「そう、良かった」
「ソルさん、ありがとうございます。カーチャ、良いプレゼントを貰えて良かったな」
「うん、ソルさん、ありがとう」
(はいー、満面の笑顔頂きましたー。あと10歳ほど若ければ完璧なのに…)
私の思考を読んだのか、あずさちゃんが腰に肘をぶつけてきた。エスパーか!
パーティーも終盤に差し掛かり、お開きかと思われた時、
「ソルさん、実はお願いがございまして…」
耳打ちしながら聞いたのは、市長仲間の娘さんを診てもらいたいと言う事だった。カーチャさんの回復ぶりに縋りつかれたらしい。
話しを聞くと、生まれつき心臓が弱く、今は移植を待つ身でこの半年が瀬戸際との事。もちろん了承した。市長さんが集まっているなら、ロビー活動もしたいと、活動内容を掻い摘んで説明しお願いしたら、”それは素晴らしい”と喜んで許可を出してくれた。
「皆様、今日はカーチャの誕生日を祝っていただきありがとうございます」
ミハイルさんは近くにいた女の子とその父親らしき人を近くに呼んだ。
「今日は最後に皆様にいつまでも記憶に残る素晴らしい体験をして頂こうと思います。
この子、アーリャは幼い頃から心臓が悪く、現在は移植待ちの状態です。イヴァンさん、間違いありませんね?」
「えぇ、その通りです」
コクリと頷くイヴァンさん。
「さて、私の娘も登山の事故で四肢と顔に酷い凍傷を受けました。ですが、ある方のお陰でこの通り美しい顔を取り戻す事ができました」
回りの人が一斉に私を見る。
「お、お父さんったら、美しいだなんて、恥ずかしいよー」
そんなカーチャさんを優しい目で見て微笑んだ後、話しを続ける。
「そこで今回はイヴァンさんの願いを叶えて頂くべく、こちらのソルさんにお願いした所、快く了承してくれました。
皆様にはカーチャに起こった奇跡をその目でご覧になって下さい。では宜しくお願いします」
私は頷くとアーリャちゃんに近づく。ちょっと震えているようだ。怖いのかな?怖くないよー。
「始めまして、お名前は?」
「アリサ。みんなアーリャって呼ぶの」
「そうなの。おいくつかしら?」
「6歳」
左右で3本づつ指を立てて見せてくれる。
「そうなのー。それじゃちょっとお手々握るね」
「うんっ」
アーリャちゃんの小さい手を取って魔力を薄く流していく。びっくりしないようにだ。
「ポカポカするー」
「アーリャ、少し静かにしてなさい」
「はーい」
お父さんに怒られてちょっとふてくされてる。
鑑定でも状態を確認する。
【高度の心室拡張不全から突然死をきたす可能性が極めて高い拘束型心筋症】
(な、な、突然死って…こんなに小さい子が…
むむ、確かに。自分のと比較すると心室の動きがおかしい)
「うんうん、それじゃ、ちょっと身体が光るけどびっくりしないでねー」
「うん、分かったー」
(”絶対回復”!…あれ、もう一回、”絶対回復”!。
ふぅ、重症になると1回では駄目な場合もあるのね。でも良かったー。
うん、動きも問題ないし、鑑定結果からも病名が消えてるね。よし、完治!)
