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活動開始(異世界孤児院編)

◆西暦2000年4月28日(金)◆


 朝起きて洗面後、日課の鍛錬、身支度をする。

 それからテレビをぼーっと眺めながらパンとオレンジジュースで軽めの朝食を食べつつ、物思いに耽るひなた。

「何だか活動資金を調達するにも行き詰ってきちゃったなぁ。はぁ~。

 金の換金はいいと思ったんだけど、何だかなぁ~、ってな感じだし。

 指名手配犯も面倒そうだし。ま、こちらは高額なら、懸賞金貰えるまで時間かかってもやってもいいかもね。

 しかし、これと言ったのがないねぇ、はぁ~」

 今日もうんうんうなるひなた。

「うん、もう完全に詰んだっぽいから紙に書いて整理してみよう。まずはやった事から順に」


 1.金貨や金塊の換金


 2.指名手配犯検挙による懸賞金の獲得


「1は今後銀やミスリルなど他の金属でも試してみよう。もちろん日本以外でも高く売れそうなとこ探そう。

 2についても高額犯罪者を優先に海外でもやってみて様子見だね。

 …って、たった2つで詰んだって早すぎじゃない?いくらなんでももっとあるよね?

 よし、もう現実的云々、出来る出来ないに関わらずとりあえず考えられる事を列挙してみよう」


 暫く頭を抱えたり、ゴロゴロ地面を転がったりしながら、知恵熱が出そうになるのを我慢しながら、只管ひたすら足りない頭をフル活動し良案を模索する。

(ちょっと突飛も無い発想だけど…まずは書いていくか…)


 3.まぐろやかじきの群れの中心あたりに転移で移動し、気絶する程度の雷魔法を周囲に放ち、確保後転移で戻ってくる。


「これ出来たら結構お金になるかも。買ってくれるか分からないけどね。漁師の資格とか登録が必要?

 とりあえずやるなら、風魔法で身体の周りに空気を纏ったまま海中でも呼吸できるように要練習だね。

 …あ、それならこれもいけるんじゃない?」


 4.同じ要領で改定の珊瑚(サンゴ)の密集地に転移で移動し獲得する。


「そそ、これこれ。珊瑚(サンゴ)って結構するみたいだよね。

 ただこれも売る時揉めそうだなぁ。後は…そうだなぁ…」

 うむむと唸っているとちょうどテレビでスギ花粉が大量に発生しているとかなんとか報じている。インタビューされてる男性もマスクをして眼も充血して辛そうだ。

「あ、えっちゃん。私って回復魔法使えるのかな?こういう人達の体の中から花粉やウイルスなどを取り除いたり、病気の原因を治癒したり、ついでに怪我とかも完治させたりとか。

 え、待って。これって20年後のパンデミックに備えて今のうちから練習も兼ねて早急に取り掛かったほうがいいんじゃない?」

≪YESマスター。可能です。回復魔法については後で練習しましょう。体内の遺物を除去するのは回復魔法に更に鑑定や錬金術との組み合わせる事で精度が増し効率よく除去する事が可能です。

 最終手段として感染者を異世界に転移して戻ってくれば完治します。病原菌は向こうの世界に持ち込めないようになっているので、こちらから転移する際にふるい落とされます≫

(キタキタキター。チートキター。まさか転移にそんな方法があったなんてびっくりだよ。確かに言われてみればそうだね。

 …そうなると、こう来るよね…)


 5.回復魔法を使って治療代を稼ぐ。


「あ、これって完全に違法だよね。私医者じゃないし、且つ未成年だし。

 でも違法だからって何もせずに見守るだけだったら、(いず)れパンデミック来ても何もできないよね?

 ま、20年後なんだから医者の資格取れって事なんだろうけど、そんな暇もないし、回復魔法あるから現代医学で治療活動する意味ないし、挙句の果てに不老不死だから20年後も見た目今のままだし…がっくし」

 自分で言ってて勝手に自爆するひなた。

「もしや、もしかして、この胸もそのままとか?いや、ないよね?ね?」

 言ってて若干パニックになる。

「最初のうちは、これは治療ではなく気功で体内の細胞を活性化させて病に打ち勝っているとか言ってごまかそう。

 だって薬も注射も治療材料とか何も持たずに治すんだから医療行為じゃないよね?

