初登校日
◆西暦2000年5月8日(月)◆
(どの子も寝顔はまじ天使だね)
隣で眠るファティマちゃんを見てしみじみそう思うひなた。
そこへ2人の天使が入ってきた。
「「ファティマちゃん起きた?」」
「ううん、昨日あれからまた泣いちゃってね。眠れなかったみたい」
「「そうなんだ…」」
「いやいや2人が落ち込まなくてもいいのよ。2~3日は見守りましょうね」
「「うんっ」」
「それじゃファティマちゃんが起きるまでの間訓練だけはしときましょ」
「「はーい」」
それから3人で裏庭に行き、訓練で軽く汗を流した。
自宅に戻るとファティマちゃんは起きてて居間で立っていた。
「あ、ファティマちゃん、おはよう。よく眠れた?」
「「おはよう~」」
「うん、おはよう。お姉ちゃん、昨日は泣いてごめんね」
「子供は泣くのも仕事のうちよ。悲しい時は思い切り泣きなさい」
「うん、分かった」
「よし、それじゃ、ご飯作るわね」
(ご飯は昨日のうちにセットしておいたから良いとして、サラダとポーク玉子、カップスープにしよう)
「「手伝うよー」」
「あ、フランちゃんはファティマちゃんと一緒にいて。一人じゃ寂しいと思うから」
「うん、分かったー。ファティマちゃん、テレビつけるね」
そう言うと仲良くソファに座ってテレビを見始める。
「それじゃ始めるか。あずさちゃんはポーク切ってくれる。私はサラダを用意するね。」
サラダはアイテムボックスに新鮮なまま入っているので、それを洗ってちぎってサラダにする。
それから私は卵を溶いてから、ポークと順に焼いていく。あずさちゃんはお湯を沸かしてカップスープの準備だ。
出来上がると料理をテーブルに並べていく。飲み物はミルクだ。
昨日あれだけ食べたのだからと少し多めに作ったが杞憂だったようだ。今朝の食欲は幼児のそれと変わらなかった。昨日はよほどお腹が空いていたのだろう。
食べ終わって軽くシャワーで訓練の汗を洗い流し、少し休んだ後、出かける準備をする。
今日だけは一緒に学校に行くのだ。担任の先生に挨拶しなければ。
「よし、準備はいいわね。2人ともランドセル似合ってるよ。めちゃ可愛い。
えっちゃん、この姿を覚えといてね。後で印刷して飾るから」
《YESマスター。了解しました》
「飾らなくてもいいよー。恥ずかしいよー」
全力でスルーした。これは譲れない。
「あずさちゃん、お昼はお弁当じゃなくていいのよね?」
「うん、学校は給食制だから要らないよ」
「分かった。一応フランちゃんには聞いてはいたけど、ちょっと心配で。念の為にね」
「私嘘つかないよー」
「うん、ごめんね」
「ファティマちゃん、悪いけど、学校にはまだ連れて行けないからお留守番しててくれる?すぐ戻ってくるからね」
「うん、分かった」
* *
学校までは歩いて5分ほどの距離だ。
私は変身魔法でお母さん役になっている。
「私は今日はお母さん役だからね。お姉ちゃんじゃなくてお母さんだからね。分かった?フランちゃん」
「うん」
「私も了解だよー」
それから職員室へ入っていく。
「おはようございます。あずさとフランの母です。今日からお世話になりますので、宜しくお願いします」
「「おはようございます」」
『『『おはようございます』』』
「私が5年C組、あずさちゃんの担任となります、小泉です。お母さん、ご安心下さい。うちの子はみんないい子ばかりなんですよ」
「はい、それを聞いて安心しました。宜しくお願いします」
「次私ね。フランちゃん、私が3年A組の担任の櫻井よ。これから1年勉強頑張りましょうね。
お母さん、この可愛らしさならば、みんなの人気者間違い無しですよ」
「はい、ただこの子は外国の子なので髪の色が違いますが、その点だけご留意頂けると助かります」
「了解です。フランちゃん、よく見るとお目々も綺麗ねー」
「ありがとー」
