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活動開始(日本版孤児院編)

◆西暦2000年4月29日(土)◆


「今日も爽やかな朝だー、おはようー」

 軽く背伸びをして洗面所に向かう。日課の鍛錬後、身支度を整えながら、

「よし、今日の朝食は軽く料理してみよう」


 キッチンに移動し、お湯を沸かすべくやかんに火をかける。

 冷蔵庫から卵とベーコンを取り出し、フライパンで炒め、塩コショウで味付け、インスタントのカップスープをコップに入れる。

 別のコップにはココアをスプーン3杯ほど入れておく。

 冷蔵庫からリンゴを取り出すと半分だけお皿に並べ、ベーコンエッグの乗った皿と一緒にテーブルに持っていく。ついでにパンも出す。

 お湯が沸いたのでカップスープとココアの入ったコップに注ぎ料理の完成だ。


「うーん、これって料理って言っていいのか?ま、いいや、いただきまーす」

 テレビを見ながらのんびりと朝食を味わう。


《料理がLv4に上がりました》


「…嫌がらせかよっ」

(あ、昨日フランちゃんとこで料理したからだなきっと、うん、間違いない)


 さて、そろそろまちちゃんに会いに行こうかな。

 今日行くのは東京23区外にある閑静な住宅地の一角にある児童養護施設。所謂日本版孤児院。


 日本での本格的な活動開始第一弾だ。

 本来ならそこまでするわけにはいかないが、今回は何かお土産を持っていこうと思っている。

 もちろん依頼人であるまちちゃんや子供たちの笑顔が見たいという下心もある。

 下心と言っても変な意味じゃない。あくまでも妹的な存在から慕われる事を想像した上での下心だ。勘違いしないでよね。

 もちろん変装をしている。見るからに怪しいが、これが活動衣装だから仕方ない。

 それに今回から広く普及する為にも、神様からの代理人として確実に認識してもらう必要があるので普通に歩いていったりしない。

 そう子供たちの見える位置に転移して普通じゃないと認識させるのだ。できれば大人も一緒にいた方がいいけどね。


「よし、えっちゃん、あえて子供たちから見える場所に転移したいけど、子供たちの近くに大人はいる?」

≪はい、子供たちを見守っているらしき大人が2名います≫

「それじゃ、転移して誰にも見られなかったら悲しいから、転移直前に何かその場所で転移っぽい音とか出せる?」

≪了解しました。“空間操作”でその場の空間を振動させてから転移しましょう≫

「それって音だけだよね。振動で子供たちに影響とかないよね?」

≪はい、すぐ上の手の届かない空間を操作しますので大丈夫です。≫


「分かった。それじゃ行くよ」


     *     *


 ブゥン


 突然の音に遊ぶ手を止めてその場に一斉に視線を向ける子供たち。

 数瞬後、何もなかった場所に突然一人の少女が現れ、驚愕に目を見開く子供たち。


『キャッ』

『な、何だ!?』

『姉ちゃん、誰だ!?どこから現れた!』

『みんなさん、危ないですから中に入りなさい』

『えっ、えっ』

『そこ何も無かったよね?え?』

『うわーん』

 阿鼻叫喚とはこういう事を言うんだろう。

(ちょっとやりすぎたかも。やはり格好がいけなかったのかな?ま、仕方ない)

 少なからずダメージを受けるひなた。


「と、取り合えず落ち着こうか」

 若干取り乱しながらそう言うと、一斉に固まって警戒を強くする子供たち。

「私はソル。まちちゃんから救援依頼を受けてやってきました。まちちゃんはいますか?」

『まち?』

『誰かまちを呼んで来い!』

『まちちゃん、悪い人とお友達なの?』

(悪い人じゃないよー)

 子供たちが騒ぐ中、一人の女の人が一歩前に進み出る。

「あの、私はこの施設の主任をしている林と申します。

 一体まきちゃんとはどういったやり取りがあったんでしょうか?」


「そうですね。まず先程の私の登場について、どう感じました?」

「手品か何かでしょうか。いきなり現れて驚きました」

「手品ではありません。現実です。転移魔法とでもいいましょうか。直前まで沖縄にいました」

「めぐ姉ちゃん。こいつ頭おかしいぞ。警察に連絡だ」

(ひ、酷い。変人扱いかよっ)