 よし、そういう事にしよう、うん。

 もし連行されそうになったら逃げるか、その取り締まる人の病気を治して味方にしよう。

 連れて行かれても絶対言い訳とか聞いてもらえないし、最悪牢屋に入れられちゃうかもしれないから時間的にも無駄だよね」

 自分に都合の良いように勝手に解釈するのだった。

「治療代はどうしよ。お金持ちからはたくさん取りたいし、かと言って貧しい人からは取れないし…。

 それは(いず)れ考えるとして、まずは1000円ぐらいでいいか。高くして誰も利用しなかったら本末転倒だしね。ロビー活動みたいなものだ。

 日本だけじゃなく世界規模で神出鬼没でやろう。

 となると顔を覚えられないように変装しなきゃ駄目だね。且つ存在自体は覚えて貰えるように。

 もう出し惜しみせず、神の代理人として周知させ、どんどん普及させる事にしよう。

 回復魔法で瞬時に完治させるし、目の前に急に現れたり、消えたりすれば(いず)れ信用してくれるよね」


 6.不法投棄や産業廃棄物、ゴミの山などの処理を一括で引き受けて対価を得る。廃棄物も有価値な物に分解してそれも換金する。


「環境問題解決の第一歩だね。対価を得ながらゴミ掃除で環境も改善する一挙両得だね。

 資源も分解して価値のあるものも利用する、自治体も喜ぶから一挙四得か。

 ただ、その為には私の存在を知って貰わないといけないよね。どうしよう。

 先ほどの治療活動と合わせて来た患者に宣伝していく?

 うん、それが一番だね。ついでに普及活動の土台としてネットに専用サイトを構築しよう。

 えっちゃん、私もネット検索できるからサイトを構築するとかももちろん可能だよね?」

≪YESマスター。問題ありません≫


「うん、今のところこんなものかな。何とか目途が立って安心したよ」

 早速専用サイトを構築しだすひなた。でもすぐに行き詰る。

「やり方分からない…えっちゃ~ん」

 当たり前である。いきなり出来るはずがない。

≪では他のサイトを参照し、一緒に構築しましょう≫

「やった♪」


     *     *


 えっちゃんにやり方の手ほどきを受けながら少しづつイメージしたサイトを構築していく。

「えっと、タイトルは“神様の代理人・御用聞き開設所“でいっか。別にタイトルに拘らなくてもいいよね。駄目なら後でも変えられるし。

 必要なのは“疾病相談窓口”ボタンを設置して、クリックすると要望者氏名や症状などの相談内容、連絡先、予算など記入できる画面を表示して…急ぎかどうかの判断もいるよね。

 後は申し訳程度で緊急度や予算の順で対応する旨を記載しとくか。それ以外は身体一つでは全ては対応できないので臨機応変にね」

 その他、“環境問題相談窓口“や”不法投棄連絡所“など必要なボタンを設けていく。

「トップページにこのサイトの説明と理解を得るための説明も載せよう」


【神様の代理人、御用聞き専用サイトへようこそ!

 簡単ではありますが、このサイトの設置目的や趣旨など前提情報を掲載致しますので、内容をご理解の上、ご活用いただければと思います。


 さて、信じる信じないはお任せしますが、私は神様の使徒として、この星の生態や環境を改善する任を受けており、簡単に申しますと、この星をまとめて綺麗にする掃除人であります。

 神様の代理人としての職務を果たすべく、私の存在と役割をみんな様に周知する事を目的に、まずは病に苦しむ人の救済、及び環境改善に取り組むべく、このサイト開設をもって活動開始する事をここに宣言します。

 また、掃除人と一口に申しましても、その範囲はこの星全てに及びます。つまり、環境改善だけではなく、反社会勢力と呼ばれる者たちの掃討もこれに含まれます。現状の人間は神から見れば粛清の対象となってしまったのです。


