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クルバリ村

◆西暦2000年5月7日(日)◆


 今日は学校が始まる前の最後の日曜日。

(今日ぐらいはどこかに連れて行ったほうがいいのだろうか?)

 そんな事を起きがけに考えるひなただった。何分(なにぶん)一人っ子でギリギリの生活を余儀なくされてきたので、こういう事には酷く疎かった。

「みんなおはよう~」

「「お姉ちゃん、おはよう」」

「昨日は布団の事思い出して良かったよー。ちょっと湿ってたから今日帰ったらもう一回干さないとだけどね」

「あはは。でも気づいて良かったよね」

「ほんとだよー」

「私も気づかなくてごめんなさい」

「フランちゃんのせいじゃないから謝らないで。もう可愛いなー」

 思わず抱きしめてしまう。

 

「明日から学校始まるけど、折角の日曜日、どこか行きたいとこある?」

「ううん、私学校が気になるから予習したいな」

「私も温泉入れたから大丈夫」

「そっか。ほんといい子たちだなー。分かった。せっかくだから朝の訓練は近くの川の側まで行ってやろうか」

「「うんっ」」


     *     *


 入口通ると面倒なのでそのまま靴を持って転移。

 早朝の清々しい空気の中とても気持ちの良い訓練をする事ができた。気合が入ってたし、今回はレベルアップは無かったけど、次回には上がりそうだ。

 訓練を終えて朝風呂に入り、まったりとしていると朝食が運ばれてきた。


「うわっ、朝からこの量ってまじか…」

「「す、凄いね…」」

「観光客ってみんなこんだけ食べるの?ある意味尊敬するわー」

「お姉ちゃん、流石に男の人は大丈夫でも女の人は無理じゃない?」

「だよねー」

「それじゃ有り難く頂きましょうか。それでは頂きます」

「「いただきまーす」」


 もうほっぺたが落ちそうなぐらいの美味しさだった。

(もうずっとここに住んでもいいんじゃね?)

 そんな想いが一瞬過()ぎったがマイホームを思い出して考えるのを止めた。

「これほどの美味しさならお腹空いてたらもしかしたらいけるかも?」

「「うんうんっ」」

 食べるのに夢中で返事するのも億劫そうな2人。

「つれないなー」

 それでもやっぱり残してしまったのでアイテムボックスに収納しておいた。

「食器を下げにきたお姉さんが驚いてたねー」

「うん、何だか面白かった」

「ねー」


 宿をチェックアウトし、外へと向かう。

「さて、今日もギルドに行きますか。明日から暫く行けないからね」

「「うん、頑張る」」

「あ、その前に布団干しとこう」

「「今度は忘れないぞー」」

 一旦自宅へ戻り、布団を干していく。念の為、スマホにアラームを夕方5時頃でセットしておいた。


     *     *


 それからギルドに向かい挨拶をした後狩場へ。

 今日の成果は2人ともLv6だった。朝食食い過ぎであまり動けなかったせいである。それでも一応上がったので安堵の息を吐くひなただった。それ以外には、一応格闘術だけがどうにかLv2になった。

 ステータスはこんな感じだ。まぁ、まずまずだろう。

 

 名前:春日あずさ

 年齢:10歳

 レベル:6

 HP:103/103 MP:187/187

 STR:21 VIT:28 INT:31 MND:37

 AGI:22 DEX:31 LUK:48

 能力:算術Lv2 状態異常耐性Lv2 弓術Lv2 短剣術Lv2

    格闘術Lv2

 祝福(ギフト):ひなたの寵愛

 称号:救われし者


 名前:春日フラン

 年齢:9歳

 レベル:6

 HP:112/112 MP:180/180

 STR:27 VIT:39 INT:25 MND:27

 AGI:31 DEX:43 LUK:51

 能力:集中Lv2 警戒Lv1 掃除Lv2 洗濯Lv1 弓術Lv2

    短剣術Lv2 格闘術Lv2

 祝福(ギフト):ひなたの寵愛

 称号:救われし者


 朝食を食べ過ぎた事もあり、今日のお昼はハンバーガーショップにした。

 でもA&VVではなく、今回はモス○ーガーだ。サイトを見ると結構ボリューミーでA&VVほど高くなかったのでここにした。

「はんばーがー?」

「あ、フランちゃん、初めてか。美味しいよー」

「うん、楽しみ」

「あまり手料理出来なくてごめんね。して上げたいけどあまり自信がなくて…」

「お姉ちゃん、それなら今度みんなで一緒に料理しようよ。私も今まで出来なかったからしてみたいんだよねー」

「私も手伝うー」

「ほんと?ありがとう。それじゃみんなで料理上手になろうね」

「「うんっ」」


     *     *


 それから店内に入りメニューを覗き込む。

「うっわ、何このハンバーガーの厚さ。しかもこれで300円ちょっと?」

「あっちも美味しかったけど、これ見るとねー、何だかねー」

「あっち?」

「フランちゃんは今度連れて行ってあげるねー」

「うん」

 3人のやり取りを見て受付のお姉さんもニコニコ顔である。


 それからこの厚さに惹かれて3人共モス○ーズバーガーのセットにした。

 飲み物は私がアイスティー、フランちゃんがオレンジだったのに対し、あずさちゃんはなんとアイスコーヒーだった。

「お、大人だ。大人な人がここにいるよ、フランちゃん」

「かっこいいー」

「えへへー」

 昼食を済ませると自宅へ戻り、みんなは明日に備えて復習を始める。

 私もフランちゃんの側に付いて教えようかと思ったが、お仕事なんでしょ?と言われ、私が見るから行ってきてと追い出されてしまった。ほんと出来た子たちだよ。

 みんなの思いに応えるべく積極的に不法投棄の現場を(こな)して行く。

 自宅に戻ってもまだ勉強中だった。

 

 頑張るみんなを尻目にサイトをチェックしていく。

(うわっ、不法投棄の情報が大変な事になってるよー。やばい、これ、(こな)せるかなー)

「最近出番の無いえっちゃん、このままでは不法投棄の処理が追いつかなくなると思うんだけどどう思う?