『アーリャの身体が光った。2回も』
『綺麗~』
「あ、あ、あ…」
どんどん顔色が良くなるアーリャを見て目を見開くイヴァンさん。
「お父さん、何だか気分が良くなったよー」
「そ、そうか。胸は、胸は痛くないか?苦しくないか?」
「うん、全然苦しくないよー」
「もう大丈夫だから、安心して」
『おぉー、奇跡だ』
『カーチャもああやって治ったのか』
『本当に女神様なのか?』
『お父さん、やっぱり不思議ねー』
『あぁ、そうだな。しかし、本当に良かった』
「あ、ありがとうございます。ありがとうございます。あぁあああああ」
「お、お父さん、苦しいよー」
アーリャを抱きしめて涙するイヴァンさん。
「一応、正常に動いてるから問題無いけど、心配でしたら一度検査してみる事をオススメしますわ」
「は、はい。ありがとうございます。この御恩は決して忘れません。
いつ倒れるか、寝たらもう起きては来ないんじゃなかと、ずっと…うぅ。
ソル様、私の住む街に来る事があれば是非いらして下さい。
アーリャにも会いに来てくれると本人も喜ぶと思います」
「お姉ちゃん、おうちに遊びに来てくれるの?」
「そうね。今度退院祝いとかするのであれば呼んで頂戴。喜んで伺うわ」
「はい、その際は是非」
「絶対来てねー」
「うん、行くよー。待っててね」
「わーい」
「さて、この場を借りて皆様にお願いがあります。
ご覧頂きましたように、私にはあらゆる病気を治す力があります。死以外であればどのような病気でも治す事が可能です。
今はこの力を使って全世界規模で私の存在を周知させるべく活動を行っているところです。
そこでお願いですが、どこかの施設をお借り頂いて、貧しい家庭を中心に病に苦しむ方を纏めて治療できる場所を用意して貰いたいのです。
何回かに分けて貰っても構いませんが、何分世界規模なのでこちらばかりと言うわけにも参りません。
ですから、対象者は貧困家庭優先で、且つ、不治の病か治らないと言われている慢性疾患をお持ちの方でお願いします。風邪などの病院で治療可能な病気は除外させて頂きます。
また、富裕層や犯罪者もお断りします。富裕層に関しては専用サイトの専用窓口で承っておりますのでそちらをご利用下さい。個別対応致します。
但し、貧困家庭でも無償ではありません。本来ならアメリカドルで10ドル、こちらの通貨だと808ルーブルと言ったところでしょうか。この子たちのように救出した子供たちを養うにも先立つ物が必要なのです。
もちろん払えない人がいるのは承知しております。その場合は金銭ではなく、10ドル分の価値のある品でも結構です。例えそれがお子さんが書いた絵でも構いません。価値があると判断するならば。
すぐには返事も人を集めるのも無理でしょうから、ご希望の際には専用サイトの専用ページからお願いします。
以上今申し上げたルールはこちらのチラシに記載されています。何部か置いておきますのでご参考にお持ち下さい。
ちなみにこの治療活動は今だけです。私の存在が広まれば本来の仕事に専念しますので念頭に置いておいて下さいね。
少し長くなりましたが質問とかあれば?」
「一般家庭でもいいのですか?」
「はい、あくまでも貧困家庭優先ですが、構いません」
「本来の仕事とは?」
「ひとつはこの世界のゴミ問題の解決です。あまりにもこの世界は汚れすぎています。
ふたつめは犯罪者たちの撲滅です。これから思い切って減らしていきます。
みっつめはこれらの犯罪や戦争で不幸になった子供たちの救出です。
以上3点で、治癒は傍らにやる程度になると思って下さい」
「分かりました。ありがとうございます」
「他に無いようなので以上です。カーチャさん、お誕生日会なのに硬い雰囲気になってしまいごめんなさいね」
「ううん、大丈夫よ。凄いもの見れたしね」
「そうだな。アーリャも元気になって感謝こそすれ文句などあるはずがありません」
「皆さん、私の娘の為に貴重な時間を申し訳ない」
「お父さん?私何も悪い事してないよ?」
「ぷっ、あぁ、そうだな」
アーリャちゃんの天然な返しに会場は爆笑の渦に包まれた。
