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副産物

◆西暦2000年5月3日(水)◆


「ふふふ、朝起きたら天使が2人いる幸せ。最高じゃ~」

「お姉ちゃん、ありがとう」

「ふぇっ、起きてたの?あずさちゃん。やだなぁ、もう」

「ふふ」

 朝っぱらから自爆してしまい、照れまくりなひなただった。

「んー、お姉ちゃん、おはよー」

「「はい、おはよう」」

 思わずフランちゃんの乱れた髪を治しながら愛でてしまう。


 みんなで顔を洗い、歯を磨いて、身支度をする。

「やべぇ、何か、無茶苦茶楽しい」

「ふふ」

「?」


 朝ご飯は頑張って作ったよ。

 ご飯を炊いて、鮭と卵焼き、ウインナー。それから味噌汁(インスタント)と納豆。飲み物はミルク。

(うぅ、流石に味噌汁までは時間なかった)

 今日は朝から教育委員会に行ったり、フランの洋服などを買いに行ったり、ちょっと忙しい。

「あれ?フランちゃん、8歳って事は小学生だよね?」

「たぶん、3年生かなー」

「だよねー」

「えっちゃん、昨日言うの忘れてたけど、フランちゃんも戸籍操作…ゲフンゲフン追加してくれる?春日フランで。

 何か柔軟剤の入った洗剤みたいな名前に聞こえなくもないね」

《YESマスター。既に昨夜のうちに終わらせてあります》

「何とっ。さすがえっちゃん。私と同じでやれば出来る子だったのね」

《お褒めの言葉を頂き、痛み入ります》


「フランちゃん、今日はあずさちゃんの小学校の手続きに行くんだけど、フランちゃんも学校行きたい?いや行かないと駄目か、流石に」

「学校って何?」

「同じお友達がたくさん集まって、一緒にお勉強する事だよ」

「お友達いっぱいなの?私も行くー」

「お友達になれるかはフランちゃんの頑張りどころかなー」

「うん、私頑張るよ。友達100人作れるかなー」

「何か、そんな歌あったね」


「よし、それじゃ、今日はみんなで一緒にお出掛けしようね」

「「うんっ」」

「そうなると、その後、フランちゃんの机とかも買いに行かなくちゃねー」

「あ、そっか」

「?」


「あ、その前にフランちゃんにも私の事説明しておくね」

「お姉ちゃんの事?」

 それから昨日あずさちゃんにした話をフランちゃんにも話していく。映像も見せながら。

「何だか良く分からないけど、お姉ちゃん凄いの?」

「まだ早かったかー」


 まだ時間があったので、各部屋を回って“清浄(クリーン)”を賭けた後、3人で軽く雑巾掛けをして時間を潰した。あまり汚れてないので本当に簡単にだ。雑巾掛けなんて要らないかもだけどね。気分の問題だ。


「それじゃ、そろそろ行こうか」

「「うん」」

「“隠密偽装(ディスガイズ)”!」

 もちろん、グラマラスな女性になってからである。

「ぐらまらす?」

「心の声を聞くんじゃありません」


     *     *


 準備を整えて市役所に行き、教育委員会の場所を教えてもらって、みんなでトコトコ移動する。

「すみません。この子たちの入学の手続きをお願いします」

「はい、こちらに必要事項を記入してお出し下さい」

(うっわ、めちゃ事務処理ルーチン。やる気あるのか?)

 色々と質問に答えながら手続きを進める。どうやらあずさちゃんが小学校5年生、フランちゃんは3年生への編入となった。

 それから体操服や水着など学校指定ものの販売店を教えてもらい、ランドセルも指定店は無いとの事だったので合わせて買いに行った。

「あとすみません。この子は外国からの養子なので、この髪の色とかは地毛ですので学校の方にも言っといてもらえますか?」

「なるほど、分かりました。」

「あと、1、2年生の教科書とかあれば一緒に購入したいのですが。

 いきなり3年生の授業について行けるか心配なもので」

「はい、それでは暫くお待ち下さい。用意してきますので」


 その後学校に連絡し、面談を行った。入学日を決めるのだ。


「さて、学校は来週月曜日からみたい。その間どうしようか」

 一通り買い物を済ませて自宅に戻ってきた。

「分かんない」

「だよねー」


「それじゃ、昨日みたいにフランちゃん用に学習机とか買って帰ろう。」

「「うん」」

 昨日を同じルートを通り、学習机一式と洋服類を購入して帰宅した。スマホはまだ早いと判断し見送ったよ。


     *     *


「「「ただいまー」」」

(おっ、フランちゃんも出来る子だったか。よしよし)

 思わず頭を撫でてあげた。


「とりあえずサイトをチェックしてみよう」

 その後暫く休憩した後、3人で仲良くソファーに座って、サイトを開く。

「あ、あずさちゃん、これって同じ病室の子たちの親御さんみたいよ」

「本当だ、みっちゃんとこだ」

「どれどれー」

【昨日は娘、美津子の(やまい)を治して頂き、ありがとうございます。

 つきましてはお礼も兼ねて是非お会い出来ればと思いまして(菅谷恵)】

「あ、他の子の書き込みもあるね」

「ほんとだー」

「というか昨日はバタバタしてて見てなかったね」

「うん」

「よし、それじゃ返事書くけど、2人も来る?」

「みっちゃんに会いたい!