 この間の中国農村部のゴミの実態は今の私の能力では処理しきれないと思うのよねー」

《YESマスター。出番云々は余計かと。

 確かに今のままでは行き詰まってしまうでしょう。

 それなら能力創造を使って錬金術を膨大な量にも対応できるようにパワーアップすればいいのです。

 以前にも申しましたが、マスターには基本的に不可能な事は無いのですから。

 敢えて上げるとすれば、不可能なのは死者を蘇らせる事ぐらいでしょうか。何なら試してみましょうか?》

「おぅ、死者の復活なんて無くていいよ。怖いよ、まじで。

 もう余計な事言わないから許して…」

《分かれば宜しいのですよ》

「お、おぅ。えっちゃんの逆襲キタコレ…」

《それから今までは、”空間探査(サーチ)”でゴミや空気中の有害物質などの異物を捉え、アイテムボックスに収納、錬金術で分解と、段階を踏んできましたが、これを一つの能力にまとめて”除染(ディカンタマネーション)”を創造しましょう。

 尚、有害物質には細菌などの微生物や有毒ガス、放射能などあらゆる物質が含まれます》

「おぅ、それは素晴らしい。うん、分かった。それでお願い。

 あ、ちょっと待って。地球熱帯化の対策もしておこう。温室効果ガスを削減する為に、探査内の余剰な二酸化炭素も取り組むように出来る?」

《YESマスター、可能です》

「やっぱ頼りになるなー。流石えっちゃんだよ。もうえっちゃん無しでは何も出来ないよ」

(おだ)てても何もありませんよ》

「ちぇっ」

(あわよくば必殺技的なものをと思ったけど駄目だったかー)

 その必殺技も的確にイメージ出来れば自分で創造できる事すら気づかないひなただった。


     *     *


 みんなが頑張っている姿を見て、それなら私もと発奮し、少し溜まってきた“疾病相談窓口”案件を(こな)す事にした。

 自宅療養中のお嬢様風の女の子。とある病院の幼少の男の子。インドの珍しい病気を患った女の子を治していく。

 インドの女の子は貧しい家庭らしく、病院にも行けず親の手伝いを何とか(こな)している状態らしい。


【時差情報:-3時間30分】日本:14時 トリプラ:10時30分


 やってきたのはインドの東、バングラディッシュを飛び越えた先にあるトリプラ州の州都アガルタラ南部に位置するクルバリ村の貧しい農家。

(インドって不思議な国だよねー。何でこんな飛び自治領みたいになってるのよ。来るのも大変じゃない?

 これバングラディッシュがインドの領地になったらスッキリするかも)

 とんでもない事を言い出すひなた。しかし、その州がそれほど歪な形をしているのも事実だった。

「こんにちわー」

「お姉ちゃん、誰?」

「私はソル。あなたが困ってると聞いて来たのよ?」

「私?まだ大丈夫よ?お手伝いも出来るよ?」

(ぐふっ、まじか。何て健気なの。来て良かったー。この子もお持ち帰りしたろか)

「おぉ、本当に来てくれるなんて。有り難い。

 私はこの子の父親でロヒートと言います。わざわざ来てくださり、ありがとうございます」

 丁寧に頭を下げてお礼を言ってくれるロヒートさん。

 話を聞くと、その子は世界でも数件しか発症例のない樹木病と教えてもらう。

 鑑定では”疣贅(ゆうぜい)状表皮発育異常症”と見られ、樹木状のイボができる病気で皮膚がんなりやすいと分かった。

(せっかく綺麗な顔で生まれたのに…神様そりゃないよ)

 もういない神様に愚痴を零す。

 

 その子の名前はファティマと教えて貰った。

「ファティマちゃん、それじゃせっかくの可愛い顔をそんな病気なんかに負けるのも悔しいのでちゃっちゃと退治してしてしまおうね」

「退治できるの?」

「私は神様からあなたたちを救う為に降りてきた代理人だよ?出来ない事なんてないよ」

「ほんと?嬉しい~」

 キラキラお目々で見つめられると、その破壊力に撃沈しそうだ。

 

 それからファティマちゃんの手を取り身体全体に魔力を放出する。

(イボって事は皮膚病の一種だよね?)

 そう判断して皮膚を重点に走査していく。その根本となる原因箇所を探して。

 やがて、全身のいくつかに異常箇所を発見する。目論見通り皮膚近辺の細胞に集中している。

「オッケー、見つけたよ。それじゃ治療を開始するね。もう少しの辛抱だよー」

「うん、分かった」

 身体に分散する異常箇所を特定しそれを修復するイメージを構築しそれを発動した。

(”絶対回復(エクストラヒール)”!)

