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278話:お茶から飲み比べが始まりそうです

 少々不機嫌な様子で、宿泊施設の中に入っていった翔矢。

 中に広がっていたのは、見慣れた……いや見慣れすぎた光景だった。

 

 

 「これって……俺の部屋? え? 元の世界に通じてるの?」

 

 

 試しに本棚に並べられた漫画や机の細かい部分をチェックしてみるが、どこをどう見ても 日常を過ごしている自分の部屋そのもので違和感1つ感じられない。

 せっかくの旅行気分が台無しになったような気になり翔矢は落ち込んでしまった。

 そこにコンコンとドアをノックする音が響いた。

 

 

 「はーい」

 

 

 機嫌を損ねていたのも忘れ無警戒にドアを開けると、そこにはアルネブが気まずそうに立っていた。

 

 

 「あっ……」

 

 

 先ほどの強引な飛翔での大移動を思い出し、眉間にシワがよってしまっていた。

 その姿にアルネブは恐怖で震えていた。 


 

 「どうしたんだよ?」

 

 「そそそそれがですね、我もマスターと同席だったのです」

 

 

 震えたままの手で招待状を翔矢に向けるアルネブ。

 そこに書かれていた座標は、確かに翔矢と同じモノだった。

 

 

 「本当だ……なんで?」


 「我に聞かれましても」


 「だよな、まぁ入れよ」


 「失礼いたします」

 

 

 アルネブは丁寧に靴を脱いで部屋に入るなり、キョロキョロと辺りを見渡した。 

 

 

 「なんと言いますか、天界の宿泊施設というイメージには合いませんな。

 ベットも1つしかありませんし」


 「まぁ俺の部屋だしな」


 「ひえっ……」


 「別に何もしねぇよ……」

 

 

 またも翔矢の逆鱗に触れたと感じたアルネブは必死に話題を探し目が泳いでいる。


 

 「大天界祭の宿泊施設に選ばれるとは流石マスター!!」


 「いや……全部屋俺の部屋では無いだろ……無いよな?」

 

 

 ふと口にした自分の言葉で翔矢の頭に1つの疑問が浮かぶ。

 

 

 「あれ? もしかしてココって、俺の部屋じゃなくてコピー的な?」

 

 「マスターは直接的に魔法を使える訳では無いでしょうに、そこに自力で気がつくとは流石でございます。

 ここはマスターの記憶を元に複製された部屋のようですな。

 その辺に置いてあるノーマジカルの道具も使えたり使えなかったりするやもしれません」

 

 「そういうアルネブは部屋入ったばっかなのに気がついたんだな」


 「これでもハネル大陸を納める魔王ですからな」

 

 

 得意気に胸を張るアルネブだが、その幼い容姿では、小さい子が何かを自慢しているようにしか見えない。

 

 

 「そのハネル大陸の人たちって大天界祭に来てないのかな?」


 「否定は出来ませんが始めた来た場所で、居るか居ないかも分からぬ者を探すのは、効率的とは言えませんからな」


 「結構合理的なのね? でも魔王だろ? 早く元の世界に帰らなくていいのか?」

 

 

 その質問にアルネブは目を反らしたにで、それ以上は触れない事にした。

 

 

 「まぁいいや、しっかし折角の異世界なのに自分の部屋とは味気ない。

 勢いで来たけど大天界祭ってのも良く知らないんだよな。

 ずっと、ここにいりゃいいのか?」

 

 「我としてはマスターの部屋を見るのも初めてですからな。

 それでも構いませんが」

 

 

 アルネブは吸い寄せられるように翔矢のベッドにダイブし何や息も荒くなっている。 

 

 

 「素晴らしい……マスターの匂いまで再現するとは天界の魔法水準は流石ですな」


 「おい……何やってるんだよ……」

 

 

 我に返ったアルネブが枕に伏せた顔をゆっくり回すと、ジト目で自分を見つめる翔矢の姿があった。

 軍隊の起床のように勢い良く、さらに姿勢良く起き上がり、そのまま思いついたように招待状を開いた。 

 

 

 「ふむふむ、なるほドーナツ!!

