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273話:手招きから突入が始まりそうです(改稿予定有り)

 六香穂高校文化祭でのユリアサプライズライブは無事に幕を閉じた。

 彼女の圧巻のパフォーマンスに、翔子達を含め、会場の全員が文化祭の一部という事を忘れて鑑賞。

 

 今は、その夢見心地も覚め、大混雑の体育館を後にするところだ。

 

 

 「素晴らしき演出、大勢の人が入ったとはいえ、こんな小さな体育館でやるのは勿体ないお人だな」


 「翔子そんだけテンション上がって、良くその話し方を維持出来るわね」


 「ユリアのプロ根性を見習わねばと思っての」


 「あんたは何の道に進もうとしてるのよ?」

 

 

 楽しげに話す翔子とリールの後ろを、ペネムエは数歩離れて歩いている。

 その表情は、どこか寂しげで、テンションが最高潮に達している周りからは浮いてしまっていた。

 

 

 「ペネムエ、どうしたのだ?」


 「今日1日元気ないわよ?」


 「あっいえ……人混みで少々疲れてしまったのかもしれません」


 「そうか? もう少しで文化祭もお開きだが、無理はせんようにな」


 「ほっ本当に大丈夫ですので!!」


 

 この気持ちを隠そうとしてか、ペネムエは必死に話題を探し、目が泳ぐ。

 

 

 「そそそそ、そう言えばユリア様に御挨拶しなくても良いですかね?」


 「うーん」


 「忙しいんじゃない?」


 「そう……ですね」

 

 

 会話が即終了してしまい、どうしようかと悩んでいる所に救いの手が差し伸べられる。

 比喩ではなく、本当に教室から手が伸び、3人を引きずり込んだのだ。

 何が起こったのか分からないまま状況を確認すると、目の前には丸眼鏡を掛けチューリップハットを被った女性。

 恐らく変装なのだろうが、3人の目には一目でユリアだと分かった。

 

 

 「おぉユリアではないか」


 「お久しぶりでございます」


 「こんな誰もいない教室で何してんのよ?」


 「逆に、誰もいない教室じゃなかったら会えないでしょう?」

 

 

 この一言で、3人は手をポンと叩き納得した。

 

 

 「にしても……翔矢君の格好何!? 文化祭の出し物?

 キャワイーーーー!!」

 

 

 翔子の姿を見て目を輝かせ、そのまま溜まっていたモノが溢れ出すように抱きつくユリア。 頬をスリスリするその勢いは、摩擦で焼け焦げるのではと思うほどだった。

 溜まらず彼女をボンと撥ね除け距離を取る。

 

 

 「ゴメンゴメン、やりすぎちゃったねぇ~

 でも本当に女の子みたいで、可愛くてつい」

 

 

 ユリアの目線は、翔子の胸元に行く。

 彼女は目の前の友人が、本当に女性になっているとは思っていない。

 

 

 「本物と見分けつかないわよマジで」

 

 

 そのまま体が勝手に動いたかのように、指で胸の先を突いてしまった。

 

 

 「ひゃん」

 

 

 可愛い声を上げ、胸を両腕で隠す翔子。

 そんな彼女にペネムエは励ますように頭を撫で、リールは護るように目の前に立ちはだかる。

 ユリアは困惑し状況も飲み込めていない様子だ。

 

 

 「え? なんかゴメン」

 

 

 自分の胸を触りながら、状況を整理しているユリア。

 先ほどの翔子の胸の感覚を思い出すように上を向き、ようやく真相にたどり着く。

 

 

 「ほっ本物!?!? 何が起こったかは分からないけど、誠にゴメンなさい」

 

 「わわわ悪気が無かったのなら良い……」

 

 

 翔子の頬は赤く、まだ照れが残っているのが目に見えて分かる。

 いつもなら笑って済ませる所だが、ユリアは妙に申し訳ない気持ちになっていた。

 

 

 「男の子には戻れるのよね?

 その時、私のを好きなだけ触って良いから!!」


 「けっ結構だ!! この話しおしまい!!」

 

 

 見かねたペネムエが、2人の間に割って入り、両手を向ける。

 

 

 「ユリア様は何か用事があって、わたくし達を招き入れたのではないですか?」


 「そうだった、そうだった、ペネムエちゃんかリールちゃんに用事があったんだった」


 「わたくしかリールに?」


 「以外ね、てっきりいつものように、翔子もとい翔矢にちょっかい出しに来たのかと」


 「私のイメージ、どうなってるのーーーー!!」

 

 

 わんわんと泣き叫ぶユリアだが、3人はジーっと視線を送り、話しを進めろとプレッシャーをかけた。

 これはすぐに伝わったようで、彼女はゴホンと咳払いをする。

 

 

 「えぇっと、招待状下さい」

 

 

 満面の笑みで、お年玉を貰う子供のように手を出すユリア。

 ペネムエとリールは、目を見合わせた後で首を傾げた。

 

 

 「「招待状?」」


 「大天界祭の招待状、天使なら何枚か持ってるわよね?

