279話:救出から再生が始まりそうです(改稿予定有り)
翔矢とアルネブは宿泊施設の周辺をウロウロと見回るが、見慣れない異世界人が先ほどまでの2人と同じく宿泊施設を目指しているばかりで、新たな発見は得られずにいた。
「うーん、見たこと無い種族の人もいて新鮮だけど、ジロジロ見るのも失礼だしな」
「本格的な交流が始まるまで、やはり時間を持て余しそうですな」
「しゃあない、タケルの所にでも行ってみるか。
さっき不機嫌な態度を取ったままだし謝らないとな」
「ノーマジカルで噂の、ふきハラという奴ですね」
「変な知識ばっか付けてるな……」
そんな事を話しながら同じような外観の真っ白な宿泊施設の中から記憶を頼りに、タケルの宿泊施設にたどり着いた。
「ここで合ってるよな?」
「はい、我は鼻も利きますゆえ。
魔力を辿れば1発なのですが天界の作用か感じる事ができませぬ」
アルネブは得意気に自身の鼻をツンツンと指さす。
そんな彼女の仕草に翔矢は気がつかず、ドアをノックしていた。
「出ないな……留守か?」
「そう言われると外の方に匂いを感じる気がしますが、音が響かぬ素材のドアのようですし、気がついていないだけやも知れません。
覚え立ての儀式で呼び出してみましょう」
ロクな事が起こらない予感がしたが、それでも右に避けドアの前をアルネブに譲る。
最初の予感は的中したようで、彼女はドンドンドンと凄まじい勢いでドアを叩き始めた。
「大阪や!! はよ開けんかい!!」
「おっ大阪?」
戸惑う翔矢を気にする様子も無く、アルネブは同じ言葉をただ連呼し続け、そのまま3分程が経過した。
「どうやら留守のようですな」
「そっそうだな」
流石に周りの視線を集めたが、ヤバい奴らだと思われたのか、それとも他の理由からか絡まれたりする事は無かった。
「ったく、そんなの何処で覚えて来たんだよ」
「ルーシィを見張っている間は暇でしたので、北風エネルギーの連中からテレビを借りていたのいです、ノーマジカルの社会情勢をチェックしておりました」
「今のは社会情勢なのか?」
考え事をした拍子に上を向くと、何かが高速で飛行しているのが見えた。
よく見ると周りの異世界人達も飛行物体に注目しているが、翔矢の肉眼では、その正体までは確認出来ない。
「アルネブ、アレ何か分かるか?」
「子供が魔法のホウキに股がり飛んでいるようですな」
「へぇ、あんな早く飛べるんだな」
「我も、あれほどの速度での飛行は初めて見ますな」
「他の異世界の人も注目してる位だもんな」
何かのパフォーマンスかと思い、そのまま見学していると、魔法のホウキは急降下を始め、翔矢と直撃する紙一重の所まで接近してきた。
思わず目を瞑ったが、そのまま急上昇し、再び上空を飛び回っている。
「今のは怖かった……」
「あの速度で、ここまでコントロールするとは常識外れの腕前、しかも子供とは」
感心しながら、そのまま観察を続けていると、2人は今までの解釈が間違いに気がつかされる。
「なんか、ホウキ乗ってる子、叫んでない?」
「テンションがハイなのですかな?」
「あぁ、スポーツ選手とか競技によっては叫ぶもんな」
「魔法のホウキはレースとして栄えている世界も多いと聞きますからな」
「映画で見たことあるな、そういうの」
「しかし、中々に目が離せません、この場のほとんどの者が釘付けですな」
アルネブが、ふと隣に目を向けると40代くらいの女性が、一際心配そうな表情を浮かべ祈るようにしていた。
「あの子……私の子」
「ほぉ、とてつもないテクニックを持った素晴らしいお子様ですな。
何か特別な訓練や教育などをなされたので?」
「……初めて」
「それは天才と言う言葉でも足りない才能……」
アルネブが言葉を言い終える前に、母親は彼女の肩を強く掴んだ。
「おっ何を!?」
「あなた、何処かの世界の魔王様よね!?