 掃除人としての活動内容から、本来は病への対応は業務外ですが、活動資金を得る為、今はロビー活動としての意味合いから、このような活動を持って始動する事にしました。

 今回の出会いを(えにし)とし、私の活動に賛同して頂けるならお知り合いの方への周知をお願いします。

 今は私の存在を延べ広げる段階であり、最初の頃は少額の対価で活動しますが、認知度が広まるにつれ、それ相応の対価へと移行する予定である事を予め申し上げておきます。

 但し、それはロビー活動の間のみの対価であり、個人や企業、政府などからの個別の依頼についてはこの限りにあらず、正規の対価を頂戴致します。

 病の対応に係る対価としては、原則として当事者の世帯年収の半分となります。

 環境問題については、その範囲や総量でお見積りします。

 反社会勢力の掃討費用に関しては、こちらも原則として一人当たりドル換算で1万ドルとなります。


 不治の病や緊急を要する案件についても対応しますが、何分私一人での活動となりますので、緊急性や困難性などを鑑み、費用もそれなりにご用意して頂く必要があります事を予めご了承下さい。

 費用については前金となります。ご不満な場合は返金する事もありますが、以降相談には乗りかねるとだけ申し伝えておきます。明らかに症状改善が見込まれた場合は返金には応じません。


 尚、環境問題に関しては、依頼とは別に、不法投棄場所や状況などを随時専用コーナーにて受け付けております。尚、通報者に対して請求する事はありませんのでご安心下さい。

 こちらは小規模な不法投棄等のみの対応とし、活動の合間や近くに寄った際に対処しますが、個別案件を優先する為、遅れが生じる可能性がある事を予め申し上げておきます。


 最後に依頼は必ずこのサイトの専用ボタンからお願いします。メールやSNSなどへの直接的な依頼には対応致しません。

 また、救済目的のロビー活動はあくまでも周知の手段であり、世界に広く浸透したと判断した時点で終了し、本来の目的に専念します】


「こんなもんかな。あとは口座振込先をきさ…い?あぁあああ、口座どうしよう。いきなり躓いたぁ」

 オロオロして周りを行ったり来たりするひなた。

「い、家の中探したら架空のお父さんの通帳とか見つかるかな?

