274話:開門前から揉め事が始まりそうです(改稿予定有り)
翔矢、ペネムエ、リール、そしてドクターの3人は、大天界祭の招待状へと吸い込まれていく。
瞬きを、したかしないかという一瞬の内に、一行は天界へとたどり着いた。
翔矢の目の前に広がっているのは、雲で出来ているかのようなフカフカの地面。
それに見上げても全容が分からないほど巨大な扉だった。
天界に到着して、まだ1分も経っていないが、翔矢とドクターは、ここが日本、いや地球で無いと実感し目を輝かせている。
「すっげぇ……ここが天界」
「日本人がイメージする天国みたいだねぇ、自分が死んだのではないかと不安になるよ!!
まぁ天国や地獄が存在するなら、僕は地獄行きだろうけどねぇ!!」
最初に目に入った巨大な扉を見上げていた首を下ろし、周りを見渡すとラノベの世界から出てきたような異世界の人々が列を作っている。
何から興味を持って良いかすら分からず、ただ視線を泳がせる翔矢とドクターをよそにペネムエは胸元の懐中時計を確認した。
「あぁ……時間の計算を間違えてしまいました。
まだ3時間ほどは扉が開かないので、待機してなければなりません」
「列は長いけど、扉も無駄にデカいから、開けば一瞬で中に入れるわよ」
ペネムエとリールの視線が翔矢の方に向いたが、数秒前までそこにいたはずの姿が見当たらなあい。
慌てて探すと「ポヨーンポヨーン」という何かが跳ねている様な音。
2人は直感的に、音のする方に翔矢がいると判断した。
危険な目に遭っていないだろうが、一応駆け足で向かうと、翔矢は巨大な雲をトランポリンのようにして跳ね、大はしゃぎしていた。
その様子をリールは呆れ、ペネムエは微笑ましく見ている。
「あれは……」
「天使の子供用の遊具ですね」
「人間で言うと、3~4歳の子向けのね」
「私もペネムエも、ノーマジカルに来たばっかの時、色々なモノに感激してたじゃない?
」
「そうでしたねぇ」
「翔矢も今の私達みたいな気持ちだったのかしら……」
しみじみと数ヶ月前の事を思い出している間も、翔矢はトランポリンで遊び続けている。 2人は少し悩んだが3時間の間、することもないので、このまま見守っておくことにした。 最初は微笑ましく眺めていたが、考えないようにしていた現実が、2人の頭からはなれず、耐えかねたリールが口を開いた。
「ねぇペネムエ、ドクターの姿が見えないんだけど……」
「いつも、自分に戦闘能力は無いからと、誰かの側を離れませんのに」
「何を考えてるか、分からない奴だし不安ね」
「まぁ、時間が来れば強制的に元の世界に返されますし、これだけ大勢の人。
逆に危険はない……そう考えるとしましょう」
「そうね」
出来るだけ考えないようにしようと、あくまで目の前の翔矢に集中する2人。
だが今しがた言ったばかりの「危険はない」という言葉を否定するように、すぐ後ろの方で何やら揉め事が起きている声がする。
「ふん!! 黄金などピカピカと輝くばかりで実用性はない!!
金に目が眩む、貴様の国の品位が問われるな。
我がメタリカ帝国の誇る、超合金こそ志向」
「クロムェル侯爵、どのような考えを持っていても個々の自由。
だが、他の世界の特産品をけなすのは、それこそ品位を問われるぞ」
そんな言い争いが、嫌でもペネムエとリールの耳にも入ってくる。
だがここは天界、天使や異世界の実力者が大勢訪れており、2人とも首を突っ込むつもりはない。
なのだが、大勢の人間が一斉に魔法を使う気配を感じとり、反射的に振り向く。
言い争っているのは10人以上の兵士を率いた、背の低い顔以外を超合金の鎧で武装した中年の男で名はクロムウェル侯爵。
それと、見ているだけで目が辛くなる程の輝きを放つ黄金の鎧を纏った20代前半くらいの男だ。
「えぇい!! もう我慢できぬ、全軍砲撃用意!!」
「おぉ、収納魔法から、これだけ巨大な砲台を出して来るとはエレガント。
兵士1人1人の力量が伺えるな」
「おだてても何も出んが、土下座するなら、放つのは勘弁してやろう。」
「土下座か、それはエレガントじゃないな。
確かに良く鍛えられた兵士だが、このエルドラン国王、ゴルド・ドラドには及ばない」
ゴルドは1つの砲台の前まで悠々と歩き、腰に下げていた剣を抜き振りかざす。
砲台は鮮やかな断面で両断されてしまい兵士達は焦りを見せる。
「ばばば馬鹿な、超合金製の砲台だぞ!?」
「うろたえるな!! あの剣は黄金で出来た飾り。
奴が魔法で斬り、あたかも剣術に見せているだけだ!!」
クロムウェル侯爵の言葉に、ゴルドは感心したように頷く。
「冷静さを欠かさない、エレガントな考察。
確かにオレのエレガントな武器に戦闘面の性能は皆無。
だがそれが分かったとて何の意味がある?