「それでは皆様、うちの子を宜しくお願いします」
『『『お預かりします』』』
一応、学校には2人は養子縁組だと説明してある。
* *
「ぷはぁー、ただいまー。終わったー。緊張したー」
帰ってきて、どっと疲れるひなた。
「お姉ちゃん、お帰りー」
「しかしちゃんと出来てるのかなぁ?お友達と馴染めてるかなぁ?」
「お姉ちゃん、落ち着いて」
自分の事は二の次で2人の事を心配しオロオロしてしまう。何となく心配なのだ。
(本当だったら、私も中学生なんだよね。行っている暇なんてないけど…もし行ったら素敵なお友達とか出来たのかなぁ。
…うん、忘れよう)
それから紅茶を飲みながらサイトをチェックする。
「どれどれー。あ、カーチャさんから誕生日会のお誘いが来てる。
でもその年齢で誕生日会って…。
あ、よく見ると、追記でミハイルさんから”娘がどうしてもまた会いたいと聞かなくて”と書いてあった。なるほど、そういう事。
明後日の夕方かー。今日みんなが帰ってきて、聞いてから返事しよう。
あれ?待って。って駄目じゃん。そちらが夕方でもこちらは深夜になるからアウトじゃん」
慌ててミハイルさんに時差の件を伝えておいた。そちらの夕方はこちらの深夜なので、学校がある妹たちは参加できません…てね。
すぐに返事は帰ってきた。”それなら明々後日のお昼でどうでしょう”と。
もちろんすぐには返事はせず、学校から帰ったら確認して連絡しますと返事しておいた。
「陳さんからも来てるね。おっ、今日の夕方にはお金準備できるのか。了解っと。
いやぁ、一級行政区指導者だけあって仕事が早いねー。うむうむ、良きかな、良きかな」
速攻で了承のメールを送る。
「相変わらず不法投棄の通報が多いなぁ…これは午後ある程度やっておこう」
「えっちゃん、昨日のも動画上げとこう。
あいつらへの天罰はR-15?になるのかな?モザイクでグロいとこ隠したとしても、実際に人を殺めているわけだし、上げていいのかなぁ?
でもこういう活動もするって告知したいしなぁ…」
《最後のシーンだけ音声のみにして、そうと分かるように編集しましょう》
「わお、えっちゃん凄すぎだよ。惚れちゃいそうだよー」
《恐悦至極にございます》
「むむ…それじゃお願いね。その間他のページもチェックしておくかな」
“環境問題相談窓口“、“期間限定疾病相談出張申込受付”、“疾病相談窓口”と順に見ていく。前半2つは相変わらずゼロだった。
“疾病相談窓口”にはいくつか依頼が入っていた。その中には外国もちらほら。
「今日は先週依頼のあったアポも入ってるし、こちらも出来るとこはまとめてやっちゃおう。メール返信しとくか…」
新しく入った依頼に対して了承と待ち合わせ方法の確認のメールを送る。
それからえっちゃんの加工してくれた映像を活動報告に上げておいた。
「よし、チェック&メール完了。それじゃ、返事が帰ってくる前にファティマちゃんとこ寄って行こうね。
お家に着いたら洋服とか必要なもの持って帰るので選んでくれる?」
「分かったー」
「あと、もしちょっとだけ時間作れれば一緒に洋服を買いに行きたいけど無理だよねー」
「うん、たぶん村の人たちが来ると思うの」
「そうだよねー。よし、行こうか」
「うんっ」
* *
【時差情報:-3時間30分】日本:9時30分 トリプラ:6時
ファティマちゃんとロヒートさんの亡骸を抱えて村にやってきた。
「おはようー」
ロヒートさんをベッドに寝かせる。
「ソル様、ようこそお越し下さいました」
「そんなに畏まらなくてもいいよ」
「あ、火葬場へはこれから?」
「うむ、若い者たち数人がそろそろ来るはずじゃ」
「一緒に行きたいけど、女性は駄目なのよね。お願いしていい?」
「あぁ、気にせんで良い。わしらもどうせ途中までしか行けんしのぅ」
「ファティマちゃん、一緒に行けなくてごめんね」