 ましてペネムエちゃんはA級天使だしなおさら」


 「なるほど、ユリア様が出席希望とは思っておらずピンと来ませんでした」

 

 「というか、天使と人間のハーフって招待状無いと参加できないんだっけ?」

 

 

 2人は同時に魔法のポーチを漁るが、すぐには出てこないようだ。


 

 「えぇっと、私はノーマジカル育ちノーマジカル生まれだから……かも?」

 

 

 何かを誤魔化しているように斜め上を向くが、その仕草には誰も気がつかない。

 

 

 「あっありました」


 「私も!!」

 

 

 2人はチケットのようなモノを同時に取り出すが、何やら見た目が違う。

 こういう場合、たいていリールが間違っているので翔子はそちらの手を確認する。

 

 

 「おいリール、大天界祭の招待状にはQR的なコードが付いておるのか」


 「あれ? おっかしいわねぇ、手前に入れたハズなのに」

 

 

 リールは未来の猫型ロボットのように次々とポーチの中身を取り出す。

 出てくるのは、翔子には分からない言語で書かれた紙類ばかりだ。

 

 

 「よくもまぁ、ここまで溜め込んだのぉ。

 嫁の貰い手に苦労するぞ?」


 「誰目線よ!! 仕方ないでしょ。

 こちとら大天界祭前でテンヤワンヤよ」

 

 

 文句を垂れ流しつつ、ペネムエがユリアに招待状を渡しているのが確認出来たので、せっせと後片付けを始めている。

 


 「2人とも、それに翔子ちゃんとも会えて嬉しかったよ、じゃあねぇ」

 

 

 ユリアは明るくも虚しい笑顔を残し、招待状の中へと吸い込まれていった。

 

 

 「ユリア様の様子、何か変じゃありませんでした?」


 「いつも変な人だけど、何か覚悟を決めたみたいだったわね……」

 

 

 天使である2人は、何か胸騒ぎを覚えた。

 しかし、隣で目を輝かせる翔子に、それはかき消されてしまう。

 

 

 「おい!! 2人とも!! もう天界へは行けるのか?」


 「はい、しかし大天界祭は日本の時間で……明日の今頃開催ですかね?」


 「でも行くことは出来るのだな!?」


 「文化祭はまだ終わってないし、その体で慣れない天界に行くつもり?」


 「あっ……」

 

 

 一瞬我に返った翔子は思い直し、出発を翌朝へ延期する事にした。

 


 

 ***

 

 


 そして迎えた翌日の夕刻。

 翔子は、すっかり翔矢へと戻り、今は自宅の庭にリールも来ている。

 

 

 「えぇっと確認だけど、大天界祭が終わって戻ってくれば、この時間のこの場所にいるんだよね?」


 「翔子様……じゃなかった翔矢様、その通りです。

 大天界祭で全てのゲートが開いている間、天界以外の時間は止まっているような状態なのです」


 「へぇ不思議だな、時差ボケとか大丈夫かな?」


 「そうおいうのは時差ボケと言わない気がしますが……」


 「ザ・ホールとか、色んな場所に行ってるのに今更じゃない?」


 「それもそうだな」 

 

 

 翔矢は準備運動とばかりに、ストレッチを始めている。

 

 

 「翔矢様……別に戦いに行く訳ではありませんので、そう身構えませんでも」


 「あっそっか、つい癖で」


 「嫌な癖ね……」


 「武道会はありますが、」

 

 

 リールは呆れた目で見ながら、カバンから招待状を取り出した。

 

 

 「翔矢はペネムエので行くでしょ? 私の誰も使ってくれないのは寂しいわね」


 「昨日ちゃんと出てくれば、ユリアさんが使ったのにな」

 

 

 その言葉にムッと頬を膨らませるリール。

 次の瞬間、誰かに招待状をスッと取られてしまった。

 

 

 「え?」

 

 

 振り向くと、そこにはニヤニヤと笑みを浮かべ、招待状をヒラヒラさせるドクターの姿があった。 

 

 

 「あんた!!」


 「まだ六香穂にいたのかよ」


 「蓮様と鈴様は?」


 「2人は昨日から行方不明でね、まぁ暇だし研究がてら天界を見てみようと思ってね」


  

 ドクターの言葉を聞き取る暇もなく、招待状が光り出す。

 そして4人は、中へと吸い込まれていくのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。


 下の星から評価も、入れてくださるとモチベが最高潮になるとか。

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