自慢の超合金とやらで出来た武器も、オレの前では無意味という事だ」
「どうかな? 自身の能力である魔法と、事前に用意出来る道具では全く意味が違うぞ?
総員、殲滅の陣ノ2の構えーーーーー!!」
「しっしかし侯爵……まだ大天界祭は始まってもおりませんが!?」
「構わん!! どうせ10回以上は発動出来る計算。
毎度毎度、この小僧は気に入らんかったんじゃ!!」
クロムウェル侯爵の気迫に押され、兵士達は収納魔法から、次々に銃のようなモノを取り出す。
「ふむ、砲台の次は銃か、迫力には欠けるが、相手は人間1人。
そちらの方が適しているな、頭に血が上っているように見えて冷静でエレガントな判断だ、少数とはいえ一軍を率いているだけはあるなぁ」
「余裕を咬ましていられるのも今のうち、総員放てぇぇぇぇ!!」
兵士達は銃を天に向けて一斉に放った。
見上げると明らかに放ったモノとは数が合わない無数の銃弾が、ゴルドに向かって降り注ぐ。
「これは……エレガントとか言ってられなそうだな」
ゴルドは、動けないのか動かないのか、その場に留まっている。
そうしている間に、弾丸は1弾1弾が、大爆発を起こし砂煙を巻き起こす。
あまりもの規模の爆発に、この場に居合わせた天使も異世界人も、皆が視線を送る。
それは、ペネムエとリールも例外ではない。
「リール……これは……」
「やりすぎね、他の天使は何で動かないのよ……」
ペネムエはブリューナクを、リールは閻魔を抜いた。
そのままクロムウェル侯爵へ挑もうとすると、2人の前に手が伸び制止される。
「なにすんのよ!!」
「これ以上は……」
2人は自分たちを止めたのが誰かも確認せず焦りの表情を見せた。
「おっオーディン……さまぁ!?」
「お久しぶりでございます」
リールは、その老人を前に冷や汗を流し、ペネムエはペコリとお辞儀をする。
「はっは、そちらの赤髪の子はリールさんだったかな?
とてつもない魔力を持つ神童だと話しは聞いてるよ?」
「勿体ないお言葉で、ございやがります!!」
慌てて120度のお辞儀するリール。
その姿を、オーディンは優しい笑顔で見つめる。
「あのぉオーディン様、それどころでは……
メタリカ帝国の侯爵様とエルドランの国王様が争っており」
「心配いらんよ、あの2つの世界は時の流れが同じでな。
そして、その流れは極端に速く月1で大天界祭に来ているのだ。
普通の天界祭であれば週1程度になるのかな?」
「あのぉ……それが何か?」
ペネムエは状況が飲み込めず首を傾げる。
その横でリールは120度のお辞儀を継続したままだ。
「まぁワシを信じて見ていなさい」
言葉の通り、事の顛末を見届けようとするペネムエ。
ここでリールはようやく顔を上げ、同じく視線を送る。
そこには、無傷で攻撃を防ぎきったゴルドの姿があった。
同時に彼に惜しみない拍手が送られ、天界へと続く扉が開かれる。
「諸君!! エレガントなショーは、お楽しみ頂けたかな?」
「やれやれ、毎回こんな茶番に付き合わされるワシの身にもなって欲しいわい」
「そう言うな、これだけ大勢の人の待ち時間をエレガントに変えたんだ。
悪い気はしないだろう?」
「ふぅん」
クロムウェル侯爵は、鼻息を荒くしながらも、清々しい笑顔を見せた。
そして人々は次々に天界へと流れ込んで行く。
「ペネちゃん、さっきの人たち凄かったね!!」
「翔矢様……いつの間に?」
「そこの爺さんが来た辺りから?」
翔矢は無意識にオーディンを指さす。
「おい!! 指さすな!!」
リールは慌てて翔矢の腕を掴み、力ずくで下ろされる。
「何、かまいはせんよ、君が宮本翔矢君だね?
ワシはオーディン」
「あっペネちゃんに稽古着けてくれたって言う」
「まぁ、大天界祭は長いし会う機会はあるだろう。
天界に行き楽しんでくると良い」
「はい!!」
こうして翔矢達は天界へと突入した。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。
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