 そう唱えると、少女の身体が光だし辺りを光で染めると、身体のあちこちに生えたイボがひとつひとつポロポロ落ちていく。やがて症状は綺麗なままの状態の少女を残した。ベッドの上には無数のイボだったらしき欠片を残して。

「あ、あ、あぁああああああ。お父さ~ん」

「うぅ…まさか、本当に…こんな事が起こるなんて…」

 泣きじゃくる娘を抱え共に涙を流す父親。

(ほっ。ほんと良かったよ。どうなる事かと思った。実は見た目が酷い状態だったから少し自信なかったんだよね)

「あ、ありがとうございました。本当にありがとう…」

「お姉ちゃん、ありがとう。治るなんて思わなかったよ…うぅ…」

「治って良かった。これで本当の美少女になったね、とても可愛いよ」

「ほんと?嬉しい」

 ファティマちゃんに抱きつかれ、手の置き場所に困るがすぐに優しく抱きしめる。

(美少女に慣れてるはずの私が不覚を取るなんて…まだまだだな)


 父親はやがて必死に集めてきたらしいお礼を渡そうとするが、ひなたは断った。

 どう見てもこれを受け取ると少女の今後の生活に支障をきたすと判断したからだ。

「そのお金はファティマちゃんの将来の為に使って下さい。これから先に待つ華やかな未来の為にも」

 そう言うとファティマちゃんは家の奥からある物を持って戻ってくる。

「お姉ちゃん、これあまり上手じゃないけど、私が彫ったお人形なの。お姉ちゃんにあげる」

 それは可愛らしい手彫りの人形だった。

「うわぁ、いいの?とても嬉しいよ。ありがとう。大事にするね」

「うん♪」

「それじゃまたね」

「お姉ちゃん、バイバーイ」

(もう完全に治ったとは思うけど、ちょっと心配だからしばらく様子見しよう)

 それに落ち着いたらまた遊びに来よう、そう思ってとりあえずビーコンをファティマちゃんに設置した。


     *     *


 程なく自宅に帰還したひなたであったが、改めて思い出すとドヤ顔で言い放った自分の最後の言動に赤面し、のたうち回るのであった。

(うわぁ、何言ってんだよ、自分。何が”未来の為にも”だよ。ぐふっ、思い出すだけで精神が削られてくわっ)

 気づくといつの間にか両脇から抱きしめられる心地良さに我に返り、ま、いっかと思い直すのであった。

「ありがとうね」

「「うん」」


 暫くホットミルクを飲んで冷静を取り戻した。

 ぼーっと眺めているテレビの上にはファティマちゃんから貰った木の人形。

「ファティマちゃん、上手だなぁ。やっぱ誰にも才能ってあるのかもね」

「本当だね。びっくりするぐらい上手だね」

「うん、可愛い」

 少々荒削りではあるが女の子とはっきり分かるほどで、その出来栄えには一生懸命に彫ったであろう努力の後が滲み出るようであった。

「明日からの学校は大丈夫そう?」

「ちょっと不安だけどきっと大丈夫」

「なんくるないさ(沖縄方言:何とかなるよ)」

「どこで覚えてきたっ!?」

「テレビでやってたのを覚えたみたいよ」

「くぅー、うちの天使ちゃんがどんどん可愛くなってくよ」

「てへっ」

 バタン…キュー…見事に撃沈された。

 

