282話:集合から懸念が始まりそうです(改稿予定あり)
天の頂には全ての天使達が集められていた。
人間の世界では、まずお目に掛かれない高さの壇上にはアテナとアルマ。
2人の女神が並び立つ異例の光景に天使達は息を飲んでいる。
先ほどまでペネムエ達のイザコザは、もはや忘れ去られてしまったかのようだ。
ピリピリとした空気が支配するなかアルマは、重い口を開いた。
「あーあー皆の衆、本日はお日柄も良く……いや悪い世界も多くあったかのぉ?
まぁ今日は数百年に一度の全ての世界のゲートが開く大天界祭、始めて経験する者もおるじゃろう。
キッチリと周期が決まっている訳でもないので経験せぬまま生涯を追える天使もおる。
そんな中で大天界祭を経験出来るということはぁ~」
アルマがここまで話した所で、アルマがポンと彼女の肩に手を置き制止した。
「なんじゃアテナ?」
「聞かなくても分かるでしょう?
いきなり私たち2人が立ってるのはマズかったみたいなのよ~」
「いや確かにエッぐい空気になってしまったのぉ」
「そんな人ごとみたいに」
「だったら最初からワシだけに任せておけば良かったんじゃ」
「あなたでは、天使達に余計な不安を与える事を言いかねないもの」
2人の言い合いが始まっても天使達の空気は変わらない。
そんな中、壇上の上に水の球体が出現し、人型へと形を変える。
現れたのは、ペネムエを作り出した十二神官の1人アイリーンだった。
「アイリーン!? なぜあなたがここに?」
「招集を受けたのは全ての天使、それは十二神官も例外では無かったはず」
アイリーンが振り向くと、11人の神官達が険しい表情で壇上を見上げている。
彼女の言葉と状況が、有事であるという事を際立たせ、他の天使達の不安を掻き立てていた。
「いやぁ招集はしたが、これだけ広いホールに固まっておらんでもよかろうに」
漂う緊張感の中でアルマはお構いなしとばかりに腹を抱え笑い出した。
この態度にはアテナが無言で苛立ちを見せ、それは彼女の笑いを辞めさせるには十分だった。
「まったくジョークが伝わらん奴じゃのぉ、お主が大好きなノーマジカルでも親しまれてる文化じゃろうに」
「時と場合によるのよー」
いつもの口調の中でもアテナからは感じたことの無い負の感情を受け取れる。
「やれやれ宮本翔矢を異世界転生させようとしたり短気な奴じゃ……
まぁ十二神官が集結していたのは都合が良いじゃろうて」
アルマが指をパチンと鳴らすと、2人乗るのが丁度良い広さだった壇上が輪のように広がり、十二神官が上げられた。
「空間ごと膨張と遠距離多人数の瞬間移動、相変わらずアルマ様の魔法はデタラメでボーン」
「転生すれば、ピエルン殿の言うのデタラメを超えるノーマジカルの人間も複数大天界祭に来ているようだが」
「オーディン様の口にした件は、今回の招集に関係が無い様子。
天界の罪人ルーシィの脱獄だけでも頭が痛いというのに……
辞任ですかな? 辞任?」
十二神官までもが壇上に上がったことで、一般の天使には、もはや口を挟む隙などない。
「さて、めでたい大天界祭が始まろうかというタイミングで、こんな空気感は耐えれんのぉ」
「……言い出しっぺは、あなたなのよぉ、ここまで来たら早いこと発表してしまいなさいな」
「肩の力を抜いて聞いて欲しいんじゃが……今回の大天界祭、世界に散らばってると言われる大魔王が7人……その全てが天界に集結しているようじゃ」
女神2人が揃っていた地点で、ほとんどの天使は最悪の事態が頭を過っていた。
しかし、ここまでの事態を予想していた者はいない。
十二神官すら息を呑み静まり返っているが、ピエルンが心を落ち着かせるように鼻下のヒゲを人差し指で触り、口を開いた。
「大魔王……確かその一人、憤怒のデモンはオーディン殿が封印されたと記憶しているでボーン」
「……あれは協力者がいたから可能であった事、ワシ1人でどうにかできる相手ではないし、仮に出来たとしても大魔王が全員集結しているのでは解決になっておらんな。