 その時奥から女の子が現れる。

『おい、まち、お前に変なねえちゃんが会いに来てるぞ。誰だこいつ?』

「まちちゃん?ソルです。ご依頼ありがとう」

「ソルさん?来てくれたの?」

「うん、絶賛変質者扱い中だけどね」

 まちちゃんは周りを見回し首を傾げている。


「先ほどのお話の続きですが…。

 確かに信じられないでしょうね。どうしたら信じて貰えるんでしょう。

 …これならどうです?」

 アイテムボックスから鉄塊を取り出し、地面に落とす。


 ドンッ


 それからトンカチを取り出し、鉄塊を叩く。


 カンッ、カンッ


 それから(おもむろ)に手のひらを鉄塊に突き出すと、錬金術を使い、それを色々な形に変えていく。

 最初は丸や四角、次第にウサギなどの動物に変化させていく。

 最後は鉄塊に戻すと同時にアイテムボックスへ収納し消して見せる。


『おぉー』

『わー、凄い』

『キャッキャッ』

「凄いですね、どんなトリックなんでしょうか?」


 ガクリ

(だから手品じゃないよー)

「まだ信じられませんか。

 ここまで怪しまれているなら、もう隠しておく必要もありませんね。正体を明かしましょう。

 これ名刺です。後でゆっくりと目を通して下さい」

 そう言うと名刺を林さんに手渡す。

「で、私ですが。信じて貰えないかもしれませんが、神からこの星の管理を任されているソルと言います。

 今日はまちちゃんからの依頼でまちちゃんのお友達の救う為に来ました」

「な、何を言って…」

 林さんも警戒度MAXである。

『やっぱり警察呼べ』

「ソルさん何言ってるの?」

(まちちゃん、お前もかっ!)

 そうこうしていると施設長が帰宅し、林さんが事の起こりを説明してくれる。

 お互いに紹介しあって、私とまちちゃんも含めてこれまでの事を説明する。


(うーん、異世界の孤児院ではここまで警戒されなかったのに何で?あ、派手に登場したからか、うん、納得)