「おっと、それより何か足りない物とかない?準備のオッケーなの?」

「「無問題(もーまんたい)!」」

「ぐふっ、ダブルパンチとは…もう私のライフはゼロよっ…」

「それじゃちょっと掃除してくるよ。予習でもしてて」

「「私も行くよー」」

「臭いけど大丈夫?フランちゃんにまた”お姉ちゃん、臭い”って言われたらもう立ち直れないよ?」

「お姉ちゃんは臭くないよー。いつも良い匂いだよ。あれはゴミが臭かったんだよ…うぅ、ごめんなさい」

「分かったから悲しい顔しないで。ね?」

「うん」

「もう予習とかしなくても大丈夫?」

「「無問題(もーまんたい)!」」

「もうそれはいいから」

 それからみんなで仲良く世界旅行…こんな世界旅行なんて嫌だ…ゴミ掃除の旅に向かった。


     *     *


【時差情報:-1時間】日本:15時30分 杭州市:14時30分


 最初に訪れたのは中国の浙江省の工業都市からかなり離れた場所にある、杭州市郊外南西に位置する荒れ地。そして目にした物は…

「なっ、こ、これは…こんだけあるとある意味壮観ね」

「「うわぁー…」」

 そこにあったのは車のタイヤ。1つや2つどころではない。数えるのも嫌になるほどの。その数パッと見で万単位は行くのではないかと思えるほど。

 前回の地方農村部もそうだったが、この国は何事もスケールがデカすぎる。あまりにもいい加減すぎて、だんだん腹が立ってくるひなた。

「しかし…これは個別案件じゃなくて、自治体主導レベルだよね、予算を削ってでも対処すべき案件だよね。

 というか、不法投棄者逮捕して厳罰にすべきじゃね?首長は何をやってるのよ」

「お姉ちゃん、どうどうどう、落ち着けー」

「落ち着けー」

「お、落ち着いたから離してー」


「よし、冷静に判断してみよう。とりあえず、これはかなりのゴムチップになるわね。それにホイールが付いたままのもあるし、鉄もかなりの量が期待できるわね」

「うん、凄い量になると思うよ」

「うん」

「掃除するのは決定だけど、そのまま帰るのも癪だね」

「殴り込む?」

 可愛い顔をして恐ろしい事を(のたま)うあずさちゃん。

「不法投棄者に天罰下したいとこだけど、この量だと犯人もかなりいるよね、きっと」

「「そだねー」」

「とりあえず片付けちゃお、タイヤとホイール、その他不法投棄と思われる物、”除染(ディカンタマネーション)”!」

 先日新しく創造した能力でぱぱっと処理する。

「うわぁー。あっと言う間に綺麗になっちゃた。お姉ちゃん、凄ーい」

「かっこいー」

「えっへん。というか、この”除染(ディカンタマネーション)”、チートなんてものじゃないでしょ、これ」

「「うん、びっくりだよー」」


「えっちゃん、この現場の回収前と後の映像をこの紙に印刷してくれる?」

《YESマスター》

「あと、請求書も作ろう。浙江省宛てで。ネットで調べたらだいたい1本処理するのに300~500円くらいかかるみたい。

 えっちゃん、全部で結局何本ぐらいあったの?だいたいでいいよー」

《YESマスター。約56,000本です》

「ま、まじですか…という事は、えっと…」

「300円だと1,680万、500円だと2,800万だよ。お姉ちゃん」

「おぅ、ここにいたよ、算術チートが。

 それじゃ、単価を500円と数量56,000本、合計2,800万円…ここは中国だから、約198万元…いや、ドル建てがいいな…28万ドルと。

 よし、完成。これもって突撃ー、と言いたいところだけどたぶん揉めると思うから2人はお家で留守番ね」

「「分かった」」


     *     *


 自宅に2人を送り届けて、いざ浙江省トップの職務室へ。もちろんアポ無しなので突撃である。

「こんにちわ」

「だ、誰だ。勝手に入ってくるんじゃない。出ていけ!」

「私はソル。神の代理でこの星を任されているものです」

「ソル?あのソルか?」

「えっ?あのソルって」

「それより何の用です?」

(あ、急に態度が変わった。これは何かあったな。どこかで噂にでもなってるのだろうか?)

「このタイヤの山、これを見て何も思わないのですか?不法投棄者を取り締まってはいないのですか?」

「あー、これはかなり頭の痛い問題なんだ」

「というと?」

「我が省にはタイヤをリサイクルできる企業がほとんど無くて、あっても処理能力が低すぎてあの量では無理なんだ」

「なるほどー」

 ぽんっと手を打つひなた。

「というか何で急に態度が変わったの?」

「あ、そうだ。ソルさんですよね?あの?」

「それはどこからの情報ですか?」

「だってほら」

 そう言ってパソコンを開いてみせ、中国版SNSの該当する画面を見せてくれる。そこにはこんなタイムラインが流れていた。


 ”おい、日本に天使がいるらしいぞ。名前はソルちゃんか”

 ”何だ強盗か何かか?小さい女の子が大の男を取り押さえやがった。指名手配犯だと…まじか”

 ”この子めちゃ可愛い。ってかこれ目が見えるようになってるよね?”

 ”さっきまで足引きずってた子が飛び跳ねてる。奇跡だ”

 ”いや、ソルちゃん、この子まじで神様じゃねえのか?この映像が本物ならな”

 ”プギャー、こいつ天罰くらってやがる、ざまぁ”

 そんなのがぎっしりと埋まっていた。


(どうやら中国に私のブームが来たようだな、わっはっはー)

「お、おぅ、まじかー」

「で、このソルさんで間違いないでしょうか?」

「はい、いかにも。というか恥ずかしいですね」

「それで今回はこのタイヤの山の通報があったと言う事で宜しいでしょうか?」

「そうです。それで何で放置しているのか伺いに…理由は納得しました。

 でも取り締まりはしてるんですか?」

「あぁ、定期的に警察官を派遣しているが、隙きを見て捨てているようで…」

「あー、これは捨ててるやつをチョイスして天罰下して晒そうかな。このSNSに」

「そうしてくれるとこちらも助かります」


 お偉いさんからSNSのハッシュタグを教えて貰う。

「それで私のサイトはご覧になりました?」

「はい、映像で病が治癒していく様には感動致しました。」

「なら話は早いですね。小規模の不法投棄なら簡単に処理して終わるのですが、ここまで酷いと無償というわけにはいきませんので相談に参りました。

 端的に言いましょう。タイヤ1本5ドルで処分リサイクルまで請負(うけお)います。

 先程確認したところ約56,000本ありました。占めて28万ドルになります。いかがでしょうか?」

「うーん、約200万元か。もう少し安くなりませんか」

「そうですね。さきほどのお話からそちらも大変困っているようですし、単価4.5ドルでどうですか?」

「178万元…いいでしょう。支払いはどうしますか?」

(うおっ、ここにも算術チートが…計算せずに済んで良かったよー)