 3日間は各世界の時差も考慮し、集合期間。

 そこから様々な出し物を見て回れるようですな。

 おっと!! メインの催しは武道会、これは参加してみたいですぞ」

 

 

 恐ろしく早口になった彼女の言葉を翔矢は聞き取る事が出来なかった。

 しかし招待状に今後の日程が記されているのは伝わったので、ポケットに突っ込んでいたモノを取り出し中身を確認する。

 

 

 「あっ本当だ、ここに来るまで何も無かったし天使も全員招集って言ってたよね?」


 「思いのほか時間を持て余す祭りですな。

 遠路はるばる呼び出して置いて茶の1つも出てこぬとは」


 

 アルネブが不満を口にした瞬間、部屋の机が強い光を放つ。

 すると今まで無かったはずの湯飲みが2つ出現していた。

 

 

 「え? 天界に何とかイーツ的なシステムが?」


 「最低限客人を持てなす心構えは備えているようですな」

 

 

 湯飲みの中身を確認すると、湯気が立っており白銀の液体が注がれていた。

 

 

 「何これぇ!?」


 「どう見てもお茶ですが?」


 「どう見てみ、お茶の色をして無いんだよなぁ」


 「お茶を出せと言ったのは我ですからな。

 ハネル大陸の一般的なお茶が出てきたのかと」


 「なるほど」

 

 

 アルネブにとっては見慣れたお茶なので当然だか彼女は躊躇なくお茶を口にした。

 それも丁寧に座布団の上に正座をしているので翔矢は日本人的な感覚でシミジミとした気持ちになる。

 

 

 「マスター……我の世界の茶は、お気に召しませんか?」

 

 

 呆然と立っていた翔矢を潤んだ瞳で見つめるアルネブ。

 その姿に翔矢は罪悪感を覚えた。

 

 

 「んにゃ俺の世界でお茶って言ったら緑とか茶色だからな。

 少し驚いただけだよ」

 

 

 アルネブと向かい合わせで正座し見慣れない白銀のお茶を口に含む翔矢。

 その表情は、眉間にシワが寄っていた。


 

 「どうですかな? 我の見立てではハネル大陸の高級品ですが」


 「高級品……なるほど、ちょっと渋すぎないか?」


 「そこを楽しむのがお茶ではありませぬか?」


 

 その一言にはぐうの音も出なくなったが、そこを差し引いても、この渋さは異常に感じられ1つの疑問が頭に浮かんだ。

 

 

 「お茶を2杯ください」

 

 

 翔矢の一言で机が再び輝き湯飲みが出現する。

 中身を確認すると日本でお馴染みの緑茶が注がれていた。

 

 

 「ヨシッ俺の世界のお茶が出てきたな。

 これでハッキリする、飲んでみよう」


 「ほうほうマスターの世界のお茶ですか。

 何がハッキリするのか我の頭では計りかねますが、お言葉に甘えて相伴に預かりますかな」

 

 

 2人は同じ動作で同じタイミングでお茶を口にする。

 

 

 「うまっ!! アルネブの話しを聞いてもしかしてと思ったけど高級な緑茶だこれ!!」


 「一口で代物のランクを言い当てるとは流石はマスター!!」

 

 

 キラキラとした尊敬の眼差しが翔矢に向けられる。

 雰囲気で回答しただけとは言えない雰囲気だ。

 

 

 「のっ飲みやすいだろ?」


 「そうですね、こう飲み比べると、ハネル大陸のは……

 マズいと言わざる終えません、高級品でこれですので」

 

 

 アルネブは大きく肩を落とし落ち込んでしまった。

 

 

 「いや……土地というか世界が違うんだから味覚とかも全然違うだろ?

 同じ地球だって、日本の豆腐とか海外じゃ受けないって聞いたことあるし」

 

 

 すると再び机が輝き始めた。

 まさかと思い確認すると、小鉢に冷や奴が装われている。

 

 

 「マスター……これは?」


 「今言った豆腐の定番の食べ方、冷や奴。

 このシステムじゃ、迂闊に話せないな」


 「これ、頂いても?」


 「どうぞ、食べたくて出した訳じゃないからな」

 

 

 アルネブは冷や奴を丸呑みにして一瞬で食べてしまった。

 

 

 「もう一品欲しい時などには良い料理ですな。

 マスターの世界の食文化をもっと知りたいですぞ」


 「なんかペネちゃんがウチに来たばかりの頃を思い出すなぁ」


 「しかしハネル大陸では、こう無造作に何でも出せる魔法は聞いた事がありませんな」

 

 

 机の方に興味を示したアルネブは、コンコンと叩き始めたが、何の変哲も感じられないようだ。

 

 

 「この机、何でも出せるのかな?」


 「試してみましょうか? 金銀財宝が欲しい!!」

 

 

 ビシッと机を指さしてみたが今までのように輝く事は無かった。

 

 

 「アルネブ、魔王だけあって強欲だな」


 「うっ……否定はできませんが……

 そういうマスターも何か実験してみては?」


 

 翔矢は分が悪そうにアルネブから目を反らし始める。

 

 

 「さぁてと外にどんな異世界人がいるか見て来ようかなぁ

 タケルとか、どうしてるのかなぁ?」

 

 「マスター!! 何かズルいです!!」



 そのまま部屋を出て行ったので、アルネブは後を追うのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。


 下の星から評価も、入れてくださるとモチベが最高潮になるとか。

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