 って駄目じゃん。名前でバレるじゃんか。

 考えてみたら口座作っても国に凍結とか没収とかされたらたまらないからどっちみち口座は不可だね。

 さっきの一文に“費用は政府による凍結対策の為、口座は設置しないものとし、現金或は正規の地金などの貴金属のみの取り扱いとします”と追加記載しておこう」

 それからSNSも開設し、専用サイトにアドレスを追加する。


「そうだ、えっちゃん、この間の指名手配犯確保した時の映像とか無いよね?」

≪YESマスター。全て記録しております。映像として加工しますか?≫

「おぅ、さすがえっちゃん。だったら私の顔をぼかして、私が声をかけてから警察に連行されるまでを、あ、途中警察待ち状態は省いて加工してくれる?」

≪YESマスター、少々お待ちください≫

「はーい♪」

 えっちゃんが加工してくれた映像をひなたの実績第一弾としてサイトとSNSにアップした。

 もちろん専用サイトは各国語対応済みだ。と言っても日本語、英語、中国語、ロシア語、フランス語の5か国だけどね。後はおいおい対応していく予定だ。


「あと普及用に名刺も作りたいなぁ。パソコンとプリンタ、名刺プリント用紙を買ってくるか。

 …って駄目じゃん。プロバイダと契約してないや。印刷どうしよ」

≪マスター、その用紙とインクを用意して貰えれば、マスターが印刷サイトで作成した内容を錬金術で転写する事が可能です≫

「インクは何でもいいの?プリンタ用インクとか?」

≪はい、何でもかまいません。中のインクをアイテムボックスに取り込んでそこから利用しますので≫

「そうと決まれば早速買い物に行こう。あと変装用品もまとめて買ってきてしまおう」


     *     *


 まずは家電量販店でインクと名刺プリント用紙をいくつか購入。

 次に東京のウェディングドレス工房をいくつか回り子供用ドレスとグローブ、ドレスシューズ。

 全身真っ白は何となく避けたかったので、服と靴はかなり薄めのブルーにした。

 顔を隠せるようなベールも欲しかったが無かったのでカーテンショップに立ち寄り薄いレースを購入。

 その他いくつか店を渡り歩いて服の色に近いベレー帽と鼻まで覆い被せるフェイスマスク。後はレースを帽子に止めるためのピンやらハンカチやら小物まで揃えた。これで完璧。

 めちゃくちゃ怪しい恰好だが仕方ない。


 それから自宅に戻り、えっちゃんと名刺作り。

 表には“神様の代理人 ソル”とサイトやメール、各種SNSのアドレスを記載。裏には先ほどの趣旨説明と拡散のお願いを書いておいた。

 ソルはもちろん偽名で、本名を名乗れるはずもないので仕方ない。

 ソルは北欧神話で太陽の神。ひなたに引っ掛けてのソルである。

 今のうちなので、頑張って主要国別に大量に作成した。


「まずは回復魔法が使えないと本末転倒だから、ここからだね。それじゃ、えっちゃん教えて」

≪YESマスター。練習するのはいいのですが、回復魔法は相手がいないと練習になりません≫

「うーん、そうだけど、いきなりぶっつけ本番てのもなぁ。ちょっとナイフで自分の腕傷つけてみようかな」

 危ない発言をするとひなたは、ナイフを取り出し、腕に少しだけ傷をつける。

 物理攻撃無効があるから駄目かと思ったけど、自分でやる分には可能みたいだ。少し血が滲んできた。

≪マスター、傷を元通りに修復するイメージで“ヒール”と唱えて下さい≫

(分かった)

 魔力を傷口に集め修復するイメージを固め、“ヒール”ととなえる。

 すると端の方から少しづつ傷が塞がっていきやがて元通りになる。


《回復魔法Lv1を習得しました》

 回復魔法を覚えた事によって、今後次の魔法を覚えられる事が分かった。

【回復魔法:Lv1 治癒(ヒール) Lv2 状態異常回復(キュア) Lv3 超回復(ハイヒール) Lv4 範囲回復(エリアヒール) Lv5 体力回復(ヘルスリカバリー) Lv6 浄化(ピュリフィケイション), 状態異常範囲超回復(エリアハイキュア) Lv7 絶対回復(エクストラヒール), 範囲超回復(エリアハイヒール) Lv8 完全治癒(オールヒール) Lv9 創薬(ドラッグクリエイト) Lv10 範囲完全回復(エリアオールヒール)