「えっと、失礼ですが、いくらトップとは言え、独断してもいいのですか?」

「一応後で会議で報告しますが、皆も頭を抱えておりますので大丈夫です。最悪私の方で捻出しますので」

「おぉ、太っ腹。流石です。

 それで支払いですが、私のサイトでも謳っているのですが、(いず)れ何らかの圧力が掛かった場合、口座だと凍結される恐れがありますので現金のみとさせてもらっています。あ、支払いはドルでお願いします」

「なるほど。了解です。では用意が出来ましたらサイトに連絡すればいいですか?」

「はい、それでお願いします。日時を指定して貰えればその時間に伺います」

「はい、それでは宜しくお願いします」

「了解しました。ではこれで。また何かありましたらいつでもどうぞ。

 ご家族や親類などで闘病している方がいらした場合でも受け付けておりますので」

「それは助かります。ありがとうございます」

 名刺を手渡してから帰還する。

 お返しに頂いた名刺の名前は”浙江省委員会書記 陳建偉”さんとあった。

(中国の役職って意味分からないね、市長みたいに省長とかじゃ駄目なの?)


     *     *


「ただいまー」

「「おかえりー、どうだった?」」

(わお、声がハモってるよ。可愛いなぁ、おい)

「以外と物分りのいい人だった。支払ってくれるって。一応値切られたけどね。

 それよりも中国でうちのサイトが人気みたいよ、ほら」


 ネットを開き、中国で見たSNSサイトを表示し、ハッシュタグで検索した。

「うわぁ、ほんとだー。凄い凄い」

「お姉ちゃん、天使だって」

「フランちゃんもあずさちゃんも天使だよー」

 ぎゅーと抱きしめてあげる。


「お金貰ったらここにも活動報告流そうね。アカウント作っておくか」

 中国国内で流行しているSNSなので取っておく事にした。

「それから帰る途中不法投棄現場にビーコン設置してきたから、次捨てに来たやつは天罰下して、このSNSに晒し者の刑にしようと思います」

「うん、それがいいと思う。でないとまた元の木阿弥になりそうだものね」

「捨てちゃ駄目、絶対」

(フランちゃん、それ何かのCMなの?そうなの?)


     *     *


 3人で仲良く中国版SNSを見ているとけたたましいアラームが鳴る。

「な、な、何この音?何が起こったの?」

「「お姉ちゃん?」」

《マスター、ビーコンを設置したファティマさんに何かあったようです》

「えっ、ビーコンってそんな機能があったの?ってそんな事はどうでいい」

「「!」」

 急いでビーコンの映像を開く。

 

「この糞がっ、人から金を借りておいて返せないだとっ!」

「すみません。もう少しだけお待ち…ぐふっ」

「お父さんっ!」

「待つも何もこんな生活してて返せるわけないだろ。約束通り借金の形におまえの娘貰っていくぞ」

「そ、それだけはごかんべ…ぐは」

「うっせ、死ねや。クズが」

(やばい。やばい。やばい)


「あずさ、フラン、お留守番しててね。ちょっとファティマさんとこ行ってくる」

「「う、うん」」


     *     *


【時差情報:-3時間30分】日本:17時20分 トリプラ:13時50分


 急いで現場に転移し、乱暴にドアを開く。

「あんたたち、何やってるの!」

「何だ、お前は…ほほぅ、こいつも良い値つきそうだな。

 ちょうど良い、おい、こいつも連れてくぞ」

『『『おぅ』』』

「誰を連れて行くって?何が”おぅ”よ、クズ共が」

「言ってくれるじゃないの、お嬢ちゃん」

 ニヤニヤ顔で近づく男。

「ファティマちゃんどこかに隠れてなさい」

「でも…」

「早く。”風弾(エアバレット)”!」

 風魔法を死なせない程度に打ち込む。

『『『『ぐふっ』』』』

 ファティマちゃんが奥に逃げるのを確認する。

 

「くそっ、おい、もうそいつは用済みださっさとやれ!」

 筋肉質なリーダーっぽい男がすぐに起き上がりナイフを手に向かってくる。

「え?用済みってまさか!」

 リーダーっぽい男の腕を捕まえ、捻りながら宙に投げ、腕を離さずそのまま地面に叩きつける。

 ドガッ…バキッ…捻りながらの叩きつけでその腕が折れたようだ。

「ぐっ、ぐわぁああああ」

 そしてすぐに残りの男たちに”縮地(クイックステップ)”で近づくと、レバーに得意のフックを叩き込んだ。

 直ぐ様取って返し、ロヒートさんに駆け寄るが、ぴくりとも動かない。

(まさか…)

 抱き起こそうとすると背中に回した手に温かいものが触れる。

「えっ…」

 よく見ると背中にナイフが刺さっていた。

「あ、あ、あ…」

 急いで回復魔法をかける。起き上がってこようとする男たちには、容赦なく”風弾(エアバレット)”を打ち込む。

(”絶対回復(エクストラヒール)”!、”絶対回復(エクストラヒール)”!、”絶対回復(エクストラヒール)”!…)

 周りが見えなくなるぐらい夢中だった。男たちへは怒りとうざさでいつの間にか手加減が出来ていなかった。

 それからロヒートは起き上がる事は無かった。

「あ、あ、あぁぁあああああ」

(助けられなかった。私がもっと早く来てれば…リーダーっぽいやつをとっとと再起不能にしてれば…いや、最初の一撃で躊躇せず息の根を止めていれば…)