それよりも気になる事が3つほど」
「話してみよ、答えられる質問であれば喜んで応えよう」
「まず1つ、封印していた大魔王デモンの封印を誰が解いたのか、あれは協力者の力で魔力のある者は近寄る事すらできない術なはず」
「時の流れと共に封印が劣化してしまったか、その協力者の術を解ける程の手練がいたかじゃろうなぁ」
「もしくは……魔力を持たない者の仕業」
アイリーンは独り言を言っているような口ぶりだったが、その発言は注目を集めた。
「アイリーン!! ノーマジカルの人間を疑っているのですかな? それはあまりに……」
「クローバー様、私はアルマ様と同じくあくまで可能性の話をしているの。
ノーマジカルについては先程も少し話しに出ましたし、可能性としても出さない方が不自然かと」
アイリーンは冷たく鋭い視線をアルマに送る。
「最近はノーマジカルも異世界の存在を認知している者も増えているしのぉ」
アルマの回答は、自分が何か隠していると疑われても構わないといった印象だった。
「さてオーディン、次の疑問は何かしら?」
「大魔王が持つは強大な力、しかし彼らは人間の罪を背負いバランスを取る存在のはず、天界に来たからと言って危機とは限らないのでは?」
「その通りじゃ、存在自体は悪じゃないとも言える。
だが大罪が7つも揃えば何かしらの事態が起こると考えるのが普通じゃ。
まぁ今宵は良くも悪くも大天界祭、各世界から相当な実力者が集まっておる。
天使も全員が天界に帰って来ておるし、何か大魔王が企てていたとしても、力を合わせれば対抗出来るやもしれんのぃ」
「アルマ……少年漫画じゃないんだから、自分の世界でも無い場所で皆が力を合わせるなんて……」
「やれやれ、アテナは相変わらず基準がノーマジカルの創作じゃのぉ」
「それが叶うのは難しいと言っているのよぉ、皆が力を合わせるなんて思えるアルマの方が、価値観ノーマジカルなのよぉ」
「あっ!! 言われてみればそうじゃのぉ」
2人の女神が気の抜けた会話を初めても、天使達を纏う空気は重く耐えがたいモノだった。 耐えかねたオーディンが、最後の疑問を口にする。
「ゴホン……最後の疑問だが大魔王とは、そもそも6人のハズでは?」
「あぁ、その事か、それは単純な話し1人は存在しないハズの大魔王だからじゃ」
「存在しないとは……大魔王も辞任などするのですかな? 辞任!! 辞任!!」
「代替わりはするようじゃが、クローバー氏の言うような辞任があるかは分からんのぉ。
話しを戻すと存在しない大魔王というのは怠惰の魔王ベルフェじゃ」
ベルフェという名前が出ても十二神官達は、首を傾げたり黙り込むばかりでピンと来ていない様子だった。
「まぁ知らないのも無理はないのぉ、ベルフェは究極の怠惰。
認識されることは疎か存在することまで怠けてしまっているのじゃ。
ワシも大魔王についての古い文献で1行だけ書かれたのを見たっきり」
「そのベルフェまでもが天界に来ていると?」
「アイリーン、お主が興味を持つとは珍しいのぉ。
大魔王は魂に特殊な因子を宿しておる、それを関知したので間違いは無いぞ」
「大魔王の因子については知っていますが、それを観測出来る技術が?」
アイリーンの視線は大魔王と闘った経験のあるオーディンへ向いた。
「ワシも初耳だ、そんなモノがあるなら、今にでも居場所を割り出せるのでは?」
「可能なのは、どの世界にいるかまでじゃ、誰がどの大魔王かなどは分からんのぉ」
「……そういう事にしておこう。
天使諸君!! 大天界祭は人間と天使、全ての世界の交流の場。
大魔王をどうにかしようなどと考えず、できる限り楽しんで欲しい!!」
オーディンによる天使達への活でこの場は幕を閉じた。
しかし天使達の不安が晴れることはなかった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。
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