「うん、大丈夫だよ。お姉ちゃん、お仕事頑張って」
「ありがとう。ファティマちゃん、それじゃ持って帰る物選んじゃおうね」
「はーい、村長さん、ちょっとだけ失礼します」
「あぁ、行っといで」
タンスから洋服類や小物、それからこれまでに作ったであろう木彫りの人形や宝物らしき物、おとうさんの形見として持って行く物などをどんどん収納していった。
「さて、新しい洋服はどうしたもんかなー。ファティマちゃん、今来てるフランちゃんと同じ大きさの服で問題なさそう?靴とかも」
「うん、ちょうどいいよ」
「了解ー。それじゃ適当に買ってくるね。好きな色とかある?」
「うーん、緑がいい。薄いの」
「オッケー」
ファティマには村人にもお裾分けできるようにお弁当をいくつかとオレンジジュースの水筒を渡しておいた。明日の弁当買って来なきゃ。
「それじゃ、ファティマの事宜しくお願いします。お弁当は少し余裕を持って渡してありますので、少ないですがみなさんもどうぞ。
間違ってもファティマちゃんの分を取ったりしないようにね。天罰怖くなければかまいませんが」
「あ、ありがとうございます。そんな恐れ多い事絶対にさせませんので」
「うむ、では頼みました。ファティマちゃん、また夕方来るね」
「うんっ」
* *
それから自宅近くのファッションセンターし○むらで洋服や下着、靴など衣類を数点購入。
ついでに変身用衣装も一式買い集めてきた。
そして、学校の準備として、フランちゃんたちと同じ学習机一式や文房具などを購入して回った。
自宅に戻ると1つの部屋をフランちゃんとファティマちゃん用にして、あずさちゃんの部屋からフランちゃんの机や洋服などを移動、机を並べる。
ファティマちゃんの自宅から持ってきた洋服や小物類などを仕舞っていき、形見の物など、どこに置いたらいいのか分からない物は机の上に置いておく。
「うーん、ちょっと手狭になっちゃうけど一応ベッドは置いとこう。今は寝る時は私の部屋だけど、ずっとそうだとは限らないものね」
ベッドも持ってきて2つ並べた。
「大きくなったら部屋を分ければいいか。うん、そうしよう」
アポの時間が来たので急いで面会場所へ向かった。
それからお昼を挟んで、アポと環境問題改善を熟して行く。
* *
「確かフランちゃんは14時半に学校終わるんだよね。そろそろ迎えに行こう」
スマホにセットしていたアラームが鳴ったので、自分に”清浄"&"消臭”をかけ、急いで戻るとすぐに学校に迎えに行く。
門の前で待ってると、程なく先生に引率された子供たちが出てきた。周りには他の親御さんもいる。
(1~2年制はみんなお迎えするのね。
うんうん、やはりうちのフランちゃんが一番可愛いね。あ、私に気づいた)
フランちゃんは私を見つけると胸に飛び込んで来た。もちろん、今はお母さんモードだ。
「フランちゃん、学校は楽しかった?」 帰宅の途を一緒に歩きながら問いかける。
「うん、でも、お姉…お母さんに会えなくて寂しかったよー」
(ぐふっ、なんて破壊力抜群のお目々なの)
抱きしめたいが、周りの子の目もあるので控える事にした。
「あ、そうだ。フランちゃんとファティマちゃん同じ部屋にしたからね。勉強机も並べたからファティマちゃんも学校始まったら色々教えてあげてね」
「うん、分かったー」
自宅に帰ってきてから話を聞く。
「学校ではお友達出来た?」
「うん、たくさん出来たよ?100人くらい?」
「えっ、1クラス30人くらいじゃないの?」
「うん。それがねー、隣の子とかもいっぱい来て大変だったの」
「なんじゃ、そりゃー。日本の子供たちやるなー。うむ、見る目があると褒めて遣わす」
「つかわす?」
「みんな可愛いフランちゃんと仲良くしたいみたいだから褒めてあげたいなぁって事よ」
「そっかー」
「勉強は大丈夫だった?分からない事とかない?」