「お姉ちゃん?」

 奥から恐る恐るファティマちゃんが出てくる。

「ファティマちゃん、ごめん。ごめんね。間に合わなかった…」

「えっ、お、お父さん!!」

 ファティマちゃんが父親に抱きついて泣きじゃくる。

 

 静かになったからか、やがて村人たちが集まってきた。

「おい、ファティマ、大丈夫か?あの男たちはどうなった?」

 周りの大人たちが家に入ってきてファティマちゃんに問いかける。

「お、お父さんが殺されちゃった…うわぁーーん」

『うわっ、こりゃ酷い。こいつら死んでるぞ』

『いや、リーダーっぽいやつはまだ生きてるぞ。やばいがな』

『くそっ、ロヒートのやつが、くそっ』

 助けられなかった罪悪感に、ファティマを胸に抱きながら呆然としてると、村人たちが医者を呼んだりしていた。

 結局ロヒートさんは助からなかった。いや、もう鑑定で死亡となっている事は確認しているから分かっていた事だが。


『ファティマはこれからどうするんだ?』

『親戚とかいるのか?』

『いや、2人だけで親戚はいなかったはずだ』

『それじゃどうするんだ?』

『村長、あんたのところで引き取れないか?』

『すまん、皆もそうだろうがうちもギリギリなんだ。どこかに買ってもらうしかないだろう』

『そうだな。うちも無理だ』

(あんたたち子供を売るですって!?何考えてるの!)

 そう言ってやりたがったが、ロヒートさんもそうだったように他の村人も到底(とうてい)他所(よそ)の子を養っていけるはずは無かった。

 

「私が引き取ります。間に合わなかった私のせいでもありますから。

 お金が必要なら少しぐらいは出します」

「お姉ちゃん?」

「ファティマちゃん、一人じゃ辛いでしょ?私の所においで」

「いいの?」

「うん、その前にお父さん、どうにかしないと」

「嬢ちゃん、それならわしらがやっておく。警察にも知らせないといけないからな、一応」

『どうせ、カースト最下位の俺たちの事なんてどうでもいいだろうけどな』

『それなら知らせなければいいんじゃないのか?』

『いや、こいつらの親玉が有力者だった場合、村に被害が出るかもしれん』

『あ、あぁ、そうだな。確かに』

(親玉…そうだ。こいつらの親玉にも天罰が必要だよね。もし殺人とかしてればそいつもこいつらと同じとこへ送んないとね)


「ファティマちゃん、ちょっと後ろ向いててくれるかな?」

「分かった」

 ひなたはそっとファティマを離し、リーダーぽい男に近づく。

「起きろ」


 ズガッ


「ぐっ…くそっ…なっ、お前らっ」

 仲間の状態を見て絶句している。

「誰に言われてやった?」

「言うと思ってるのか?ボケが」

(”静電気(スタティックエレクトロ)”!)


 バチバチッ


「ぎゃっ」

「ゆっくりでいいよー。のんびり行くよー」

(軽めのスローな…”火球(ファイアショット)”!)


 男の頭が火事になる。

「ぎゃー」

(からのぉ、同じく軽めのぉ、”水球(アクアショット)”!)


 ジュッ

「ひぃ、ひぃー。わ、分かったからもう止めてくれ」

「えっ、もう終わり?まだまだあと100個ぐらい色んなのがあるんだけど。全部見たくない?」

 はったりである。

「ナイナイナイ。もう止めてー」


『あ、悪魔だ。悪魔がおる』

『恐ろしやー』 


 男から依頼主を聞き出すと、”空間探査(サーチ)”で肺の中の空気を捉え除去。口と鼻を押さえて窒息死させた。もう遠慮はしない。躊躇など捨てる。

「えっと、これから男たちの親玉に天罰を与えてきます。ここまでしたからには警察とかには届けないほうがいいです。先程のお話だと村に被害が及ぶ可能性が高いと思います」

『そうだな。確かに』

『こんだけの死体があったら誰がやったって話になるよな』

『でも親玉が残ってたら、後から何かされるかも』

『『『うーん』』』

「大丈夫です。その親玉には恐ろしい目にあってもらいますから。これまでの行いによっては本日を持って退場してもらいます」

 村人たちは驚愕の表情でこちらを見る。

 そして、止めとばかりに、背中に氷魔法で作った天使の羽を出し、周りを光で覆う。

「お姉ちゃん、綺麗ー」

「私は神からこの星を任されたソルと言います。今全世界でファティマちゃんのような子を救うため活動をしています。

 同時に子供たちを金の道具にしたり、不幸にさせたりする犯罪者たちへの天罰も行ってます。今回のようなケースがそれに当たります。

 今回、彼らは私を怒らせた。絶対に許すわけにはいきません」

『『『『『おぉー、ありがたやー』』』』』


 ファティマちゃんの父親は亡くなってから24時間以内に火葬にしなければならないらしく、明日の朝、国営の火葬場に移送され荼毘(だび)にふされ、4日ほどかけて火葬されるそうだ。

 4日後に骨を拾いに行き、牛乳と水を混ぜたものをかけて冷やす。専用の袋に遺骨を収め火葬場に13日後まで安置。

 ちなみに女性は火葬場に向かう道の途中で引き返す。火葬場には女性は入れないからだ。

 13日後に骨を引き取り、お坊さんを呼んでお葬式と言う流れだそうだ。

 お葬式が終わると例え遠くてもガンガー(ガンジス川)に流すのだとか。

(インドの葬式大変なのね。長いよ…2周間以上かかるなんて…)