「では、最後に反論できないほどの証拠をお見せしましょう。

 林さん、まちちゃん、ちょっといいですか?」

「はい」

「うん、何?」

 私は2人に近づくと、一瞬でホノルルへと転移する。


【時差情報:-19時間】日本:9時 ホノルル:前日の14時


「え!?」

「キャッ」

 ジェラートのお店の近くだ。

 固まっている2人を連れて店に入る。そこでケーキを適当に人数分注文し受け取ると、店から離れて元の場所に戻る。


     *     *


『あ、戻って来た』

『急にいなくなっちゃったからびっくりしたよー』

『まちちゃん平気?』

 驚く子供たちの元へ向かい、買ってきたケーキを渡す。

「これみんなで食べて。2人を連れてアメリカまで行って買ってきたんだよー」

『アメリカ!?』

『アメリカって遠いの?』

『当ったり前だろー、そんな事も知らないのかよ』

『ケーキ?』

『めぐ姉ちゃん、ほんとか?』

「う、うん」

「外人さんがいっぱいいたよー、凄かった。ケーキもいっぱいあったよ」

 まちちゃんは大はしゃぎである。


「これで信じて貰えます?」

「はい。まだ納得はできませんが」

「とりあえずでケーキでも食べながらゆっくり話しませんか?」

「はい、分かりました。どうぞ、こちらです」

 林さんや施設長、子供たちについていく。


 食堂らしき場所につくとケーキを配り、アイテムボックスから飲み物を取り出すとそれもみんなのコップに注いでもらう。

『な、ねえちゃん、どこから出したの?』

「神様の代理人だから何でもできるんだよー」

『な、“だいりにん“って何だ?』

「神様の代わりにお仕事をする事だよ。お仕事の内容は、この星を見守る事ね」

「そうなんだ。何かすげぇな。もう食べていいのか?」

「いいよー、どうぞ召し上がれー」

『『『『『いただきまーす』』』』』

 少しは警戒感も解けたっぽいね。


 全員が食べ終わった頃を見計らってまちに本題の話をする。

「それじゃ、まちちゃん、依頼のあったさっちゃんやあきちゃんという子のとこに連れてってくれる?」

「うん、めぐ姉ちゃん、いい?」

「うーん」

 林さんはまだ信用出来かねているようだ。

「危険な事とかご迷惑になるような事は決してしませんから会わせてもらえませんか?」

 何とか了承を貰い2人の元へ向かう。


「さっちゃん、あきちゃん、ソルさん連れてきたよー」

 部屋に入るなりまちちゃんが声をかける。2人は咳き込みながらまちちゃんを見る。体調が優れないのか顔色が悪い。

「まちちゃん、ほんとに連れてきたんだ。びっくりだよー」

「だよねー」

「うん、私も来てくれると思わなかった」

 そんな感じで和気あいあいと話す3人。


 2人を鑑定してみる。

(風邪かと思ったけど違うみたいね)