「よし、それならLv2まで上げてしまおう」

 自傷少女発生中である。意外とマゾっ気があるかもしれない。

 涙目になりならがも何とかLv2に上げる事が出来てホッとする。

 もう痛いのはこれっきりにしよう、そう決意するひなたであった。


「えっちゃん、体内の遺物を除去するにはどうすればいいの?」

≪YESマスター。それなら回復魔法の“状態異常回復(キュア)”で可能です。

 まず魔力を全身隈なく広げたら、体内の遺物をサーチし、それを除去するイメージです。

 この魔法は毒物などにも応用できます。

 それでは、“状態異常回復(キュア)”と唱えて下さい≫

「分かったー」

 自分の身体を魔力で満たし、身体に害を及ぼすウイルスなどを除去するイメージをした後、“状態異常回復(キュア)”と唱える。

「うん、健康だから何も起こらないね、あはは」

≪実際に魔法は発動しましたので問題ないと思います。実践で試してみましょう≫

「オッケー」


     *     *


「どこかの孤児院辺りを訪問してみようか。何となくここの孤児院の子は割と健康そうなイメージあるから、異世界の孤児院を訪れてみよう。

 でもいきなり行くのもなんだし、途中食材を現地調達していこう。お土産だ。

 確か、肉は解体した際に戻してもらった肉がたくさんあるし、パンや果物もあったよね。

 調味料はこの間ホノルルで買ったのが使わずに残ってるから、後は飲み物か。これも現地調達でいいね」


 早速現地へ飛ぶと、屋台が集まっている中央広場に行き、食材を少し多めに買い込む。

 飲み物もオレンの果樹で作ったジュースを売ってたので樽ごと買い占めた。


 すると少し離れた草の影に通りをジッと見つめている子供たちを発見。何だかお腹を空かしているらしく、串焼きを持った冒険者を指を咥えて見ている。

 貫頭衣姿で見窄(みすぼ)らしく、明らかに浮浪児然としている。

 ひなたは人数を確認すると、串焼きの屋台で少し多めに注文する。視線を子供たちに向けると今度はひなたをジッと見ている。

(ちゃんと食べさせてもらっていないのかなぁ?生前の自分を見ているようで、何だか見てて辛いよ。

 それにお風呂とかもちゃんと入ってないんだろうなぁ。何となく薄汚れてみえる。

 ま、何となくというだけで、たぶん身体を濡れたフキンで拭くとかはしてるのかもね。ちょっと雑っぽい感じするけど)


 ひなたは子供たちのところへ行くと声をかける。

「お腹空いてるの?これ食べる?」

 そう言って串焼きを差し出す。

「い、いいの?」

 リーダーっぽい女の子が恐る恐る返事してくれる。

「いいよ。君たちは孤児院の子かな?」

「うん、そうだよ」

「ならこれ上げるから孤児院まで案内してくれる?」

「え、どうして?」

「これだけじゃ足りないでしょ?お肉いっぱい持ってるから、お腹いっぱい食べさせてあげる」

 子供たちで話合うと、

「わ、分かった。こっち」

 そう言いながら串焼きを受け取る子供たち。みんな夢中で食べながら案内してくれる。幼女ホイホイである。


 しばらくついて行くと古びた建物に辿り着いた。隣には教会らしきものが建っている。

(教会の付属施設みたいなものかな?)