お願いします!! 私の子を助けて下さい!!
暴走した魔法の杖を掴んでしまい、降りれなくなってしまったんです!!」
母親の言葉に、この場にいた数百人もの人物から、驚きや「早く言え」という声が聞こえた。
「アルネブ!! 何とか出来そうか? 前みたいにツルで掴むとか」
「あの速度ですからな、振り落とされる可能性が高いです。
このまま飛んでいる分には、安全装置で、落下の可能性は低いのですが」
高速で飛行するホウキを相手に子供を安全に救出するのはアルネブでも困難らしい。
それは、この状況を把握している他の者にとっても同じだ。
「あの子供が、自分の身を自分で守れる術があるのなら、いくらでも手はありますが」
母親は首を横に振る。
「それが可能なら、自分で手を離して済む話しですしな」
「手を離してもらって、それを受け止めるなら、多少は安全なんじゃ?」
「マスター悪くない案と思いますが、明後日の方向に振り飛ばされる可能性。
最悪、無作為に飛び続けるホウキが直撃なんてパターンも考えられます。
我も含めて、これだけ異世界の者がいるので、即死以外なら回復魔法が間に合う、という考えもありますが」
この策を否定するように、大勢の視線がアルネブに突き刺さる。
「子供を大怪我させる前提で動くのは倫理的にアウト」
「だよな……」
適切な策が出ないまま時間だけが過ぎていく。
すると再びホウキが低空飛行を始めた、
「マズい!!」
大勢が散り散りになり逃げ惑うと、ホウキは建物へと一目散にツッコんでいく。
誰もが最悪の事態を想定し、ここまで動かなかった事を悔いた。
目を背け静まりかえる中、子供の泣き声響き渡り、母親が安堵の表情を浮かべ駆け寄っていく。
「何とかなった……のか?」
「あの状況からどうやって?」
目を凝らして見ると、子供は赤い血に塗れていた。
大泣きしているが、これは彼が元気な証拠でもある。
立ててもいるし少なくとも大きな怪我はないようだ。
翔矢とアルネブは目を見合わせ首を傾げると、状況を確認しに子供の元へ向かった。
「君大丈夫かい?」
「あれだけの速度で激突して怪我1つないとは……
いや良い事ではあるが、となると血の説明が付かんな」
母親がすでに駆けつけており、涙ぐみながら我が子を強く抱きしめている。
アルネブはキョロキョロと状況を観察しているが誰かが魔法を発動した気配はなかった。
「この血だけが手がかりにして最大の謎」
「誰かが轢かれて跡形も無くなったとか?」
「マスター……魔王の我が言うのも何ですが思想が怖すぎるかと」
「だよな、ってさっきより血が落ちてないか?」
「まだ数十秒ですよ? そもそも血の汚れが自然に落ちる訳が……」
翔矢の言葉を否定しかけたアルネブだったが、確かに子供にベッタリと付着していたはずの血が落ちている。
この瞬間も目に見えて血が落ち、いや正確には血がスライムのように移動し固まり初めていた、
それはやがて人型になり、10代半ばくらいの少女へと姿を変えた。
「さすがに全身が砕け散ると再生に時間かかっちゃうか……
あっ僕、痛い所は無い? 大丈夫だった?」
この言い回しと状況からして彼女が子供を助けたというのは誰でも想像が付くだろう。
しかし子供は、血が固まって現れた彼女にただただ怯えていた。
子供だけでなく母親も怯えた様子で子供を庇うように立っている。
「あっちゃー怖がらせちゃったかな?
まぁ吸血鬼なんて今どきどの世界にもいないもんね」
自らを吸血鬼と名乗る少女は親子に対して「行っていいよ」と伝えるように右手首をブンブンと振る。
母親には吸血鬼が悪い子でないと伝わったようだが、子供の方が泣き止まずどうしようもなかったのか、一礼して去って行った。
「吸血鬼か、まさか生き残りがいたとは、というか実在したとはな」
吸血鬼の姿を興味深そうに見守るアルネブの姿を、翔矢もまた興味深そうに見守る。
そんな彼らの元に、何者かが猛スピードで接近していた。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。
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