「えっとねー…」
そんな感じで和気藹藹と分からなかったとこを説明したり、学校の事を聞いていたら、今度はあずさちゃんの帰宅の時間になった。
「フランちゃん、今度はあずさちゃん迎えに行こう」
「はーい」
同じく門の前で待ってると、今度は先生の引率もなく、みんなバラバラに出てくる。周りの親御さんも少なめ。
あずさちゃんも私を見つけると走って来たが、直前で止まってしまった。ちょっと寂しい。でもどうやら周りの目が気になるらしい。
「あずさちゃん、おかえりー」
「おかえりー」
「ただいまー」
「学校は楽しかった?」
そんな会話をしながら、フランちゃんを間に挟んで手を繋いで仲良く帰宅。
* *
「「「ただいまー」」」
ホットココアを入れてソファに座って今日の報告を聞く。
「あずさちゃんも学校でお友達出来た?」
「うん、何人かの子と仲良くなったよー」
「お姉ちゃん、私100人出来たよ」
「えっ!?100人?」
「うんっ」
「お姉ちゃん?」
あずさちゃんが私を見る。
「何かねー、周りのクラスの子とかもたくさん来て大変だったらしいよ」
「まじかー。さすがフランちゃん。やるなー」
「わははー」
「勉強とかは大丈夫だった?分からないとことか無かった?」
「うん、先生の教え方が上手だったから問題無かったよ」
「私もー」
「そっかそっかー」
そんな感じで暫く学校の話を聞いていく。
「宿題とか出た?」
「うん、あとプリント貰ってきた」
「私もプリントあるー。宿題もー」
プリントを受け取ると年間の学校行事やぞうきんの持参のお願いなどがあった。
「ぞうきんは後で買っておこうね。ミシン必要かな?”修復”で修復できるから要らないか」
「要らないね」
「?」
「あ、そうだ。カザンのカーチャさんが明後日のお昼、こっちだと夕方ね、誕生日会をするから来て欲しいってメールがあったんだけど大丈夫?」
「「うん、大丈夫だよー」」
「でも、あのお姉ちゃん、まだ誕生日会してるんだね」
「ふふ、どうやら単に会いたいだけみたいよ。ミハイルさんがメールの最後に書いてた」
「なるほどー」
すぐにカーチャさんに誕生日会への出席の返事メールを送った。
「それじゃ2人共宿題片付けちゃって」
「「はーい」」
2人仲良く宿題をやり始める。
「さて、その間、私はお掃除しようかな…」
そう言いながら各部屋を回っていく。もちろん雑巾で床を拭いていく。軽くだけどね。
お風呂とトイレは生活魔法の”柔洗浄”で洗い、”乾燥”で乾かし、最後に”清浄”で完璧。
居間だけを残して掃除が終わって戻ってくるとまだフランちゃんは悪戦苦闘していた。
「それじゃ約束のお仕事あるから行ってくるね。夕方にはファティマちゃん連れて戻るから。
夕食は家でカレーにしょう。帰ってきてから作るので少し遅くなるかもしれないけど、我慢してね」
「カレーだ。やったー」
「カレー?」
「フランちゃん、楽しみにしといて。美味しいよー」
「うんっ」
「あ、本場のファティマちゃんのお口に合うかなぁ?」
「大丈夫だと思う」
「分かった。あ、今のうちにご飯セットしておこう」
キッチンへ向かいご飯を研いで、夕方頃炊き上がるようにセットする。
「よし、それじゃ行ってきまーす」
「「行ってらっしゃーい」」
* *
まずは治療依頼のアポ先へ。今回は少し裕福そうなお宅だ。
そこが終わると、ちょうどいい時間だったので陳さんとこへ。
【時差情報:-1時間】日本:17時30分 杭州市:16時30分
「陳さん、来たよー」
部屋に入るといきなり複数の男が襲いかかって来る。
「なっ」
”縮地”で陳さんの隣に並び、直様、”停止”で動きを止める。
『か、身体が動かない』
『どうなってるんだ』
『くそっ』
「陳さん、どういう事かなぁ?天罰欲しいのぉ?」
そう言うと左手に雷を纏わり付かせる。
バチバチッ、…