 ファティマちゃんはこのまま朝まで残ると言ったが、ずっと一人にさせるわけにはいかない。食事の問題もある。

 私も残ろうかと思ったが、あずさやフランは明日から学校だ。

 なので葬儀が終わるまでは、夜寝る時だけ私のうちに来る事で落ち着いた。

 

 ロヒートさんをベッドに横にすると、男たちはアイテムボックスへ収納。

『『『『『き、消えた』』』』』

 ファティマちゃんに留守番を頼んで親玉のところへ飛んだ。


     *     *


「ハロー、来たよー」

 ノックもせずにドアを開ける。

「だ、誰だ。貴様は」

「私?そうだなぁ、ロヒートさんの敵討ちってところかしら?」

「なっ、そ、そんなやつは知らん」

「何で焦ってるのかなー?あんたの指図通りロヒートさんはお亡くなりになりましたよ。

 もちろん差し向けた男たちもこの通り」

 男共の死体を目の前に出す。

「ひっ…し、知らん。こいつらが勝手にやった事だ。わしのせいではない」

「この男があなたからの指図だと白状したわよ?簡単に喋ってくれて面白くなかったけどね」

「え、冤罪だ。わしには関係無いっ!」

「あ、挨拶忘れてたわね。私はソル。神からこの星を任されている者よ」

 そう言うと先ほどと同じ天使の羽ときらめく光を出す。

「なっ、ほ、本物?」

「偽物がこんな事できますか?」

 そう言って男たちを目の前から消す。

「男たちは地獄へ送りました。さぁ、次はあなたの番ですよ」

「ま、待て。金なら払う。だから許してくれ」

「はい、謝罪頂きましたー。罪を認めましたわね」

「ぐっ…た、頼む。命だけは」

 鑑定で犯罪履歴を見ると、出るわ出るわ、情状酌量どころか即処刑レベルで。

「うわぁ、あんたかなり悪どい事してきたのね。幼女にまで手を出すとか頭おかしいんじゃないの?」

「な、な、なぜ分かる!?」

「言ったでしょ?私は神の使いよ。分からないはずがない」

 そこから男は慌てて金庫のある方へ走り、開くとお金を抱えて差し出してきた。

「足りないなら用意する。だから命だけは…頼む」

「ちなみに残りはどこから?」

「銀行だ。連絡して持って来させる」

「持ってこさせなくてもいいわ。通帳見せて?いくらあるのかしら」

「あぁ、こ、これだ。カードもやる。暗証番号は”〇〇〇〇”だ。持っていってくれ」

(ラッキー。犯罪者のお金なら貰ってもいいよね。有効活用しないとね)

「うん、分かった。それじゃさよならー」

「なっ、話が違…」


 ザシュ

 

 男をアイテムボックスに収納すると、散らばったお金と通帳、カードも収納した。

 他にも売り物になりそうな物を次々アイテムボックスに放り込んだ。

(これから子供たちを救うのにお金はいくらあっても足りない。背徳感がめちゃするけど…うん、仕方ないよね。どうせ汚れたお金だし、仕方ない…仕方ない。よしっ)

 それから適当な大人の男の姿に変身して、国内の銀行を周り、口座のお金を根こそぎ貰ってやった。ついでにドルにも両替していく。その繰り返し。


(村にいくらかお金を置いておこう。いくらぐらいにするべきかな?

 えっちゃん、インドの農村部の平均月収ってどれくらい?)

《YESマスター。ネット情報だとおよそ約11,000ルピー、日本円で約17,000円ほどです》

(やっす、まじかー。それだけで生きて行けるのか。いや、贅沢とかは出来ないだろうけど、ちょっと驚いた。

 それなら20万ルピーぐらいでも置いておけばいいかな?)

《それぐらいで宜しいかと》


     *     *


 無事目的を果たすと村に戻った。

「あ、お姉ちゃん、良かった。戻ってきてくれた」

 抱きついて涙を流すファティマちゃん。

(うん、この子もやはりいい子だ)

「あのぅ、それであちらのほうはどうなりましたかの?」

「あー、あいつ相当酷い事してたみたいね。命乞いをしてきたけどもちろん天罰を落としてきたわ。見る?」

「い、いえ。そうですか。それなら安心ですな」

『『『『『ほっ』』』』』

「私、明日は他の子の学校が始まるからここに残れないけど、夕方ファティマちゃんを迎えて、朝早くに自宅に届けるようにするわね。

 葬儀が終わるまで、昼間はこの子の事頼める?」

「はい、もちろんです」

「食事は朝夕は私の家で出すし、お昼もこちらで弁当用意するから食事の面倒はいいからね」

「はい、助かります」

「それからこれ、あいつが悪い事をして稼いできた金の一部よ。葬儀代とか村の為に使って。足りなかったら言ってね」

 そう言って20万ルピーを村長に手渡す。

「こ、こんなに…いいのですかな?」

「良いわよ。これまでファティマちゃんを見守ってくれたお礼と思ってくれればいいわ」

『『『『『ありがとうございます』』』』』


「ファティマちゃん、どうする?もううちに来る?」

「わ、私、やっぱりお父さんと離れたくない…一人にできないよー」

(うーん、これは難しい問題だな。私にも分からないや…

 あ、待って。それならロヒートさんごと夜間はうちで預かるかな。

 あずさちゃんたちには見せたくないから空いている部屋にロヒートさんを寝かせよう)