「お姉ちゃんと一緒に行くー」

「おぅ、()い奴じゃ」


 それからそれぞれの自宅へお邪魔する旨の返事をし、待ち合わせ時間を調整した。他と被らないように。

(ダブルブッキング、駄目。絶対)

 4件のうち、2件が今日の午後でも良いとの事で早速アポを取った。

 1件が午後一。もう1件が夕方6時となった。

 ちなみに残り2件が明日の朝10時とお昼。お昼のアポは食事を一緒にとの事だった。


「やっぱり、きちんとお礼をしたいって、良い子を持つ家庭も立派な方なんだろうなぁ」

「うん、みんな優しい子だったよ」

「会うのが楽しみだね」

「「うんっ」」

 何故か一緒に返事するフランちゃん。可愛いからいっか。可愛いは正義だものね。


「そうだ。せっかくだから、この家でもインターネット使えるようにしよう。

 えっちゃん、この家ってネット回線繋がってるか分かる?」

《YESマスター。創造主様により、この家を設置する際、回線までは宅内まで引いてあります。あとはプロバイダとの契約のみとなります》

流石(さすが)、じっちゃん。分かってるねー」

《じっちゃんですか…それはちょっと…》

「いいの、いいの。どうせいないし。さてと…」

 ネットでプラバイダを探し、契約の手続きを行う。

 1週間で契約書類が届くのでそれに必要書類を添付して返信すれば、更に1週間程で開通するそうだ。回線工事が無い分、工期が短縮されたのだろう。

 その後、特に書類に不備もなく、2週間後、無事に開通となる。


     *     *


 それからお昼を(さち)姉ちゃんのとこに食べに行った。お披露目である。

(さち)姉ちゃん、こんにちわー」

「「こんにちわー」」

「あら、今日は可愛らしい子がいっぱいね」

「うん、私の娘なんです」

「はいはい、それじゃ好きな席に座って」

「うぅ、隙がない。流石お姉ちゃん」

「ふふふ、そんな見え透いた嘘に騙される人なんていないわよ」

(いや、いるんですよ、現実に。違う世界ですけどね)


 席に座ると、案の定良く分からないと言われたので、Aランチ、てびち、沖縄そばのそれぞれの定食を頼んで、みんなで少しづつ食べる事にした。ごーやーとふーちばーは確実に拒否されると思ったので除外したよ。

 Aランチはみんなにも好評で、てびちは見た目のグロテスクさからあまり手を付けてくれなかった。美味しいのに。

 沖縄そばも食べたとたんおかわりをせがまれ、これだけは3人で完食できた。

 後はもちろんお持ち帰りだ。

「お姉さん、やっぱりAランチは偉大だね」

「「ごちそうさまでしたー」」

 そう言って親指を立てながら店を後にした。後ろから笑い声が聞こえたけど気にしない。


「どう?美味しかったでしょ?私のお気に入りの食堂なんだよ」

「うん、とっても美味しかった。沖縄そば、また食べたい」

「えーらんち?も美味しかったよ」

「うんうん、喜んでくれてお姉さん嬉しいよ」

 頭を撫でながら自宅へ帰る。


「それでは、あずささん、みっちゃん訪問と相成りましょう」

「良く分からないけど、うん」

「うんっ」

 フランちゃんはいつも元気だ。


     *     *


 約束の場所の近くに転移する。そして約束より早めに自宅の玄関先へ。

 そこには女の子がソワソワしながら待っていた。

「みっちゃん!」

「あずさちゃん、いらっしゃい♪」

 お互いの姿を見つけると嬉しそうに手を取り合う。

「あずさちゃん、来てくれてありがとうね。もうお父さんもお母さんも落ち着かなくて大変なのよー」

「うふふ、そうなの?みっちゃんが嬉しそうで良かった」

「うん、嬉しいんだけどね。昨日からずっとひなたお姉ちゃんの事ばかり聞くものだから、流石に今日はもう相手をするのに疲れたので家の前で待っていたのよー」

「そうなんだ。だからみっちゃん一人なのね。納得だよー」

「そうなのよー、ふふふ」

「うふふ」

 完全に治癒したみたいね。私も安心したよー。

「あ、ひなたお姉ちゃん。ごめんなさい、あずさちゃんばかり相手にして」

「いいのよ。あ、この子私たちの妹だけど、一緒にいいかしら?フランって言うの」

「うん、大丈夫だよ。それじゃ、あがって。フランちゃんもどうぞー」

「「「はい、お邪魔しまーす」」」


「失礼しまーす」

「「お邪魔しまーす」」

「あら、いらっしゃい。お待ちしてましたわ。どうぞ上がって」

「はい」

「私のお母さまなの」

(お母さま?もしかしてお嬢様?建物も立派だったしもしかするかも?)