「ひっ。い、いえ。大変申し訳ありません。
実は部下たちが実際に見てみないと信用できないと言って聞かなくて…ほんとすみません」
必死に頭を下げる陳さん。よく見るとその後ろに小さい女の子がいる。何だか顔色が悪い。時々ゴホゴホしてる。
「なるほど。もう少しで黒焦げの山が出来上がるところでしたよ」
「勘弁して下さい…お前たちこれで信用できただろう?」
「「「は、はい、すみませんでした」」」
電気花火のような放電状態を収束し、”停止”も解除してあげた。
(しまった。女の子が怯えてるじゃないか)
「分かったわ。2度目は無いからね」
「「「「はいっ」」」」
「では、こちらがお約束の品です。ご確認下さい」
アタッシュケースを受け取り、中身を書くにする。
(うん、全て100ドル紙幣で100枚の束が25個と20枚あるね)
「はい、間違いありません。また何かあれば宜しくお願いします。
というかねー…何かあればというよりありすぎだよ?この国。
この間、江蘇省農村部の川沿いの村に行ったんだけど、川一面にゴミが浮かんでて、川がそこにあるのも分からない状態で、その中には生理用品や豚の死骸とか、もの凄い異臭で手がつけられなかったんで一旦帰ってきたのよ。
ああいうのは早めに依頼してほしいんだけど。江蘇省に知り合いがいたら話してくれない?もちろんそこだけじゃないと思うから他の省にも知り合いがいたらお願い」
「あー、はい。どこもこちらと同じ状態でして、不法投棄が当たり前になってるようで…」
「それは国を上げて取り組む問題ね。ただその川で洗濯している人もいたから何とかしてあげたいのよね」
「分かりました。知り合いに掛け合ってみます」
「ならこのチラシ渡しておくわ。有効利用して。専用アドレスや活動報告のリンク先も書いてあるから。こちらのSNSにもアカウント作ったから今後そちらにも活動報告の動画載せるわね」
「おぉ、助かります」
* *
細々とした話が終わり、アタッシュケースを収納して、気になっている事を聞いてみた。
「それで、そこに隠れている可愛らしい子はどちら様?怖くないわよーこっちおいでー」
ヘレンお姉ちゃんのとこで買ったスイーツを出して差し出してみる。
「これ、ホノルルで有名なお店のスイーツなの。良かったら食べて?」
「いいの?おじいちゃん?…ゴホッ…」
「いいよ、食べなさい」
「わーい、ありがとー」
テーブルに座ってケーキを美味しそうに食べ始める。オレンジジュースも出してあげた。
「で?」
「あぁ、この子は私の孫で”瑛華”と言います。
実は環境問題にも関係しているのですが、排気ガスや工場から出るガスのせいで空気が非常に悪くなってまして、この子の喘息が悪化して治るのも治らない状態なのです…それで、これも何かの縁なので、この子を見て貰えないかと」
「なるほど。まぁ、この子には悪い言い方になるけど、この国の自業自得ね。タイヤの山といい、ゴミの川といい、ここまで放っておいた事が理解できないわ」
「大変耳が痛いですな。出来るだけ善処はしているのですが何分予算的な問題といいますか…」
「今更言ってもしょうが無いわね。分かったわ、治療費は貰うわよ?」
「えぇ、宜しくお願いします」
瑛華ちゃんが食べ終わるのを待って話掛ける。
「英華ちゃん、美味しかった?」
「うん、ありがとう」
(満面の笑顔頂きましたー)
「それじゃ、瑛華ちゃん、ちょっとお手々握るね」
「いいよー…ゴホゴホ…」
瑛華ちゃんの手を取り、全身に魔力を流し調べていく。
「何か身体がポカポカするよ?おじいちゃん」
「そうかそうか」
(肺に細かい粒子が結構付着してるし、気道も狭くなって炎症を起こしてるわね。これが原因ね。
それじゃ”空間探査”と収納でまずは不純物を除去して…肺も少し弱くなってるみたいだから、気道の修復も兼ねて纏めてと…”絶対回復”!)