「RSウイルス感染症ですか。熱もあるようですね」

「分かるんですか?」

 林さんが驚いている。施設長は相変わらず現実を受け止められないのか固まったままだ。

「このウイルスは感染力が高いので、まずはこの部屋を除菌しますね」

 そういうと“清浄(クリーン)”で部屋の中を綺麗にし、”空間探査(サーチ)”で空気中に漂うウイルスを捉えるとアイテムボックスに収納、錬金術で元素単位まで分解した。

「わぁ、何か、部屋の中が綺麗になったね」

「ほんとね、凄いわ」

 まちちゃんと林さんが驚いている。

 ひなたをその様子を横目に見ながら2人に近づき、その手を取って“治癒(ヒール)”と“状態異常回復(キュア)”をかけた。

 2人を光が一瞬覆うと顔色がみるみる良くなっていく。

「えっ、身体が軽くなったよ。胸も苦しくない。顔も熱くないよ」

「私も。急に元気出てきた」

「さっちゃん、あきちゃん、本当?直ったの?」

「「うんっ」」

「し、信じられません…」

「そんなバカな事って」

 林さんも施設長も驚いている。


「他の方にも感染しているかもしれないので、施設長さん、食堂にみんなさんを集めてもらえますか。職員もお願いします。まとめて診ますので」

「は、はい」

 そういうと施設長は出て行った。


「それじゃ、林さん、私たちは他の部屋を回って除菌していきましょう」

「はい、宜しくお願いします」


 除菌が終わるまで子供たち3人は部屋に残ってもらい、林さんと順に回っていく。

 全ての部屋の除菌が終わると3人の子供たちを連れて食堂へ移動する。

 施設長に全ての部屋の除菌が完了した事を報告し、残りの子供たちも診ていく。

 初期症状の子が何人かいたが問題無く治療できた。


 一人だけ松葉杖をついている子がいたので、最後に診る事にした。

 元々幼い頃から左足に障害を持っているそうで、左足を引き摺って近寄ってくる様は痛々しかった。

 子供たいが見守る中、その子の治療が始まる。

 手を取って障害のある個所をサーチする。見つけた。

 いつものように障害を正常に戻すイメージで“治癒(ヒール)”をかける。

 遺物が原因ではないので“状態異常回復(キュア)”はかけない。

 するとその子の身体が他の子よりも輝いて消えた。


「それじゃ、松葉杖預かるのでちょっと立ってみようか」

 松葉杖を林さんに渡し、その子の手を取って立ち上がらせる。そして手を放し、歩くように促す。

 恐る恐る一歩づつ足を前に出し歩き始めると、

「あ、歩ける。先生、歩けるようになったよ…うわーん」

 施設長に抱き着いて泣きじゃくる男の子。

 施設長も林さんも驚きで固まっていたが再始動した。

「直くん、ほ、本当に治ったのね。夢じゃないのね」

「うん、うん」

 施設長も涙を流しながら直くんを抱きしめる。

「直くん、良かった。本当に良かった」

 林さんも一緒に抱きしめる。

「うんっ」


『直の足が治った!』

『うそ』

『凄い凄い』

『姉ちゃん、本物だったんだな』

『本当に神様なの?』


《回復魔法がLv4に上がりました》

 子供たちの治療中また回復魔法が上がった。


 それから施設長に昼食に招待されたのでご相伴に預かる事にした。

 昼食の席でも直くんの話題で持ち切りで、みんな笑顔の絶えない食卓となった。

 そして昼食の席で私の活動内容を報告し、これからも広く普及させたいので、周りに困った人がいたら紹介して欲しいとお願いし、連絡先用に施設長にも名刺を渡しておいた。

 今回は活動を開始した直後でもあったので無償としたが、本来は有償で行うのだと、でもそれは所得に応じて無理な要求をするつもりはなく、私が認めた対価であれば金銭でなくてもいい事などを伝えておいた。

 最後にこの活動は世界規模で行うので早急な対応は困難である事も告げておく。


 食事の席で顔を隠している理由も聞かれたので、

「私の活動は医療行為と見做(みな)される可能性があり、そうなると警察などの治安組織や国が動く可能性があるので、出来る限り素性が分からないようにしてるんです。

 ま、先ほどお見せした転移魔法があるので捕まえる事は不可能ですけどね」

 と説明しておいた。


「ソルさん、本当にありがとうございました」

『『『『『姉ちゃん、ありがとう』』』』』

「お姉ちゃん、また来てね」

「姉ちゃん、僕、将来お医者さんになるよ。姉ちゃんみたいにたくさんの人を助けるんだ」

「うん、頑張ってね、期待してるよ」

 最後に施設長やまちちゃん、直くんや子供たちに見送られ、みんなの見ている前で転移で自宅に戻った。


     *     *


「はぁぁあああああ、疲れたぁーーーーっ」

 自宅に戻るとテーブルに突っ伏した。

「これから毎回こんな感じなの?ちょっと眩暈(めまい)がしてきたよ」


「うぅ、癒しが欲しい。誰か癒してー。

 よし、こうなったらあの作戦でいこう」

 そういうと変装衣装を脱いで、“清浄(クリーン)”をかけた後、アイテムボックスに収納する。

 そしてちょっと早いけど風呂に入って着替えると、まずホノルルのヘレンさんとこへ転移した。


【時差情報:-19時間】日本:13時20分 ホノルル:前日の18時20分


「カレンお姉さん、来たよー」

「いらっしゃい、ひなたちゃん。今日は2回目ね」

「え、え、な、何の事かなぁ?」

「ふふふ、まぁいいわ。今日は何にするの?」

「お土産用に適当に20個ほどケーキを見繕って下さい」

「了解。ちょっと待っててね」

 料金を支払い、ケーキを受け取ると、今度は異世界の孤児院へと転移した。


     *     *


「こんにちわー」

 孤児院の入口で呼びかける。

『あ、ひなた姉ちゃんだ』

『お姉ちゃん、いらっしゃい』

『フランちゃんに会いに来たの?』

『院長先生呼んでくるね!』

「フランちゃんもだけど、みんなにも会いにきたんだよー」

 フランちゃんお目当てだとバレバレらしい。


 しばらく入口で待っていると、院長先生とフランちゃんがやってくる。

 私を見つけるとフランちゃんが胸に飛び込んでくる。

「お姉ちゃん、来てくれたんだね。嬉しい~」

 キラキラとした眼で見つめられる。

(ぐはっ、これだよ、欲しかったのは。癒される~)

 思わずギュっと抱きしめてしまう。


 それからみんなでケーキを食べながら楽しくおしゃべりし、フランちゃんを愛でながら至福のひと時を過ごすのだった。

(はぁー。向こうではまちちゃんとあまり触れ合えなかったからなぁ。何がいけなかったんだろう。謎だ)


 元気成分を補充した後、子供たちとお別れして自宅に戻ってきた。

 暫くオレンジジュースをチビチビ飲みながらテレビをぼーっと眺め、夕食は幸姉ちゃんのとこで軽めに取った後、歯磨きしてとっととベッドに潜り込んだ。

(今後の事は明日考えるとして、もう寝るよ。おやすみ~)

 前話の後書きにも記載しましたが、代理人の名前を”サニー”から”ソル”に変えました。

 宜しくお願いします。

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