 建物に近づくと修道女らしき年配の女性がやってくる。

「あのぅ、その子たちが何かしましたか?」

「いえ、広場で物欲しそうにしてたので声をかけたんですよ。

 あ、私冒険者のひなたって言います。

 実は私も冒険者になる前までかなり貧しい生活をしていたので、何だか見ていられなくなっちゃって」

「ご丁寧にどうも。私はこの孤児院の院長をしているファーレと申します。宜しくお願いします。

 それでひなたさん、こちらにはどのようなご用件で?」

「先ほどもいいましたが、見ていられなくて、せめてお腹いっぱい食べて貰おうと思って。

 あ、私収納魔法持ちなので食材はたくさんありますので。

 ただ、料理は好きですが得意かと言われればちょっと自信がないので、院長先生にも手伝ってもらいたいのですが、宜しいでしょうか?」

「お話は分かりました。汚いところですがどうぞお上がり下さい。

 みんなひなたお姉さんがお料理作ってくれるそうなので、きちんと言う事を聞いて、出来るまでは行儀良く待っているのですよ?」

『『『『『はーい』』』』』


 それから孤児院の中に案内され、そのままキッチンへ。

 竈に火を入れると、食材を出していく。肉、野菜、調味料。パンや果物、飲み物の入った樽は料理が出来てから出す予定だ。

 肉はワイルドボアの肉だ。

 肉と野菜を院長先生を一緒に刻んでいく。

 それから調味料の説明をしながら、他愛無い話をしつつ料理を作っていった。

 今回のメニューは肉と野菜をオイスターソースで炒めたものと、鶏ガラスープの素で作った野菜スープ。刻んだベーコンも入れてある。

 余ったソースとスープの素は院長先生に提供した。


 料理が出来ると子供たちを集めて席に座らせ、順番にパン、炒め物、スープ、半分に切った果物、オレンの果汁ジュースを配っていく。

 子供たちは目をキラキラさせながら待て状態だ。涎が落ちそうになってる子もいる。

 全員に配り終えると院長先生と私の分も用意し準備が完了した。


「では、みなさん、暖かい料理を提供してくれたひなたさんにお礼を言ってから食べましょう」

『『『『『ひなたお姉さん、ありがとう。いただきます』』』』』

「はい、どうぞ。お代りもあるのでゆっくり焦らないで食べていいからね」

 もう子供たちはそれどころじゃないようで必死に食べている。

『パンが柔らかくて美味しい~』

『このスープめちゃ旨いぞ。すげぇな』

『うまうま~』

『おいちー』

「あら、本当ね。凄く美味しいわ」

 院長先生もお気に召したようだ。


 食事が終わると、孤児院には冷蔵施設があるとの事だったので肉や野菜などを提供しておいた。パンや果物、残ったオレンのジュースもだ。

(しかしほんとボロボロな建物だな。生活費とかってどうなってるんだろう?)

「院長先生、失礼ですが生活の方は足りているのでしょうか?」

「はい、一応領主様から補助金を頂いているのですが、今は定員を少しオーバーしている状態でしてギリギリな状態なんです。食事も少し切り詰めなくてはならなくて…。

 でも領主様には現状を報告してますから、(しばら)くしたら追加の補助金が出ると思います。それまでの辛抱ですよ」

(ほっ、特に悪い領主ではないみたいね。ちょっと安心した)

「それじゃ、少ないですが、私の方からも資金援助致しましょう。追加の補助金が出るまでの足しになるといいのですが…」

 そう言って金貨を30枚ほど院長に渡した。

(ちょっと痛いけど仕方ないよね)

「ありがとうございます。大変助かります」

「これで子供たちがひもじい思いをしなければいいのですが」

「これだけあれば大丈夫だと思います」

「そうですか。良かった」


「院長先生、お世話ついでにこの建物を綺麗にしてあげますね。

 あと私、回復魔法使えるので子供たちの健康状態もチェックさせて下さい」

「いえ、そこまでしてもらうわけには…」

「あ、お気になさらずに。建物と言っても中だけで、魔法ですぐ終わりますので。

 それに回復魔法もまだまだ練習が必要なので是非やらせてほしいのです」

「そこまで言うのでしたら分かりました」


 それから建物を周りながら“清浄(クリーン)”をかけていく。

 一緒にぞろぞろとついてくる子供たちは部屋が綺麗になるたびに歓声を上げた。

 ついでに子供たちもまとめて綺麗にしておいた。

「うわぁ、お洋服がピカピカだー」

「ほんとだ、お姉ちゃんすごいね」

 子供たちは大はしゃぎである。

「こんなに綺麗になるなんて。魔法って凄いんですね」

 院長先生も驚きで目を丸くしていた。


 一通り全ての部屋を周ると、今度は子供たちの番である。

 一列に並べると、院長先生にそれぞれの子供の状況を確認しながら一人一人見ていく。

 拾い食いをしているのかお腹の調子が良くない子が多い。時折寝込む子もいるそうだ。

 外で駆け回っていたのか擦り傷があちこちにある子も多かった。

 それらを一人ずつイメージトレーニングをしながら丁寧に直していく。

 ある子はお腹の中の悪い菌を除去するイメージで。ある子は傷ついた皮膚を修復するイメージで。

 そんなこんなでどんどん直していくと、びくびくと院長先生の後ろに隠れながら、でも視線はどこを見るでもなく、そんな感じで一人の女の子がやってきた。

 髪の色は金色に近い銀髪って感じでとても綺麗。瞳もスカイブルーと言うんだろうか透き通るような、こちらも綺麗な色合いだが、何だか生気が無く、まるで人形のようだ。

(あれ?この子…)

「ひなたさん、この子が最後です。実はこの子、うちに来た頃から盲目で、人見知りが激しいんですよ」

「そうなんですね。はい、大丈夫ですよ。

 こんにちは、お名前何て言うの?」

「…フラン」

「そう、フランちゃんね。良い名前ね」

「うんっ」

 名前を褒められて嬉しそうにしてくれる。

(えっちゃん、目が見えない子ってどうやったらいいの?)