瑛華ちゃんの身体が淡く光輝きやがて収まると、その顔色はとても良くなっていた。
「あれ?おじいちゃん、喉が苦しくないよ?胸も痛くない」
「おぉー、どうだ?他に痛いところとか無いか?全然苦しく無いのか?」
「うん、大丈夫!」
「そうかそうか、治ったんじゃな。本当に…良かった…良かった…」
瑛華ちゃんを優しく抱きしめて薄っすらと涙していた。
『『『おぉー』』』
『き、奇跡だ』
『今光ったよな?魔法か?』
『それに見ろ、瑛華ちゃんの顔がすっかり良くなってるじゃないか』
『あー、凄いもの見ちまったな』
(あんたたち、まだいたんかい)
「おじいちゃん、苦しいよー」
そう言われ、ハッとなって瑛華ちゃんを開放する陳さん。
「ソルさん、この度は孫娘をお救い下さりありがとうございました。こちらがお礼の品です」
「有り難く頂戴しておくわ。でも今の環境をどうにかしないと、また再発しないか心配よ」
「せっかく治して頂いたのにそれだけが不安ですな。これからも事あるごとに上層部と掛け合ってみますよ」
「えぇ、そうして頂戴。瑛華ちゃん、お外歩く時はちゃんとマスクして、お家に帰ったらきちんとうがいするのよ?いい?分かった?」
「うん、分かったー。お姉ちゃん、ありがとう」
瑛華ちゃんが私に抱きついてきたので抱きしめてあげた。
(あー、至福の時間じゃー)
「それじゃまだ行くとこあるのでお邪魔しますね。また何かあれば連絡して」
「はい、ありがとうございました」
「お姉ちゃん、バイバーイ」
「瑛華ちゃん元気でね。バイバイ」
* *
(やばい、ちょっと時間が押してきた)
急いでファティマちゃんを迎えに行く。
【時差情報:-3時間30分】日本:18時30分 トリプラ:15時00分
「ファティマちゃん、お待たせー。ちょっと遅くなっちゃた」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん」
「よし、それじゃ帰ろっか」
「うん」
「では村長、少し早いですが、日本ではもうすぐ夜なので連れて行きますね。葬式の日にまた来ます」
「はい、ごきげんよう」
ファティマちゃんと一緒に急いでスーパーへ向かう。
* *
「お買い物?」
「今日はね、夕食カレーにしようと思うの。だからその材料を買いにね。それから明日のお昼の弁当も一緒に買っちゃおう」
「わーい、カレー大好きー」
「あー、ただね、ファティマちゃん。日本のカレーとインドのカレーじゃちょっと違うと思うからあまり美味しくなかったらごめんね」
「ううん、きっと大丈夫だよ。ここの料理全部美味しいから」
「だと嬉しいけどね。よーし、それじゃ買い物カゴを持ってレッツゴー」
「おー」
(肉は魔物やワイルドボアの肉があるから良いとして、後は…。
人参、じゃがいも、玉ねぎは必須として…ピーマンとパプリカも刻んで入れよう。あ、サラダもいるね…)
サラダ用にレタスやトマトなども入れていく。
ルーははちみつの入った定番のものを購入。もちろん甘口だ。
「ファティマちゃん、カレーはフランちゃんがいるからそんなに辛くできないけど大丈夫?」
「うん、いいよー。辛いのも大丈夫だよー」
それから福神漬とたくわん。牛乳にプリンも買っておいた。
(そうだ、ひき肉も入れてみよう)
精肉コーナーで合挽きひき肉を選び、惣菜コーナーで明日の弁当も入れていく。
ふと立ち寄った調味料コーナーで良いものを発見。お皿に盛ったカレーに振りかける事で辛さを調整できるみたいだ。
(これは良い。これならファティマちゃんも喜んでくれるかも)
カレーにプラスする調味料とハバネロパウダーを両方買ってみた。インスタントコーヒーも買った。
もちろん、雑巾も忘れない。布巾でいいよね?
* *
「「ただいまー」」
ファティマちゃんにも帰宅時の挨拶を教えてある。
「「おかえりー」」
大急ぎで家に帰ると、夕食作りに取り掛かる。
みんな手伝ってくれるとの事なので野菜を洗う係、ピーマンやパプリカを細かく着る係、肉などを炒めていく係など手分けして進めていく。
大きめの鍋に水を入れて沸騰させる。
隣では焼き終わった肉を取り分けると、今度は野菜を煮えにくいものから順に炒めていく。最後に肉を加え軽く味付けする。
お湯が沸くとこれらの具材を投入しアクなどを取って暫く煮る。アクが出尽くしたところでルーを入れる。これで一気に香りが辺りに広がる。美味しそうだ。
ここで更にひき肉も入れる。
途中隠し味としてインスタントコーヒーをスプーン半分ほど投入し馴染ませた後、更に煮込む。良い具合に出来上がって来た。
「本当は24時間置いたほうが美味しいって言うよね」
「明日までは待てないよー」
フランちゃんが悲しそうに抗議してきた。
「ごめんごめん、分かってるよー」
「あ、そうだ。あれがあるじゃないの」
そう言うとカレーを2種類の茶碗に取り分け、うち一つに魔法を掛ける。
「この茶碗だけ24時間進めて、”時間操作”!
