269話:救援から珍妙が始まりそうです(改稿予定有り)
現在、翔矢の体は魔法の飴玉の効果で女性になっている。
その容姿は、まぁまぁ男受けが良いらしく、ガラの悪いヤンキーに目を付けられ、浚われている途中だ。
(ちくしょう……抵抗してんのに、こいつらビクともしねぇ)
一瞬、転生教のような能力者ではないかと考えたが、それなら先ほどの声の主やシフィンが、既に感づいているはず。
(赤メリに頼りすぎて、体が弱くなっちまったか? ……ん!?)
自らの心の自問自答で、ようやくこの状況の原因にたどり着く。
(女の体になって筋力とか落ちたか!? いやいやグミとか鈴さんとか女の子だけど普通に強いし……いや例外をあげてもきりがないか)
原因にたどり着いた途端、今自分を軽々と抱えている男に勝てる気がしなくなってきた。
周りの生徒からの視線は感じるが、ヤンキーが怖いのか見て見ぬふり。
(あれ? このままだと俺……どうなる? 何される?)
今まで、普通に地球で生活していれば遭遇しないような戦闘もこなして来た翔矢。
しかし、それとは比べものにならない恐怖が、彼……いや彼女に襲いかかる。
体が震え、涙まで溢れ、声も思うように出せない、すると頭にペネムエの姿が浮かんできた。
(そうだ……通信用の魔法石……)
ポケットの中に手を伸ばそうとするも、魔法石どころかポケットすらない。
今の彼女は、白いワンピースを着ており、魔法石も教室の制服に中だ。
翔矢の頭は真っ白になり、恐怖から逃れるように思考が止まった。
こうなっては、もう誰の助けも望めないだろう。
「ひゃっはっはーーー急に汐らしくなりやがった」
「こういうのに限って、楽しい事をすれば、また元気になるんだけどなぁ」
このヤンキーの言葉は、もはや耳に入るのを拒んでいるのか届いていない。
完全に希望が潰えたと思った、その時だった。
「せっかく文化祭を楽しみに来ましたのに、このような方々がいるとは……これを興ざめと言うのでしょうか?」
声の主の姿は見えないが、透き通るような声が耳に入るだけで、翔矢の心に安心と安らぎを与えた。
「ペネ……ちゃん」
「このような飴玉が実在するとは思いませんでした……などと話している暇はなさそうですね」
ペネムエの声からは、強い威圧感が感じられる。
しかし周りから見れば、中学生の女の子が正義感からヤンキーに絡んでいるようにしか見えない。
今まで翔矢にチラチラと向けられていた視線が、ペネムエにも向けられるが、動ける者は誰も居ない。
「おうおうおう、お嬢ちゃんも中々可愛いじゃあないか」
「兄貴、流石に中学生に手を出すのはマズいですよ。
外国の人なら、実は小学生ってオチもあります」
「それならそれで楽しめそうじゃあないか」
ペネムエの胸ぐらに向かい、大柄なヤンキーの手が伸びる。
体格差は倍もありそうだが、彼女はその手首を軽々と掴み捻ってみせた。
「アンギャーーーーーー!!」
ヤンキーが見た目にそぐわない甲高い声を上げる。
だが、すぐに後ろに下がり体勢を立て直した。
「兄貴!! 大丈夫ですか?」
「あぁ……ちっこい割に力が強くて驚いただけだ。
だてに俺らに突っかかって来た訳じゃねぇな」
「引きますか?」
「馬鹿な事言うんじゃねぇ、こんな上玉、みすみす逃がすかよ。
少し抵抗して来る方が分からせがいがあるってもんだぜ」
大柄なヤンキーは、抱えていたままの翔矢を子分に投げるように渡す。
子分はバランスを崩しながらも、しっかりと受け止めた。
(チクショー、子分の方でも俺1人じゃ振り払えねぇ……)
翔矢はジタバタと抵抗を見せたが、子分の鋭い睨みで、再び汐らしくなった。
「少しばかり手こずりそうですが、安心してお待ちください」
「お嬢ちゃん、少しは腕に自信があるようだが、中途半端な実力で出過ぎたマネすると痛い目を見るぜ?」
「その言葉、そのままお返しします」
ペネムエの返しが合図のようにして、ヤンキーは再び拳を振るう。
「女だからって容赦しねぇぞ」
「わたくしも、拳を振るうのは慣れていませんので加減は期待しないで下さいませ」
翔矢の戦闘スタイルを真似るように拳を振るうペネムエ。
手加減出来ないという先の宣言通りの威力で、ヤンキーは壁に激突するまで勢いよく飛んでしまった。
達人のようなその技に、野次馬からは、尊敬と驚きの拍手が送られた。