≪マスター、少し落ち着きましょう。大丈夫です。

 どうやら視神経に障害があるようです。まずは正常な視神経と比較して障害のある個所を精査しましょう。

 それから後はいつもの通りです。それを修復するイメージで“治癒(ヒール)”と唱えて下さい≫

(お、おっけー。分かったよ。やってみる。落ち着けー、私―)

「フランちゃん、ちょっとの間目を閉じて貰っていいかな」

「分かった」

 そういうとフランは目を閉じる。

(うぅ、可愛いー)

 まずはフランの身体を調べ、怪我とかないか確認する。

 体内の病原菌の有無も確認し、どちらも問題無いと確認した後、フランの手を取って魔力を少しづつ流していく。

 頭部に魔力を集め、視神経辺りを精査する。

(うん、魔力の通りが悪い箇所があるね。なるほど、ここか)

 それから自分の視神経との違いを確認し、そちらに近づくように、視神経の通りを良くし、修復するイメージを練り上げ呟いた。

「“治癒(ヒール)”」

 すると今までなかったのに、フランの身体が薄く光を纏った。

 普段よりも特殊な力だったのだろう。すぐにその効果は表れた。

「フランちゃん、目を開けてもいいよ」

 恐る恐る目を開くフラン。

「えっ」

 暫く固まったまま動かない。でもすぐに気を取り直したのか目から大量の涙が零れ出した。

「あ、あれ?フランちゃん、どうしたの?どこか痛いの?」

「ち、違うの。目が、お姉さんの顔が見える。みんなの顔も見えるよー」

 そういうと私に抱き着き、わんわん泣き出してしまった。

(良かったー。びっくりしたよ。ミスったかと思って焦ったじゃんか)

「フラン、本当に見えるようになったのですか?」

 院長先生も驚いたようにフランに確認する。

「うん、うん、院長先生、見えるようになったよぉ」

「そう、良かった…」

 院長先生も涙を流して喜んでいる。

 周りの子供たちも驚いたまま固まっている。その直後我に返った子供たちは一斉にフランに抱き着いた。

「フラン、治ったのか?まじか!」

「良かったね、フランちゃん!」

「フランちゃーん、うわーん」

 もうその後はしっちゃかめっちゃかな状態で、フランが泣き止むまでひなたまで巻き込まれて揉みくちゃにされたのだった。


《回復魔法がLv3に上がりました》


「それじゃ、院長先生、そろそろ帰りますね」

「はい、今日は本当にありがとうございました」

「えー、お姉ちゃん、帰っちゃうの?」

「やだやだ、行っちゃやだー」

 フランだけは服を掴んだまま離さない。

(ぐふっ、お持ち帰りしたい…)

「ごめんね。もう帰らなくちゃ。また来るから、ね」

「ほんと?やくそく?」

「うん、約束するよ。またフランちゃんに会いに来るから。もちろんみんなもね」

「うぅ、分かった」

 やっとの事で掴んでいた手を放すと、ギュっと抱き着いてから離れてくれた。

「院長先生のお話はちゃんと聞いていい子にしてるんだよ?」

「うんっ」

(ここまで慕われると私も帰れなくなっちゃいそうだよー)


 孤児院のみんなに見送られながら門へ向かい、いつものように人気のないとこから自宅へ帰還する。

(はぁー。ほんと疲れたよ。何か色々と疲れた。もう今日はこれでお終いね)


     *     *


 しばらくまったりした後、ちょっと早いがお風呂に入り、幸さんの食堂に向かう。


「はふぅー、こんちわー」

「いらっしゃい、ひなたちゃん、何だかお疲れね」

「うん、今日はちょっとね」

 そう言いながらいつもの席へ。

「何か元気になる料理ないですか?もうへとへとー」

「あるわよ」

「あるの?」

 冗談で言ったのに、素で返されて驚くひなた。

「てびちって沖縄料理なんだけど、元気出るよー」

「あ、それずっと気になってたの。それじゃそれ下さい」

「はいよー」

 幸さんがキッチンに消える。

(うーん、全く想像つかないや。てびち、てびち…

 はっ、ち、血?何かの血じゃないよね?…てびち…

 て、手?…びち、ビッチ?