(ほっ、良かった。流石アーリャちゃん。グッジョブじゃ)
思わずアーリャちゃんの頭を撫でてあげた。
後ろを見るとあずさちゃんたちもニコニコしていたが、アーリャちゃんを狙っているような目をしていた。
それからとりあえずパーティーはお開きとなったが、世界のゴミ問題も含めて、パネルを可視化してみんなに活動内容を見せた。
中国の惨状には全員が目を見開いて驚愕していた。やはり、中国は他国からみてもスケールが違うようだ。
そして今朝のウガンダの映像を見ると、
『あの、ニュースでやってたエボラを治したのか!』
『半数近くが亡くなったって言ってたが、救われたんだな。良かった』
『ソル様流石ですな』
「ソルちゃん、凄ーい。びっくりだよー」
カーチャさん、もうちゃん呼びに戻ってる。ま、いいけどね。
「ここにロシアでの活動が載せられれば嬉しいです」
「えぇ、お任せ下さい。皆さんも頼みましたよ」
『『『任された!』』』
それから帰宅する間際にイヴァンさんからアタッシュケースを渡された。
「ソル様、こちら少ないですが、お礼の気持ちです。お受け取り下さい」
「ありがとう。遠慮無く頂戴しますわ」
「それではカーチャさん、ご招待ありがとうね」
「はい、こちらこそ来てくれて嬉しかったです」
「わざわざありがとうございました」
「はい、では失礼します」
そう言うとその場でmy天使を連れて転移した。
* *
「ふぅー、何とか無事終わったわね」
自宅のソファにもたれて安堵の溜息を零す。
するとあずさちゃんが全員分のホットミルクを入れて持ってきてくれた。
「気が利くねー。ありがとう」
「「お姉ちゃん、ありがとうー」」
「どう致しまして。お姉ちゃん、お疲れ様~」
後ろに廻ったあずさちゃんが肩を揉んでくれる。そんな歳ではないが、気持ちが嬉しいのでされたままである。
「ありがとー」
「「私もー」」
ちびっ子天使たちも両脇から手を揉んだり、足を揉んだりしてくれる。
「横っ腹はくすぐったいからやめてー」
こうなったらお返ししなきゃね。
「きゃははは、お姉ちゃん、やめてー」
「きゃー、くすぐったいー」
それからみんなでアニメのDVDを見た。プリキュ○だ。大好評だった。
「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!」」
ノリノリなちびっ子2人。
「闇の力のしもべたちよ」
「とっととおうちに帰りなさい」
ビシッと音がしそうなほどの見事なフォーメーション。振り付けも完璧だ。
もちろん、指輪はしていない。流暢な日本語である。アニメの力恐るべし。
「お、おぅ、やっちまった感が半端無いんだが、あずさちゃん、どう思う?」
「う、うん、そうだね。私はノータッチで」
「えぇー、そんなー」
私たちが見ているのは初代プ○キュアだ。白黒のやつ。
大きいお友だちの中では不動の人気を誇るらしい。
そう言いながらも、あずさちゃんが一番手に汗握っていたのは内緒だ。
あまりの嵌りように途中お風呂に誘ったりしてみたが、返事も上の空で、結局強制的に電源を落とす事となった。
凄いブーイングだった。初めての大抗議だ。精神がガリガリ削られたがあずさちゃんが助けてくれた。
「お姉ちゃんは私たちの為に毎日辛い思いをして頑張ってるのよ。わがまま言わないの」
「「ごめんなさい」」
「お姉ちゃん、ごめんね」
「もうわがまま言わない」
涙を浮かべながら抱きついてきた。精神が復活した。
「それじゃ。アニメは1日2時間までにしようね」
「「うんっ」」
「あずさちゃん、ありがとうね」
「ううん、元気になって良かったよ」
「あずさちゃんもおいで」
そう言って3人を抱きしめてあげた。
「2時間かー」
あずさちゃんがぼそっとそんな事を呟いたのが聞こえたが、聞こえないフリをした。あずさちゃん、おまえもかー。
テーブルの上を片付けてみんなでお風呂に入った。至福の時間である。
「ファティマちゃん、明日から1年生の勉強始めるからねー」
「うん、楽しみー」
それからみんなで歯磨きを終わらせるとベッドに潜り込んだ。
「ほんじゃ、おやすみー」
「「「おやすみなさーい」」」