これに照れくさくなったペネムエは、顔を隠しながらペコペコと頭を下げた。
「チクショーメー」
安心したのも束の間、翔矢を抱えていた子分は、そのまま猛ダッシュで逃亡を図った。
彼の勢いに、野次馬達は反射的に道を空けてしまう。
「待ちなさい!! ってキャッ」
すぐに後を追うペネムエだったが、今し方、自分が倒したヤンキーにつまずきド派手に店頭。
勇敢にヤンキーに立ち向かった姿とのギャップに、野次馬からは男女問わず「かわいー」といった声が漏れている。
「うぅ……うかつでした」
そうしている間に、子分を見失ってしまい、頭を抱える。
「翔矢様……っと悲観している暇はありません。
あんな目立つ状態の方、すぐに見つかるでしょう」
腹いせとばかりに、倒れているヤンキーの腹を踏み、前へ進むペネムエ。
目の前の角を、右に曲がるか左に曲がるか考えていると、左の方から野太い男の悲鳴が聞こえた。
目で確認せずとも、先ほどの子分だと分かりきっている。
「ワルパ様とグラビ様はクラスの助っ人をしているようですし、シフィン様でしょうか?」
何故か隠れるように、ヒョッコリ顔を出し確認すると、北風エネルギーの蓮が子分を倒してしまっていた。
それも、日本刀型の武器、ソルの鞘で……
後ろでは呆れ果て頭を抱える鈴と、腹を抱えて笑うドクターの姿も見られる。
「蓮様達もいらしていましたか」
「貴様か、全くこの街は、少し動くたびに事件が起こる」
「はっはっはーーー眼鏡の名探偵にでもなった気分だねぇ」
「2人とも、お願いだからこれ以上目立たないで……恥ずかしい、来るんじゃなかった」
蓮とドクターから鈴は距離を取るようにして立っていた。
その気持ちは、天界から来たペネムエにも伝わる。
ドクターはテンガロンハットにアロハシャツに短パンという統一感の無い服装。
そして蓮は、上半身の逞しい筋肉が、そのままプリントされたTシャツを着ているのだ。
「だから私言ったぁ!! その服は、どこの世界の文化でも笑い者って言ったぁ」
鈴が泣き出してしまった事で、余計に注目を集めてしまったが、このまま話しを続ける事にした。
「とにかく、翔矢様を助けて下さりありがとうございます。
しかし、その武器を人前で振るうのは、いかがなものかと……」
「文化祭は多少なり珍妙な格好の者が出入りする、問題は無いと判断した」
「1番珍妙な格好しているのは蓮だけどねぇ」
「ドクターも悪くない勝負よ」
聞こえていないのか服装に無頓着なのか、ここまで言われても気にする様子はない。
「それに宮本翔矢を倒す程の男が相手なら油断はできんだろう」
「それは……確かに」
蓮とペネムエが当然の様に続けている会話。
この内容の違和感に、鈴は気がつき、ドクターも何かを閃いた様に両手をポンと叩く。
「え? え? え? この子、宮本翔矢なの?」
「はっははーーー蓮の言うとおり、珍妙な格好の人間は多いようだねねぇ」
反応は違えど、鈴とドクターは、目の前の少女が翔矢だとは気がついていなかった様子。
だが、蓮だけは首を傾げている。
「いや、どっからどう見ても宮本翔矢だろう?」
「……助けてくれてありがとよ」
翔矢は不貞腐れた表情でようやく口を開いた。
「翔矢様、不慣れな体で大変でしょうがもう安心して下さい」
ここで、ようやく北風エネルギーの面々に、今の翔矢が女装で無く本当に女性になっている事が告げられる。
「ははっはーーーそりゃまた愉快だねぇ」
「それで律儀に服まで女物にしたのか」
「まぁ成り行きでな」
「まぁとりあえず、君のことは翔子ちゃんとでも呼ぶとして」
「呼ぶな、もう教室に戻る!!」
不貞腐れた表情で教室へ戻ろうとする翔子。
だが彼女はハッと何かを思い出し、すぐに立ち止まる。
「あっペネちゃん……洗って返すつもり……だったけど恥ずかしいよね?
どうすれば良いか考えといて!!」
そのまま立ち去ってしまったが、ペネムエは首を横に傾げた。
「返す? 何の事でしょう?」
翔子は下着を貸してくれたのはペネムエだと思っていた。
だが、それは彼女には心当たりの無いことだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。
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