 何か変なの想像してしまった。

 まさか都会のケバイ恰好の厚化粧なお姉さんじゃないよね。いやいやいや…)

 変な想像してしまい、思わず思考を停止する。

(落ち着け、私―。来たら分かるから、落ち着けー)


 やがて料理が運ばれてくる。

(あ、美味しそうな匂い)

 やってきたのは普通に肉と野菜の煮付けだった。

「お姉さん、この肉がてびち?」

「そうよ。てびちって沖縄の郷土料理で、豚の足を柔らかくなるまで煮込んだものよ。

 コラーゲンがたっぷりでお肌にも良いのよー」

 てびちの肉以外にもニンジン、昆布、大根、あと厚揚げが入っている。これもボリューミーだ。

 あとはご飯、味噌汁、沢庵の漬物。

 てびちを箸で掴もうとするも、あまりにも柔らかすぎてうまく持てない。

 下から掬い上げるように持ち上げ、ご飯に載せてかぶりつく。

(あ、美味しい。食べると皮は厚めだけど、ツルッと入ってきて、プニプニしてて面白い触感だ。

 ほとんど脂肪のようなコラーゲンなのだが、その中で自己主張している肉の塊が味に深みを持たせてくれる。

 附属の野菜類も味が沁み込んでて箸が止まらない。

 最初に来たのが沖縄で良かった~)

 思わずお姉さんに向かって親指を立ててしまった。グッジョブ、幸姉さん。

 お姉さんは噴き出すが、この美味しさの前にはもうどうでもいい。


「はぁー、幸おねえちゃん、美味しかったー。また来るねー。

 もうここまで来たら全メニュー制覇しなくちゃね」

 もう一回親指を立てて宣誓した後、帰宅の途についた。

「ありがとう。待ってるわ。また来てね」


     *     *


(うん、ほんと良いお店発見出来てラッキーだよ)

 帰宅してから歯磨きをし、さて寝ようかと何気なく今朝作ったサイトを開いてみる。

「うぉっ、もう何か依頼来てるっぽい」

 こんなに早く来るとは思って無かったので、全くチェックしていなかったひなた。


(どれどれー)

 開いてみるとこちらの世界の孤児院、正式名称は児童養護施設の孤児からの依頼だった。


【さっちゃんとあきちゃんが病気で苦しそうにしてます。助けてください。まち】


(まちちゃんって言うのか。珍しい名前だね。よし、明日にでも行ってみよう)


「あ、えっちゃん、指名手配犯検挙の時みたいに孤児院の時の様子もダイジェストにしたいけどお願いしてもいい?

 私と出会った時、院長先生と共同料理、みんなの食べている様子、各部屋を回っている時、そして治療、特にフランちゃんの場面はおどおどしながら近づいてくるとこから抱き着いて泣きじゃくるとこ辺りまでで)

≪YESマスター。少々お待ちください≫

(よし、これで活動報告2回目アップできそうだね)

≪マスター、お待たせしました。サイトにアップします≫

「オッケー」

(よし、タイトルは“孤児院にて【フランちゃんの奇跡】“と)

 設置が終わり早速映像をスタートさせ問題がない事を確認する。

 フランちゃんがおどおどしながら近づいてくる場面を何度もリピートしたのは言うまでもない。

 SNSに活動報告追加のお知らせも載せて行く。


「えっちゃん、この活動報告欄に感想を記入できるようにしよう。名前とメアドも欲しいね」

≪YESマスター≫

 えっちゃんと一緒に活動報告ページに手を加えていく。

(ふふふ、フランちゃん可愛くて良い子だったなー。あんな子が妹だったらいいのになぁ…妹ほしいなぁ…

 まちちゃんも何となくだけど同じ匂いがするんだよねー。明日が楽しみだ)

 孤児院での事を思い浮かべ相好を崩すとベッドに潜り込んだ。

 代理人の名前を”サニー”から”ソル”に変えました。

 ”サニー”って名称がずっと引っ掛かってて、同じ太陽と言う意味なら神話から選ぼうとなったわけです。

 突然の変更で混乱を掛けてしまい申し訳ありません。


 回復魔法からLv10の蘇生を削除しました。これはあるとややこしくなると分かった為です。

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