「お母さんかー、いいなぁー」

「?」

(あ、フランちゃんには禁句だった。どうしよ)

『あずさちゃん、フランちゃんがいるからお母さんとかの話は…』

『あ、ごめんなさい』

 思わず、フランちゃんを抱き寄せるあずさちゃん。

「お姉ちゃん??」


「やぁ、いらっしゃい。待ってたよ」

 優しそうな男の人が出迎えてくれた。

「お招きありがとうございます。ソルです。

 本来ならば私の本性をお見せしない決まりですが、美津子さんが心優しい性格でしたので、敢えて隠す事もせず参りましたが、くれぐれも私の容姿等についてはご内密に戴ければ幸いです」

「これはご丁寧にどうも。もちろん私共の宝である美津子の命を救っていただいた恩はそのような事ぐらいでは到底お返しできませんので、ご安心下さればと思います。

 そして改めまして。美津子を救って頂きありがとうございました。この御恩は決して忘れません」

「それに関しては美津子さんの優しさによるものが大きいです。もちろん、病室にいた6人の子供たち全て優しくていい子でした。

 ですから、今回の事はこのような素晴らしい子を育ててくれたみんなさまの愛情の賜物です。

 それだからこそ、私も手を差し伸べたのですよ」

「そう言って貰えるとこちらも大変嬉しく思います」

 みっちゃんはあずさちゃんの手を握りながらテレテレである。

「6人と子供のうち、あずさに於いては故あって私の家族となりました。これからも末永く仲良くして貰えればと思います」

「こちらこそ宜しく頼む。あずさちゃん、これからも美津子の良い友達のままでいてほしい」

「はい、もちろんです」

「「ねー」」

「他にも病気で困っている方がいれば紹介して貰えると嬉しいです」

 そう言って名刺を何枚か渡す。

(うぅ、固い喋り方疲れるー)


 それからフランちゃんの事を紹介すると、みっちゃんがあずさちゃん、そっちのけで構いだしてちょっと大変だった。

 フランちゃんの可愛さの前には仕方ないのかもしれないけどね。

 そして仲良く団欒(だんらん)をした後、お礼にと紙袋を持たされてお(いとま)する事となった。

 もちろんあずさちゃんは早速みっちゃんに現在沖縄に住んでいる事などを告げて、スマホのアドレスなどを教えて帰宅した。


「うぅ、ちょっと疲れた。いや、まじ疲れた。

 みっちゃんたら、結構お金持ちだったのね」

「私もびっくりしたよー」

「びっくりー」


  何となく想像はしていたが、帰ってきて紙袋を開いて更に驚いた。

「1万円札が1万枚入ってる…一億円。まじかー」


     *     *


 夕方の待ち合わせまでまだ大分時間が余ったので、私の仕事を見せる意味合いもあって不法投棄の現場を見せながらそれらを処理して回った。

「お姉ちゃん、臭い」

 勘違いしないでほしい。私ではない。不法投棄の現場がである。

 フランちゃんには主語の重要性を(とく)と説明しておいたよ。


 夕方、約束の時間に待ち合わせ場所に行き、あずさちゃんとの再会を喜ぶ様子を愛でながら、家族総出の歓待を受け、お礼の品を貰って帰ってきた。

 今回はみっちゃんほど裕福ではなかったようで、1万円札が300枚入っていた。

 ありがたく頂戴しておいた。

 もちろん、病気で困っている方の紹介をお願いし、名刺を渡しておいた。


 今日は懐がホクホクなので、夕食はみんなで焼き肉に行った。

 食べ放題のとこだ。ま、少女3人に食べ放題などあまり意味はないが。

 それでも3人で目をキラキラさせながら好き放題、選び放題楽しんだ。


 まさか、あの時、ついでで行った結果が思わぬ結果をもたらすとか、思わぬ副産物の一日であった。

 お陰で大分余裕ができた。


 もう動けないほど喰いまくった3人は何とか帰宅し、風呂に入る時にはフランちゃんが寝落ちで溺れたりしながらも、どうにかベッドに潜り込む事ができた。

後日必要となった為、ネット回線申し込み関連をこの話に追加しました。

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