よし、まずみんなこの何もしてない方からスプーンで味見してみて」
一見何も起こらなかったようだが、試しに何もしてない方をみんなに味見してもらう。
「うん、お姉ちゃん、美味しいよー」
「「美味しいー」」
「良かった。それじゃ、今度はこの魔法をかけた方を食べて見て」
「「「分かったー」」」
そういうとみんなで一口づつ食べてみる。
「「「「!!!」」」」
(う、美味い。全然違う)
「お姉ちゃん、凄い美味しくなってるよー」
「びっくりだよー」
「本当に美味しくなった」
「よし、それじゃ、この鍋にかけるね」
「「「うんっ」」」
それからご飯をよそってカレーをたっぷりかけていく。
サラダを用意する係とミルクを注いでいく係、テーブルに持っていく係と手分けしてセッティングしていく。
準備を終えるとみんなで席に着いた。
「それでは頂きます」
「「「いただきまーす」」」
「お姉ちゃん、美味しいよー」
「「美味しいー」」
「ほんとだねー」
「ファティマちゃん、このスパイスをかけたら辛さが調整できるみたいだから必要だったら使ってね。ちなみにこのハバネラパウダーは世界で一番辛い調味料使ってるので、かける時は少しづつね。あまりかけると辛すぎて食べられなくなっちゃうから」
「うんっ」
最初はそのまま食べていたファティマちゃんだったが、ハバネラに手を伸ばしちょっとだけかけて一口。それでは足りなかったのか更にかけて美味しそうに食べてた。
あまりにも美味しそうに食べるものだから、わたしとあずさちゃんも試しにかけてみたら、めちゃ辛かった。半分以上食べた後で試して正解だった。少量でこの辛さとは。
残すのが勿体無いので2人共ミルク片手に頑張って食べたよ。ファティマちゃん、恐るべし。
その後プリンを出してあげたら、
「「!!!」」
フランちゃんとファティマちゃんが固まってしまった。
「「美味しい~」」
お腹いっぱいと言っていた2人だったが、デザートは別腹のようで、動き出すと一心不乱に食べ出した。
食後はソファにもたれ掛かって寛ぐ。私は後片付けだ。
片付けながらチラッと見るとフランちゃんのお腹がはみ出てた。食べすぎである。でも可愛かった。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
みんながテレビを見ながらソファで寛いでいる頃…
(さて、私は昨日、遂に然るべき事をしてしまったわけで。必然と言えば必然なんでしょうけど。
もう後戻りは出来ない。人類滅亡回避の為にも進むべきであって、戸惑っている暇はない。分かってはいるんだけどねー、この歳で殺人者なんて…はぁー)
深い諦念に捕らわれて、何をするでもなく何となくテレビの動きを目で追うひなた。
(どうせやらないと行けないのだから、今までの変装とは別の衣装を用意したほうがいいわね。
治療行脚している人物と同じと思われたくないしね。でも、何れバレるでしょうから無駄な足掻きかな…うん、とりあえず明日用意しとこう…うぅ、腰が重いなぁ…はぁー)
溜息ばかりのひなたに周りの子たちは頭に?マークを浮かべるのだった。
「お姉ちゃん…」
「「・・・」」
お風呂などを済ましてベッドに潜り込むと、何故だかみんなが抱きついてきたよ。まぁ、いいけどね。天国じゃー。
「おやすみ~」
「「「おやすみなさい」」」
インドの葬儀関連を修正した為、村でのロビー活動は削除しました。後日に回します。葬式の最中にするものじゃないとの判断からです。
それから時差を考慮に入れてませんでした。その為若干内容を変更してあります。