「分かった。ファティマちゃん、一人だと私が心配だからお父さんも一緒に連れて行こう。朝になったらまた2人を送っていってあげるからね」

「うん、それなら一緒で安心だよ。ありがとう、お姉ちゃん」

「はーい」


「そういうわけで夜間は私の家に寝かせます。朝連れて戻りますので」

「わかりました。ファティマの事宜しくおねがいします」

「えぇ、任せてちょうだい」


     *     *


 それからロヒートさんを連れて自宅の空き部屋に直接移動する。旅用のベッドを取り出しロヒートさんを寝かせると、

「それじゃ、ファティマちゃん、私の妹たちを紹介するね。一緒に来て」

「うん」

「あ、その前にあなたとお父さんをちょっと綺麗にしておくわね」

「ご、ごめんなさい」

「いいのよ。分かってるから。”清浄(クリーン)”!」

「わぁ、お洋服も綺麗になった」

「でもその服ちょっと破けたりしてるわね。明日ちょっと買い物に行こうね」

「う、うん」


 2人で階段を降りていくとファティマは周りをキョロキョロしだす。

「危ないから階段では足元ちゃんと見てねー」

「うん」


 と、そこへあずさちゃんとフランちゃんがやってきた。

「お姉ちゃん、ファティマちゃん、大丈夫だった?」

「だった?」

「うん、ほらこの通り。でもお父さんは間に合わなかった。

 そのお父さんは今夜だけうちで預かる事になったからね。ごめんね」

「「ううん、分かった(よ)」」

「ファティマちゃん、オレンジジュース出してあげるよ。こっち来て」

 そう言ってファティマの手を引いて居間に向かうあずさちゃん。

 フランちゃんはそれに気づいて冷蔵庫からそれを持ってきてくれた。

(うちの子はみんな優しい子で嬉しいよ)


 それから言葉が通じないのでいつもの”言語把握”を付与した指輪を作ってファティマちゃんの指に嵌めた。

 それと同時に言葉が通じてびっくりして口を開けたままのファティマちゃんに思わず笑ってしまった。


     *     *


 それからお布団を取り込んだり、まったりした後、4人仲良く(さち)お姉ちゃんのとこへ行って夕食を取った。

(さち)お姉ちゃん、来たよー」

「あら、また増えたのね。どこから拾ってくるのかしら?」

「そんな悪い人みたいに言わないで下さい」

「ふふ、冗談よ、冗談」

 それから沖縄そば定食2人前とAランチ、唐揚げ定食を頼んだ。

 

 最初は、

「凄い料理。た、食べていいの?」

 おどおどしながら聞いてきたが、食べ始めると猛烈な勢いで食べ始めた。

(ちゃんとした食事して無かったんだろうなぁ)

 食べ零しの世話などをしながら仲良く食事を済ませた。

 途中足りなさそうだったのでCランチを追加しておいた。

(危なかったー。こんなに食べるとは)


 それからお家に帰り、

「ファティマちゃん、これからうちの子にしようと思うんだけど、それでいいかな?」

「いいの?私なんかで」

「ファティマちゃん、いい?子供に駄目な子なんていないんだからね。もっと自信持ちなさい。そして将来お父さんに自慢できるぐらいの良い女の人になるのよ。見た目的にもお仕事的にも色んな意味でね」

「うん、ありがとう。お姉ちゃん」

「みんなもこれからファティマちゃんの事、宜しくね」

「宜しくお願いします」

「「うん、宜しくね」」


「ファティマちゃんっていくつ?誕生日は」

「今年で9歳になります。12月23日です」

「あ、フランちゃんと一緒だね」

「そうなの?」

「うん、私もう9歳になっちゃったから少しだけお姉さんだけどね」

 胸を張って自慢するフランちゃん。可愛い。

 

「ファティマちゃん、向こうでは学校に行ってた?」

「ううん。みんなに見られたくなかったから行かなかった」

「それじゃもう大丈夫だよね。お父さんの事が終わったらここの学校に行こうね」

「学校楽しみー。ありがとう、お姉ちゃん」

「うんうんっ」


 ファティマちゃんの洋服が無かったのでフランちゃんのを貸してもらい、明日買ってくる事にした。

 それからみんなで(ファティマちゃんは念入りに)お風呂に入り、今日はファティマちゃんと寝た。

 あずさちゃんとフランちゃんが気を利かせてくれて、2人はあずさちゃんの部屋で寝ると言ってきたのだ。

「分かった。明日から学校だから早めに寝るのよ」

「「うん」」

 布団に入ると思い出したのか、また泣き始め、暫く抱きついたまま離れなかった。泣きつかれて眠るまで優しく頭を撫でてあげた。

タイトルをアガルタラからクルバリ村に変更しました。村の名前付けてなかったけど、今後必要になるかもと命名。それに伴っての変更となります。

インドの葬儀の仕方を調べたら思い切り間違えていたので修正しました。

それから時差を考慮に入れてませんでした。その為若干内容を変更してあります。


ブックマーク2件目頂きました。夢のようです。ありがとうございました。

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